結論:日額3,611円以下なら扶養のまま。3,612円以上なら「支給が始まった日」に外れる
失業保険をもらいながら配偶者の健康保険の扶養に入れるかどうかは、基本手当日額で決まります。日本年金機構は被扶養者の収入要件を年間130万円未満とし、雇用保険などの受給者については日額3,611円以下なら要件を満たすと書いています。逆に言えば、日額3,612円以上の人は受給中は扶養に入れません。
ただし外れるタイミングには幅があります。年金機構は、待期期間中でも収入要件を満たしていれば被扶養者として認定できる、基本手当(3,612円以上)の支給が始まった場合は扶養削除の届出が必要、と続けています。つまり退職直後は扶養に入り、基本手当が実際に支払われ始める日に外れ、受給が終わればまた戻る。この出入りが制度上の正解です。
外れている間は市区町村で国民健康保険と国民年金第1号に加入します。会社都合などの離職なら国保の保険料が軽くなる制度があり、離職理由コードで対象が決まります。税の配偶者控除は別の判定で、失業保険は非課税なので所得に入りません。以下、退職日から順に並べます。
3,612円という境目はどこから来たか
年金機構の要件は年間収入130万円未満です。給与なら月額108,333円以下、雇用保険などの受給者なら日額3,611円以下と、月と日に置き換えた数字が添えられています。130万円を360日で割ると3,611円と少しになり、3,612円以上ではこの日額基準を超える計算です。
60歳以上か障害者の場合は年間180万円未満が基準になります。ただし年金機構は、130万円には月額・日額の換算を添えている一方、180万円に対応する日額を示していません。同じ360日で割れば5,000円ちょうどという計算にはなりますが、これはこの記事が出した数字で、公表された基準ではありません。19歳以上23歳未満については、令和7年10月1日以降の認定分から年間150万円未満に変わりました。この数字は年金機構と協会けんぽの両方のページに載っています。金額は改定されうるので、届を出す前に年金機構のページで今の額を見てください。
日額のほかに、同居なら被扶養者の収入が被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満という条件もあります。失業保険の日額が3,611円以下でも、この条件は別に見られます。
退職日から受給終了までの時系列
自己都合で退職し、配偶者の扶養に入りたい人の流れを一本にすると、次のようになります。日付の例は退職日を3月31日として置いています。
| 時期 | 扶養に入れるか | 出す届 | 添付するもの |
|---|---|---|---|
| 退職日の翌日(4月1日) | 入れる | 会社経由で健康保険被扶養者(異動)届。5日以内 | 退職日の分かる書類(離職票や退職証明書など、会社が指定するもの) |
| ハローワークで求職申込み〜待期期間(7日間) | 入ったまま | なし | なし |
| 給付制限期間(自己都合の場合) | 入ったまま(年金機構のページに明文はない。後述) | なし | なし |
| 基本手当の支給が始まった日 | 日額3,612円以上なら外れる | 削除の届。5日以内 | 雇用保険受給資格者証の写し |
| 外れた日から14日以内 | 国保・国民年金第1号に加入 | 市区町村で加入手続き。会社都合なら軽減申請も | 資格喪失の分かる書類、受給資格者証 |
| 所定給付日数を受け終わった翌日 | 再び入れる | 会社経由で被扶養者(異動)届。5日以内 | 支給終了が分かる受給資格者証の写し |
「5日以内」は年金機構が被扶養者の認定について定めている提出期限です。届は配偶者の勤務先が年金事務所へ出す書類なので、本人ができるのは書類をそろえて会社の担当者に渡すところまでです。退職日と支給開始日の両方で5日の期限が走るので、会社には退職が決まった時点で「扶養の届を2回出すことになる」と伝えておくと、削除のときに慌てません。
今日できること:自分の日額を確かめる
退職前や退職直後でも、日額の見当はつけられます。ハローワークは、賃金日額を離職直前6か月にきまって支払われた賃金の合計を180で割った額とし、基本手当日額をそのおおむね50〜80%(60歳以上65歳未満は45〜80%)と説明しています。
この幅で3,612円を挟むと、賃金日額が約4,515円を下回る人は給付率が最も高くても3,611円以下に収まり、約7,224円を上回る人は最も低くても3,612円以上になります。月の賃金でいえばおよそ13万5千円と21万7千円です。ただしこの2つは上の幅からこの記事が逆算した数字で、年金機構やハローワークが基準として示したものではありません。その間の人は給付率次第なので、受給資格者証を見るまで決まりません。計算式は下の関連記事にまとめています。
正式な日額はハローワークが交付する雇用保険受給資格者証に印字されます。年金機構が失業給付の受給中や受給終了の添付書類として挙げているのもこの受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)の写しです。交付されたら、日額の欄をまず見て、3,612円以上かどうかで以後の手続きが分かれます。
日額が3,611円以下だった人は、この記事の残りはほとんど関係ありません。受給中も扶養に入ったままで、削除の届も国保の加入も要りません。ただし年金機構は、失業給付のように非課税の収入がある場合は受取金額の分かる通知書のコピーを別途求めています。受給資格者証の写しは、扶養に入る届の添付として出しておきます。
外れたら国保と国民年金第1号へ。会社都合なら保険料が3割計算になる
基本手当の支給が始まって扶養から外れると、健康保険の資格を失った日から14日以内に市区町村で国民健康保険に加入します。20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金も第3号から第1号に切り替えます。年金機構も、配偶者が被扶養者から外れた場合は国民年金第1号被保険者の加入手続きが必要だと書いています。
