訂正(2026年10月4日) 初出では、社会保険の適用拡大について「2026年10月から企業規模51人以上が51人以上に変更」「2027年10月から賃金要件が撤廃」と書いていましたが、誤りでした。賃金要件(月額8.8万円以上)は2026年10月1日に撤廃され、企業規模要件は2027年10月から段階的に引き下げられます。保険料率の説明は変わりません。
同日追記 任意継続の申請期限を「退職後14日以内」としていましたが、資格喪失日から20日以内が正しい期限です。必要な加入期間と、休日・郵送の場合の扱いも追記しました。
同日追記(2) 東京・佐賀の負担額の表で、料率を東京9.81%・佐賀10.48%としていましたが、2026年度は東京9.85%・佐賀10.55%です。月給ではなく標準報酬月額で計算し直し、協会けんぽの保険料額表の値に合わせました。
2026年度は9.9%へ0.1pt引き下げ、4月給与から反映
2026年度の協会けんぽ全国平均保険料率は前年度から0.1%引き下げられ9.9%(労使合計)になりました。**給与への反映は2026年3月分(多くの会社では4月給与から新料率天引き)**です。神奈川・沖縄など一部都道府県は据え置きで、地域差があるため自分の勤務先所在地の料率を確認してください。介護保険料率は逆に0.03%引き上げの1.62%となり、40歳以上の労働者は同時に変動します。
都道府県別料率と改定タイミング
協会けんぽ加入者の典型
- 中小企業の従業員(健保組合に未加入の事業所)
- 全国で約4,000万人の被保険者
- 都道府県別に保険料率が異なる
- 労使折半(労働者と会社が同額負担)
2026年度の保険料率(労使合計)
全国平均:9.9%(前年度より0.1%下げ)
料率が低い都道府県(9.4〜9.6%)
- 新潟・茨城・富山・栃木・千葉など
料率が高い都道府県(佐賀は10.55%)
- 佐賀・大分・北海道・福岡など
据え置きの都道府県
- 神奈川・沖縄(前年度料率を維持)
料率改定のタイミング
- 協会けんぽ:毎年3月分から(4月給与天引きから)
- 健保組合:4月1日から(組合により若干の差あり)
- 共済組合:4月1日から
- 国民健康保険:自治体ごとに4月または6月から
給与明細での見方
- 健康保険料:今月の標準報酬月額 × 料率 × 1/2(労働者負担分)
- 介護保険料:40歳以上の場合に追加
- 給与明細の「社会保険料」項目で確認可能
健保組合・国保・標準報酬月額改定との違い
健保組合(協会けんぽ以外)
大企業の健保組合は独自料率を設定でき、2026年度は多くの組合が引き下げを発表。健康保険組合連合会(健保連)の平均は9.32%程度で、協会けんぽより低い水準です。「健保組合に加入している方が保険料が安い」傾向が続いています。
国民健康保険の料率改定
国民健康保険は市区町村単位で運営され、料率改定は自治体により異なります。多くは4月または6月の更新。協会けんぽとは別系統なので、上記の改定の影響は受けません。
標準報酬月額の改定
社会保険料は「標準報酬月額」を基準に計算されます。標準報酬月額は毎年4月〜6月の給与平均で見直され、9月から新しい等級が適用されます。料率改定と等級改定の組み合わせで、保険料は年に2回大きく変動するチャンスがあります。
東京・佐賀の負担差と扶養・転職時の扱い
具体的な負担額(労働者の月額・健康保険料のみ)
保険料は月給そのものではなく、月給を区切りに当てはめた「標準報酬月額」に料率をかけて決まります。下の額は協会けんぽの令和8年3月分からの保険料額表の値で、介護保険料(40〜64歳)と子ども・子育て支援金は含みません。
東京都(健康保険料率9.85%・本人負担4.925%)
| 標準報酬月額 | 本人の月額負担 |
|---|---|
| 20万円 | 9,850円 |
| 30万円 | 14,775円 |
| 50万円 | 24,625円 |
| 71万円(月給69.5万〜73万円) | 34,967.5円 |
佐賀県(健康保険料率10.55%・本人負担5.275%)
| 標準報酬月額 | 本人の月額負担 |
|---|---|
| 20万円 | 10,550円 |
| 30万円 | 15,825円 |
| 50万円 | 26,375円 |
標準報酬月額30万円なら月1,050円、年12,600円の差です。同じ給料でも勤務地により年1万円以上の差が出ます。
介護保険料の追加
