入れられます。扶養控除の判定は、その年12月31日の現況で行うのが原則です。ただし判定の対象になる人がそのとき既に亡くなっている場合は、死亡の時の現況で判定します。12月31日に本人がいないことは、控除を受けられない理由にはなりません。
確かめることは一つで、亡くなった日にその人が扶養親族の要件を満たしていたか、です。まず見る場所は国税庁のタックスアンサーNo.1180と、そこに根拠法令として挙がっている所得税法85条3項です。兄弟が何人かいる場合は、誰が控除を受けるかを書類を出す前に決めておく必要があります。
原則は12月31日。亡くなっているときは死亡の日で見る
所得税法85条3項は、控除対象配偶者・特定扶養親族・老人扶養親族・その他の控除対象扶養親族などに該当するかどうかの判定について、こう定めています。
その年十二月三十一日の現況による。ただし、その判定に係る者がその当時既に死亡している場合は、当該死亡の時の現況による。
「その判定に係る者」は、判定される側、つまり扶養親族の側です。亡くなった親を今年の年末調整に入れられるかは、12月31日ではなく死亡の日の状況で決まります。
紛らわしいのは、No.1180の本文にある括弧書きのほうです。
扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
ここで死亡の例外とされているのは「納税者」、つまり控除を受ける本人が亡くなった場合です。扶養親族の側が亡くなった場合の扱いはこの文からは読み取れません。同じことを国税庁の質疑応答事例も示していて、海外勤務から戻った人の年末調整についての回答ですが、死亡した扶養親族の扱いをこう書いています。
非居住者期間内に死亡した控除対象扶養親族についても、その死亡の時点で控除対象扶養親族としての要件を満たしていたのであれば、扶養控除の対象とすることができます。
死亡の日に満たしていたかを見る四つの要件
No.1180が挙げる扶養親族の要件は四つです。この四つを、12月31日ではなく死亡の日に当てはめます。
- 配偶者以外の親族であること。6親等内の血族と3親等内の姻族、および里子や養護を委託された老人が入ります。親は該当します。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が一定額以下であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
3の上限額は改正で動きます。No.1180は58万円以下(令和2年分から令和6年分までは48万円以下)としたうえで、令和8年12月1日に施行され令和8年分から適用される金額は62万円以下だと注記しています。QAのほうでは、給与収入だけなら136万円以下で合計所得金額が62万円以下になるという計算例も示されています。自分が年末調整をする年分の金額は、No.1180の本文と注記で確かめてください。年号で覚えないほうが安全です。
所得の中身でつまずきやすいのが年金です。国税庁は、扶養親族に該当するかを判定する場合の合計所得金額には法令の規定によって非課税とされる所得の金額は含まれないとし、厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金や国民年金法に基づく遺族基礎年金などを非課税所得として挙げています。父が先に亡くなって母が遺族年金を受けていた、という場合に効いてきます。老齢年金のように課税される年金は、合計所得金額に入ります。
控除額の区分と、年齢の数え方で確かめきれなかった点
控除額は扶養親族の年齢と同居の有無等で分かれます。
| 区分 | 年齢 | 控除額 |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等以外の者) | 70歳以上 | 48万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 70歳以上 | 58万円 |
ここでこの記事では確かめきれなかった点があります。年齢をいつの時点で数えるかです。
国税庁No.1180は控除対象扶養親族を「扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」と書いています。No.1182も、扶養控除額が同居の有無等で分かれる70歳の区分について「年齢70歳(その年12月31日現在の年齢)以上」と書いています。どちらも12月31日現在の年齢です。
一方で所得税法85条3項は、特定扶養親族・老人扶養親族・その他の控除対象扶養親族に該当するかどうかの判定そのものを、既に亡くなっている場合は死亡の時の現況によるとしています。
誕生日が死亡の日と12月31日の間にある人について、この二つがどう組み合わさるのかを明示した国税庁の記述は、今回開いた資料の中には見つけられませんでした。控除額が38万円と48万円(同居老親等なら58万円)に分かれる場合があるため、年内に70歳や23歳の区切りを迎える予定だった人が亡くなったときは、推測で決めずに所轄の税務署か勤務先の担当者に確認してください。この記事では、どちらになるとも断定しません。
入院していた期間の扱いは、同居老親等に当たるかどうかで問題になります。No.1180の注は、病気の治療のため入院していることにより別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても同居に該当するものとして取り扱って差し支えないとしています。一方で、老人ホーム等へ入所している場合はその老人ホームが居所となり同居しているとはいえないとしています。病院で亡くなったのか、施設に入っていたのかで、58万円と48万円が分かれます。
同居している親が亡くなった配偶者の父母である場合も、同居老親等の対象から外れるわけではありません。国税庁の質疑応答事例は、同居老親等の加算にいう「配偶者の直系尊属」について、生存している配偶者が婚姻関係を終了させる意思表示をしない限り死亡した配偶者の直系尊属も含まれるとしています。
兄弟のうち1人だけ。重複はできない
