夫婦とも会社の健康保険に入っているなら、生まれた子は年間収入の多いほうの被扶養者になります。差額が多いほうの年間収入の1割以内なら、届出により、主として生計を維持するほうの被扶養者にできます。収入が近い夫婦は、届出で主として生計を維持するほうを申し出る形になります。
届出は「健康保険 被扶養者(異動)届」で、期限は5日以内です。子を被扶養者にする親(被保険者)が、自分の勤務先を通して出します。産休・育休で家にいても、勤務先に連絡して手続きを頼む形になります。まず、夫婦それぞれの今後1年間の収入の見込みを並べてください。
どちらの扶養か:年間収入の多いほう
厚生労働省は令和3年4月30日付の通知「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」で、夫婦とも被用者保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)の被保険者の場合の基準を示しています。令和3年8月1日から適用されている基準です。
通知の別紙の1(1)は次のとおりです。
被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
比べるのは今後1年間の見込みです。前年の源泉徴収票の金額をそのまま比べるのではありません。日本年金機構も、届出をする被保険者の年間収入は「過去の収入、現時点の収入または将来の収入などから今後1年間の収入を見込んだ額」を出すよう求めています。届書には「配偶者の収入(年収)」の欄があり、配偶者が会社員なら同じ考え方で見込み額を書きます。
また、子が何人いても同じ基準で判定します。上の子と下の子を夫婦の希望で任意に分けることはできません(育休中に生まれた子の扱いは後の節で説明します)。年末調整や確定申告で使う税の扶養控除は、健康保険とは別の決まりで所属を決めます(共働きの扶養控除の記事)。
差が1割以内なら、届出で選ぶ
通知の1(2)は、収入が近い夫婦について別の扱いを定めています。
夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
1割は、差額を多いほうの年間収入で割って見ます。仮の数字で置くと次のとおりです。
- 夫500万円・妻460万円:差額40万円は、夫の1割(50万円)以内。届出により、主として生計を維持するほうの被扶養者にできる
- 夫500万円・妻440万円:差額60万円は50万円を超える。年間収入の多い夫の被扶養者
日本年金機構の手続きのページは「年間収入の多い方の被扶養者として認定を行います」とだけ書いていて、1割以内の扱いには触れていません。収入が近い夫婦は、届出を出す前に、勤務先か保険者に1割以内であることを伝えて扱いを確かめてください。
共済組合の扶養手当を受けているとき
夫婦の両方または一方が共済組合の組合員(公務員など)で、その子について扶養手当などの支給が認定されている場合は、その認定を受けているほうの被扶養者としてよいとされています(通知1(3))。一方で、扶養手当が認定されていないことだけを理由に被扶養者として認めない、ということはできません。
片方が国民健康保険のとき
夫婦の一方が自営業などで国民健康保険に入っている場合は、通知の2で扱いが分かれます。会社員の側は年間収入、国保の側は「直近の年間所得で見込んだ年間収入」を比べ、多いほうを主として生計を維持する者とします。届書の配偶者の収入欄も、配偶者が国保なら直近の年間所得で見込んだ額を書くと年金機構は案内しています。
会社員の側の保険者が被扶養者と認めなかった場合、その保険者は決定の通知を出します。通知には、認めなかった理由(年間収入の見込み額など)、届出日と決定日を書くことが望ましいとされています。被保険者はその通知を届出に添えて、国保の保険者に出します。国保の保険者に疑義があるときは保険者どうしで協議し、整わなければ直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多いほうを主として生計を維持する者とします。
育休中に生まれた子は、あらためて判定する
第2子以降で迷いやすいのがここです。通知の3は、主として生計を維持する者が育児休業等を取った場合、休業期間中は被扶養者を異動しないとしています。日本年金機構も、育休によって一時的に夫婦の年間収入が逆転した場合でも、休業期間中の被扶養者の異動の手続きは不要としています。
ただし通知は続けて「新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きを行うこととする」と書いています。上の子が夫の扶養のまま動かなくても、生まれた子は夫婦の年間収入の見込みであらためて判定する、ということです。育休中の親の年間収入をどう見込むかは、通知にも年金機構のページにも具体的な書き方がありません。届出を出す前に保険者に確かめてください。
