出産手当金の入金を見込むときは、請求する期間が終わる日、勤務先の証明がそろう日、協会けんぽの受付日を順に見ていきます。出産しただけで自動的に振り込まれたり、給与と同じ日に入ったりするものではありません。
このページは、協会けんぽに加入している本人の出産手当金について、最初の入金に向けて何を確認するかを扱います。協会けんぽのFAQは「被保険者のみが対象です」としており、被扶養者として扶養に入っている人は対象になりません。別の健康保険組合に加入している場合は、その保険者の申請案内に沿って手続きを進めます。
10営業日は「受付日」から。会社へ渡した日からではない
協会けんぽの申請書ページには、審査の結果支払い可能であれば、受付日から10営業日以内に支払うという案内があります。出産日、産休に入った日、勤務先へ申請書を預けた日を起点にする案内ではありません。
入金までのどこで待っているかは、次のように分けると確認しやすくなります。
| いまの段階 | 確認すること |
|---|---|
| 請求する期間がまだ終わっていない | その期間が経過してから提出する。将来の休業分を先に請求しない |
| 勤務先へ証明を依頼している | 証明ができる見込みと、完成後は本人へ戻るのか提出まで頼んでいるのかを確認する |
| 書類がそろった・送信するところ | 申請期間、証明、必要な添付書類、提出先を確認する |
| 協会けんぽへ提出済み | 受付日を基準に考える。電子申請は送信完了時刻にも注意する |
| 不備のお知らせが届いた | 指摘された箇所を直して再申請する。最初の提出だけで手続きが済んだとは考えない |
勤務先へ「いつ入りますか」と聞く前に、どの段階かを確かめると、問い合わせ先もはっきりします。勤務先で証明を作成中で、申請自体をまだ提出していなければ、協会けんぽ側の審査は始まっていません。
「期間が終わる」のはいつか — 産前42日・産後56日の数え方
提出できる日は、請求する期間が終わる日で決まります。そこで先に、対象になる範囲を確定させます。協会けんぽは給付範囲を「被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます」と案内しています。
読み取る点は3つです。産前側の上限は42日、多胎妊娠なら98日です。起点は原則として出産の日ですが、実際の出産が予定日より後になったときは出産予定日からさかのぼります。そして出産日は産前の期間に含まれ、産後は出産の翌日から数えて56日目までです。
| 自分の状況 | 産前側の数え方 | 産後側 |
|---|---|---|
| 予定日どおり、または予定日より早く出産した | 出産の日以前42日(多胎妊娠は98日) | 出産の翌日以後56日目まで |
| 予定日より遅れて出産した | 出産予定日以前42日(多胎妊娠は98日)に、予定日から出産日までの遅れた日数を加える | 出産の翌日以後56日目まで |
予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても支給されます。FAQは支給期間を「出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日」と示しています。予定日を過ぎてから出産したからといって、産前側が削られるわけではありません。
対象になるのは、この範囲のうち実際に会社を休んだ日です。範囲に入っていても出勤した日は入りません。休んだ日に給与の支払いがあった場合の扱いは、次の節で金額とあわせて説明します。
自分の予定日から産前の開始日を出すときは、協会けんぽの出産手当金ページに、所定の期間の範囲を参照するための「産前産後期間一覧表」が置かれています。手で数えて1日ずれると申請期間の欄も変わるため、公式の一覧表と申請書の記入例で突き合わせてください。
1日あたりの額は、標準報酬月額を平均した額の30分の1の3分の2
入金日と並んで気になるのが金額です。協会けんぽのFAQは1日当たりの金額を「【支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)」としています。支給開始日とは、一番最初に出産手当金が支給された日のことです。基礎になるのは月給や手取り額ではなく、社会保険の標準報酬月額です。
公式ページに載っている支給額例(支給開始日が令和8年(2026年)2月15日の場合)は、次の順で計算されています。
| 手順 | 例の数値 |
|---|---|
| 直近12か月の標準報酬月額 | 令和7年3月〜8月が16万円、令和7年9月〜令和8年2月が18万円 |
| 平均する | (16万円×6+18万円×6)÷12=17万円 |
| 30分の1にする | 17万円÷30≒5,670円(10円未満四捨五入) |
| 3分の2にする | 5,670円×2/3=3,780円(1円未満四捨五入) |
これは公式に掲載されている例そのもので、実際の額は自分の標準報酬月額で計算します。自分の標準報酬月額が分からないときは、勤務先の給与担当か加入支部に確認します。
支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使って計算します。
