出産手当金の支給申請書は、書き終えたらすぐ出せる書類ではありません。提出できる日が、申請書に書いた期間によって決まります。
協会けんぽの「記入の手引き」は、申請期間を書く欄の説明にこう付けています。
本申請書は、申請期間が経過する前に提出することはできません。(申請期間が経過した後にご提出ください。)
この一文が、提出時期の答えです。まず自分が書こうとしている期間の末日を決めてください。そこが過ぎた翌日から出せます。
出せる日は、書いた期間の末日で決まる
出産手当金は、産前分と産後分を分けて申請できます。協会けんぽはよくあるご質問で「出産手当金は、産前分、産後分など複数回に分けて申請することも可能です」と書いています。分けるか1回にするかで、申請書に書く期間が変わり、出せる日も変わります。
| 出し方 | 申請書に書く期間 | 出せるようになる日 |
|---|---|---|
| 産前分だけ先に出す | 産前の休業初日から出産日まで | 出産日の翌日以降 |
| 産後分を出す | 出産日の翌日から産後56日目まで | 産後56日目の翌日以降 |
| 1回でまとめて出す | 産前の休業初日から産後56日目まで | 産後56日目の翌日以降 |
産前分の期間は出産日で閉じます。出産が済めば休んだ日も日数も確定するので、産後を待たずに出せます。産後分だけが、56日の終わりを待つ必要のある部分です。
産後56日は、出産日の翌日から数える
ここがずれると、提出日も1日ずれます。
協会けんぽは給付範囲を「出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目まで」と説明し、あわせて「出産日は出産の日以前の期間に含まれます」としています。出産日は産前の側です。産後は翌日を1日目として数えます。
4月10日に出産した場合で数えてみます。4月11日が1日目。4月は11日から30日までで20日。5月いっぱいで51日目。6月1日が52日目なので、56日目は6月5日です。申請期間の末日が6月5日なら、提出は6月6日以降になります。
多胎妊娠では産前が98日に延びますが、産後の56日は変わりません。予定日より遅れて生まれたときは、遅れた日数がそのまま支給対象に足されます。産前の起点が出産予定日のまま動かないためで、協会けんぽは支給期間を「出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日」と示しています。
「出産前の申請」という欄との関係
申請書の2ページ目には、「出産前の申請か出産後の申請か」を選ぶ欄があります。出産前を選んだ場合は、出産予定日だけを記入します。出産後を選んだ場合は、出産予定日と出産日の両方を書きます。
出産前に出す道が用意されている一方で、先ほどの「申請期間が経過する前に提出することはできません」は残ります。出産前に出す場合も、申請書に書いた期間がすでに終わっている必要がある、という読み方になります。
ただし、急いで1回目を出産前に出すと失うものがあります。協会けんぽは、医師または助産師の証明欄を省略できる条件を「1回目の申請が出産後であり、証明によって出産日等が確認できたとき」としています。1回目が出産前だと出産日がまだ確定していないので、2回目の申請書にもあらためて証明をもらうことになります。
証明の手間をいちばん軽くしたいなら、1回目を出産後に出すことです。産前分を出産後に出し、産後分を56日経過後に出す。この順番なら、医師・助産師の証明は1回で済みます。事業主の証明欄のほうは、協会けんぽが「毎回証明が必要です」としているので、分ければ回数も増えます。
3ページを誰が書くか
記入の手引きは「申請書は3ページです」とし、役割をこう分けています。
- 1ページ目と2ページ目は申請者情報・申請内容・医師または助産師の証明
- 3ページ目は事業主の証明で、事業主に記入を依頼する
実務の順番は、自分が書ける欄を埋める、医師または助産師に2ページ目の証明をもらう、申請期間が終わってから勤務先に3ページ目を頼む、という流れになります。3ページ目は出勤した日付を丸で囲み、出勤していない日に報酬を支給した場合はその日付と金額を書く欄です。期間が終わらないと書けないのは、この欄があるからでもあります。
