休職中の社会保険料と住民税は誰が払う?傷病手当金から引かれないぶん、手元に残る額はこう減る

結論

傷病手当金は非課税で満額振り込まれる代わりに健康保険料・厚生年金保険料・住民税が別請求になるため、日額の3分の2がそのまま生活費になるとは考えず、そこから月々の保険料と住民税を引いた額で家計を組んでください。

どうする?編集部 · · 読了 約7分
目次(9項目)
  1. 給与から引かれていたものは、休んでも消えない
  2. 免除されるのは産休と育休だけ
  3. 標準報酬月額28万円で試算する
  4. 保険料の払い方は会社の運用で決まる
  5. 住民税は「いつの分」を払っているかで見え方が変わる
  6. 非課税なのに、扶養の判定では収入として数えられる
  7. 払い続けるのが難しいときに、先に動かせるもの
  8. 休職に入る前に、書き出しておくこと
  9. 参考資料

会社を病気で休むことになり、傷病手当金の計算をしてみたら思ったより悪くない。そう感じた直後に給与担当から「保険料はご自身で振り込んでいただきます」と言われて戸惑う。休職の入り口でよく起きる場面です。傷病手当金は保険料が引かれないまま振り込まれるので、額面は大きく見えます。ただし健康保険料も厚生年金保険料も住民税も、休職中に消えるわけではありません。

休職に入る前に、まず勤務先の給与担当へ「休職中の保険料はどう払うのか」を聞いてください。毎月振り込むのか、会社が立て替えて復職後に精算するのか、扱いは会社ごとに違います。

給与から引かれていたものは、休んでも消えない

給与明細の控除欄には、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税が並びます。休職して給与がゼロになると、このうち雇用保険料と所得税は自動的にかからなくなります。どちらも賃金に率をかけて計算するので、賃金が出なければ0円です。

残るのが健康保険料・厚生年金保険料・住民税。どれも給与の有無と切り離されています。健康保険と厚生年金の保険料は「標準報酬月額」という等級に対して決まるため、休んでいる月も等級が変わらない限り同じ額が発生します。住民税は前年の所得に対する税金なので、今年働いていなくても去年の所得ぶんは請求が来ます。

収入は傷病手当金だけに減るのに、支出側の固定費はほぼそのまま残る。休職の家計でいちばん効くのがここです。

免除されるのは産休と育休だけ

「休んでいるのだから保険料も止まるのでは」と考える人は多いのですが、健康保険と厚生年金の保険料免除は、産前産後休業と育児休業の期間に限られます。日本年金機構が保険料免除として案内しているのも、産前産後休業中の免除、育児休業中の免除、育児期間の標準報酬月額のみなし措置だけです。病気やけがによる休職に対応する免除の仕組みはありません。

免除がない代わりに置かれているのが傷病手当金です。給付で生活を支えながら、保険料は納め続ける。そういう組み立てになっています。

納め続けるので、休職期間も厚生年金の被保険者期間に算入されます。標準報酬月額も原則そのままなので、将来受け取る老齢厚生年金がこの期間で目減りすることはありません。傷病手当金だけを見ると損をしている感覚になりますが、年金の側では休職前と同じ扱いが続いています。

標準報酬月額28万円で試算する

数字を入れてみます。標準報酬月額28万円、東京都の協会けんぽ加入、40歳未満と仮定します。

傷病手当金の日額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に、3分の2をかけて出します。28万円を30で割ると9,330円。これに3分の2をかけて6,220円が日額です。30日ぶんで186,600円になります。

厚生年金保険料の本人負担は9.15%なので、28万円なら25,620円。健康保険料のほうは都道府県と年度で率が動きますが、ここでは5%とみて14,000円としておきます。住民税は前年の課税所得しだい。年収400万円台の単身なら月15,000円前後です。

項目月額の目安
傷病手当金(30日分)186,600円
健康保険料 本人負担約14,000円
厚生年金保険料 本人負担25,620円
住民税約15,000円
手元に残る約132,000円

出ていくのがざっと5万5千円。手元に残るのは13万円ほどです。休職前の手取りが月26万円だったとすれば、ちょうど半分になります。「額面の3分の2はもらえる」という数字だけで家計を組むと、この差でつまずきます。

40歳から64歳の人は、これに介護保険料が上乗せされます。本人負担はおよそ0.8%で、標準報酬月額28万円なら月2,000円台。健康保険料率も介護保険料率も年度ごとに見直されるので、正確な額は協会けんぽの都道府県別保険料額表か、直近の給与明細の控除欄をそのまま使ってください。等級が変わっていなければ、明細に載っている額が休職中の請求額とほぼ一致します。

保険料の払い方は会社の運用で決まる

給与が出ない月の本人負担分をどう回収するかは、法律で決まっているわけではありません。会社の運用に委ねられていて、実務では次のような形をよく見ます。

  • 会社が口座を指定し、毎月本人が振り込む
  • 会社がいったん立て替え、復職後の給与から分割して差し引く
  • 会社が立て替え、退職する場合は最後の給与や退職金から精算する

