年末調整で税金が戻らず、12月の給与から追加で引かれる。手取りが大きく減るときは不足額を1月・2月に繰り延べられる

この記事の要点

年末調整で税金が足りなければ、不足額は12月の給与から引かれ、引ききれない分は翌年の給与から引かれます。不足額を引くと12月の手取りが1月から前月までの平均の7割未満になる人は、最後の給与日の前日までに勤務先経由で申請すれば、不足額を翌年1月と2月に半分ずつ繰り延べられます。

  1. 年末調整で不足額が出たら、12月(その年最後)の給与から引かれる。引ききれない分は翌年の給与から順次引かれる
  2. 不足額を引いたあとの12月の手取りが、1月から前月までの手取りの平均月額の7割に満たない人は、不足額の徴収を翌年1月と2月に半分ずつ繰り延べられる
  3. 繰延べには税務署長の承認が要る。申請書は本人が作り、その年最後に給与を受ける日の前日までに勤務先を経由して出す。7割未満なら税務署長は承認しなければならないと定められている
どうする?編集部 · · 読了 約7分
目次(9項目)
  1. 年末調整で「不足額」が出るしくみ
  2. 不足額はいつ、どの給与から引かれるか
  3. 手取りが7割を切るなら、1月と2月に繰り延べられる
  4. 対象になる人
  5. 繰り延べられる金額と、引かれる月
  6. 申請のしかた
  7. 還付が12月に戻りきらないとき
  8. この記事で確認できなかったこと
  9. 参考資料

年末調整で税金が戻らず、反対に12月の給与から所得税が多く引かれることがあります。1年間に給与から源泉徴収した税額の合計が、1年分として納めるべき税額より少なかった場合で、国税庁の手引き「年末調整のしかた」はこの差額を「不足額」と呼び、本人から徴収するとしています。

不足額は、まず年末調整をする月(通常は12月)の給与から引かれます。引ききれなければ、翌年の給与から順に引かれます。

不足額を一度に引かれると12月の手取りが大きく減る人には、徴収を翌年1月と2月に分けてもらう「繰延べ」の制度があります。条件は、12月の手取りが、1月から前月までの手取りの平均月額の7割に満たないことです。税務署長の承認が必要で、申請書はその年最後に給与を受ける日の前日までに、勤務先を経由して出します。12月の給与日が近い人は、先に給与担当へ相談してください。

年末調整で「不足額」が出るしくみ

タックスアンサーNo.2662は、年末調整を、1年間に源泉徴収した所得税と復興特別所得税の合計額を、その人が1年間に納めるべき税額に一致させる手続きと説明しています。源泉徴収した額のほうが多ければ差額を還付し、少なければ差額を徴収します。

手引きは、毎月の源泉徴収税額の合計と年税額が一致しないのが通常だとしたうえで、理由を三つ挙げています。

  1. 源泉徴収税額表は、年間を通じて毎月の給与の額が変わらないものとして作られているが、実際には年の途中で給与の額が変わる
  2. 年の途中で源泉控除対象親族の数などが変わっても、その後の支払分から直すだけで、さかのぼって各月の税額を直さない
  3. 生命保険料や地震保険料の控除などは、年末調整のときに控除する

どちらに転ぶかは人によって違います。手引きには還付になる場合の例として、年の途中で扶養親族が増えた場合、年間の賞与が比較的少なかった場合、住宅借入金等特別控除がある場合などが載っています。

不足が出る場面としては、タックスアンサーNo.2671が、年末調整のあと12月31日までに子供の就職などで控除対象扶養親族などが減った場合を挙げています。この場合、勤務先は年末調整をやり直して不足している税額を徴収することになっており、このやり直しは翌年1月末日以降でも行う必要があるとされています。手引きにはもう一つ、保険料控除の証明書類を翌年1月末日までに出す条件で控除を入れてもらったのに期日までに出さなかった場合、勤務先は控除額を計算し直して不足額を徴収する、という扱いも載っています。

不足額はいつ、どの給与から引かれるか

手引きと所得税法192条1項によると、不足額は次の順で徴収されます。

  1. 年末調整をする月の給与から徴収する
  2. それでも不足額が残るときは、その後に支払う給与(翌年の給与)から順次徴収する

年末調整は、その年最後に給与を支払うときに行うことになっているので、通常は12月です。同じ月に普通給与と賞与があり、賞与のほうを先に支払う場合は、賞与を支払う際に年末調整をしてもよいとされています。この場合は、不足額が賞与の明細で引かれることになります。

12月の給与から引ききれずに翌年へ回った分は、繰延べの承認がなくても翌年の給与から引かれます。ただ、その場合は12月の給与で引けるだけ引かれたうえでの残りです。12月の手取りが大きく減るのを避けたいなら、次の繰延べを使います。

手取りが7割を切るなら、1月と2月に繰り延べられる

所得税法192条2項は、12月の手取りが通常の月に比べて著しく少ないと認められる場合に、税務署長の承認を受ければ、不足額の一部を翌年に回せると定めています。

対象になる人

国税庁の手続案内(A2-10)は、対象者を次のように書いています。

不足額の全額を本年最後に支払う給与から徴収すると12月分の税引後の給与の金額が本年1月から11月までの税引後の給与の平均月割額の70%未満となる人

比べる二つの金額は、法令では次のように決まっています。

  • 12月の手取り。 その年最後に給与を受ける月に支払われる給与の総額から、その月に源泉徴収される所得税と、年末調整で徴収される不足額を引いた残り。賞与がある月は賞与も含めます。
  • 平均月割額。 その年1月から前月までに支払われた給与の総額から、そこで源泉徴収された所得税の合計を引き、月数で割った額。年の途中で入社した人は、最初に給与を受けた月から数えます(所得税法施行令315条)。

