退院のときに窓口で払った額が思ったより少なく、明細を見たら出産費用の総額が50万円に届いていなかった。この差額は、待っていても自動で振り込まれません。申請して初めて受け取れるお金です。まず確認するのは、自分が入っているのが協会けんぽなどの健康保険か、市区町村の国民健康保険かという点です。協会けんぽなら出産後およそ3か月後に申請書が送られてきますが、国民健康保険は書類が届かないので自分から窓口に行くことになります。期限はどちらも出産日の翌日から2年です。
差額は自動では入らない。どちらの保険かで動き方が変わる
直接支払制度は、出産施設が本人に代わって保険者に請求し、保険者から施設へ一時金が直接支払われる仕組みです。窓口では、費用の総額から一時金の額を差し引いた残りだけを払います。費用が一時金より少なく済んだときは、その差額が保険者から本人に支給されます。
ここで分かれるのが、書類が向こうから来るかどうかです。
| 協会けんぽ(健康保険) | 国民健康保険(横浜市の例) | |
|---|---|---|
| 差額の書類 | 出産後およそ3か月後に被保険者あてに届く | 届かない。自分で申請する |
| 出す先 | 加入している協会けんぽ支部(郵送・電子申請) | 区役所の保険年金課 |
| 早く受け取る方法 | 内払金支払依頼書を自分で出す | 出産後に申請できる時期を窓口で確認する |
| 期限 | 出産日の翌日から2年 | 出産日の翌日から2年 |
国民健康保険は保険者が市区町村なので、申請の名称や受付の時期は自治体ごとに違います。横浜市は区役所の保険年金課が窓口ですが、お住まいの市区町村の国保のページで確かめてください。
協会けんぽは、出産のおよそ3か月後に書類が届く
協会けんぽの案内には、直接支払制度を利用して出産にかかった費用が一時金を下回った場合、出産後おおむね3か月後に申請に必要な書類、つまり出産育児一時金差額申請書が被保険者あてに送付されると書かれています。支給決定通知書と一緒に届く用紙です。
この用紙を使うときは、添付書類は不要です。届いたら記入して協会けんぽ支部に返送します。電子申請にも対応しています。
3か月という間隔には理由があります。直接支払制度では、出産施設からの請求が審査支払機関を経て保険者に届き、その内容が確定してから差額が計算されます。手元の領収書だけで先に決まるわけではないので、通知が来るまで少し待つことになります。
待たずに受け取るなら「内払金支払依頼書」
支給決定通知書が届く前に請求したいときに使うのが、健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書です。使い分けは、通知が届いたかどうかで決まります。届く前に自分から出すなら内払金支払依頼書、通知とともに届いた用紙を返すなら差額申請書です。
内払金支払依頼書は、差額申請書と違って添付書類が要ります。協会けんぽが挙げているのは次のものです。
- 医療機関等から交付される出産費用の領収・明細書のコピー
- 医療機関等から交付される、直接支払制度に係る代理契約に関する文書(合意文書)のコピー
- 出生または死産を確認できる書類(戸籍謄本、出生届受理証明書など)
- マイナンバーを記載する場合は本人確認書類
退院時に渡された封筒に、領収・明細書と合意文書が両方入っていることが多いので、捨てずに取っておいてください。提出した書類は返してもらえません。コピーを取ってから出すと、あとで確認したいときに困りません。提出先は加入している協会けんぽ支部で、郵送か電子申請です。支部の窓口で現金を受け取ることはできません。
国民健康保険は書類が届かない。区役所に自分で出す
国民健康保険の場合、横浜市の案内では差額の支給申請に次のものを持参します。
- 本人確認書類
- 母子健康手帳
- 世帯主の預金通帳(振込先が分かるもの)
- 分娩機関が発行した出産費用の証明書(領収・明細書)
- 直接支払制度に関する合意文書
窓口は、住んでいる区の区役所保険年金課です。協会けんぽのように用紙が送られてくる案内はありません。忘れたまま2年が過ぎると請求できなくなるので、退院後の手続きの一覧に入れておいてください。
基準になるのは50万円か、48万8千円か
差額を計算するときの基準額は、出産した施設と在胎週数で変わります。
| 条件 | 1児あたりの額 |
|---|---|
| 産科医療補償制度に加入する医療機関で、在胎週数22週以降の出産 | 50万円 |
| それ以外(制度に加入しない機関での出産、在胎22週未満) | 48万8千円 |
産科医療補償制度は、分娩に関連して重度の脳性まひとなった子どもを補償する制度で、加入している分娩機関で出産したときに対象になります。加入していない機関での出産も、出産育児一時金そのものは支給されます。金額が1万2千円下がるだけです。
支給の対象になるのは、妊娠85日(4か月)以降の出産です。生産のほか、死産、流産、人工妊娠中絶も含まれます。自治体の案内では「妊娠12週以上」と書かれていることがありますが、同じ日数を指しています。
差額の話にならない人
次の場合は、この記事の手続きは要りません。
- 出産費用が基準額を超えた人。超えた分は退院時に窓口で払っているので、追加の申請はありません
- 直接支払制度も受取代理制度も使わず、自分で全額を払った人。差額ではなく一時金そのものを請求します
- 受取代理制度を使った人。これは本人が保険者に申請し、施設が代わりに受け取る仕組みで、利用できるのは出産予定日まで2か月以内の人に限られます
受取代理制度を使った場合の差額の扱いは、直接支払制度とは書類の流れが違います。申請時に保険者へ確認しておくと確実です。
退職したあとの出産と、2年の期限
会社を辞めたあとの出産でも、資格喪失日の前日までに被保険者期間が続けて1年以上あり、資格喪失後6か月以内の出産であれば、前に入っていた健康保険に請求できます。この条件から外れるときは、いま加入している国民健康保険か、扶養に入っている健康保険が請求先になります。
期限は、出産育児一時金の消滅時効の起算日が出産した日の翌日で、そこから2年です。差額の請求も同じ2年の中で行います。国民健康保険の横浜市の案内も、出産日の翌日から2年で時効と書いています。
出産直後は届出が重なる時期です。差額は数万円になることもあり、金額のわりに手続きが後回しになりやすいところなので、母子健康手帳と領収・明細書と合意文書を一か所にまとめておくと、書類が届いたとき、あるいは区役所に行くときにそのまま使えます。
参考資料
- 全国健康保険協会 出産育児一時金
- 全国健康保険協会 よくあるご質問 子どもが生まれたとき(出産育児一時金)
- 全国健康保険協会 健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書
- 全国健康保険協会 健康保険出産育児一時金支給申請書
- 横浜市 出産育児一時金の支給