振込を選んだ場合、期日を過ぎると経理から督促が来ます。実際、振込を忘れて督促が届いた例も聞いています。休職中は郵便物の確認が滞りやすいので、ネットバンキングの自動送金にしておくと取りこぼしません。

立て替え方式は当座の負担が軽い代わりに、復職後の給与が数か月にわたって薄くなります。復職直後は残業もできず基本給だけということが多く、そこへ数か月分の保険料が重なると、かえって生活が苦しくなる。休職が何か月になりそうかで選び方は変わります。

休職が長引いて退職に至った場合、立て替え分が退職金から一括で引かれることがあります。金額がふくらむ前に振込へ切り替えられないか、途中で相談する余地はあります。

住民税は「いつの分」を払っているかで見え方が変わる

住民税でつまずくのは、いま払っている税金が去年の所得に対するものだからです。6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きする特別徴収が会社員の基本ですが、給与が出なければ天引きできません。

会社が市区町村へ給与所得者異動届出書を出すと、残りの住民税は自分で納める普通徴収に切り替わり、自宅に納付書が届きます。切り替えずに会社が立て替え続ける運用もあります。どちらになるかは総務に確認してください。

休職が年をまたぐと、負担の山と谷がずれます。休職した年は所得が下がるので、その翌年の住民税は大きく下がる。逆に休職1年目は、前年のフル給与に対する住民税を傷病手当金だけの収入で払うことになります。いちばん苦しいのは休職を始めた最初の1年です。

傷病手当金は非課税なので、住民税の課税所得には入りません。休職が1年続けば、翌年度の住民税はゼロに近づきます。

非課税なのに、扶養の判定では収入として数えられる

傷病手当金は健康保険から出る保険給付なので、所得税はかかりません。源泉徴収もされず、年末調整でも確定申告でも収入として書きません。

ところが、この「非課税」は税と健保で逆向きに働きます。

税法上の扶養、つまり配偶者控除や扶養控除を判定するときの合計所得金額に、傷病手当金は入りません。休職で給与が減った年は、配偶者の扶養に入れる可能性が出てきます。年末調整の書類を書く時期に、配偶者側の勤務先で確認してみてください。

一方、健康保険の被扶養者の認定では、傷病手当金は収入として数えられます。健保が見るのはこれから1年間の見込み収入で、非課税かどうかは問われません。年収130万円を360日で割った日額3,612円が判定の目安として使われるので、これを超える傷病手当金を受けている間は、配偶者の健康保険の扶養に入れません。税では扶養に入れて健保では入れない。この食い違いは休職中によく起きます。

払い続けるのが難しいときに、先に動かせるもの

保険料も住民税も、黙って滞納するのがいちばん損です。住民税は納期限の翌日から延滞金が加算され、督促が進むと財産の差し押さえまでいきます。

住民税は市区町村の納税課へ相談すると、分割して納める話ができます。傷病手当金の支給決定通知書や医師の診断書を持っていくと事情が伝わりやすい。減免制度を持っている自治体もありますが、要件は自治体ごとに違うので窓口で聞くほかありません。

医療費の持ち出しが重なっているなら、限度額適用認定証を先に用意しておくと窓口負担が上限までで止まります。マイナ保険証を使っていれば、認定証を取らなくても自動で上限が適用されます。

退職して国民年金と国民健康保険に切り替わると、そちらには免除や猶予の制度があります。厚生年金にはない仕組みです。退職を検討する段階で、在職のまま休職を続けた場合の負担と並べて比べてください。

休職に入る前に、書き出しておくこと

休職の初日を迎える前に手元で決めておきたいのは、支払う金額と支払い方法です。

  • 直近の給与明細から、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担額。この合計が毎月出ていく
  • 住民税の月額と、特別徴収を続けるか普通徴収に切り替えるか
  • 保険料を自分で振り込むのか、会社が立て替えるのか。振込なら口座と期日
  • 傷病手当金の初回振込がいつになるか

最後の項目が抜けやすい。傷病手当金は後払いで、休んだ期間が過ぎてから申請します。申請書には勤務先の証明と医師の意見が要るので、書類がそろうまでにも時間がかかる。最初の振込までに2か月近く空くことは珍しくありません。その間も保険料の請求は毎月来ます。

休職に入る時点で、2か月分の生活費と保険料を確保できているか。ここだけは先に確かめておいてください。足りないようなら、有給休暇を先に消化して給与が出る期間を作る、という順序も選べます。有給を使った日は給与が出るので傷病手当金は出ませんが、待期3日の成立には影響しません。

参考資料

  • 協会けんぽ「傷病手当金」— 支給の4条件、日額の計算式、通算1年6か月の考え方
  • 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」— 保険料が免除される期間の範囲
休職中の社会保険料と住民税は誰が払う?傷病手当金から引かれないぶん、手元に残る額はこう減る — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Liana Mikah on Unsplash

参考資料

  1. 協会けんぽ「傷病手当金」
  2. 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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