法令の文言では、引くのは所得税の額で、社会保険料や住民税を引くとは書かれていません。振込額をそのまま比べるのとは違う可能性があるので、実際の金額は勤務先に計算してもらってください。

たとえば、1月から11月までの平均月割額が30万円なら、その7割は21万円です。12月の給与の総額から所得税と不足額を引いた残りが21万円に満たなければ、申請できます。これは法令の計算方法に数字を当てはめた例で、個別の金額は源泉徴収簿をもとに勤務先が出すものです。

所得税法施行令316条2項は、この条件に当てはまるときは、税務署長は承認をしなければならないとしています。

繰り延べられる金額と、引かれる月

所得税法192条2項では、承認された金額の2分の1ずつを翌年1月と2月の給与から徴収します。記載要領によると、半分に分けたときの端数はすべて1月に回します。1月と2月で引ききれなければ、3月以後の給与から順次引かれます。

承認された金額を不足額から差し引いた残りは、12月の給与から徴収されます。

繰り延べられるのは、年末調整で出た不足額です。手引きは、12月の給与そのものにかかる通常の税額は繰延べの対象にならず、繰延べを受ける人は12月の給与についても通常どおり税額を計算したうえで年末調整をしなければならない、としています。

なお、所得税法192条2項のただし書きは、年末調整のあとに退職手当等を支払うことになった場合は、承認を受けた金額のうちまだ徴収していない分をその支払いの際に徴収すると定めています。

申請のしかた

手続案内と施行令316条によると、手続きは次のとおりです。

  • 申請する人。 繰延べの承認を受けようとする本人
  • 提出先。 給与の支払者を経由して、その支払者の所轄税務署長
  • 期限。 その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで
  • 方法。 申請書の様式に記入してPDFにし、給与の支払者を経由してe-Taxソフトで提出する。書面で作った場合は、給与の支払者を経由して持参または送付する

記載要領によると、申請書は「年末調整による不足額徴収繰延承認(却下)通知書」とあわせて作ります。書く欄には、12月に支払われる給与の総額とその源泉徴収税額、前月までの手取りの平均月割額、年末調整による不足額、繰延べを受けようとする額と1月・2月の月別の徴収額があります。

これらはどれも勤務先の給与計算に基づく数字で、本人だけでは書けません。期限はその年最後の給与日の前日なので、年末調整の書類を出したあとに不足が大きくなりそうだと言われたら、その時点で給与担当に繰延べを相談してください。

承認するときは、税務署長が書面で、勤務先を経由して本人に通知します。承認を受けた人の源泉徴収簿には、勤務先が承認の月日や番号を書いておくことになっています。

還付が12月に戻りきらないとき

反対に、年末調整で税金を納めすぎていた(過納額が出た)場合の戻り方も、手引きに書かれています。

まず、勤務先は過納額を、年末調整をした月分として国に納める源泉所得税から差し引いて本人に還付します。通常は12月の給与と一緒に戻ります。その月の分だけで戻しきれないときは、その後に納める源泉所得税から差し引いて順次還付します。この場合、12月に全額は戻らず、残りは翌月以降に順に戻ります。

勤務先のところで還付できないときは、税務署から還付されます。手引きと手続案内(A2-17)が挙げる場合は次のとおりです。

  • 解散や廃業などで給与の支払者でなくなった、または納める源泉所得税がなくなった
  • 過納額が多く、還付することになった日の翌月から2か月を過ぎても還付しきれないと見込まれる、または実際に残っている

この場合は勤務先が「年末調整過納額還付請求書 兼 残存過納額明細書」を所轄の税務署に出し、税務署が勤務先にまとめて還付するか、本人に直接還付します。退職した人などで委任状を出せない人の分は、税務署から本人に直接還付されます。手続案内によると、この請求は、還付できなくなった事由が生じた日から5年の間に出さないと時効で請求権が消えます。この請求書を出すのは勤務先なので、退職後に年末調整の還付が残っていると分かったら、まず元の勤務先に請求の予定を確かめてください。

この記事で確認できなかったこと

2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。

  • 不足額を払い終える前に退職した場合(退職手当等を支払う場合を除く)に、残りを誰がどう精算するか。
  • 繰延べの申請が期限に間に合わなかった場合に、ほかに分割の方法があるか。
  • 年末調整の不足額を、勤務先での徴収ではなく本人の確定申告で納める扱いがあるか。
  • 12月の手取りを比べるときに、社会保険料などをどう扱うか。法令の文言は所得税の額を引くと書いているだけで、それ以上の説明は今回の資料にありませんでした。

参考資料

Photo by Volkan Olmez on Unsplash

参考資料

  1. 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた
  2. 国税庁 A2-10 年末調整による不足額徴収繰延の承認申請
  3. 国税庁 年末調整による不足額徴収繰延承認申請書の記載要領等
  4. 国税庁 A2-17 源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求
  5. 国税庁 タックスアンサーNo.2662 年末調整のしかた
  6. 国税庁 タックスアンサーNo.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき
  7. e-Gov法令検索 所得税法(第191条 過納額の還付、第192条 不足額の徴収)
  8. e-Gov法令検索 所得税法施行令(第315条、第316条)

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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