協会けんぽの傷病手当金はいくら受け取れる?日額の出し方と、いつまで続くか

結論

日額は「支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2」。連続3日休んだ後の4日目から対象になり、支給開始日から通算1年6か月まで受け取れます。

どうする?編集部 · · 読了 約9分
目次(10項目)
  1. まず日額を計算してみる
  2. 待期3日は「連続」でないと成立しない
  3. 通算1年6か月の「通算」が変えたこと
  4. 給与・有給・他の給付との調整
  5. 申請書は4枚組。誰が何を書くか
  6. いつ出すか、振込までどのくらいか
  7. 退職後も受け取れる条件
  8. 標準報酬月額ごとの目安
  9. 「もらえない」と言われやすいケース
  10. 手元で確認しておくこと

休職が決まった直後にいちばん知りたいのは、制度の趣旨ではなく「毎月いくら入るのか」と「いつまで続くのか」だと思います。傷病手当金は給与のおよそ3分の2が目安になりますが、実際の日額は自分の標準報酬月額から計算できます。ここでは金額の出し方を先に示し、そのうえで待期3日の数え方、通算1年6か月という期間の考え方、申請書を誰に書いてもらうかまでを順番に整理します。手元に給与明細か「健康保険・厚生年金保険 被保険者標準報酬決定通知書」があると、読みながら自分の数字を当てはめられます。

まず日額を計算してみる

1日分の傷病手当金は、次の式で決まります。

支給開始日前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 ×(2 / 3)

計算の途中で端数処理が入ります。「平均した額 ÷ 30」の時点で10円未満を四捨五入し、そこに3分の2を掛けた後で1円未満を四捨五入します。

実際に当てはめてみます。標準報酬月額の平均が30万円だった場合、30万円 ÷ 30 = 1万円、1万円 × 2 / 3 = 6,667円が日額になります。30日分で約20万円です。標準報酬月額の平均が24万円なら日額5,334円、28日分で約14万9千円になります。

自分の数字で確かめる場合は、傷病手当金の計算ツールに標準報酬月額を入れると、日額と月額、通算1年6か月の残りがそのまま出ます。

ここで注意したいのが「標準報酬月額」は手取りでも額面そのものでもない点です。4月から6月の給与をもとに毎年決まる等級で、通勤手当や残業代も含まれます。給与明細の健康保険料から逆算するより、被保険者標準報酬決定通知書か、勤務先の給与担当に等級を聞くほうが確実です。

被保険者期間が12か月に満たない場合は計算方法が変わります。実際に加入していた期間の平均額と、協会けんぽが定める全被保険者の平均額(近年は30万円)を比べて、低いほうを使います。入社1年目で休職に入ると、給与水準が高くてもこの上限が効いて日額が抑えられることがあります。

待期3日は「連続」でないと成立しない

支給が始まるのは、仕事を休んだ日が連続して3日間あった後の4日目からです。この3日間を待期といい、この分は支給されません。

つまずきやすいのが「連続」の条件です。2日休んで3日目に出勤し、4日目からまた休んだ場合、待期は成立していません。もう一度、連続3日を作り直すことになります。体調が少し戻った日に無理をして出社すると、結果的に支給開始が遅れる形になります。

待期の3日は、有給休暇でも公休でも欠勤でも構いません。土日や祝日を挟んでも連続していれば数えられます。金曜に休み始めて土日を挟めば、その3日で待期が完成し、月曜から支給対象になります。

実務では、待期の3日を有給で消化して、4日目以降を欠勤扱いにする形がよく取られます。待期は無給でも有給でも成立するため、この3日を有給に充てておくと収入の空白を少しだけ埋められます。

通算1年6か月の「通算」が変えたこと

支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。2022年1月に、それまでの「支給開始日から連続して1年6か月」から通算方式に変わりました。

違いが出るのは、途中で復職した場合です。以前は復職している間も1年6か月のカウンターが進み続けたため、体調が安定せず出社と休職を繰り返す人ほど、実際に受け取れる期間が短くなっていました。通算方式では、支給を受けなかった日はカウントされません。3か月受給して復職し、半年後に再び同じ病気で休職した場合、残りは1年3か月分がそのまま残っています。

