休職して給与が止まったのに、住民税の納付書だけは届きます。ここで探すべき制度は「減免」ではなく、まず地方税法第15条の徴収猶予です。減免は市区町村の条例で決まるため、病気で休んでいる間の収入減を拾う市と拾わない市があります。徴収猶予は全国同じ条文で動き、事由に本人または生計を一にする親族の病気・負傷が入っていて、しかもその場合は延滞金が全額免除になります。連絡先は税務署ではなく、住んでいる市区町村の納税担当です。普通徴収か特別徴収かで窓口が分かれている自治体もあるので、手元の納付書か会社からの案内を先に見てください。
今年度の税額は、休む前の所得で決まっている
住民税は前年中の所得をもとに計算されます。今年の6月に届いた納税通知書の額は、去年働いていたときの給与で決まっていて、今年休職したことは入っていません。ここが所得税と違うところです。所得税は毎月の給与から引かれるので、給与が止まれば引かれる額も止まります。住民税は去年の分の請求が今年来る形なので、収入がない月にも納期限が来ます。
だから「今年度の住民税を減らしてもらう」話と「今年休職したことを来年度に反映する」話は、別々に進みます。前者が減免と猶予、後者は何もしなくても来年度の計算に入ります。
「減免」と「猶予」は別の制度です
言葉が似ているので混ざりますが、効果が違います。
| 減免 | 徴収猶予 | 換価の猶予 | |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 市区町村の条例 | 地方税法第15条 | 地方税法第15条の6 |
| 税額 | 減る(全額免除とは限らない) | 減らない。納める時期が延びる | 減らない |
| 期間 | — | 1年以内。延長して通算2年まで | 1年以内。延長して通算2年まで |
| 延滞金 | — | 病気・負傷なら全額免除 | 一部免除 |
| 申請の時期 | 納期限まで | 原則、納期限まで | 納期限から6か月以内 |
減免は税額そのものが減りますが、芦屋市は「一部軽減であり、必ず全額免除(税額が0円)になるものではない」と書いています。使えれば効果は大きい一方、要件が条例しだいで、自分の市が拾ってくれるかは案内を読むまで分かりません。
徴収猶予は税額は変わらず、納める時期が後ろにずれて分割できるようになります。確実に使える代わりに、いつか払う額は同じです。この二つは排他ではないので、減免の要件に当たりそうなら減免を、当たらないか判断がつかないなら徴収猶予を、と窓口で両方の名前を出して聞くのが早いです。
徴収猶予の事由に、病気・負傷が入っている
中野区は地方税法第15条の事由を五つの事例として並べています。
- 災害・火災・盗難による財産の損失
- 本人または生計を同一にする家族が病気にかかり、または負傷した場合
- 事業の廃止・休止
- 事業について著しい損失を受けた場合
- 納期限から1年を経過した後に税額が確定した場合
二つ目がそのまま当てはまります。自分の病気だけでなく、生計を同一にする家族が病気や負傷をして納税が難しくなった場合も含まれる点は見落としやすいところです。家族の入院費が重なって住民税に回らない、という状況もここに入ります。
猶予される期間は1年以内で、やむを得ない理由があるときは延長できますが、中野区・八千代市・東京都主税局のいずれも通算2年が限度としています。1年で完納できる見込みを立てて相談する前提の制度です。
延滞金の扱いが、事由によって分かれる
ここが徴収猶予を先に勧める理由です。八千代市は、徴収猶予のうち災害・盗難、病気・負傷の場合は延滞金が全額免除、事業の廃止・休止や事業の損失の場合は一部免除と、事由で分けて案内しています。東京都主税局も同じ分け方で、病気の場合は全額免除、事業の休廃止や著しい損失の場合は年1.5パーセント(最初の1か月)と年7.8パーセント(それ以降)を超える部分が免除されるとしています。免除後に残る負担は令和8年中は年1.3パーセントです。
つまり病気やけがで休んでいる人は、猶予が認められれば利息相当の負担なしで1年かけて納められます。放置して督促を受ける場合と、申請して猶予を受ける場合で、最終的に払う額が変わります。
換価の猶予のほうは事由に病気が入っていないため、延滞金は一部免除にとどまります。使う順番として徴収猶予が先に来るのはこのためです。
申請は原則、納期限まで
東京都主税局は徴収猶予について「原則、納期限までに」申請すると案内しています。納期限を過ぎてからの相談を受け付けないという意味ではありませんが、過ぎれば延滞金が付き始め、督促の手続きも進みます。
普通徴収の納期は年4回です。芦屋市の例では6月30日、8月31日、10月31日、翌年1月31日で、同市は減免の申請期限を「納税通知書を受け取った日から納期限まで」としています。納期の日付は自治体で違うので、手元の納付書に印刷されている日付で確かめてください。
