休職の連絡を済ませたところで、次に何をすればいいのか分からなくなる。相談を受けるとき、たいていこの場面です。先に全体を書きます。用紙は協会けんぽのサイトから自分で落とせます。本人が埋めるのは4枚のうち前半2枚だけで、残る2枚は会社と医師に書いてもらう。回す順番は本人 → 医師 → 会社。書き上がったら加入している支部に郵送し、不備がなければ受付日から10営業日以内に振り込まれます。
その後に支給(不支給)決定通知書が届いて、認められた期間と金額が分かります。認められなかった場合に3か月という期限つきで争える手続きもありますが、それは後半にまとめました。
探しているのが用紙の書き方ではなく金額と期間なら、この記事ではありません。1日いくらになるのか、待期3日をどう数えるのか、通算1年6か月がいつまでなのか、社会保険料を引いて手元にいくら残るのかは協会けんぽの傷病手当金はいくら受け取れる?日額の出し方と、いつまで続くかにまとめてあります。
2026年からは紙のほかに電子申請という入口も増えました。まずどちらで出すかを決めるところから始めます。
紙で出すか、電子で出すか
協会けんぽは2026年1月13日に給付の電子申請サービスを始めました。申請書のページには「傷病手当金の申請は、電子申請がおすすめです」と書かれています。理由として挙げられているのは2つで、システムチェックにより記載もれなどのミスを防げること、申請後の処理状況をスマートフォンやパソコンから確認できることです。返戻をいちばん減らすのは、前者の入力中チェックのほう。
ただし使える人は限られています。
- 申請できるのは健康保険の被保険者本人か、専用のIDでログインする社会保険労務士
- 事業主は電子申請できません。会社が代わりに出す運用はとれない
- 社労士を除き、代理人による申請もできません。家族が代わりに送ることはできない
- 日雇特例被保険者とその被扶養者は対象外
手元に要るのはマイナンバーカードと、市区町村の窓口で受け取ったときに設定した数字4桁のパスワードです。通知カードでは使えません。マイナ保険証として登録していなくても電子申請そのものは利用できます。スマートフォンから申請するなら、先にマイナポータルアプリを入れておいてください。
電子にしても、紙は消えません。「申請できる方」のページだけを読むと紙から解放されるように見えるのですが、「アップロード必要書類」のページまで開いて、ようやくそうではないと分かりました。傷病手当金の電子申請では、事業主から証明を受けた事業主記入用と、医師等から証明を受けた療養担当者記入用の両方をアップロードします。つまり3ページ目と4ページ目は結局のところ紙で書いてもらい、それを撮影またはスキャンして添付する流れです。例外は退職後で、資格喪失日以降の期間に関する申請についてはアップロードが要りません。
もうひとつ、協会けんぽが用意している入力・アップロード用のPDFはパソコン専用で、スマートフォンとタブレットには対応していません。手書き用を印刷して記入し、その写真をアップロードする方法なら端末を選びません。
こう並べると、紙を選んでいい人もはっきりします。マイナンバーカードを持っていない、4桁のパスワードを忘れて窓口に行く時間がない、あるいは会社と医師から返ってきた紙をそのまま封筒に入れて出したい。どれも紙のままで不利になることはありません。以下は紙で出す前提で書いていきます。手順の詳細は協会けんぽの傷病手当金の電子申請にまとめてあります。
用紙は3種類ある。どれを落とすか
協会けんぽのサイトの「健康保険傷病手当金支給申請書」のページに、3つのファイルが並んでいます。
- 手書き用(PDF)— 印刷して手で書く用紙
- 手書き用記入例(PDF)— 各欄の但し書きが入った見本。これが実質のマニュアルです
- 入力用(ZIP)— 画面で入力してから印刷する版
つまずくのは3つ目です。入力用だけZIPファイルでの配布なので、落としてから解凍する必要があります。スマートフォンだけで済ませようとすると、ここで止まる。パソコンがないなら、手書き用を印刷して手で埋めるのが近道です。
そして記入例は必ず一緒に落としてください。用紙だけを見て埋めると、後で出てくる訂正の方法や期間の区切り方といった決まりが分かりません。この記事も記入例を1ページずつ開いて書いています。
