協会けんぽの傷病手当金は、2026年1月13日から電子でも出せるようになりました。ただ、マイナポータルのアプリを開いて申請メニューを探しても見つかりません。入口は協会けんぽのサイト、またはけんぽアプリの「電子申請サービス」です。ここを取り違えたままだと、ない画面の前で時間だけが過ぎます。
この記事は「どう出すか」を扱います。ただ、検索してここに来た人がまず知りたいのは金額と期間のほうだと思うので、そこから先に置いておきます。
先に、金額と期間だけ
条件と計算式は、協会けんぽが公式サイトに載せているとおりです。
- 支給されるのは、業務外の病気やケガの療養で仕事に就けず、給与の支払いがない場合
- 日額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2
- 加入期間が12か月に満たないときは、その平均額と32万円(支給開始日が令和7年4月1日以降)の低いほうで計算する
- 連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったときの、4日目から
- 支給開始日から通算して1年6か月まで
- 紙で出すときの提出先は、加入している協会けんぽの都道府県支部
待期の3日は「連続」でないと成立しません。協会けんぽは「連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、『待期3日間』は成立しません」と書いています。土日をはさんでも、休みが途切れなければ3日として数えます。
自分の標準報酬月額で日額を出すなら傷病手当金の計算ツールに入れると、日額と月額、通算1年6か月の残りがそのまま出ます。手取りベースの試算や、有給・出産手当金・障害年金との調整は協会けんぽの傷病手当金はいくら受け取れるかに分けてあります。ここから先は、その申請書をどう出すかの話です。
2026年1月13日に変わったこと
協会けんぽは令和8年(2026年)1月13日に電子申請サービスを開始しました。対象は傷病手当金だけではなく、給付と一部の届出が広く入っています。
- 傷病手当金支給申請書
- 出産手当金支給申請書
- 出産育児一時金支給申請書/内払金支払依頼書
- 埋葬料(費)支給申請書
- 療養費支給申請書(立替払等・治療用装具・海外療養費)
- 高額療養費支給申請書
- 移送費支給申請書
- 限度額適用認定申請書
- 任意継続被保険者資格取得申出書
- 高額医療費貸付金/出産費貸付金の貸付申込書
このうち件数が多いのが傷病手当金です。協会けんぽ自身も申請書のページで電子申請をすすめていて、理由として「システムチェックにより記載もれなどのミスを防げます」と書いています。返戻の主な原因が記入もれなので、そこを機械に見てもらえるのが実質的な利点です。
入口はマイナポータルではない
取り違えがいちばん多いのはここです。協会けんぽは「当ページ、またはけんぽアプリの『電子申請サービス』から手続きを進めてください」と案内しています。マイナポータルの給付メニューをいくら開いても、協会けんぽの傷病手当金は出てきません。
この記事も、最初はマイナポータルから入る前提で書いていました。2026年8月に協会けんぽの各ページを開き直して、入口から書き直しています。
用意するものは2つだけです。
- マイナンバーカード
- 数字4桁のパスワード(利用者証明用電子証明書の暗証番号)
署名用電子証明書の6桁から16桁の英数字ではありません。コンビニで住民票を取るときや、健康保険証としてカードを使うときに入れている、あの4桁です。協会けんぽは「マイナ保険証でなくても、電子申請を行うことは可能です」とも書いています。保険証利用の登録をしていないカードでも使えます。
この4桁は3回続けて間違えるとロックします。ロックしたときの解除先と、コンビニ端末で直せる条件はマイナンバーカードの暗証番号がロックされたら、どこで解除できるかにまとめてあります。カードの電子証明書には有効期限もあるので、更新のはがきを放置していた人は先にそちらを片づけてから始めるほうが早いです。
