年末調整の書類と一緒に、令和9年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を渡された方へ。この用紙は、氏名と住所と「前年から異動がない旨」だけを書いた簡易な申告書として出せる場合があります。ただし使えるのは、書くべき事項の全部が前年に出した申告書から動いていないときだけです。申告書に記載する子や親など、源泉控除対象親族・年少扶養親族の区分が年齢によって変わるときは、たとえ収入が去年とまったく同じでも簡易な申告書では出せません。まず開く場所は国税庁の「簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ」で、問2-3と問2-4に分かれ目が載っています。提出可否と書き方はそのFAQと国税庁の手続案内、年齢の判定時期は国税庁No.1180「扶養控除」で確かめています(2026年10月22日に確認)。
令和8年分と令和9年分で、用紙の役割が違う
国税庁は令和9年分と令和8年分の扶養控除等(異動)申告書を、どちらも通常の様式と【簡易対応様式】の両方で公開しています。この用紙の提出時期は手続案内に次のように書かれています。
その年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出してください。
つまり令和9年分の税法上の期限は、令和9年の最初に給与の支払を受ける日の前日です。年末調整のために出す令和8年分とは別の用紙で、令和9年分は令和9年1月以後の毎月の源泉徴収に使われます。勤務先が事務の都合で年末調整の書類とまとめて早い締切を設けている場合は、その締切に従ってください。
出さないとどうなるかも手続案内に書かれています。
この申告を行わない場合は、月々(日々)の源泉徴収の際に受けることのできる諸控除が受けられず、また年末調整も行われないことになります。
この用紙は個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と統合された様式なので、住民税側の申告も兼ねています。2か所以上から給与を受けている人は、そのうち一つの勤務先にしか出せません。なお、適用される税額表が日額表の丙欄とされる人は、この申告書を出す必要がありません。
令和9年分の用紙は、国税庁の事前情報提供では大きなレイアウト変更や欄の追加を行わない予定とされています。見た目が令和8年分と似ているため、どちらの年分の用紙かを先に確かめてから書き始めてください。
簡易な申告書は「書くべき事項の全部」が動いていないときに使える
国税庁のFAQは、簡易な申告書を「記載すべき事項に代えて、その異動がない旨を記載して提出する扶養控除等申告書」と定義しています。使えるのは次の場合です。
簡易な申告書は、従業員の方から提出を受ける扶養控除等申告書に記載すべき事項が、その従業員の方から前年に提出を受けた扶養控除等申告書(前年の途中で異動申告書の提出を受けた場合は前年の最後に提出を受けた異動申告書。以下同じです。)に記載された事項から異動がない場合に提出を受けることができるものです。
ここで見落としやすいのが、比べる相手です。年の初めに出した令和8年分ではなく、年の途中で異動の申告書を出したなら、その最後のものと比べます。令和8年12月の年末調整の前後に扶養の追加や削除を申告した人は、その最後に出した内容が基準になります。
もう一つ、FAQは「本年は記載を要しなくなった場合」も異動ありになるとしています。
前年は源泉控除対象親族に該当していた親族が、本年は源泉控除対象親族に該当しない親族となる場合など、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項について、本年は記載を要しなくなった場合は、異動があったものとなりますので、簡易な申告書を提出することはできません。
去年書いた家族の欄が、今年は空欄になる。それも異動です。何かを足したときだけでなく、書かなくなったときも簡易な申告書は使えません。
毎年続けて簡易な申告書を出している人は、比べる相手が去年の簡易な申告書ではありません。FAQは、最後に提出した簡易な申告書以外の扶養控除等申告書の記載内容から異動がないかを確認してもらう必要があるとしています。何年も簡易な申告書で済ませていると、元になった申告書の控えを勤務先から見せてもらう必要が出てきます。
所得の見積額が動いても出せる五つの場合
収入の見積りは毎年ぶれます。FAQの問2-3は、その年と前年の両方で次に該当するときは、所得の見積額について異動がないものとして取り扱って差し支えないとしています。年齢の区分など、ほかの記載事項に異動がある場合まで使えるという意味ではありません。例はいずれもFAQに載っているものです。
