共働きで子どもがいる場合、禁じられているのは同じ子を夫婦の両方で扶養親族として申告することだけです。重複しなければどちらに付けても構わず、子が2人いるなら1人ずつ分けることもできます。決めているのは生活費の負担割合ではなく、勤務先に出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にどう書いたかです。
まず見るのは、その申告書の控えです。夫婦それぞれの控えを並べて、同じ子の名前が両方に入っていないかを確かめてください。入っていたら、この記事の後半にある直し方の順で出し直します。
禁じられているのは「二重に書くこと」だけ
国税庁の質疑応答事例には、まさにこの場面の照会が載っています。共働きで高校生の長男と長女がいる場合に、長男を夫の扶養親族、長女を妻の扶養親族にできるかという問いです。
回答は「重複しない限り、いずれの者の扶養親族としても差し支えありません」。そのうえで、長男を夫、長女を妻にするなら「その旨を記載した『給与所得者の扶養控除等申告書』をそれぞれの勤務先に提出すれば認められます」と書かれています(所得税法施行令第218条、第219条。令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく回答)。
つまり兄弟姉妹をまとめて片方に寄せる必要はありません。1人ずつ別の親に付けても、全員を同じ親に付けても、どちらも認められます。できないのは同一人を重複して申告することだけです。
決め手は負担割合ではなく、申告書にどう書いたか
同じ世帯に所得者が2人以上いるとき、その扶養親族をどちらの扶養にするかは「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載されたところによることとされています。
生活費をどちらが多く出しているか、学費の口座がどちらの名義か、児童手当の振込先がどちらかといった事情は、所属を決める基準になりません。送金額が均等であっても、重複して控除の対象にすることはできません。
逆に言えば、夫婦が話し合って申告書の書き方をそろえれば、それがそのまま所属になります。
どちらに付けると世帯の所得税が軽くなるか
所得税は累進税率です。同じ控除額でも、税率の高い人に使うほど減る税額が大きくなります。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 〜 1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 〜 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 〜 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 〜 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 〜 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 〜 39,999,999円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
「課税される所得金額」は、収入から給与所得控除や社会保険料控除などを引いたあとの金額です。源泉徴収票の年収ではありません。
仮の数字で置いてみます。夫の課税される所得金額が500万円(税率20%)、妻が150万円(税率5%)だとします。これは説明のための仮定です。一般の控除対象扶養親族の控除額38万円を使うと、
- 夫に付けた場合 38万円 × 20% = 76,000円
- 妻に付けた場合 38万円 × 5% = 19,000円
同じ1人を付けるだけで、所得税の減り方が57,000円違います。実際にはこれに復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が乗るため、手取りへの影響はもう少し大きくなります。
ただし見落としやすい点が2つあります。1つは区分の境目です。控除を引いた結果、税率の区分が一段下がる人もいるため、境目に近い場合は控除後の区分で計算してください。もう1つは、課税される所得金額がもともと0円の人に付けても控除は使われずに終わる点です。収入が少ない側に寄せると、控除がまるごと無駄になることがあります。
控除額は子の年齢と状況で変わります。
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 48万円 |
| 同居老親等 | 58万円 |
住民税では付け替えても合計は動かない。動くのは非課税の判定
個人住民税の所得割は、東京都の場合で都民税4%、区市町村民税6%の一律です。累進ではないので、夫婦のどちらに付けても住民税の減り方は同じになります。世帯で見た住民税の合計は、付け替えでは動きません。
ただし例外があります。住民税が非課税になるかどうかの判定には、扶養親族の人数が入ります。東京都主税局の案内では、東京23区内で所得割・均等割とも非課税になるのは次の場合です。
- 同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 31万円 以下
- 同一生計配偶者または扶養親族がいない場合:45万円 以下
この「扶養親族」は、年齢16歳未満の者および控除対象扶養親族に限られます。つまり子を1人数えられるかどうかで、当てはめる式そのものが変わります。収入が低い側に子を付けると結果が変わる場合があるのは、所得税ではなくこちらの判定です。
この条件は市区町村の条例で定められています。東京23区外では均等割が非課税となる合計所得金額が異なる場合があるため、お住まいの市区町村の住民税の案内で確かめてください。
16歳未満の子は、扶養控除の欄には書かない
扶養控除の対象になるのは、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人です。15歳以下の子は控除対象扶養親族の欄には書きません。