減免で気をつけたいのは、過ぎた分までさかのぼらない運用があることです。相模原市は、減免の対象になるのは申請日以後の納期分だと書いています。第3期の納期限が近い時期に「次の期から」と思って待つと、その期の分を取り逃がします。思いついた時点で申請するのが結果的に有利です。
出すもの。金額で必要書類が変わる
八千代市が挙げている書類は次のとおりです。
- 徴収猶予申請書(換価の猶予とは別の様式)
- 猶予に該当する事実を証明する書類(徴収猶予だけに必要)
- 財産目録と収支の明細書(猶予額が100万円以上のとき)
- 財産収支状況書(猶予額が100万円未満のとき)
- 担保に関する書類(担保が必要なとき)
「猶予に該当する事実を証明する書類」が、病気・負傷で申請する場合の中心になります。診断書、入院の案内、傷病手当金の支給決定通知書など、療養していることと収入が止まっていることが分かるものを揃えます。何が使えるかは窓口で確認してください。
担保は、八千代市では猶予額が100万円未満または3か月以内の猶予なら不要です。中野区も、猶予する税額と延滞金の合計が100万円を超えて猶予期間が3か月を超えるときなどに担保または保証人が必要だとしています。個人住民税の1年分がこの線を超える人は多くないので、担保の心配で申請を止める必要はあまりありません。
減免は、市ごとに拾う事情が違う
ここは全国共通で書けない部分です。実際に二つの市の案内を並べると、挙げている事由が違います。
相模原市は、退職については会社都合や倒産による退職を対象とし、自己都合や定年退職は除くとしています。廃業は病気等や自己破産等によるやむを得ない廃業が対象です。所得の基準として、合計所得が300万円以下で、見込みの合計所得が前年比3割以上減少していることを挙げています。ほかに生活保護の受給、災害、学生が並びます。
芦屋市は、けが・病気療養の区分として「入院を要する疾病や負傷により、引き続き1か月以上の治療を要し、納税が著しく困難であること」を挙げています。休職している場合は、休職期間とその期間内に支払われる給与等が確認できる休職証明書などを出すよう求めています。
同じ「住民税の減免」でも、入院を要するかどうかで線を引く市と、収入の減り方と所得の上限で線を引く市があります。自分の市のページを「市民税 減免」で探し、事由の一覧をそのまま読むのが確実です。見つからなければ徴収猶予のほうに切り替えます。
納期限を過ぎたあとの入口
納期限を過ぎてしまった場合は、換価の猶予という別の制度があります。地方税法第15条の6に基づくもので、一時に納めることで事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがあるときに、財産の差押えや売却を待ってもらえます。中野区と八千代市はどちらも、納期限から6か月以内に申請すると案内しています。自治体の案内で期間が違って書かれていることがあるので、自分の市区町村のページで確かめてください。
延滞金は一部免除にとどまりますが、差押えが止まるのは大きい違いです。すでに督促状が届いている段階でも、先に連絡してください。
保険料のほうは、住民税とは別に動く
休職中は健康保険料と厚生年金保険料の扱いも気になるところですが、これは住民税とは別の仕組みで、窓口も市区町村ではありません。手元から出ていく総額を先に把握したい場合は、休職中の社会保険料と住民税をまとめた記事を見てください。この記事は、そのうち住民税が払えなくなったときの出口だけを扱っています。
窓口に電話する前に、手元に置くもの
相談は一度で済ませたいので、次のものを並べてから連絡します。
- 住民税の納税通知書または納付書(納期限と各期の額を聞かれます)
- 給与が止まった時期が分かるもの(休職の辞令、給与明細)
- 療養していることが分かるもの(診断書、入院の案内)
- 傷病手当金の支給決定通知書(受け取っている場合)
- 当面の収入と支出を書き出したメモ
電話では「徴収猶予を申請したいので、必要な書類を教えてください」と用件から言うのが早いです。「払えません」だけでは分割の相談に流れてしまい、延滞金が全額免除になる枠に入らないことがあります。制度の名前を出すかどうかで、その先の案内が変わります。
中野区は納税の相談窓口を普通徴収と特別徴収で分けています。会社の天引きが止まったばかりで自分がどちらの扱いか分からないときは、そのことも最初に伝えてください。
参考資料
- 中野区 法令に基づく徴収猶予・換価の猶予について
- 八千代市 市税の徴収・換価の猶予制度について
- 東京都主税局 納税が困難な方に対する猶予制度について
- 相模原市 市県民税(住民税)の減免及び森林環境税の免除
- 芦屋市 住民税(市民税・県民税)の減免について