見落としやすいのが用紙の版です。各ページの右下に「(2026.6)」と刷ってあり、これが2026年8月時点の最新版です。数年前に会社からもらったまま引き出しに入っていた用紙が手元にあるなら、使わずに落とし直します。会社が用意してくれる勤務先もあるので、休職の連絡のついでに聞いておくと二度手間になりません。
4枚の担当を最初に切り分ける
協会けんぽの健康保険傷病手当金支給申請書は4ページ組で、記入者が分かれています。
- 1〜2ページ目:被保険者記入用。本人が書く
- 3ページ目:事業主記入用。勤務先が書く
- 4ページ目:療養担当者記入用。医師が書く
4枚に共通する書き方の決まりから。楷書で枠内に書くこと、生年月日や日付が一桁なら左のマスを0で埋めること、それに訂正のしかた。書き損じたときは修正液も二重線も使わず、訂正箇所を黒塗りして、欄外に正しい内容を書きます。多くの役所の書類が二重線を求めるので、ここだけ癖で二重線を引いてしまう人がいます。
順番を本人 → 医師 → 会社にする理由は単純です。4ページ目に医師が書く「労務不能と認めた期間」が、請求できる期間の上限を決めるから。先に会社へ回すと、医師の書いた期間と会社が証明した期間がずれ、3ページ目を書き直してもらうことになります。担当者に二度頼むのは気が重いので、順番だけは守ったほうが楽です。
1ページ目は、まず口座を書くかどうかを決める
1ページ目は本人の情報と振込先です。ただし振込先の枠に入る前に、その少し上に目を戻してください。「公金受取口座の利用について 1.希望する / 2.希望しない」という選択欄があります。
公金受取口座は、給付金などの受け取り先としてあらかじめ国(デジタル庁)に登録しておく口座のこと。ここで「1.希望する」を選べば、下の振込先情報は記入しなくて済みます。登録しているかどうかは、マイナポータルの「おかね」から「公金受取口座」を開けば確認できます。金融機関名や支店名を書き写す作業がまるごと消えるので、登録済みの人はこちらが早い。
なお「1.希望する」を選んだうえで口座情報も書いてしまった場合は、公金受取口座への振込が優先されます。また相続人が請求するときは公金受取口座を使えません。
「2.希望しない」を選んだ人は、申請者本人と同じ名義の口座を書きます。家族の口座や、旧姓のままの口座は使えません。結婚などで氏名と口座名義が食い違っている場合は、先に金融機関側の名義変更を済ませておくほうが、結果的に早く振り込まれます。
ゆうちょ銀行を指定するときだけ書き方が変わります。通帳に印字された記号・番号(13桁)ではなく、振込専用の店名と口座番号に置き換えてください。このとき店名は漢数字3文字です。「〇一八」のような表記になり、数字で「018」と書くと通りません。ゆうちょのアプリか通帳の表紙裏で確認できます。ネット銀行も要注意で、支店名が「第一支店」「ビジネス営業部」のような表記になっています。カードの券面ではなく、口座情報の画面を見て書き写すのが確実です。
記号・番号は「資格情報のお知らせ」かマイナポータルの資格情報の画面に出ています。枝番は記入不要。退職後に申請する場合は、勤めていたときの記号と番号を書きます。
マイナンバー欄は、記号・番号を書いてあれば空欄のままで構いません。ここを埋めると本人確認の添付が要るうえ、必要なのは1枚ではありません。身元確認に1点、番号確認に1点です。身元確認はマイナンバーカードの表面や運転免許証、パスポートのコピー、番号確認はカードの裏面やマイナンバー入りの住民票。これを協会けんぽのサイトにある本人確認書類貼付台紙に貼って添えます。記号・番号が分かっているなら、そちらを書けば本人確認書類の添付はまるごと要りません。
細かいところをひとつ。氏名のカタカナ欄は、姓と名の間を1マス空け、濁点と半濁点にもそれぞれ1字分を使います。「ワタナベ」の「ベ」は「ヘ」と「゛」で2マス。
2ページ目は申請期間の区切り方で決まる
2ページ目の中心は、療養のために仕事を休んだ期間です。ここが4ページ目の労務不能期間の中に収まっているか。返戻の理由として最も多いのが、この2つのずれです。
期間の書き方には決まりがあります。
- 初めて申請するときは、待期完成の初日から書く。つまり3日間連続して休んだ、その初日から記載します
- 申請期間は暦で3か月以内。3か月を超えるときは用紙を分けて申請します
- 申請期間が経過する前には提出できません。8月分を申請するなら、8月が終わってから出すことになります