- 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 標準報酬月額の平均額(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)。支給開始日が令和7年(2025年)4月1日以降の方は32万円、令和7年3月31日以前の方は30万円です
休んだ日に給与が出ていたときは、差額だけになる
出産手当金は、休んだ期間に給与の支払いを受けなかった場合の給付です。ただし、まったく出ないわけではありません。協会けんぽは、休んだ期間についての給与の支払いがあっても、その給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、出産手当金と給与の差額が支給されるとしています。
何が報酬として見られるかは、FAQに具体的に挙げられています。
| 調整の対象になる(出勤していない日に対して支給した報酬等) | 対象にならない |
|---|---|
| 有給休暇の賃金 | 残業手当等、出勤した日に対して支給した報酬 |
| 出勤等の有無に関わらず支給している手当(通勤手当・扶養手当・住宅手当等) | 見舞金等、一時的に支給したもの |
| 食事・住居等の現物支給しているもの | 社会保険適用促進手当等、標準報酬月額の算定に考慮されない報酬 |
右列の社会保険適用促進手当は、令和5年(2023年)10月より年収の壁に対する当面の対応として導入された手当で、標準報酬月額の算定に考慮されない報酬は調整対象となる報酬には含まれないと案内されています。
「振り込まれた額が思ったより少ない」と感じたときは、産休に入る前後の給与明細を出して、有給休暇の賃金が支払われていないか、通勤手当・扶養手当・住宅手当が止まらずに出ていないかを確かめます。差額になる理由がここにあることが分かれば、支給決定のお知らせの金額とも突き合わせられます。
なお、出産手当金と傷病手当金を重複して受給することはできません。傷病手当金の支給額が出産手当金の支給額より多い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。つわりなどで産前休業に入る前から傷病手当金を受けていた場合は、重複する期間についてこの調整の対象になります。どちらからいくら支給されたかは、支給決定のお知らせで確認してください。
産前分を先に出すなら、勤務先の証明も2回頼む
協会けんぽは、産前分・産後分など複数回に分けた申請を認めています。産前分を先に請求する場合、産後分までまとめるために産後56日が経過するのを待つ必要はありません。ただし、それぞれの申請期間が経過する前には提出できません。
たとえば出産後に産前分を1回目として申請し、産後分はその期間が終わってから2回目として申請する方法があります。区切りは前の節の数え方どおりで、2回の請求期間が重ならないようにします。
| 比べる点 | 産前分・産後分を分ける | まとめて1回で出す |
|---|---|---|
| 最初に提出するまで | 先に請求する期間が終わり、証明等がそろえば提出できる | 請求する全期間が終わってから提出する |
| 事業主の証明 | 申請のたびに必要 | 1回の申請について必要 |
| 医師・助産師の証明 | 1回目が出産後で、証明により出産日等を確認できた場合は、2回目以降を省略できる | 申請書の案内に沿って証明を受ける |
| 入金日の考え方 | 産前分を先に審査へ回せるが、何日早まるかは確定しない | 申請をまとめる分、提出の区切りが後になる |
先に申請できることと、すぐ入金されることは別です。事業主の証明がいつできるかによっても、実際の提出日は変わります。勤務先には「産前分を先に出したいので、証明を2回お願いできますか。最初の証明はいつごろ受け取れますか」と相談しておくとよいでしょう。
申請書のどの期間を記入するか、出産前の申請でどこに注意するかは、出産手当金支給申請書をいつ出すかの解説で別に整理しています。このページでは、期間が終わった後の証明待ちと受付日を中心に、最初の入金までを確認します。
電子申請は17:15以降だと翌営業日の受付日になる
電子申請サービスの利用時間は平日8:00〜21:00です。土日祝日、12月29日〜1月3日、平日の利用時間外は使えません。利用時間内でも、緊急メンテナンス等で使えない場合があります。
受付日の扱いは利用時間とは別で、17:15以降に送信を完了した申請は翌営業日の受付日になります。17:15ちょうども「以降」に含まれます。「21時まで利用できるから、その日の受付になる」とは考えないでください。
祝日等をはさまない金曜日であれば、17:15以降に送信完了した分は翌週月曜日の受付日扱いです。月曜日が祝日なら、さらに次の営業日になります。これは受付日の例で、入金日を指定するものではありません。
また、入力作業中に21時になると、メンテナンス画面へ移り、入力中の情報は保存されません。途中で切り上げるときは、21時前にサービス内の「入力データを保存する」操作をしてください。間に合わせるために、証明や金額の確認を省くのは避けましょう。
ログインや事前準備など電子申請の共通操作は、協会けんぽの電子申請を始める手順も参照できます。傷病手当金を扱う記事のため、出産手当金の証明や申請期間は、このページと出産手当金専用の申請書案内が対象です。