ただし通算されるのは同一の傷病に限られます。別の病気やケガで休職する場合は、新たに1年6か月の枠が立ちます。うつ病で休職して復職した後、まったく別の理由で入院したときなどは、この扱いになります。

なお、1年6か月を使い切った後も働けない状態が続くなら、障害年金の対象になるか確認する流れになります。障害認定日は原則として初診日から1年6か月後で、傷病手当金の期間と重なるように設計されています。

給与・有給・他の給付との調整

休んでいる間に給与が支払われると、その分は調整されます。ただし全額が止まるわけではありません。支払われた給与が傷病手当金より少ない場合は、差額が支給されます。給与の一部が支給される制度がある会社では、この差額計算になることが多くなります。

重なる可能性がある他の給付もいくつかあります。

  • 出産手当金:同じ期間に両方の要件を満たす場合、出産手当金が優先されます。傷病手当金のほうが高ければ差額が支給されます。
  • 障害厚生年金:同一の傷病で障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は原則として支給されません。年金額を日割りした額が傷病手当金より少なければ、差額が支給されます。
  • 労災保険の休業補償給付:業務が原因のケガや病気は労災の範囲で、傷病手当金の対象外です。通勤中の事故も労災側になります。
  • 雇用保険の基本手当(失業給付):働ける状態であることが前提なので、傷病手当金とは同時に受け取れません。退職後に働けない期間が続くなら、基本手当の受給期間を延長する手続きを検討することになります。

複数の制度が絡む場合、自己判断で片方を止めてしまうと後で調整が面倒になります。加入している協会けんぽの支部に、状況を伝えて確認しておくほうが安全です。

申請書は4枚組。誰が何を書くか

協会けんぽの健康保険傷病手当金支給申請書は4ページで構成されていて、記入者が分かれています。

  • 1〜2ページ目(被保険者記入用):本人が書きます。氏名や口座情報のほか、療養のため休んだ期間、その期間に給与が支払われたかを記入します。
  • 3ページ目(事業主記入用):勤務先が書きます。出勤簿と賃金台帳をもとに、申請期間中の出勤状況と給与の支払い状況を証明します。総務や人事、給与計算の担当者に依頼してください。
  • 4ページ目(療養担当者記入用):医師に書いてもらいます。傷病名、初診日、労務不能と認めた期間などを記入する欄です。

進める順番は、本人記入 → 医師 → 会社が扱いやすくなります。医師の意見欄には「労務不能と認めた期間」が入るため、その期間が確定してから会社に出勤状況を証明してもらうと、記載のずれが起きにくくなります。

医師に書いてもらう際は、医療機関ごとに文書料がかかります。300円から1,500円くらいが目安で、健康保険が使えないため自費です。診察のときに申請書を持参し、次回受診時に受け取る流れが一般的です。

会社に依頼するときは、「協会けんぽの傷病手当金の申請書のうち、事業主記入欄をお願いします」と伝えれば通じます。休職の連絡と同時に、申請書のやり取りをメールでするか郵送にするかも決めておくと、療養中の負担が減ります。

なお2026年1月から、協会けんぽの傷病手当金はマイナポータル経由の電子申請にも対応しました。手順は別記事の協会けんぽの傷病手当金の電子申請にまとめています。

いつ出すか、振込までどのくらいか

申請は療養が終わってからまとめて出す必要はありません。1か月ごとに区切って請求するのが一般的で、生活費の見通しを立てやすくなります。締め日の決まりはないため、給与の締めに合わせる人が多くなっています。

書類が支部に到着してから振込までは、2週間から2か月が目安です。初回は資格の確認や勤務実績の突き合わせがあるため時間がかかり、2回目以降は短くなる傾向があります。休職に入ってから最初の入金まで、1か月半ほど空くと見ておくと安全です。

申請期限は、労務不能だった日ごとに、その翌日から2年間です。2年を過ぎた分から順に時効で消えていくため、まとめて請求しようと先延ばしにすると、古い月から権利がなくなります。療養が長引きそうなときほど、月ごとに出しておくほうが確実です。

退職後も受け取れる条件

退職しても、次の2つを満たせば継続して受け取れます。

  1. 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること(協会けんぽと健康保険組合をまたいでも、空白がなければ通算されます)
  2. 退職日の時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態にあること

