傷病手当金には終わりがあります。協会けんぽは支給期間を「支給を開始した日から通算して1年6か月」と書いています。その先も働けない状態が続くなら、次の柱は障害年金です。
問題は、この二つをつなぐ日付の数え方です。障害年金の入口になる「障害認定日」も1年6か月ですが、数え始めるのは初診日であって、手当金の支給開始日ではありません。
二つの1年6か月は、同じ日に終わらない
国民年金法第30条は、初診日を「初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定め、そこから起算して1年6か月を経過した日を障害認定日と呼んでいます。その間に治った場合、症状が固定して治療の効果が期待できない状態に至った日を含めて、治った日が認定日になります。
一方で傷病手当金の支給開始日は、休み始めて待期3日が終わった次の日です。初診の日に休職する人はまれで、たいていは通院しながら何か月か働いたあとに休みます。働いた期間のぶんだけ、認定日は手当金の終わりより前に来ます。
数字で置いてみます。ある年の4月10日に初めて受診し、6月1日から休職、待期3日を経て6月4日に支給が始まった人の場合です。
| 出来事 | 日付 | 数え方 |
|---|---|---|
| 初診日 | 4月10日 | 認定日の起点 |
| 傷病手当金の支給開始日 | 6月4日 | 手当金の1年6か月の起点 |
| 障害認定日 | 翌年10月10日 | 初診日+1年6か月 |
| 認定日の診断書に使える期間 | 翌年10月10日〜翌々年1月上旬 | 認定日から3か月以内の状態 |
| 認定日請求の年金が出始める月 | 翌年11月分から | 認定日の翌月分 |
| 傷病手当金の最終日 | 翌年12月3日 | 出勤せず休み続けた場合 |
この例では認定日が手当金の終わりより54日早く来ます。半年働いてから休んだ人なら、差は半年に近づきます。手当金の終わりを待ってから動くと、その差の期間を丸ごと使わずに過ごすことになります。
今日やるのは、初診日を1日単位で確定させること
認定日は初診日から機械的に決まります。だから最初の作業は、初診日を「たぶん春ごろ」ではなく日付で押さえることです。
手がかりは手元にあります。傷病手当金の申請書には療養担当者が記入する欄があり、初診日が書かれています。ただ、この欄を書くのは今の主治医です。途中で病院を変わった人や日付が曖昧な人は、初めて受診した病院に電話して受診日を確かめます。聞き方は「障害年金の請求で初診日を確認したい。カルテに残っている最初の受診日を教えてほしい」で足ります。
日付が出たら、1年6か月を足して認定日をカレンダーに書き込みます。今日がその前なら、認定日と、その3か月後の診断書の締めまでを書きます。すでに過ぎているなら、次の節の「1年以上たった場合」を読んでください。
認定日の診断書は「3か月以内の状態」でないと使えない
日本年金機構の請求手続きのページは、診断書について「障害認定日より3カ月以内の現症のもの」を求めています。認定日の日の状態ではなく、認定日から3か月の窓のどこかで診てもらった状態を書いた診断書です。
ですから認定日が来たら、その3か月のうちに主治医の予約を取り、障害年金の診断書を頼みます。用紙は所定の様式で、眼、肢体、精神、循環器疾患など障害の種類ごとに8種類に分かれています。一覧は日本年金機構の「医師の診断書」のページにあるので、どれを使うかは年金事務所か街角の年金相談センターで確かめてください。医師には、休職中の日常生活で何ができて何ができないかを、受診のたびに口頭で伝えておくと診断書の内容が実態に近づきます。
窓を逃しても請求はできます。ただし同じページに、認定日と請求日が1年以上離れている場合は「直近の診断書(年金請求日前3カ月以内の現症のもの)も併せて必要」と書いてあります。認定日の状態を書いた診断書と、いまの状態を書いた診断書の2枚です。認定日の窓のうちに1枚取っておけば、あとで足すのは1枚で済みます。
初診の病院が今と違う人は、先に「受診状況等証明書」を取る
同じ請求手続きのページは、必要書類に「受診状況等証明書」を挙げています。初診の医療機関と診断書を作る医療機関が異なる場合に、初診の病院が初診日を証明する書類です。最初は近所の内科にかかり、その後に専門の病院へ移った人はこれに当たります。
この1枚だけは、認定日を待たずに今すぐ動く理由があります。医師法第24条は診療録の保存期間を5年と定めています。保存期間を過ぎた記録は、残っているとは限りません。認定日の診断書は3か月の窓が決まっていますが、受診状況等証明書は今日頼めます。