なお、使えるのは被保険者本人と、委任を受けた社会保険労務士だけです。事業主や家族などの代理人は使えません。一部の申請にかぎって被扶養者も申請できます。社労士に頼む場合は、社労士側が先にID発行の手続き(社会保険労務士証票とマイナンバーカード表面の画像を提出し、郵送でIDとパスワードを受け取る)を済ませておく必要があるため、休職に入ってから思い立つと間に合いません。
電子で出しても、紙でもらう2枚がある
完全なペーパーレスにはなっていません。傷病手当金では、次の2枚を紙で用意して撮影またはPDFにし、アップロードします。
| 書類 | 誰に書いてもらうか | 電子申請での扱い |
|---|---|---|
| 事業主記入用 | 勤務先(総務・給与担当) | 撮影またはPDFで添付 |
| 療養担当者記入用 | 主治医 | 撮影またはPDFで添付 |
協会けんぽは「事業主記入用にお勤め先の事業所に証明を受けてください。(資格喪失日以降の期間に関する申請については、アップロードは不要です。)療養担当者記入用に療養担当者(医師等)の意見を受けてください」と案内しています。
かっこの中が地味に大きいところです。退職後、資格喪失日以降の期間だけを請求するなら、事業主記入用そのものが要りません。 退職した会社に連絡を取り続けなくてよくなるので、継続給付を受けている人にとっては電子のほうが軽く済みます。
用紙そのものは協会けんぽのサイトから落とせます。入力用と手書用があり、療養担当者記入用だけは主治医に渡すので印刷して持っていきます。4枚のうち誰がどこを書くか、書き損じたときの直し方は協会けんぽの傷病手当金支給申請書、用紙はどこで取るかのほうに分けてあります。
添付するファイルの条件
写真がはねられて出し直しになるのを避けるため、条件は先に見ておきます。
- 形式: JPEG・PNG・PDF
- 容量: 100KBから20MBまで(PDFは15MBまで)
- 画像サイズ: 縦512から8,192ピクセル × 横512から8,192ピクセル(PDFを除く)
下限が100KBある点に注意が要ります。画質を落としすぎた写真や、白紙に近いスキャンは軽くなりすぎてはじかれます。逆に最近のスマホで撮ると20MBを超えることもあるので、その場合は解像度を一段下げます。撮るときは影が落ちない明るさで、用紙の四隅が入るように真上から撮ります。
申請の流れ
手順は6段階に分かれています。
- 協会けんぽのサイトかけんぽアプリから電子申請メニューに入る
- 申請書の種類(傷病手当金支給申請書)を選ぶ
- マイナンバーカードを読み取り、資格情報を選ぶ
- 加入者情報・振込口座・申請内容(労務不能だった期間、給与の支払いの有無)を入力する
- 事業主記入用と療養担当者記入用の画像をアップロードする
- 内容を確かめて送信する
3の「資格情報を選ぶ」は、転職などで複数の資格が出てくる人のための段階です。申請する期間に在籍していた側を選びます。ここを取り違えると審査で止まります。
送信できる時間が決まっている
24時間いつでも送れるわけではありません。
- 平日 8時00分から21時00分
- 平日の時間外、土日祝日、年末年始(12月29日から1月3日)は利用できない
そのうえで、協会けんぽは2つ書き添えています。17時15分以降に送信した申請は翌営業日の受付になること、21時になると自動でメンテナンス画面に移り、保存していないデータは削除されることです。
10営業日の起算点が受付日なので、金曜の夜に送ると受付は月曜です。急ぐなら平日の17時15分より前に送信を終わらせます。入力の途中で21時をまたぎそうなときは、いったん保存してから続けます。
電子と紙、どちらで出すか
どちらも並行して受け付けています。判断材料を並べると次のようになります。
| 電子 | 紙 | |
|---|---|---|
| 用意するもの | マイナンバーカード・4桁のパスワード | 用紙と切手・封筒 |
| 記入もれのチェック | 送信前にシステムが見る | 支部に届いてから発覚する |
| 事業主記入用 | 資格喪失後の期間なら不要 | 期間にかかわらず添付 |