同じ人を複数の人が控除の対象にすることはできません。所得税法85条6項は、二以上の居住者の扶養親族に該当する者がある場合、政令で定めるところによりいずれか一の居住者の扶養親族にのみ該当するものとみなすと定めています。国税庁のQAも、兄弟のうちだれか1人だけが扶養控除の対象とすることができ、たとえ兄弟が均等に送金している場合であってもそれぞれ重複して控除の対象とすることはできないとしています。
亡くなった親の場合、複数の子がそれぞれ生計を一にしていたと考えて別々に申告してしまうことが起こりえます。誰が入れるかを決めてから、それぞれの勤務先に出す書類を整えてください。
残された親を自分の扶養に入れるとき
父が亡くなり、母を自分の扶養に入れたい、という順番になることもあります。このとき、父の最後の年末調整で母が配偶者控除の対象になっていると二重になるのではないか、と迷います。国税庁は、年の途中で死亡または出国した納税者の控除対象配偶者または控除対象扶養親族に該当した人であっても、その後その年中において相続人等他の納税者の控除対象配偶者または控除対象扶養親族に該当する場合は、その納税者の控除の対象となることができるとしています。
したがって、父の側で配偶者控除の対象になっていたことだけを理由に諦める必要はありません。母がその後あなたと生計を一にしているか、所得の要件を満たしているかを確かめてください。
勤務先への出し方と、ここでは扱わない手続き
亡くなったという理由だけで、その年の扶養控除から外す必要はありません。死亡の日に要件を満たしていれば、その年は控除の対象です。
勤務先に出す書類については、所得税法194条3項が、扶養控除等申告書に記載した事項について異動を生じた場合は、その異動を生じた日後最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、異動の内容等を記載した申告書を提出しなければならないと定めています。年末調整の時期まで何も伝えていなかった場合は、死亡の日を添えて勤務先の担当者に伝え、どの書類にどう記載するかの指示を受けてください。会社ごとの様式や社内の締切は、この記事では確かめていません。
次の点は、扶養控除とは別の話です。混ぜないでください。
- 翌年分:この記事で確かめたのは、亡くなった年の分の扶養控除です。翌年分以降の扱いについては、今回開いた資料では確認していません。
- 亡くなった人自身の所得税の精算:亡くなった人のその年の所得税をどう申告するかは別の手続きです。要否や期限は国税庁で確認してください。
- 配偶者が亡くなり同じ年に再婚した場合:所得税法85条7項は、この場合の扶養親族等の範囲の特例を政令で定めるとしています。該当する場合は政令の内容を確かめる必要があります。
- 健康保険の被扶養者:所得税の扶養控除と健康保険の被扶養者認定は別の制度で、条件も手続き先も違います。
よくある質問
母が今年3月に亡くなりました。12月31日にはいないのに、今年の年末調整で扶養控除に入れていいのですか。
入れられます。所得税法85条3項は、扶養親族などに該当するかどうかの判定はその年12月31日の現況によるとしたうえで、「ただし、その判定に係る者がその当時既に死亡している場合は、当該死亡の時の現況による」と定めています。見るのは12月31日ではなく3月の死亡の日の状況です。その日に親族の範囲・生計を一にすること・所得・事業専従者でないことの四つの要件を満たしていたかを確かめてください。
亡くなった母には遺族厚生年金がありました。所得の要件で引っかかりますか。
国税庁は、扶養親族に該当するかを判定する場合の合計所得金額には法令の規定によって非課税とされる所得は含まれないとしており、厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金や国民年金法に基づく遺族基礎年金などを非課税所得として挙げています。ほかに所得がなければ、遺族年金の額だけで要件から外れることはありません。老齢年金など課税される年金がある場合は、その年の合計所得金額で判定します。
兄と私で母の生活費を送っていました。二人とも扶養控除に入れられますか。
できません。国税庁は、兄弟のうちだれか1人だけが扶養控除の対象とすることができ、たとえ兄弟が均等に送金している場合であってもそれぞれ重複して控除の対象とすることはできないとしています。どちらが入れるかを先に決めてから、それぞれの勤務先に出す書類を整えてください。
父が亡くなりました。父の最後の年末調整で母が配偶者控除の対象になっていると、私は母を扶養控除に入れられないのですか。
入れられる場合があります。国税庁は、年の途中で死亡または出国した納税者の控除対象配偶者または控除対象扶養親族に該当した人であっても、その後その年中において相続人等他の納税者の控除対象配偶者または控除対象扶養親族に該当する場合は、その納税者の控除の対象となることができるとしています。母がその後あなたと生計を一にし、所得などの要件を満たしているかを確かめてください。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除 — 扶養親族の4要件、控除額の区分、入院と老人ホームの扱い、所得の上限額と注記
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除(QA) — 兄弟での重複(Q5)、非課税所得と遺族厚生年金(Q6)、年の中途で死亡した納税者の控除対象配偶者とされた人(Q7)、合計所得金額の上限と給与収入換算
- 国税庁 タックスアンサー No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除 — 70歳の区分が「その年12月31日現在の年齢」であること
- デジタル庁 e-Gov法令検索 法令API 所得税法(昭和40年法律第33号) — 第85条(扶養親族等の判定の時期等)第3項・第6項・第7項、第194条第3項、第2条第1項の定義
- 国税庁 質疑応答事例 海外勤務期間内に控除対象扶養親族が死亡した場合の扶養控除の適用 — 死亡した控除対象扶養親族を死亡の時点の要件で判定する
- 国税庁 質疑応答事例 死亡した配偶者の父母に係る扶養控除 — 同居老親等の「配偶者の直系尊属」の範囲