- 実務では1か月ごとに区切る人が多く、給与の締め日に合わせる形が定番です
3か月の上限と、期間が終わるまで出せないという決まり。この2つが生活費の設計に効いてきます。休み始めてから最初の入金までにどれだけ空くかは、ここで決まります。
傷病名の欄の横には小さなチェックボックスがあります。4ページ目に医師が書いた傷病名と同じなら、そこにチェックを入れる。違う傷病で申請するなら、その傷病について別途、医師の証明を受け直す必要があります。ここを読み飛ばして別傷病のまま出すと返ってきます。
発病・負傷の年月日も、医師が4ページ目に書く内容とそろえます。記憶をたどって「たしか去年の秋ごろ」と書いてしまうと、医師の記載した初診日と合いません。診察のときに、申請書に書く傷病名と初診日を教えてもらってください。
「会社員」では足りません。仕事の内容の欄は、思ったより具体的に書きます。記入例が挙げているのは「経理担当事務」「自動車組立」「プログラマー」。法人の役員なら「法人役員」です。
傷病の原因の欄で「2.仕事中(業務上)」「3.通勤途中」を選ぶと、そこから先は労災保険の話になります。労災を「3.未請求」のまま出すなら、まず労働基準監督署に請求してください。該当するか判断がつかないときの相談先も監督署です。労災と並行して請求するなら「2.請求中」を選びます。あとから労災の支給が決まって期間が重なると、受け取った傷病手当金は返納になります。腰を痛めた、階段で転んだといった経緯を書くときは、それが業務中だったかどうかで、書類を出す先そのものが変わります。
原因が第三者の行為(交通事故やケンカなど)だった場合は「1.はい」を選び、別途「第三者行為による傷病届」を出します。また法人の役員で労災保険の対象にならない場合は「負傷原因届」の添付が要ります。
休んだ期間に報酬を受けたかどうか。この欄は2段構えです。「はい」と答えると、次に「受けた報酬は事業主証明欄に記入されている内容のとおりですか」と聞かれます。つまり本人が3ページ目に目を通して突き合わせる前提の設計です。違っていれば、事業主に確認して正しい証明を受け直すよう案内されています。有無だけ答えて封をする欄ではありません。
障害厚生年金・障害手当金・老齢退職年金については、受けていなければ「いいえ」で問題ありません。受給中なら基礎年金番号、年金コード、支給開始年月日、年金額まで書きます。労災の休業補償給付を聞く欄は少し性格が違い、今回申請する期間に別傷病で受けているかを確かめるものです。記入例と突き合わせるまで、ここは同じ傷病について聞かれているのだと読み違えていました。未記入のまま出すと照会が入り、その分だけ振込が遅れます。
3ページ目を会社に回すとき
3ページ目は、勤務先が出勤簿と賃金台帳を見ながら埋める欄です。作業の中身は2つあります。
ひとつは勤務状況です。用紙には1から31までの数字が月ごとに並んでいて、申請期間のうち出勤した日を〇で囲みます。出勤がなかった月も、年と月だけは記入する決まりです。
もうひとつは報酬です。出勤していない日に対して支払ったものがあれば、支給した日と金額を書きます。ここでいう報酬等の範囲が、担当者にも誤解されやすいところ。有給休暇の賃金だけでなく、出勤の有無に関わらず支給している手当(扶養手当、住宅手当など)や、食事・住居といった現物支給も含まれます。休職中も住宅手当だけは出続けている、という運用は珍しくありません。
依頼は「協会けんぽの傷病手当金の申請書です。3ページ目の事業主記入欄をお願いします」と伝えれば通じます。窓口になるのは総務・人事・給与計算の担当者。休職の連絡と一緒に、書類のやり取りを郵送にするかメールにするかも決めておくと、療養中の負担が軽くなります。
退職後の分を請求するときは、退職日より後の期間について事業主の証明が要りません。ただし退職日を含む月の申請には会社の証明が必要です。在職中に頼んでおけば、あとから前職に連絡を取る気まずさを避けられます。
4ページ目は受診のタイミングと連動する
4ページ目は医師の記入欄です。傷病名、発病または負傷の原因と年月日、初診日、労務不能と認めた期間、その期間中の主たる症状や治療内容が並びます。
労務不能と認めた期間には、用紙の中に定義が添えられています。「勤務先での従前の労務に服することができない期間」。何もできない状態という意味ではなく、元の仕事に戻れるかどうかが基準です。