| 対象になる人 | 異動なしとして扱える範囲 | FAQの例 |
|---|---|---|
| 源泉控除対象配偶者 | 所得の見積額が95万円以下 | 前年30万円(給与収入104万円)→本年40万円(給与収入114万円) |
| 控除対象扶養親族・年少扶養親族 | 所得の見積額が62万円以下 | 前年35万円(給与収入109万円)→本年10万円(給与収入84万円) |
| 障害者である同一生計配偶者 | 所得の見積額が62万円以下 | 前年20万円(給与収入94万円)→本年48万円(給与収入122万円) |
| 控除対象扶養親族以外の源泉控除対象親族 | 所得の見積額が62万円超100万円以下 | 前年70万円(給与収入144万円)→本年90万円(給与収入164万円) |
| 勤労学生控除を受ける本人 | 所得の見積額が89万円以下で、かつそのうち事業・給与・退職・雑以外の所得の見積額が10万円以下 | 前年60万円(給与収入134万円と懸賞賞金50万円)→本年65万円(給与収入139万円) |
ここでの金額はいずれも所得の見積額で、給与収入そのものではありません。給与だけの人は、給与収入から給与所得控除を引いた後の額です。表の「FAQの例」に給与収入を併記しているのは、FAQがその形で例示しているためです。自分の家族がどの帯に入るかは、収入の額ではなく所得の額で確かめてください。
障害者控除については、障害の程度(等級)に変動があっても異動なしとして扱えます。ただし特別障害者から障害者になる場合と、障害者から特別障害者になる場合は除かれます。FAQは、身体障害者手帳の等級が4級から3級になる場合は異動なしとして扱える一方、3級から2級になる場合は特別障害者に該当することとなるため簡易な申告書を提出できないとしています。
年齢が区切りをまたぐと出せない
年齢は、単に1歳増えるかではなく、申告書に記載する親族の区分が変わるかを見ます。FAQの問2-4は、年齢の変動で「異動があった」とされる場合を次のように挙げています。ここに当てはまる年は、収入が前年とまったく同じでも簡易な申告書では出せません。
| 年齢の変動 | 変わる区分 |
|---|---|
| 控除対象扶養親族が70歳に達する | 老人扶養親族に該当することとなる |
| 控除対象扶養親族が19歳に達する | 特定扶養親族に該当することとなる |
| 特定扶養親族が23歳に達する | 特定扶養親族でない控除対象扶養親族に該当することとなる |
| 特定親族が23歳に達する | 源泉控除対象親族に該当しないこととなる |
| 年少扶養親族が16歳に達する | 控除対象扶養親族に該当することとなる |
| 国外居住親族の年齢等の区分が変わる | 扶養控除の適用要件である年齢等の区分が変わる |
表の「特定親族」は、扶養控除等申告書で源泉控除対象親族として記載される特定親族を指します。FAQの定義では、生計を一にする親族(里子を含み、配偶者と青色事業専従者等を除く)のうち年齢19歳以上23歳未満で、その年中の所得の見積額が62万円超100万円以下の人です。19歳以上23歳未満でほかの要件も満たす子について、所得が62万円以下なら特定扶養親族、62万円超100万円以下ならこの申告書に記載する特定親族という形で、23歳に達したときの扱いが分かれています。
年齢をいつの時点で見るかは、国税庁No.1180「扶養控除」で確認できます。原則はその年の12月31日の現況なので、令和9年分の申告書では令和9年12月31日時点の年齢がどの区分に入るかを見てください。前年から上の表の区分が変わる場合は、全部を記載した申告書で出すことになります。配偶者の年齢が16歳・19歳・23歳・70歳の区切りをまたぐことだけで、問2-4の異動になるわけではありません。
なお、納税者が年の途中で死亡する場合や、納税管理人の届出をせず国内に住所・居所を有しなくなる「出国」をする場合は、その死亡または出国の時の現況で判定する例外があります。
簡易な申告書の書き方と、出し忘れたとき
FAQの問3-1は、書き方を次のように案内しています。
簡易な申告書を提出する人本人の氏名、住所又は居所及びマイナンバー(個人番号)を記載の上、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がない旨を余白に記載する等して提出してください。
勤務先が、扶養控除等申告書に記載すべき従業員のマイナンバーなど所定の事項を記載した帳簿を備えているときは、マイナンバーの記載をしなくてよいとされています。提出先は勤務先です。手続案内の注記によれば、この申告書は本来勤務先を経由して税務署長と市区町村長へ提出するものですが、税務署長や市区町村長から特に提出を求められた場合以外は勤務先が保管しておくことになっています。
