まず4つの金額の位置を確認
源泉徴収票で最初に目に入るのは、上段右側の4つの金額欄です。左から順に次の名前が並んでいます。
- 支払金額: その年に会社が支払った給与・賞与の合計(額面)
- 給与所得控除後の金額: 支払金額から給与所得控除(みなし経費)を引いた後の数字
- 所得控除の額の合計額: 基礎控除・社会保険料・扶養控除などの合計
- 源泉徴収税額: 1年分の所得税として国に納めた金額(住民税は含まれない)
この4つの数字は、左から右へ計算が進んでいきます。途中で挟まる「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」は名前が似ていて混乱しやすいですが、性質が違います。
支払金額 → 給与所得控除後 の流れ
「支払金額」と「給与所得控除後の金額」の関係は、引き算で結びます。給与所得控除は、会社員に経費の代わりとして自動的に差し引かれる金額です。
給与所得控除の表は、手元の源泉徴収票が何年分かで違います。2025年12月〜2026年1月に受け取ったのは2025年分(令和7年分)、2026年12月の年末調整からは2026年分(令和8年分)の表になります。2026年分は最低額が65万円から74万円に上がりました(2026年12月1日施行)。
| 支払金額(給与の収入金額) | 2025年分 | 2026年分・2027年分 |
|---|---|---|
| 190万円以下 | 65万円 | 74万円 |
| 190万円超220万円以下 | 収入×30%+8万円 | 74万円 |
| 220万円超360万円以下 | 収入×30%+8万円 | 収入×30%+8万円 |
| 360万円超660万円以下 | 収入×20%+44万円 | 収入×20%+44万円 |
| 660万円超850万円以下 | 収入×10%+110万円 | 収入×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) | 195万円(上限) |
2024年分までは最低額55万円で、162.5万円〜180万円の帯には「×40%−10万円」の式がありました。古い解説にはこの式がまだ載っているので、年分を確かめてから読んでください。
もう一つ、支払金額が660万円未満の人の源泉徴収票は、この式ではなく国税庁の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で出した金額が印字されます。自分で式に当てはめると、数百円から数千円ずれることがあります。
たとえば支払金額が500万円であれば、給与所得控除は500万円×20%+44万円=144万円。給与所得控除後の金額は500万円ー144万円=356万円となります。
ここでは本人の家族構成や保険料の状況は関係せず、年収だけで自動的に決まる金額です。
所得控除の額の合計 とは何の合算か
その隣の「所得控除の額の合計額」は、本人の事情によって変わる金額の合計です。源泉徴収票の左下にある各種控除欄に金額が並んでいます。
主な構成要素を見ていきます。
基礎控除
すべての人に適用される控除です。2024年分までは一律48万円でしたが、2025年分から本人の合計所得金額で金額が変わる形になり、2026年分でさらに上がりました。
| 本人の合計所得金額 | 2025年分 | 2026年分・2027年分 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
給与だけの人なら、合計所得489万円は給与665万5,556円にあたります。前年の源泉徴収票より所得控除の合計が大きく増えていたら、まずこの欄の変化を疑ってください。
社会保険料控除
健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険として給与から天引きされた1年分の合計です。源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に印字されています。会社員の場合、年収の14〜16%前後になることが多いです。
配偶者控除・配偶者特別控除
本人と配偶者の所得に応じて0〜38万円(70歳以上の配偶者は最大48万円)が控除されます。配偶者の給与収入が2025年分は123万円以下なら配偶者控除、123万円超201万5,999円以下なら配偶者特別控除の対象でした。2026年分はそれぞれ136万円以下、136万円超207万円以下に広がります。
扶養控除