用紙には「労務不能と認めた期間に診療した日がありましたか」という質問欄もあります。1か月ごとに区切って申請するなら、その月のうちに一度は診てもらう。ここが抜けると医師が期間を証明しづらくなり、請求できる範囲が短くなります。月末近くに受診して次回の予約を取るとき、申請の区切りも一緒に考えておくと空白が生まれません。
文書料の扱いは、診断書と混同されがちです。傷病手当金の意見書は健康保険の給付に含まれます。 診療報酬点数表の傷病手当金意見書交付料(B012)が100点、金額にして1,000円で、医療機関はこれを保険者に請求します。患者が窓口で払うのは一部負担金だけなので、3割負担の人なら300円です。数千円の自費文書を想定して身構える必要はありません。
例外は書き直しです。昭和60年の通知で、2度目の意見書の交付にかかる費用は被保険者の負担と定められています。返戻で医師に取り直しを頼むと、ここでも実費が出ていく。交付料は労務不能と認めて証明した期間ごとに算定されるので、1か月ごとに申請すればその都度かかります。
診断書での代用はできません。審査は申請書4ページ目の様式で行われるため、別に取った診断書を添えても申請にはなりません。医療機関の窓口で「診断書でいいですか」と聞かれたら、協会けんぽの申請書の様式そのものに記入が要る、と伝えます。
添付書類は足すより減らす
親切のつもりで資料を挟むと、かえって処理が遅くなります。協会けんぽは、賃金台帳や出勤簿の写しなど不要な書類を添付しないよう明記しています。3ページ目の事業主証明が、その役割をすでに果たしているためです。
添付が要る場面は限られていて、次のケースです。
- 支給開始日以前の12か月以内に事業所が変わった、または定年再雇用などで健康保険の資格に変更があった:健康保険加入状況等申告書
- 障害厚生年金を受けていて、マイナンバーによる情報照会を希望しない
- 障害手当金を受けている
- 老齢退職年金を受けている
- 労災保険から休業補償給付を受けている
- 傷病の原因が第三者の行為による
- 被保険者が亡くなり、相続人が請求する
- 1ページ目にマイナンバーを記載した
添付するものは、コピーと指定されていないかぎり原本が必要です。
どこに出すか
協会けんぽの案内は「紙の申請書は、ご加入されている協会けんぽ支部へご郵送ください」です。窓口へ持参する形は示されていないので、入口は郵送のひとつだけです。
宛先は加入している都道府県支部です。ここで自分が住んでいる県の支部だろうと決めてかからないでください。会社勤めの人は勤務先を通じて加入しているので、住所と支部が一致しないことがあります。埼玉に住んで東京の会社に勤めている、というだけで宛先が変わる。確かめ方は「資格情報のお知らせ」を見るのが早く、そこに支部名が書かれています。手元になければ、会社の総務が把握しています。協会けんぽのサイトには47都道府県の支部一覧があり、郵便番号・住所・電話番号・FAX番号が載っています。
会社がまとめて送る運用の勤務先もあります。自分で投函したあとに会社からも同じものが届くと、どちらの受付日で処理されたのかが分からなくなる。休職の連絡をするときに、書類を自分で出していいのかを聞いておいてください。
封筒に入れるのは4枚と、必要な人だけの添付書類です。返信用の封筒や送付状は求められていません。
この用紙ではない人
- 健康保険組合に加入している:様式も提出先も組合ごとに違います。資格情報のお知らせに書かれた保険者名が「全国健康保険協会」でなければ、この用紙は使いません
- 国民健康保険に加入している:協会けんぽの様式は使えません。市区町村の窓口に確認してください
- 仕事中・通勤途中のケガや病気:原則として労災保険の対象です。健康保険では処理されません
- 相続人として請求する:申請者欄には請求する人の氏名と住所を書き、公金受取口座は利用できません
2026年10月から、この用紙を使える人が増えます
パートやアルバイトで働いている人が協会けんぽの被保険者になる条件は、いま4つです。勤め先の従業員数が51人以上、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではないこと、そして所定内賃金が月額8.8万円以上。