書く場所は別にあります。申告書の「住民税に関する事項」にある年齢16歳未満の扶養親族の欄です。地方税法の規定により、給与の支払を受ける人は毎年最初に給与の支払を受ける日の前日までに個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」を給与の支払者に提出することになっています。この申告書は所得税の扶養控除等(異動)申告書と統合した1枚の様式になっているため、住民税の欄が同じ紙に並んでいます。この欄には扶養親族のマイナンバーの記載も必要です。
所得税が減らないので空欄のまま出してしまいがちですが、前の節の非課税限度額の人数はここから拾われます。15歳以下の子も、どちらかの欄に必ず書いてください。そしてここでも重複はできません。
入れ替えには、夫婦そろって出し直す手間がかかる
いったん申告書で所属が定められたあとでも、所属の異なる記載をした申告書を出し直すことで変更はできます。ただし条件があります。
扶養親族を増加させようとする者と減少させようとする者の全員が、所属の異なる記載をした申告書を提出しなければなりません。片方だけが出し直しても変更は成立しません。夫の側で子を消したら、妻の側でも子を追加した申告書を出す、という両方の作業が必要です。
勤務先が別の会社なら、それぞれの給与担当に出します。このとき「今月の給与計算に間に合いますか」と締め日も聞いておくと、反映の時期が読めます。
確定申告書を出すと、そこで入れ替えはできなくなる
ここが実質的な締切です。所属を決める申告書等には、予定納税額の減額承認申請書、確定申告書、給与所得者の扶養控除等申告書などが含まれますが、修正申告書と更正の請求書は含まれません。
そのため、夫婦のいずれかがいったん確定申告書を提出している場合には、扶養親族の所属の変更はできません。あとから「妻ではなく夫に付けたほうが得だった」と気づいても、確定申告書を出した時点で入れ替えの道は閉じます。
医療費控除やふるさと納税のために確定申告をする予定があるなら、扶養をどちらに付けるかはその申告書を出す前に決めてください。順番を逆にすると選び直せません。
年末調整のあとに子の人数が変わったとき
控除対象扶養親族などの判定は、その年の12月31日の現況で行います。一方で年末調整はその年最後の給与を支払うときに行うため、年末調整が済んだあと12月31日までの間に人数が変わると、年末調整した税額と本来納めるべき税額に差が出ます。
この場合、年末調整のやり直しができます。扶養親族が増えたときは、勤務先がその年分の源泉徴収票を作成・交付する日までに、本人から異動内容を記載した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受ける形です。
その日を過ぎてしまっても、本人が確定申告を行うことで所得税および復興特別所得税の還付を受けられます。ただし前の節のとおり、確定申告書を出した後は夫婦間の所属の入れ替えはできません。還付を受けるのと、所属を選び直すのは別の話です。
扶養控除の対象になる子の条件と、重複に気づいたときの直し方
控除対象扶養親族になるのは、次のすべてに当てはまる人です。
- その年12月31日現在の年齢が16歳以上
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が58万円以下(給与だけなら収入123万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
合計所得金額の線は改正で動きます。上の金額は国税庁の扶養控除のページ(令和8年4月1日現在法令等)の記載です。申告書を書く年の額は、同じページで確認してください。子のアルバイト代がこの線を超えると、扶養控除は使えなくなります。19歳以上23歳未満の子については、超えた場合に別の控除が用意されています。
重複に気づいたときは、次の順で動きます。
- 夫婦のどちらに付けるかを決める。所得税では課税される所得金額が多い側が有利で、住民税が非課税になるかの判定も併せて見る
- 外す側が、その子を記載しない扶養控除等申告書を勤務先に出す
- 付ける側が、その子を記載した扶養控除等申告書を勤務先に出す
- 年末調整が済んでいる場合は、源泉徴収票の交付日までに間に合うかを給与担当に確認する
- 間に合わなければ、付ける側が確定申告で精算する
今日のうちに確かめること
- 夫婦それぞれの扶養控除等申告書の控えを並べ、同じ子の名前が両方に入っていないか
- 15歳以下の子が、どちらかの「住民税に関する事項」の欄に書かれているか
- 源泉徴収票ではなく、課税される所得金額(所得控除を引いたあとの金額)でどちらが税率が高いか
- 今年、医療費控除やふるさと納税で確定申告をする予定があるか(あるなら、その前に所属を決める)
- お住まいの市区町村の住民税の非課税の条件。23区外は金額が異なる場合があります
参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」— 対象の要件と控除額(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 質疑応答事例「2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属」— 兄弟姉妹を分けられるかの照会と回答
- 国税庁 タックスアンサー No.1181「納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」— 変更の手続きと、確定申告書提出後は変更できないこと
- 国税庁 タックスアンサー No.2671「年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき」— やり直しの期限
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」— 税率の区分
- 総務省「個人住民税の『給与所得者の扶養親族申告書』等について」— 16歳未満の扶養親族の記載
- 東京都主税局「個人住民税」— 所得割の税率と非課税限度額(東京23区内の例)