16歳以上の扶養親族1人あたり38万円が基本です。19〜22歳の子(特定扶養親族)は63万円、70歳以上の親で同居の場合は58万円です。扶養に入れられるのは、家族の給与収入が2025年分は123万円以下、2026年分は136万円以下の場合です。
生命保険料控除・地震保険料控除
控除証明書を年末調整で提出した場合、上限12万円までが反映されます。
iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)
iDeCoに加入していて、年末調整で証明書を提出した方は、1年分の掛金が全額控除に算入されます。
これらの合計が「所得控除の額の合計額」として記載されます。
課税対象額と税額の関係
源泉徴収票には「課税対象額」という欄は明示されていませんが、実際には次の引き算で計算されています。
給与所得控除後の金額 ー 所得控除の額の合計額 = 課税所得(千円未満切り捨て)
たとえば、給与所得控除後356万円ー所得控除合計150万円=206万円が課税所得です。
この課税所得に所得税率をかけて、復興特別所得税2.1%を加算したのが「源泉徴収税額」になります。
所得税率は段階的に変わります(国税庁 No.2260、2026年4月1日現在の法令)。
- 195万円以下: 5%
- 195万円〜330万円: 10%(控除額97,500円)
- 330万円〜695万円: 20%(控除額427,500円)
- 695万円〜900万円: 23%(控除額636,000円)
- 900万円〜1,800万円: 33%(控除額1,536,000円)
- 1,800万円〜4,000万円: 40%(控除額2,796,000円)
- 4,000万円超: 45%(控除額4,796,000円)
課税所得206万円の場合、税額は206万円×10%ー9.75万円=10万8,500円。これに復興特別所得税2.1%を加えた約11万円が源泉徴収税額として記載されます。
住宅ローン控除がある人の見え方
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている人の源泉徴収票では、計算がもう一段進みます。
源泉徴収票の中段の摘要欄に「住宅借入金等特別控除可能額」「住宅借入金等特別控除の額」が印字されています。
住宅ローン控除は所得控除ではなく『税額控除』です。先ほど計算した所得税額から、住宅ローン残高×0.7%(上限あり)が直接差し引かれます。
このため、源泉徴収税額が0円になっているケースは、所得税が住宅ローン控除で全額消えた状態を示しています。引き切れなかった控除可能額があれば、住民税からも一部引かれる仕組みになっており、翌年の住民税通知でその効果が見えます。
前年と数字が違うときの確認順序
源泉徴収票を受け取ったときに「去年と数字が違う」と感じる方は多いはずです。確認は次の順序で行うと原因を絞りやすいです。
- 支払金額: 残業代・ボーナス・昇給・休業の有無で変動
- 社会保険料等の金額: 保険料率の改定・標準報酬月額の見直し
- 所得控除の額の合計額: 扶養人数・配偶者の年収・iDeCo掛金の増減
- 源泉徴収税額: 上記の合算結果。最も大きく動くのは扶養と社会保険料
2025年分は基礎控除と給与所得控除の引き上げが初めて入った年です。2026年分は、12月の年末調整で基礎控除(最大104万円)と給与所得控除(最低74万円)がさらに上がることと、2026年4月分の保険料から始まった子ども・子育て支援金(健康保険料に上乗せ)の両方が反映されます。前年と比べて控除欄の数字が動いている場合は、まず社会保険料と基礎控除の2点を見比べてください。
確定申告で使うときの注意
源泉徴収票を確定申告に使う場面は次のとおりです。
- 医療費控除(年間10万円超)
- ふるさと納税の控除(ワンストップを使わない場合)
- 住宅ローン控除の初年度申請
- 副業や雑所得の合算
- 給与所得が2か所以上ある場合
源泉徴収票そのものは確定申告書に添付不要になりましたが、入力に使う必要があります。マイナポータル連携を使えば、e-Taxに自動転記される機能があります(連携には事前準備が必要)。
よくある誤解
- 『支払金額=手取り』ではない: 支払金額は額面で、税金や社会保険料はその後に差し引かれます
- 『給与所得控除後=課税対象』ではない: ここからさらに所得控除を引いた後の金額が課税対象です
- 『所得控除の額が高いほど得』とは限らない: 所得控除は自分の支払いや家族の状況を反映するもので、無理に増やせる性質ではありません
- 『源泉徴収票には住民税が書かれている』ではない: 住民税は翌年6月以降に決定する別の書類(住民税決定通知書)で確認します