このうち賃金要件(月額8.8万円以上)が、2026年10月に撤廃される予定です。週20時間以上働いていれば、月の賃金が8.8万円に届かなくても被保険者になります。被保険者になれば、病気やケガで働けなくなったときにこの用紙で傷病手当金を請求できます。これまで「扶養の範囲だから関係ない」と思っていた人の一部が、10月から対象に入ります。
企業規模のほうも動きます。従業員数51人以上という線は2027年9月まで。2027年10月以降は36人以上に下がるので、勤め先が小さいから対象外だった、という人も順に入ってきます。
自分が被保険者になったかどうかは、勤務先から渡される「資格情報のお知らせ」で確かめられます。そこに保険者として「全国健康保険協会」と書かれていれば、この用紙の対象です。給与明細に健康保険料の控除が現れたら、そこが一度確かめておくタイミングです。
出したあと、いつ入るか
協会けんぽはこう書いています。「審査の結果お支払い可能であれば、受付日から10営業日以内にお支払いいたします」。よくあるご質問のページにも同じ答えが載っています。
読み違えやすいのは起点です。**受付日は、投函した日ではありません。**支部に届いて受け付けられた日から数えます。金曜の夕方にポストへ入れたなら、そこから郵送の日数が乗り、さらに土日祝は10営業日に入りません。2週間近く音沙汰がなくても、まだ期限の内側ということがあります。これは書類がそろっていた場合の話です。不備があれば返戻になり、往復した分だけ後ろにずれます。
振り込みの前後に、支給(不支給)決定通知書が届きます。決定された期間と金額が書かれているのは、この紙です。申請した期間がまるごと認められたのか、医師の証明した範囲まで削られたのかは、通帳の数字だけでは分かりません。届いたら封筒を捨てる前に、期間と日数を申請書の控えと突き合わせてください。
10営業日を過ぎても入らないときは、加入している支部に電話します。協会けんぽのサイトの支部一覧に47支部の電話番号が載っています。電話口で伝えるのは、保険証の記号・番号と申請した期間、それに投函した日。多いのは行き違いのほうで、返戻の書面が届いていなかった、会社が同じものを二重に送っていて受付日が想定とずれていた、といった話に落ち着きます。電子申請で出した人は、電話の前に処理状況の画面を見るほうが早い。
請求できる期間にも限りがあります。労務不能だった日ごとに、その翌日から2年で時効。まとめて出そうと先延ばしにすると、古い月から順に権利が消えていきます。療養が長引きそうなときほど、月ごとに出しておくと取りこぼしません。
いくら振り込まれるのかは、この用紙からは読み取れません。日額の出し方と通算1年6か月の数え方は傷病手当金はいくら受け取れるかにまとめてあります。
返戻されたら、どこから直すか
戻ってきても、最初からやり直しではありません。指摘された箇所を直して出し直せば足ります。同封の書面に、どの欄が足りないのかが書かれています。
3ページ目だけに不備があった場合でも、書類は原則として申請者本人に返されます。会社に任せたから会社に戻る、とはいきません。手元に届いたら、申請期間と3ページ目で証明された月がずれていないかだけでも自分の目で見てください。
痛いのは日数のほうです。10営業日という目安は受付日からの日数なので、出し直せばそこから数え直しになります。郵送の往復と、会社や医師への再依頼にかかる時間を足すと、その月の入金は2〜3週間ずれます。
追加の費用がかかるのは4ページ目の書き直しだけです。同じ期間について2度目の意見書を交付してもらう費用は被保険者の負担と定められています。1ページ目や2ページ目の書き損じなら、直しても費用は増えません。
「返ってきた」と「認められなかった」は違う
書類が手元に戻ってきたら、まず返戻なのか不支給なのかを見分けます。ここを取り違えると、打つ手を丸ごと間違えます。
- 返戻 — 書類の不備。直して出し直せば、そのまま審査に進みます
- 不支給 — 請求そのものが認められなかった決定。同じ内容で出し直しても結果は変わりません
不支給決定通知書には理由が書かれています。多いのは、労務不能とまでは認められなかった、申請した期間に給与が支払われていた、待期3日が連続していなかった、というあたりです。理由によっては打つ手が分かれます。医師の証明した期間が申請期間より短かっただけなら、4ページ目を書き直してもらい、認められる範囲で改めて請求すれば済みます。判断そのものに納得できないなら、次の手続きがあります。
