結論:誕生日の前日が属する月の分から。明細に出るのはその翌月
介護保険料は、40歳の誕生日そのものではなく「40歳に達した日」を基準に始まります。協会けんぽの案内はこの日を誕生日の前日と説明し、その日が属する月の分から健康保険料と一緒に徴収すると書いています。5月2日生まれなら5月1日が基準日で、5月分から。5月1日生まれなら4月30日が基準日になり、4月分から始まります。誕生月より前の月から引かれるのは、この1日生まれの人だけです。
もう一つのずれは会社の側にあります。健康保険法167条は、事業主が「前月の標準報酬月額に係る保険料」を給与から差し引けると定めています。多くの会社がこの方式で、5月分の保険料は6月に支払う給与から引きます。だから5月2日生まれの人の明細に介護保険料が現れるのは6月支給分で、誕生月の明細には何も出ません。協会けんぽの案内も、5月分から徴収される人について事業所には6月請求分になると添えています。
手続きは何もいりません。日本年金機構は、40歳になったときと65歳になったときの届出を不要としています。生年月日から機構が判定し、会社への請求額に上乗せされる仕組みです。
誕生日から「最初に引かれる月」を出す表
| 誕生日 | 40歳に達した日 | 介護保険料が付く最初の月 | 前月分を翌月に引く会社で明細に出る給与 |
|---|---|---|---|
| 5月2日 | 5月1日 | 5月分 | 6月支給分 |
| 5月15日 | 5月14日 | 5月分 | 6月支給分 |
| 5月31日 | 5月30日 | 5月分 | 6月支給分 |
| 5月1日 | 4月30日 | 4月分 | 5月支給分 |
| 6月1日 | 5月31日 | 5月分 | 6月支給分 |
読み方は二段階です。まず誕生日の前日が何月かを見る。次に、その月の分がどの給与から引かれるかを会社の方式で決める。当月分を当月の給与から引く会社なら、表の右端は1か月手前にずれます。
自分の会社がどちらの方式かは、明細だけでは分かりにくいものです。入社した月の給与ですでに健康保険料が引かれていれば当月徴収、翌月から引かれ始めていれば前月分徴収と見当がつきます。分からなければ給与担当に「社会保険料は当月分と前月分のどちらを引いていますか」と聞くと、一言で答えが返ります。
なぜ「誕生日の前日」なのか
介護保険法10条は、医療保険に入っている人が「四十歳に達したとき」に介護保険の被保険者の資格を取ると定めています。法律上、年齢は誕生日の前日に一つ上がるため、協会けんぽの案内は「40歳の誕生日の前日」を資格取得日としています。健康保険法156条は、この第2号被保険者である被保険者の保険料額を「一般保険料等額」と「介護保険料額」の合算額と決めているので、資格取得日が属する月の分から上乗せが始まる、という流れです。
対象は会社員だけではありません。介護保険法9条は第2号被保険者を「市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者」としているので、国民健康保険の人も同じ月から対象になります。会社員は給与から、国民健康保険の人は市区町村が計算する保険料に介護分が乗る形で払います。国保の介護分の金額は市区町村ごとに決まるので、40歳を迎えた年度の納付通知書で確かめてください。
いくら増えるか
介護保険料額は、標準報酬月額と標準賞与額に介護保険料率を掛けた額です。健康保険法161条により本人と会社が半分ずつ負担するので、給与から引かれるのはその半額になります。
協会けんぽの介護保険料率は全国一律で、年度ごとに改定されます。2026年度(令和8年度)は1.62%で、2026年3月分から適用されています。本人負担はその半分の0.81%なので、標準報酬月額30万円なら月2,430円、賞与にも同じ率がかかります。最新の率は協会けんぽの都道府県別保険料額表に載っていて、40歳以上の欄と40歳未満の欄の差がそのまま介護保険料です。
賞与にもかかる。こちらは翌月払いのずれがない
健康保険法156条が介護保険料額の計算に「標準賞与額」も含めているとおり、賞与にも同じ率がかかります。ただし引かれ方が月給と違います。同法167条2項は、事業主が賞与を支払うときにその賞与に係る保険料を差し引けると定めているので、賞与の保険料は支払われた賞与そのものから引かれ、翌月払いのずれはありません。
