2026年10月1日に社会保険の賃金要件(月額8.8万円、年額に直すと約106万円)が撤廃され、週20時間以上働くパート・アルバイトが新しく健康保険と厚生年金に入ります。このとき配偶者の扶養を外す届を出すのは、加入した本人ではなく、これまで扶養していた配偶者です。まず配偶者の勤務先の総務か人事に「被扶養者を外す届が要る」と伝えてください。あわせて、本人がこれまで使っていた資格確認書か健康保険証を返します。10月に受診の予定がある人は、返す前に「空白の期間」と、その次のマイナ保険証の節を読んでおいてください。
動くのは、加入した本人ではなく扶養していた側
健康保険の被扶養者を外す届は「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」です。日本年金機構はこの届を「被扶養者の追加(該当)、削除(非該当)、氏名変更などがあった場合の届書です」と説明しています。追加のときと同じ用紙を使い、削除の欄に書きます。
提出するのは被扶養者本人ではありません。扶養している側、つまり健康保険に入っている配偶者が、自分の勤務先(事業主)を経由して出します。本人の側は、勤務先が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を出して終わりで、自分では何も書きません。役割が入れ替わっているので、本人と配偶者がお互いに相手が出すものだと思って、どちらも動かないことがあります。
日本年金機構が被扶養者の削除の理由として並べているもののうち、今回に当たるのは「健康保険、船員保険の被保険者となったとき」です。収入が130万円に届いたかどうかとは別の理由なので、年収がいくらであっても外れます。10月に新しく入るのは月8.8万円に届いていなかった人たちなので、金額だけで考えると「まだ扶養のままでいいはず」と読み違えやすくなります。
誰が、どこに、何を出すか
| 加入した本人 | 扶養していた配偶者 | |
|---|---|---|
| 出す届 | なし(勤務先が被保険者資格取得届を出す) | 健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届) |
| 出す先 | — | 自分の勤務先(事業主を経由) |
| 最終的な提出先 | — | 事務センターまたは管轄の年金事務所(協会けんぽの場合) |
| 返すもの | — | 本人の分の資格確認書・健康保険証・限度額適用認定証など |
配偶者の勤務先が健康保険組合に入っている場合、様式と添付書類は組合の定めによります。まず「協会けんぽか、健康保険組合か」を聞くと、その先の案内が変わります。
提出時期は「その都度」と書かれている
日本年金機構の案内は、この届の提出時期を「その都度」としています。「◯日以内」という日数の指定は書かれていません。採用時の資格取得届のように「5日以内」と日数が示されている届とは、案内の書き方が違います。
とはいえ、遅れて実害が出るのは届の期限ではなく、古い保険証をうっかり使ってしまうことです。10月1日をまたいで資格が切り替わるので、10月の最初の週のうちに配偶者の勤務先へ伝えておくのが実際的です。
空白の期間 — 古い資格確認書は、その日から使えない
新しい健康保険に入った日から、配偶者の扶養で使っていた資格確認書や健康保険証は使えません。協会けんぽ三重支部は退職の場合について「それまで使用していた保険証・資格確認書(お持ちの方のみ)は使用できません」「誤って使用した場合は、後日医療費(総医療費の7~9割)を返還していただくことになります。速やかに会社(事業主)へ返却してください」と書いています。扶養から外れる場合も、使えなくなる日が変わるだけで扱いは同じです。
返すのは本人の分だけです。配偶者本人や、扶養に残る他の家族の分はそのまま使えます。限度額適用認定証や特定疾病療養受療証を持っている人は、それも一緒に返します。日本年金機構の資格確認書の返納手続きも、返納の対象として「資格確認書、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証」を挙げています。
マイナ保険証でも、切り替わるまでに時間がかかる
マイナンバーカードを保険証として使っている人は、再登録の必要はありません。マイナポータルのよくある質問も「転職や退職、変更に伴う、再度の登録は必要ありません」と書いています。ただし、保険者への加入・喪失の手続きは別に必要です。カードは同じまま、中の資格情報が入れ替わります。
見落としやすいのは、入れ替わりに時間がかかることです。協会けんぽは「資格情報のお知らせ」の送付について「おおよそ2~3週間(9~18日間)でお勤め先に送付しております」と説明しています。10月1日に加入しても、10月上旬の受診時点ではまだ反映されていないことがあります。カードの見た目は変わらないので、窓口で読み取るまで自分では分かりません。
反映前に医療機関で使えなかったときの扱いも、協会けんぽのよくあるご質問にあります。「保険診療で受診できず、一度全額負担をしていただいた場合は、療養費の支給申請で保険診療分の7割または8割分を申請することができます」。いったん窓口で全額払い、後から申請して戻す形です。