審査請求には3か月の期限がある
協会けんぽが行った決定に不服があるときは、社会保険審査官へ審査請求ができます。対象として案内されているのは「健康保険の資格又は保険給付等に関する保険者等の処分(現金給付の支給、不支給決定等)」で、傷病手当金の不支給決定はここに含まれます。
期限は、その処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。通知書が届いた日から数えれば足ります。この期間を過ぎると原則として受け付けられません。正当な理由があると認められた場合の例外はありますが、あてにする性質のものではないので、通知書を開いた日に日付を書き留めておくほうが確実です。
出し方は文書でも口頭でもよく、原処分を処理した保険者、つまり協会けんぽの支部を経由して出すこともできます。審査官が置かれているのは地方厚生局です。どこへ持っていけばいいのか分からない、という段階で止まってしまう人が多いのですが、申請書を送ったのと同じ支部に「審査請求をしたい」と伝えるところから始められます。
なお、被保険者の資格や標準報酬に関する処分については、処分があった日の翌日から2年を過ぎると審査請求ができなくなります。給付の不支給とは別の期限なので、資格そのものを争うときは注意してください。
封をする前に
- 用紙の右下の版は最新か。古い様式で作っていないか
- 公金受取口座を「1.希望する」にしたなら、下の振込先は空欄のままか
- ゆうちょを指定したなら、店名を漢数字3文字に直したか
- 2ページ目の申請期間が3か月以内で、その期間はもう経過しているか
- 申請期間が、4ページ目の労務不能期間からはみ出していないか
- 傷病名が4ページ目と一致していて、チェックボックスに印を入れたか
- 3ページ目の出勤日に〇がつき、扶養手当や住宅手当の支給も拾われているか
- 賃金台帳や出勤簿のコピーを、よかれと思って挟んでいないか
- 宛先は加入している支部か。住んでいる県の支部と思い込んでいないか
- 投函する前に4枚をスマートフォンで撮ったか。投函した日もメモしたか
最後の1行は、後で効いてきます。決定通知書が届いたときに申請期間と突き合わせる相手が要りますし、支部に問い合わせるときに聞かれるのも申請期間と投函日です。控えを取らずに送ってしまうと、何を書いたか思い出すところからやり直しになります。
訂正が必要になったら、黒塗りして欄外に書き直します。訂正が増えそうなら、入力用で作り直して印刷します。
用紙が一度戻ってくると、その月の生活費が丸ごと後ろにずれる。封をする前の数分が、いちばん効きます。
参考資料
- 全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」(様式・添付書類・提出先・支払いまでの日数)
- 全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書 記入例」2026年6月版
- 全国健康保険協会「電子申請 — 申請できる方」(対象者・必要なもの・利用できない人)
- 全国健康保険協会「電子申請 — アップロード必要書類」(事業主記入用・療養担当者記入用の扱い)
- 全国健康保険協会「都道府県支部一覧」(所在地・電話番号)
- 全国健康保険協会 よくあるご質問「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(受付から10営業日)
- 全国健康保険協会「審査請求先について」(対象となる処分・3か月の期限・保険者経由の提出)
- 厚生労働省 近畿厚生局「審査請求に関するよくあるご質問(制度編)」(審査請求の対象と期限、資格・標準報酬の2年)
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト — 社会保険加入の要件」(週20時間・月8.8万円・企業規模と、2026年10月の賃金要件撤廃予定)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法」別表第一 医科診療報酬点数表 B012 傷病手当金意見書交付料
- 厚生労働省「傷病手当金意見書交付料の算定の取扱いについて」(昭和60年3月29日 保険発第27号)