判断の基準は、賞与が支払われた月が資格取得日の属する月以降かどうかです。5月2日生まれの人が4月に賞与を受け取れば介護分はなく、6月の賞与には付きます。5月1日生まれで4月に賞与があれば、4月分から第2号被保険者なので介護分が乗ります。月給では誕生月に何も変わらず、賞与では誕生月からすぐ変わる。この差を知らないと、賞与明細だけ先に増えたように見えます。
介護保険料と間違えやすい二つの増え方
40歳前後で健康保険料の控除額が増えたとき、原因が介護保険料とは限りません。給与明細で健康保険料と介護保険料が別の行になっていない会社では、次の二つと見分ける必要があります。
一つは年度替わりの率改定です。協会けんぽの健康保険料率と介護保険料率は年度ごとに見直され、改定後の率が反映される給与から控除額が変わります。40歳の到達が春に重なると、率の改定と介護分の追加が同じ明細に同時に現れます。
もう一つは標準報酬月額の見直しです。毎年の定時決定で標準報酬月額が変わると、健康保険料と厚生年金保険料が一緒に動きます。介護保険料の追加だけなら厚生年金保険料は変わらないので、明細の厚生年金の行が前月と同じかどうかを見れば、増えた原因が介護分なのか等級の変更なのかを切り分けられます。
配偶者が先に40歳になったとき
夫婦で年齢が違うと、扶養に入っている側が先に40歳を迎えることがあります。日本年金機構のQ&Aは、協会けんぽの場合「40歳未満の方は、40歳以上の方を被扶養者にしても介護保険料を納める必要はありません」と答えています。介護保険料が付くかどうかは被保険者本人の年齢で決まり、被扶養者の分が別に請求されることはありません。
健康保険組合は別です。同じQ&Aは、組合の規約によって40歳未満の被保険者に40歳以上の被扶養者の介護保険料を求める場合があると書いています。健康保険法ではこの被保険者を「特定被保険者」と呼びます。組合健保の人は、扶養家族が40歳になる前に組合へ「特定被保険者の制度はありますか」と聞いておくと、明細を見て驚かずに済みます。
届出が必要になる例外
40歳と65歳の到達では届出は不要ですが、年金機構は次の場合に会社経由の届出を求めています。転勤で日本国内から外国へ転居したとき、または外国から国内に戻ったとき。介護保険施設や特定施設に入所・退所したとき。入管法の在留期間が3か月を超えるものとして決まっていないとき、または決まったとき。海外赴任で住民票を抜く人は、この届出で介護保険料の徴収が止まります。
65歳で給与からの徴収は止まる
終わりも同じ数え方です。協会けんぽの案内は、満65歳に達したときから介護保険料が徴収されなくなると書いています。健康保険法156条2項は、第2号被保険者に該当しなくなった月の保険料額を一般保険料等額だけとしているので、65歳の誕生日の前日が属する月の分から介護分が消えます。1日生まれは前月分からです。
止まるのは給与からの徴収であって、保険料そのものではありません。65歳からは第1号被保険者になり、住んでいる市区町村が保険料を決めて徴収します。納付書で払うのか年金から引かれるのかは市区町村の案内で決まるので、65歳の前後に届く通知をそのまま捨てないでください。
今日できること
- 誕生日の前日が何月かを確かめる。前月にずれるのは1日生まれだけです。
- 直近の給与明細の控除欄を見る。「介護保険料」の行が見当たらなければ、健康保険料の額が誕生月の翌月に増えていないかを見てください。
- 会社が当月分と前月分のどちらを引いているかを給与担当に聞く。手取りが減り始める月がこれで確定します。
- 減る額の目安を出す。2026年度の本人負担は標準報酬月額の0.81%で、率は年度ごとに変わります。
いちばん多い勘違いは、誕生月の明細に介護保険料がないのを見て「うちの会社は引き忘れている」と思うことです。前月分を翌月に引く会社なら、それが正常な明細です。逆に、誕生月の翌々月になっても健康保険料の額が変わっていなければ、そのときは給与担当に「介護保険料は何月分から引かれていますか」と聞いてください。