認められなかったときは、通知を持ってもう一方へ
この通知が作られたきっかけは、令和元年の健康保険法等の改正に付いた附帯決議です。年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者の間でどちらの被扶養者にするかを調整しているあいだに、子が無保険状態になって償還払いを強いられないよう、明確な基準を作ることが求められました。
そのため、夫婦とも会社員の場合の手順も決められています(通知1(4)(5))。
- 被扶養者と認めない保険者は、その決定の通知を出す。通知には、認めなかった理由(年間収入の見込み額など)、加入者の標準報酬月額、届出日と決定日を書くことが望ましいとされている
- 被保険者は、その通知を届出に添えて、もう一方の保険者に出す
- 受け取った保険者は、その通知に基づいて審査する。疑義があれば、受理した日から5日以内(書類不備の是正を求める期間と土日祝日を除く)に、通知を出した保険者と協議する
- 協議が整わない場合は、初めに届出を受理した保険者に届出が出された月の標準報酬月額が高いほうの被扶養者とする
断られたら、その通知を捨てずにもう一方の勤務先へ回してください。決まったあとで結果に異議がある場合は、被保険者または保険者が申し立て、勤務先の事業所の所在地を管轄する地方厚生(支)局の保険課長があっせんを行うとされています(通知5)。
いつまでに、どこへ:出生から5日以内、勤務先を通して
健康保険法施行規則第38条は、被保険者が被扶養者を有するに至ったときは「五日以内に」被扶養者届を「事業主を経由して厚生労働大臣又は健康保険組合に」出さなければならない、としています。日本年金機構の手続きのページも、被扶養者の認定の提出時期を「事実発生から5日以内」としています。子の出生では、生まれたことが事実発生にあたります。
出す先は、加入している健康保険で分かれます。
- 協会けんぽ:被保険者が事業主を経由して、被扶養者(異動)届を日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)に出す。電子申請・郵送・窓口持参のいずれか。実際の提出は勤務先の担当者が行う
- 健康保険組合:施行規則第38条では、事業主を経由して健康保険組合に出す。使う様式や出し方は勤務先に確認する
- 共済組合(公務員など):健康保険法とは別の法令と各組合の規定による。期限と出し方は勤務先に確認する
なお施行規則第38条第5項により、任意継続被保険者は事業主を経由せず、保険者に直接出します。
5日は、出生届の期限(生まれた日を含めて14日以内)より短い期限です。生まれたらその週のうちに、子を扶養に入れる側の親が勤務先に「子が生まれたので扶養に入れたい」と連絡し、必要な書類と提出方法を聞いてください。
添付書類:続柄の確認と、遅れたときの書類
日本年金機構の案内で、子を被扶養者にするときに関係する添付書類は次のとおりです。
続柄を確かめる書類は、原則として次のいずれかです。どちらも提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものに限ります。
- 被扶養者の戸籍謄本または抄本
- 住民票の写し(コピー不可、個人番号の記載がないもの)。被保険者が世帯主で、子と同じ世帯の場合に限る
被保険者と子の双方のマイナンバーを届書に書き、事業主がこれらの書類で続柄を確認した旨を届書に書いている場合は、添付を省略できます。婚姻関係や20歳以下の子との親子関係では、事業主の確認がなくても添付を省ける場合がありますが、子の出生を契機とする届出はこの省略から除かれています。生まれた子の場合は、戸籍か住民票を勤務先に見せるか、添付する前提で準備してください。
どちらの書類も、出生届が受理されたあとでないと子の記載は出てきません。5日の期限と書類の準備がずれる場合の扱いは年金機構のページには書かれていないため、勤務先の担当者に相談してください。
仕送りの確認書類は、別居している人を被扶養者にするときに要るものですが、扶養認定を受ける人が16歳未満なら不要です。里帰り出産で子が親と別の住所にいても、この書類は求められません。
届出が遅れた場合、被扶養者になった日が受付日から60日以上さかのぼるときは、扶養の事実を確認できる書類の添付が必要です。ただし出生を契機とする届出で、被保険者と子に日本の戸籍があり、双方のマイナンバーを届書に書いている場合は不要とされています。