出す前に、証明・添付書類・提出先を確認する
最初の申請では、勤務先の証明だけでなく、自分に必要な添付書類も確認します。申請書ページは、支給開始日以前の12か月以内に勤務先が変わった場合や、定年再雇用等で資格情報の番号が変わった場合に、以前の事業所名・所在地・勤務期間が分かる書類を挙げています。
FAQには、申請期間の初日が属する月までの12か月間に勤務先の変更等で記号番号が変わった場合や、退職後に任意継続被保険者になった場合の添付書類も案内されています。こちらは協会けんぽに加入していた場合に限るという条件があります。変更歴がある人は、申請書ページと記入例で自分の経歴に当てはまる欄を探し、判断しにくい点を加入支部へ尋ねます。
賃金台帳や出勤簿の写しなどを、必要かどうか確認せず一式添える必要はありません。一方、掲載されていない書類を個別に求められる場合もあるため、返戻や照会のお知らせが来たら、その指示を確認します。
紙の申請書は加入している協会けんぽ支部へ郵送します。加入支部は、資格情報のお知らせやマイナポータルの資格情報で確認できます。本人が電子申請する場合は提出先を選ぶ必要はありませんが、社会保険労務士は支部指定が必要です。
電子申請には利用対象の制限があります。加入者本人はマイナンバーカードによる認証等の準備が必要で、事業主は電子申請できません。代理人も、社会保険労務士を除き対象外です。日雇特例被保険者とその被扶養者などの対象外条件もあるため、公式の「申請できる方」で対象を確かめ、利用できない場合は紙の手続きを選びます。
提出後に入らないときは、処理状況と返戻を確認する
本人が電子申請した分は、サービス内で審査・処理状況を見られます。社労士が申請した分の処理状況を見られるのは、申請した社労士だけです。本人のマイナンバーカードでは見られないため、依頼した社労士に問い合わせます。急いで状況を知りたいときは、加入支部への問い合わせも案内されています。
審査結果そのものは書面で送られます。不備のお知らせも郵送され、サービス内で返却された申請データを使って再申請できる案内がありますが、一部の申請は郵送のお知らせのみです。社労士による申請の不備は、その社労士へ郵送で通知され、返却データもその社労士が受け取ります(一部の申請を除く)。依頼している場合は、修正の連絡が届いていないかも社労士に尋ねます。画面に返却データがないことだけで、不備もないとは判断できません。
確認するものは次の4点です。
- 勤務先から実際に提出されたか。本人へ返ってきたままになっていないか。
- どの申請期間の分を、いつ、どの方法で出したか。
- 本人の電子申請ならサービス内の処理状況と郵送のお知らせ。社労士が申請した分なら、その社労士への状況照会と修正依頼の有無。
- 支給決定のお知らせが届いている場合は、その内容と申請した分が一致しているか。
協会けんぽは、出産のため労務に服さなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になると案内しています。古い休業日から順に期限が来るので、長期間そのままにせず、申請書やお知らせを手元に置いて加入支部へ問い合わせます。
産休中に退職するなら、退職日に出勤したかどうかで分かれる
退職して被保険者の資格を失っても、協会けんぽが挙げる次の2点を満たせば、資格喪失後も引き続き支給を受けられます。
- 資格喪失日の前日(退職日等)までに、被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)が継続して1年以上あること
- 被保険者資格を喪失した日の前日に、出産手当金を受けている、もしくは受けられる状態であること
分かれ目になるのは退職日の勤務です。協会けんぽは、退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないため、資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は支払えないとしています。休職のまま退職した場合は資格喪失後も引き続き受けられる例が示されており、退職日に出勤した場合の例と並べて掲載されています。
挨拶や片付けのために最終日だけ出社する、という予定を入れている場合は、ここで条件が変わります。退職日をいつにするか、最終出勤日をどう扱うかは、勤務先の人事・給与担当と、公式ページの2条件を見ながら決めてください。判断に迷う組み合わせは、加入支部に自分の日付で確認するのが確実です。
まず勤務先に「証明がいつそろうか」を聞く
まだ出していない人は、自分の産前42日・産後56日の区切りを先に確定させ、そのうえで最初の申請期間と証明の予定を勤務先と相談します。すでに出した人は、提出日・方法と処理状況を確かめます。入金額が想定と違うときは、休んだ日に給与や手当が出ていなかったかを給与明細で確認します。社労士に申請を依頼した分は、その社労士への問い合わせから始めます。
産前分を先に出せば、産後分まで待たずに手続きを進められます。ただし、入金が必ず2か月早まるという保証はありません。期間の終了、証明、受付、審査のどこまで進んだかを押さえると、次に誰へ何を尋ねるかが分かります。