このとき見落としやすいのが国保の保険料軽減です。渋谷区の案内では、離職時の年齢が65歳未満で、雇用保険受給資格者証の離職理由コードが11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)または23・33・34(特定理由離職者)の人は、前年中の給与所得を30パーセントにして保険料を計算します。期間は離職の日の翌日から翌年度末までです。必要なのは受給資格者証と本人確認書類で、渋谷区は窓口のほかオンラインと郵送でも受け付けています。
自己都合退職のコード(40・45など)は対象外です。ただし雇止めや契約期間満了で辞めた人は特定理由離職者に当たる場合があり、コードが23や33になっていれば軽減を使えます。受給資格者証を受け取ったら、日額と一緒に離職理由コードの欄も見てください。軽減の細かい条件は市区町村ごとに案内があるので、「(市区町村名) 国民健康保険 非自発的失業 軽減」で検索して自分の自治体のページを開きます。
国民年金の保険料についても、退職者向けの免除の特例があります。扶養から外れて第1号になった月から対象で、こちらも受給資格者証や離職票で申請します。詳しくは下の関連記事に譲ります。
受給が終わったら、また扶養に戻る
所定給付日数を受け終わったら、配偶者の勤務先を通じて被扶養者(異動)届を出し直します。年金機構は、失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合の添付書類として、雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の写しを挙げています。最後の失業認定で支給終了の処理がされた受給資格者証をコピーして、会社に渡します。期限は事実発生から5日以内です。
戻る手続きは自動では起きません。国保と国民年金第1号に入ったままだと、扶養に戻れる状態なのに保険料を払い続けることになります。会社が届を出して被扶養者として認定されたら、その認定日を持って市区町村で国保をやめる手続きをします。国民年金は、被扶養者(異動)届と第3号被保険者関係届が一体の様式なので、会社経由の届で第3号への切り替えも同時に済みます。
年金機構のページに書いていないこと:給付制限期間
年金機構が明文で書いているのは「待期期間中でも認定できる」「基本手当の支給が始まったら削除」の2点です。自己都合退職の人に設けられる給付制限期間について、直接の文言はありません。
扶養から外す条件を「基本手当の支給が始まった場合」としている以上、まだ支給が始まっていない給付制限期間も待期期間と同じ扱いになる読み方が自然です。ただ、この記事が根拠にしている年金機構のページ自体には書かれていないので、そのまま断定はしません。
確かめる相手は配偶者の勤務先です。届を出す前に、会社の担当者に「給付制限期間中は被扶養者として認定できますか。削除日は支給開始日でよいですか」と聞いてください。給付制限期間の長さそのものは雇用保険側の話で、離職理由によって変わります。
例外になる人:60歳以上、19〜22歳の子、受給期間を延長した人
60歳以上で退職した人は、収入の基準が年間130万円未満から180万円未満に上がります。ハローワークによれば60歳以上65歳未満の給付率は45〜80%と下限が低く、基本手当日額の上限額も7,830円で、45歳以上60歳未満の9,110円より低く設定されています(令和8年8月1日現在)。ただし年金機構は180万円に対応する日額を示していないので、受給資格者証の日額を何円と比べればよいかは、届を出す前に会社の担当者か年金事務所に確かめてください。
就職して数年で辞めた子を扶養に戻す場合、19歳以上23歳未満なら令和7年10月1日以降の認定分から年間150万円未満が基準です。日額の基準をどう置くかは年金機構のページに直接の記載がなく、この記事では触れません。届を出すときに会社の担当者から年金事務所に確かめてもらうか、年金機構のページの最新の記載を見てください。
妊娠や病気で失業保険の受給期間を延長している人は、延長中は基本手当が支払われていません。支給が始まっていない以上、日額の基準には引っかからず、扶養に入っていられます。延長を解除して受給を始めた日から、上の時系列と同じ扱いになります。
税の扶養(配偶者控除)は別の話
健康保険の扶養と、所得税・住民税の配偶者控除は判定が別です。年金機構は失業給付を「非課税対象となる収入」として扱っており、失業保険は所得税の合計所得金額に入りません。退職した年の給与が控除の範囲に収まっていれば、失業保険を受け取っていても配偶者控除や配偶者特別控除は受けられます。
逆に、健康保険の扶養では失業保険が収入として数えられます。非課税かどうかではなく、これから受け取る額で見るからです。年末調整の書類では失業保険を書かず、健康保険の届では受給資格者証を添える。この違いを押さえておくと、どちらの書類で何を出すかで迷いません。
知らずに扶養のまま受給していたら
日額3,612円以上の人が削除の届を出さずに受給を続けていた場合、扶養の資格は支給開始日にさかのぼって失われます。協会けんぽは毎年度、事業主を通じて被扶養者資格の再確認を行っています。直近の令和7年度は10月下旬から被扶養者状況リストを順次送り、提出期限は12月12日でした。令和8年度の案内は2026年9月25日時点では公表されていません。この再確認で受給の事実が分かると、さかのぼって扶養を外され、その期間は国保に入り直すことになります。
気づいた時点で会社に伝え、支給開始日を削除日として届を出すのが最も傷が浅い対応です。放置して再確認で見つかるより、自分から出したほうが後の精算も単純に済みます。受給資格者証の日額を見て3,612円以上だったら、今日その写しを会社に渡してください。