収入要件の確認書類について、年金機構は「所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている者」は事業主の証明があれば不要としています。新生児の場合の扱いを名指しした記載はないため、勤務先の指示に従ってください。
保険の資格が届く前に受診するとき
届出を出してから、子の資格を示す書類が手元にそろうまでのあいだに受診が必要になることもあります。協会けんぽの場合、年金機構の新生児のQ&Aは、マイナ保険証が使えるようになるまでや資格確認書が交付されるまでのあいだに、早急に医療機関で受診する予定があるときは、事業主または被保険者が「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を出すよう案内しています。
協会けんぽは、被保険者と被扶養者に「資格情報のお知らせ」を交付しています。ただし協会けんぽは「資格情報のお知らせのみでは受診できません」としています。マイナ保険証を持っておらず早急に資格確認書が必要なときは、「健康保険資格確認書交付申請書」で交付を申請できます。生まれたばかりの子はまだマイナンバーカードを持っていないことが多いため、受診の予定があるなら、どの書類がいつ届くかを勤務先に聞いておいてください。
出生後の手続きの順番
出生のあとは、期限の違う手続きが重なります。扶養に関係する範囲で並べると次のとおりです。
| 手続き | 期限 | 出す先 |
|---|---|---|
| 出生届 | 生まれた日を含めて14日以内(戸籍法第49条・第43条) | 父母の本籍地、届出人の所在地、出生地のいずれかの市区町村(江戸川区の案内) |
| 健康保険の被扶養者(異動)届 | 5日以内(健康保険法施行規則第38条) | 子を扶養に入れる親の勤務先 |
| 児童手当の認定請求 | 出生の日の翌日から15日以内 | 住所のある市区町村(公務員は勤務先) |
| 子ども医療証の申請 | 市区町村ごとに違う(目黒区は出生から3か月以内) | 住所のある市区町村 |
順番で気をつけたいのは、子ども医療証は健康保険の手続きのあとになることです。名古屋市は医療証の交付に「健康保険に加入していることを証明するもの(資格確認書、資格情報のお知らせ、マイナ保険証等)」を求め、マイナ保険証の場合はマイナポータルの健康保険情報画面の提示が必要としています。福岡市はオンライン申請の必要書類として、保険の資格取得日(適用開始年月日)の記載がある書類を求め、令和6年12月1日以前に発行された健康保険証は使えないとしています。
目黒区は、健康保険の書類がそろう前でも申請を受け付け、医療証は書類が出てから発行するとしています。そのうえで、出生または転入から3か月を過ぎて申請すると、出生日までさかのぼって助成できなくなると注意しています。期限や先に申請できるかどうかは市区町村で違うため、住所地の案内で確かめてください。
児童手当は扶養の結果を待たずに申請できます。誰が請求者になるか、15日の数え方などは児童手当の申請の記事にまとめています。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月27日時点で、次の点は今回の資料では確認できていません。
- 育児休業中の親の「今後1年間の収入の見込み」を、新しく生まれた子の判定でどう計算するか
- 被扶養者(異動)届を5日以内に出すときに、出生届の受理前で戸籍や住民票がまだ取れない場合の扱い
- 生まれた子に資格確認書が申請なしで送られてくるかどうか、届くまでの日数
- 新生児の収入要件の確認書類を省略できるかどうか
- 夫婦とも国民健康保険の場合の、子の国保加入の届出の期限(市区町村の窓口で確認)
参考資料
- 厚生労働省 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日 保保発0430第2号・保国発0430第1号)
- 日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
- 日本年金機構 子どもが生まれました。新生児を扶養に入れる手続きは、どのようにすればいいですか。
- 日本年金機構 健康保険被保険者資格取得後、早急に保険医療機関等で診療等を受けようとするとき
- e-Gov法令検索 健康保険法施行規則
- e-Gov法令検索 戸籍法
- 協会けんぽ 健康保険資格情報のお知らせ交付申請書
- 協会けんぽ 健康保険資格確認書交付申請書
- こども家庭庁 児童手当制度のご案内
- 江戸川区 出生届
- 名古屋市 子ども医療費助成制度
- 目黒区 子ども医療費助成制度 医療証の交付を受けるには
- 福岡市 インターネットからも「子ども医療証」の各種申請ができます