40〜64歳は介護保険料が追加されます(労使折半):
- 標準報酬月額30万円・料率1.62%:月2,430円労働者負担(年29,160円)
- 標準報酬月額50万円:月4,050円・年48,600円
- 標準報酬月額71万円(月給69.5万〜73万円):月5,751円・年69,012円
健康保険料が控除になるもの
社会保険料は所得から全額控除可能:
- 所得税の計算で「社会保険料控除」として全額差し引き
- 住民税の計算でも同じ
- 確定申告で別途処理する必要なし(給与天引き分は自動)
料率改定の家計影響
0.1%引き下げの場合、年間の家計影響(労働者負担分):
- 月給20万円:年1,200円
- 月給30万円:年1,800円
- 月給50万円:年3,000円
- 月給70万円:年4,200円
「ニュースで0.1%引き下げ」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、ボーナス(標準賞与額)からも徴収されるため、年収ベースで2割増しの効果になります。
注意:扶養家族の保険料
協会けんぽは「扶養家族」分の追加保険料はかかりません。配偶者・子・親などを被扶養者にしても、本人の保険料は変わりません。これは健康保険の大きなメリットで、国民健康保険(世帯人数で計算)とは大きく異なる点です。
転職時の保険料引継ぎ
- 健康保険の任意継続は、資格喪失日(通常は退職日の翌日)から20日以内に申し出る。資格喪失日の前日までに被保険者期間が連続して2か月以上あることが必要
- 20日目が土日・祝日なら翌営業日。郵送は期限内の到着が必要なので、申出先の支部に提出方法を確認する
- 新会社で社会保険に加入すれば自動切替え
- 任意継続中は全額自己負担(会社負担分も自分で払う)
- 国民健康保険に切り替える場合、市区町村で14日以内に手続き
雇用形態と社会保険
- 正社員:原則社会保険加入
- パート・アルバイト:従業員51人以上の勤務先で、週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でない、の条件に当てはまれば加入
- 2026年10月1日:「月8.8万円以上」の賃金要件が撤廃された
- 2027年10月から:企業規模要件が「51人以上」から「36人以上」に下がり、その後も2035年10月まで段階的に広がる
反映漏れ・退職・海外赴任・育休・ボーナスへの疑問
Q. 給与明細の保険料が前月と全く同じです。改定されていない?
①給与日が3月末以前で4月給与に反映が来ていない、②会社の経理ミスで反映漏れ、③標準報酬月額が変わっておらず料率改定の影響が小さい、④健保組合加入で4月1日改定、の可能性。3か月以上同じなら会社の経理または労務管理に確認してください。
Q. 退職して国保に切り替えた場合、保険料は安くなる?
ケースバイケースです。協会けんぽは月給×料率なので給与の高い人は高負担、国保は世帯所得・人数で計算なので低所得者は安くなる傾向。退職前に「任意継続」と「国保」の両方の試算をして、安い方を選ぶのが賢い選択です。
Q. 海外赴任中も保険料は払いますか?
①日本企業からの給与が続く場合:日本の社会保険に継続加入(保険料も払う)、②現地法人雇用に切替:日本の社会保険は脱退、現地の制度に加入、③社会保障協定締結国(米国・ドイツ・韓国など):二重加入を避ける手続き可能、です。海外赴任の前に会社の人事部・社会保険労務士に確認してください。
Q. 育休中の保険料はどうなりますか?
育児休業中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。免除手続きは会社経由で日本年金機構に申請。免除期間中も健康保険の被保険者資格は継続し、医療を受けられます。介護保険料・厚生年金保険料も同様に免除対象です。
Q. ボーナスからも社会保険料が引かれます。何かおかしくないですか?
正しい計算です。社会保険料は月給だけでなく「標準賞与額」からも徴収されます。ボーナス月の手取り減はこのためです。年収ベースでの社会保険料負担を計算すると、月給12か月分+ボーナス2回分が課税対象になるため、年収の14〜16%程度(労働者負担分)が一般的な目安です。
参考資料
- 全国健康保険協会「保険料率について」— 都道府県別料率の公式情報
- 厚生労働省「健康保険料の引き下げ」— 改定の背景説明
- 日本年金機構「健康保険料率」— 計算方法と納付スケジュール