簡易な申告書を出す場合でも、別に書類が必要になる人がいます。
- 勤労学生控除を受ける人が専修学校もしくは各種学校の学生・生徒、または職業訓練法人の行う認定職業訓練を受ける訓練生である場合は、簡易な申告書の提出と併せて、勤労学生に該当する旨を証する書類を勤務先へ提出または提示する必要があります。
- 国外居住親族について扶養控除または障害者控除を受ける場合は、FAQの表の「国外居住親族の年齢等の区分」に応じた証明書類を勤務先へ提出または提示する必要があります。
国外居住親族について扶養控除または障害者控除を受ける人には、もう一つ段取りがあります。この場合、年末調整の際には、扶養控除等申告書に「生計を一にする事実」としてその年に送金等をした金額の合計額を記載することになっています。そのため、その年に簡易な申告書を出している場合は、当初出した簡易な申告書を勤務先から返却してもらって親族の氏名と送金額の合計額を追記して再提出するか、送金額の合計額を記載した扶養控除等申告書を別途提出するかのどちらかが必要です。手続案内では、非居住者である親族に係る扶養控除または障害者控除の適用を受ける場合の提出期限は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までとされています。
年の途中で状況が変わったときは、出し直しです。手続案内は、当初提出した申告書の記載内容に異動があった場合は、その異動の日後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに異動の内容等を記載した申告書を提出するよう案内しています。子が就職して扶養から外れた、配偶者の収入の見積りが表の範囲を超えた、といった場合がこれに当たります。
提出後は控えを保存し、令和9年分として受け付けられたことを勤務先の給与担当に確認してください。記入しただけで提出済みと思い込まず、添付・提示が必要な書類も含めて不足がないかを確かめます。
判断に迷ったときは、全部を記載した申告書で出す
簡易な申告書は事務を軽くするための仕組みで、使わなければ不利になるものではありません。前年の控えが手元になくて見比べられない、家族の所得の見積りが表のどの帯に入るか決めきれない。そのときは全部を記載した申告書で出すほうが確実です。
なお、令和8年度税制改正による基礎控除の引上げなどは、国税庁の案内では「原則として、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます」とされています。令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はなく、12月以後の源泉徴収事務に変更が生じます。令和9年分の申告書で扶養の判定に使う所得の金額も改正後のものです。
令和8年中に異動申告書を出した場合、令和9年分の比較相手は、変更の理由を問わず、令和8年中に時系列で最後に出した異動申告書です。たとえば扶養を追加した後に別の異動を申告したなら、追加を申告したときのものではなく、その後の最後のものと比べます。簡易な申告書を連年提出している場合は、前の見出しで説明したとおり、最後に提出した簡易な申告書以外の申告書の内容を確認します。
参考にした資料
- 国税庁 A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告 — 提出時期、提出先、添付書類、令和9年分と令和8年分の様式と簡易対応様式、備考(申告しない場合の扱い、2か所以上から給与を受ける場合、日額表の丙欄)
- 国税庁 簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(令和6年6月・令和8年8月改訂) — 問1-1(概要と定義)、問2-1(比べる相手)、問2-2(記載を要しなくなった場合)、問2-3(所得の見積額が動いても異動なしとして扱える五つの場合)、問2-4(年齢の変動で異動ありになる場合)、問2-5(連年提出している場合)、問3-1(書き方)、問3-2(勤労学生控除)、問3-3(国外居住親族)
- 国税庁 変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供) — 令和9年分の扶養控除等(異動)申告書は大きなレイアウト変更や欄の追加を予定していない
- 国税庁 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について — 令和8年12月1日施行、令和8年分以後の所得税について適用
- 国税庁 No.1180 扶養控除 — 原則12月31日の現況・年齢による判定、納税者の死亡・出国時の例外