勤務先に渡すときは、産前分と産後分を分けて出すつもりかどうかを先に伝えてください。事業主の証明が2回必要になることが分かっていれば、産後に頼むときの調整が短くなります。
短時間でも働いた日は対象にならない
提出時期とは別に、期間の中から落ちる日があります。
記入の手引きの支給要件は、休んだ期間に給与の支払いがあっても、その給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は差額が支給されるとしたうえで、括弧でこう付け加えています。「短時間でも就労された日については、給与の額を問わず出産手当金は支給されません。」
金額の多い少ないで判定されるのは、働いていない日に支払われた報酬のほうです。実際に少しでも働いた日は、その日ごと対象から外れます。申請期間を書くときは、在宅で短時間だけ対応した日がなかったかを確認してください。
なお対象になる休業期間には公休日も含めます。記入の手引きは申請期間の欄を「出産のため労務に服さなかった期間(公休日を含む)」と説明しています。
添付しないほうがよい書類がある
出し直しを避けたくて書類を足す人がいますが、協会けんぽは逆のことを案内しています。
申請書のページは「申請時の事務負担の軽減及び事務の効率化を図るため、賃金台帳や出勤簿の写し等、不要な書類の添付はしないようご注意ください」としています。記入の手引きの注記も同じで、出勤簿や賃金台帳の写し等は添付しないよう求めています。
一方で、必要になる場合もはっきりしています。支給開始日以前の12か月以内に事業所の変更があった方は、健康保険加入状況等申告書が要ります。被保険者が亡くなり相続人が請求する場合は、続柄がわかる戸籍謄本等です。記号・番号を書いた場合、マイナンバーの記入は不要になります。
提出した書類は返ってきません。記入の手引きは「給付金の支給決定後は、ご提出いただいた書類の返却はできません」としています。手元に控えが要るものは、出す前にコピーを取ってください。
出す先と、振り込みまで
紙の申請書は、加入している協会けんぽ支部へ郵送します。加入している支部は、「資格情報のお知らせ」またはマイナポータルの健康保険証から資格情報を開くと確認できます。
電子申請を使う場合、提出先の支部を選ぶ必要はありません(社会保険労務士が代理で出す場合は支部指定が必要です)。協会けんぽは電子申請について、システムチェックにより記載もれなどのミスを防げること、申請後の処理状況をスマートフォンやパソコンから確認できることを挙げています。
支払いの目安は、申請書のページに書かれています。「審査の結果お支払い可能であれば、受付日から10営業日以内にお支払いいたします。」これは受付からの日数なので、提出できる日が後ろにずれれば入金もそのぶん後ろになります。産前分を先に出す判断が効くのは、ここです。
期限は反対側にある
早く出せない代わりに、遅れたときの余裕はあります。
協会けんぽは、健康保険給付を受ける権利は受けることができるようになった日の翌日(消滅時効の起算日)から2年で時効になり、出産手当金の起算日は「出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日」としています。
期間の末日を基準に一括で切れるのではなく、休んだ日ごとに1日ずつ進みます。古い日から順に落ちていく形なので、2年が近い場合は全部を失う前に出せる分を出してください。
今日できること
- 自分の産後56日目を数える。 出産日の翌日を1日目として56日目を出す。その翌日が、産後分を出せる最短日です
- 分けるかどうかを決める。 入金を早めたいなら産前分を先に。証明を1回で済ませたいなら、1回目は出産後に出す
- 勤務先に回数を伝える。 事業主の証明は申請のたびに必要です
- 短時間でも働いた日がないか確認する。 その日は給与の額に関係なく対象外です
- 余計な添付書類を外す。 賃金台帳や出勤簿の写しは求められていません
参考にした公式ページ
- 全国健康保険協会「健康保険出産手当金支給申請書 記入の手引き」(2026年6月版・PDF)
- 全国健康保険協会「健康保険出産手当金支給申請書」申請方法・提出先・添付書類・申請期限
- 全国健康保険協会 よくあるご質問「出産で会社を休んだとき(出産手当金)」
- 全国健康保険協会「出産手当金」給付範囲・支給期間・資格喪失後の支給