初診の病院に電話するときの文言はこうです。「障害年金の請求に使う受診状況等証明書を書いてほしい。用紙は持参する」。用紙のPDFは日本年金機構の「受診状況等証明書を提出するとき」のページに載っています。同じページには、証明が取れなかった人のための「受診状況等証明書が添付できない申立書」も置かれています。
認定日に等級に当たらなかったら、事後重症という道がある
認定日の時点では働けそうで請求しなかった、あるいは請求したが等級に当たらなかった。その後に悪化した場合は、事後重症による請求ができます。日本年金機構は、悪化して法令に定める障害の状態になったときは「請求日の翌月から」年金を受けられると書いています。請求書は65歳の誕生日の前々日までに出す必要があります。
認定日請求との違いは起点です。認定日請求は認定日の翌月分から、遡れば5年分まで受け取れます。事後重症は請求日の翌月分からで、過去には遡りません。悪化したと感じてから請求まで3か月あけると、3か月分が出ないままになります。
障害厚生年金か障害基礎年金かは、初診日の加入先で決まる
日本年金機構が障害厚生年金の要件に挙げるのは、厚生年金保険の被保険者である間に初診日があること、認定日に1〜3級に当たること、保険料の納付要件を満たすことの三つです。会社に勤めている間に初めて受診した人は、この一つ目に当たります。
障害厚生年金には3級があり、障害基礎年金は1級・2級だけです。初診日が入社前の国民年金の期間にあれば障害基礎年金だけになり、3級相当の状態では受け取れません。ここでも初診日が効いてきます。
退職して国民年金に切り替わった人も、判定は今の加入先ではなく初診日の加入先です。傷病手当金を退職後も続けて受けている人も、初診日が厚生年金に入っていた在職中にあれば、障害厚生年金の側で考えます。
納付要件は、初診日の前日の時点で、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることです。初診日に65歳未満で、直近1年間に未納がなければ満たす特例もあります。日本年金機構は特例が使えるのは初診日が令和18年3月末までの場合としています。20歳前で年金制度に入っていない期間に初診日がある人には、納付要件はありません。
年金が決まったら、傷病手当金の側が調整される
健康保険法第108条第3項は、傷病手当金を受ける人が「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるとき」は傷病手当金を支給しない、と定めています。ただし書きがあり、障害厚生年金の額(障害基礎年金も受けられるときはその合算額)を日額に換算した額が傷病手当金の額より少ないときは、差額が支給されます。
条文が調整の対象に挙げているのは障害厚生年金です。障害基礎年金だけを受ける人は、この項の調整には入りません。
実務で気をつけるのは時間差です。認定日請求の年金は認定日の翌月分から遡って決まるのに対し、傷病手当金はその間も申請どおりに振り込まれています。年金の決定通知が届いたら、決定日と年金額を協会けんぽに伝えます。重なった期間の傷病手当金は調整の対象になるので、振り込まれた分を使い切る前に確かめるほうが安全です。
金額は毎年変わる。今の額を見るところ
障害年金の額は年度ごとに改定されます。令和8年4月分からの額として日本年金機構が示しているのは、昭和31年4月2日以後生まれの人で障害基礎年金1級が1,059,125円、2級が847,300円、障害厚生年金3級の最低保障額が635,500円です。障害厚生年金の1級・2級に当たる人は、障害基礎年金に報酬比例の障害厚生年金が上乗せされます。条件に合う配偶者や子がいれば加算もあります。
これらは翌年度には変わる数字なので、請求の時点で日本年金機構の「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」のページを開いて確かめてください。
時間順に並べ直す
- 初診日を日付で確定させる。手当金の申請書の療養担当者欄か、初診の病院への電話で。
- 初診日に1年6か月を足して認定日を書き出す。認定日から3か月後の日も書く。
- 初診の病院が今と違えば、受診状況等証明書を今日頼む。カルテ保存は5年。
- 認定日が来たら、3か月の窓のうちに主治医に障害年金の診断書を頼む。
- 年金事務所か街角の年金相談センターに請求書と書類を出す。電子申請もできる。
- 年金の決定通知が届いたら、協会けんぽに伝えて重なった期間の傷病手当金を確かめる。
認定日が過ぎてしまっている人は、手順4で診断書が2枚になるだけで、順番は変わりません。傷病手当金の残り日数を数えるより、初診日から数え直すほうが、動ける日は早く来ます。