| 送信できる時間 | 平日8時から21時 | いつでも投函できる |
| 途中経過 | 審査状況確認で見られる | 通知が届くまで分からない |
| 返戻の連絡 | メニュー上の通知 | 郵送で戻ってくる |
電子が向くのは、カードと4桁のパスワードが手元にあり、退職後の継続給付で会社に連絡を取りづらい人です。逆に、カードを持っていない人や、申請書をまとめて支部へ送る運用の職場なら、紙のままでかまいません。療養中で画面の操作がつらいときも同じです。どちらを選んでも支払いの基準は変わりません。
出したあと。審査状況の見方と、返戻されたとき
送信すると受付番号が発行されます。この番号をメニューの「審査状況確認」に入れると、いまどこまで進んでいるかを見られます。紙で出したときにいちばん不安になる「届いたのかどうかも分からない期間」が、ここで消えます。
不備があった場合は「協会電子ポスト」に返戻の通知が入り、返戻された申請データをダウンロードして直します。最初からやり直しにはなりません。ただし10営業日の数え直しになるので、往復した分だけ入金は後ろにずれます。療養担当者記入用を書き直してもらう場合だけは、同じ期間について2度目の意見書の費用が本人負担です。
いつ振り込まれるか
協会けんぽは申請書のページで「審査の結果お支払い可能であれば、受付日から10営業日以内にお支払いいたします」と明記しています。紙でも電子でも同じ基準です。
営業日で数えるので、祝日をはさむ週は暦の上で2週間を超えます。初回は資格や賃金台帳の照合が入るぶん、この枠の上限まで使われやすくなります。生活費を手当でまかなうなら、最初の入金までひと月ほど空く前提で組んでおくと転びません。
期限は2年。ただし日ごとに数える
請求権の時効は2年です。協会けんぽは「受けることができるようになった日の翌日から2年で時効になります」としていて、傷病手当金では労務不能だった1日ごとに、その翌日から数えます。
つまり「2年たったら全部消える」のではなく、古い日の分から1日ずつ落ちていきます。 長く休んでいる人がまとめて出そうとすると、書いているあいだにも先頭が欠けます。ひと月ごとに区切って出しておくのが安全です。申請期間の上限は暦で3か月なので、どのみち長くはまとめられません。
退職したあとの請求
退職後も続けて受け取れるのは、次を満たす場合です。
- 退職日まで継続して1年以上の被保険者期間がある
- 退職日に労務不能で、傷病手当金を受けているか受けられる状態だった
- 退職後も労務不能の状態が続いている
ここで効いてくるのが、さきほどの「資格喪失日以降の期間に関する申請については、アップロードは不要です」です。退職日の翌日以降だけを請求するなら、事業主記入用を取りに行かなくて済みます。退職日をまたぐ期間を1枚にまとめると在職分の証明が要るので、退職日で区切って2回に分けるほうが早く動けます。
なお、退職日に出勤してしまうと継続給付の資格を失います。最終出社日と退職日をずらす話は、休職の相談をする段階で会社と詰めておくところです。
健康保険組合に入っている人は別
ここまでは協会けんぽの話です。保険証や資格情報のお知らせに「◯◯健康保険組合」と書かれている人は、電子申請の対応状況も締切も、その組合ごとに違います。独自のシステムを持つ組合もあれば、紙だけの組合もあります。
まず保険者名を見て、協会けんぽでないなら、その組合のサイトの給付ページから入ってください。計算式や通算1年6か月といった制度の骨格は健康保険法で共通なので、この記事の金額・期間の部分はそのまま使えます。違うのは出し方だけです。
送信する前に見ておくもの
- マイナンバーカードの電子証明書が期限内か(更新のはがきを放置していないか)
- 数字4桁のパスワードを覚えているか
- 事業主記入用の証明が、申請する期間をすべて覆っているか
- 療養担当者記入用に書かれた労務不能の期間が、申請期間と食い違っていないか
- 申請期間が暦で3か月以内に収まっているか
- 添付ファイルが100KBから20MBの範囲で、四隅まで写っているか
- 送信する時刻が平日の17時15分より前か