だから10月上旬に受診の予定がある人は、その日までに新しい勤務先へ「資格情報のお知らせ」が届いているかを先に聞いてください。届いていないなら、全額いったん払う前提で財布を用意していくか、急がない受診なら日をずらす判断ができます。ここで古い方の資格確認書を出すのは、いちばん高くつきます。
国民年金は第3号から第2号に変わる
配偶者の扶養に入っていた人のうち、20歳以上60歳未満で厚生年金に入っていなかった人は、国民年金の第3号被保険者です。日本年金機構は「従業員の配偶者が20歳以上60歳未満であり、厚生年金保険の被保険者でない場合は、原則、国民年金の第3号被保険者となります」と書いています。
10月から厚生年金に入ると、この人は第2号被保険者になります。第3号ではなくなったことの届出は、健康保険の被扶養者(異動)届と同じ用紙です。様式名に「健康保険 被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」が並んでいるのは、一枚で両方を兼ねるためです。健康保険だけ出して年金の届を忘れる、ということが起きない作りです。
60歳以上の人はもともと第3号被保険者ではないので、健康保険の扶養を外す手続きだけになります。
この手続きが要らない人
- もともと配偶者の扶養に入っていなかった人。自分で国民健康保険に入っていたなら、出すのは配偶者の勤務先ではなく市区町村へのやめる届で、期限も窓口も別です
- 配偶者が自営業などで、世帯として国民健康保険に入っている人。国民健康保険に「被扶養者」という区分はなく、世帯員として加入しています。この場合も窓口は市区町村です
- 配偶者が75歳以上で後期高齢者医療制度に入っている人。その配偶者に健康保険の被扶養者はいません
- 10月以降も週20時間に届かない人。賃金要件が撤廃されても、週20時間以上という要件は残っているので、加入せず扶養のままです
家族手当と、税金の配偶者控除は別の話
配偶者の給与に家族手当や扶養手当が付いている場合、それが止まるかどうかは会社の規定で決まります。社会保険の被扶養者かどうかを基準にしている会社と、税金の扶養を基準にしている会社があり、金額も会社ごとに違います。就業規則か給与規程の該当する条文を見るのが確実です。
税金の配偶者控除は、社会保険とは切り離して判定します。国税庁が挙げる配偶者控除の要件は、民法の規定による配偶者であること、納税者と生計を一にしていること、合計所得金額が一定以下であること、青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないことの4つです。社会保険の被扶養者かどうかは、ここに入っていません。令和8年分は配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与だけなら収入136万円以下)で、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられません。
社会保険に入ったことだけで配偶者控除が消えるわけではありません。逆に、給与収入がこの線を超えている人は、社会保険に入る前から配偶者控除の対象ではありません。年末調整でここを混同すると、申告書の判定欄を書き間違えます。社会保険の扶養と税の控除は、別の紙で別の基準だと分けておいてください。
10月にやることを順番に
- 配偶者の勤務先に「10月から扶養を外す届が必要になる」と伝える。協会けんぽか健康保険組合かも聞く
- 本人の資格確認書・健康保険証・限度額適用認定証などを集めて配偶者に渡す
- 本人の勤務先に「資格情報のお知らせ」がいつ届くかを聞く。受診の予定があればその日と照らす
- 受診が先に来るなら、全額いったん払う前提で行く。古い方の資格確認書は出さない
- 11月に届く給与明細で、健康保険料と厚生年金保険料が引かれているかを確かめる
参考資料
この記事は2026年9月30日に次のページを開いて確認しました。制度の内容と様式名は改定されるので、手続きの前に同じページを開き直してください。
- 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」— 賃金要件撤廃の施行日と内容
- 日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」— 削除の理由、様式名、提出先、提出時期、第3号被保険者の原則
- 日本年金機構「2-3:家族を被扶養者にするとき、家族を被扶養者から外すとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき」— 様式名と届書の説明
- 日本年金機構「資格確認書等の返納手続き」— 返納の対象になるもの
- 協会けんぽ三重支部「保険証・資格確認書のご返却について」— 使えなくなる時期と返還の割合
- 協会けんぽ「よくあるご質問 マイナ保険証・資格確認書について」— 資格情報のお知らせの送付期間、全額負担したときの療養費申請
- マイナポータル「よくある質問」— 転職・退職時に再登録が不要であること
- 国税庁「タックスアンサー No.1191 配偶者控除」— 配偶者控除の要件と令和8年分の金額