ここで見落としやすいのが2つ目です。退職日に挨拶のつもりで出社してしまうと「労務不能ではなかった」と判断され、継続給付の資格を失います。最終出社日と退職日を別の日にする、退職日は出社しない、という点は事前に会社と確認しておいてください。

退職後の申請では、事業主記入欄が不要になる期間があります。退職日より後の期間については会社の証明が要らないため、前職と連絡が取りにくい場合でも進められます。ただし退職日を含む月の申請には会社の証明が必要になるので、在職中に依頼しておくと後が楽になります。

標準報酬月額ごとの目安

自分の等級を当てはめる前に、全体の水準を掴んでおくと判断しやすくなります。前述の端数処理を反映した数字です。

標準報酬月額の平均日額30日分28日分
20万円4,447円133,410円124,516円
24万円5,333円159,990円149,324円
28万円6,220円186,600円174,160円
30万円6,667円200,010円186,676円
36万円8,000円240,000円224,000円
44万円9,780円293,400円273,840円
50万円11,113円333,390円311,164円

月をまたぐと日数が変わるため、同じ等級でも入金額は月ごとに動きます。家計を組むときは28日分で見ておくと下振れしにくくなります。

傷病手当金には所得税がかかりません。健康保険から支給される給付は非課税扱いで、源泉徴収も年末調整の対象外です。ただし社会保険料は免除されないため、休職中も健康保険料と厚生年金保険料は発生します。会社が立て替えて後から精算する運用が多く、支給額から自分で振り込む形になる場合もあります。手取りの見通しを立てるときは、この保険料の負担を引いて考えてください。

「もらえない」と言われやすいケース

要件を満たしていそうで、実際には支給されない場面がいくつかあります。

  • 業務中や通勤中のケガ・病気:労災保険の範囲になり、健康保険の傷病手当金は使えません。会社が労災を渋る場合でも、労働基準監督署に直接相談できます。
  • 待期が成立していない:連続3日が作れていないケースです。前述のとおり、途中で1日出勤すると数え直しになります。
  • 医師が労務不能と認めていない:本人がつらくても、申請書の医師記入欄に労務不能の記載がなければ支給されません。通院時に「仕事を休む必要がある状態か」を明確に相談してください。
  • 休んだ期間の給与が満額支払われている:この場合は不支給です。給与が傷病手当金より少なければ差額が出ます。
  • 国民健康保険の加入者:自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度が原則ありません(自治体が独自に設ける例はあります)。会社員が退職して国保に切り替えた場合でも、退職前からの継続給付は協会けんぽ側から受け取れます。
  • 任意継続被保険者になってから発症した病気:退職後に任意継続へ切り替えた人が、その後に発症した傷病で休んでも対象外です。継続給付として認められるのは、退職時点ですでに受給中か受給できる状態だった傷病に限られます。

診断書ではなく申請書の様式で書いてもらう点も、間違えやすい部分です。診断書を提出しても申請にはならないため、必ず協会けんぽの申請書4ページ目を医療機関に渡してください。

手元で確認しておくこと

休職に入る前後で、次を押さえておくと手続きが止まりにくくなります。

  • 直近12か月の標準報酬月額(被保険者標準報酬決定通知書、または給与担当に確認)
  • 待期3日をいつ作るか、その3日を有給にするか欠勤にするか
  • 傷病手当金の申請書を、医師 → 会社の順で回す段取り
  • 会社の休職制度で給与の一部支給があるか(ある場合は差額調整になります)
  • 最終出社日と退職日を分けられるか(退職を視野に入れている場合)

金額の見込みが立つと、休職期間中の家計の組み方が変わります。まずは標準報酬月額を確認して、日額を出すところから始めてみてください。

※制度の運用は加入している保険者によって細部が異なります。健康保険組合に加入している場合は、組合独自の付加給付があることもあるため、加入先の案内もあわせて確認してください。

協会けんぽの傷病手当金はいくら受け取れる?日額の出し方と、いつまで続くか — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Nolan Issac on Unsplash

参考資料

  1. 全国健康保険協会(協会けんぽ):傷病手当金
  2. 全国健康保険協会:健康保険傷病手当金支給申請書
  3. 厚生労働省:傷病手当金について

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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