転職した年の年末調整、前職の源泉徴収票が届かない。締切に間に合わないときの動かし方

この記事の要点

前職の源泉徴収票が年末調整に間に合わなくても払い過ぎた所得税は必ず戻せるので、まず前職に発行と発送先を確認し、届かなければ所轄税務署へ源泉徴収票不交付の届出書を出したうえで、翌年1月から5年以内の還付申告で精算してください。

  1. 前職の給与額と徴収された所得税・社会保険料が確認できないと、国税庁の説明どおり年末調整は行えず、本人の確定申告での精算に切り替わる
  2. 源泉徴収票の交付は所得税法226条の義務。年の途中で退職した人には退職の日以後1か月以内が期限で、9月末退職なら10月末にはもう遅れている
  3. 電話で聞くのは「発行済みか」と「いつ、どの住所へ送ったか」の二つ。退職後に引っ越して旧住所へ届き、会社に戻っている例がいちばん多い
どうする?編集部 · · 読了 約6分
目次(10項目)
  1. 紙が1枚足りないと、年末調整そのものが止まる
  2. 「退職から1か月」は、会社の親切ではなく義務
  3. 電話で確かめるのは、送った先の住所
  4. 会社が消えていて、電話がつながらないとき
  5. 税務署に出すのは、届出書1枚
  6. 間に合わないと分かった時点で、担当者に言う
  7. 確定申告に回っても、戻る額は変わらない
  8. この話が当てはまらない人
  9. 今日と来週にやること
  10. 確認に使った国税庁のページ

10月や11月に転職した方から、毎年この時期に同じ相談が来ます。新しい勤務先で年末調整の書類を渡されたのに、前の会社の源泉徴収票が手元にない。締切は来週。

先に結論を書きます。前職の1枚が間に合わなくても、払い過ぎた所得税が戻らないまま終わることはありません。年末調整に載せられなければ、翌年に自分で確定申告して精算します。今日動かすのは前職の給与担当への電話1本で、聞くのは「発行済みか」「いつ、どの住所へ送ったか」の二つだけです。

紙が1枚足りないと、年末調整そのものが止まる

いまの勤務先が把握しているのは、自社が払った給与だけです。1月から退職月までに前の会社が払った給与と、そこから引かれた所得税・社会保険料を足さないと、その年の税額が出せません。だから前職の源泉徴収票を出してくださいと言われます。

国税庁はこの点をはっきり書いています。ほかの会社などから支払を受けた給与の金額や、その給与から徴収された所得税・社会保険料の額を確認できないときには、年末調整を行うことはできず、その人が確定申告で精算することになる、と。

担当者が融通を利かせないのではなく、確認できない状態では計算そのものが動かない。そう分かっていると、次の電話の内容が変わります。

なお、年の途中で就職して年末まで勤めている人が、それだけで年末調整の対象から外れることはありません。控除も月割りにはならず、基礎控除も扶養控除も1年分そのまま認められます。3月に学校を卒業して4月から働き始めた人が9か月分に減らされないのと同じです。

「退職から1か月」は、会社の親切ではなく義務

源泉徴収票の交付は、所得税法226条で給与を払った側に義務づけられています。期限は二つに分かれます。年末まで在職した人には翌年1月31日まで。年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内です。

9月末に辞めたなら10月末が期限。11月に入っても届いていないなら、もう遅れている状態です。

「まだ年末じゃないので出せません」と言われることがありますが、それは在職者に向けた期限の話です。退職者は別扱いだと知ったうえでかけると、話が早く済みます。

電話で確かめるのは、送った先の住所

かける先は前職の総務か人事、小さい会社なら経理です。給与計算を社労士事務所や代行会社に委託していると、実際に発行するのはそちらで、社内には控えしかないこともあります。

聞くことを先に決めておきます。

  • すでに発行しているか、まだか
  • 発行済みなら、発送日と宛先の住所
  • 紙の郵送か、ウェブの明細サービスからのダウンロードか

いちばん多いのは、退職後に引っ越したせいで旧住所に届き、そのまま会社へ返送されているパターンです。転居先を伝えて再送を頼めば、それで終わります。

電子交付の会社では、退職と同時に明細サービスのログインが切れて、置いてあるのに取り出せない状態になることがあります。この場合はPDFをメールで送ってもらうか、紙で出してもらいます。

やりとりした日付、相手の名前、返答の内容は短くメモしておいてください。あとで税務署に届出を出すことになったとき、この記録がそのまま材料になります。

会社が消えていて、電話がつながらないとき

倒産や廃業で連絡先が生きていない場合があります。破産手続に入っているなら、交付を頼む相手は破産管財人です。連絡先は、裁判所の手続や債権者あての通知からたどれます。

所在だけなら、国税庁の法人番号公表サイトや登記情報で追えることがあります。それでも誰にもつながらないなら、次の届出に進んでください。

同時にやっておきたいのが、給与明細を1月分から退職月分まで集めることです。振込のある通帳やアプリの履歴も残しておきます。源泉徴収票が最後まで出てこない場合、金額を示せる材料はこれだけになります。

税務署に出すのは、届出書1枚

国税庁には「源泉徴収票不交付の届出手続」があります。交付されない状況を税務署に伝え、支払者へ交付を促してもらうための手続きです。根拠は同じ所得税法226条になります。

出す先は、前の会社の管轄ではなく自分の所轄税務署です。作成はe-Taxソフトでも書面でもかまいません。添付書類は国税庁がチェックリストを用意しているので、送る前にそこで確かめます。給与明細のコピーは手元にそろえておいてください。

一つ注意があります。これは請求の代わりではありません。届出を出したからといって源泉徴収票が必ず届くわけではなく、行政に動いてもらう入口にすぎない。並行して確定申告の準備を進めておくほうが確実です。

間に合わないと分かった時点で、担当者に言う

いちばんまずいのは、黙ったまま社内の締切を過ぎることです。担当者の手元では単なる未提出として処理され、年末調整に入りません。

社内の締切は会社ごとに違います。11月中に締めるところもあれば、12月の給与計算の直前まで待つところもあります。前職分が未着だと伝えたうえで、いつまでなら間に合うかを聞いてください。あとから届いた分を受け付けて計算し直してくれる会社もあります。

伝え方は難しく考えなくて大丈夫です。「前職に交付を請求していますが、まだ届いていません。届いた場合、いつまでにお渡しすれば年末調整に入りますか」。これで足ります。

確定申告に回っても、戻る額は変わらない

年末調整でも確定申告でも、その年の税額の計算は同じです。手続きの場所が会社から税務署に移るだけで、還付される額が減ることはありません。

還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間、所轄税務署に提出できます。2月16日を待つ必要はなく、1月のうちに出せば窓口も混みません。

持参するもの、または入力するものは決まっています。

  • 前職と現職の源泉徴収票
  • 生命保険料や地震保険料、iDeCoなどの控除証明書
  • マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
  • 還付金を振り込む本人名義の口座

ひとつ引っかかりやすい点があります。ふるさと納税をワンストップ特例で済ませていた人が確定申告をすると、その特例は効かなくなります。寄附金控除を申告書に入れ直してください。忘れると、住民税から引かれるはずだった分が消えます。

この話が当てはまらない人

すべての転職者が同じ道を通るわけではありません。次に当てはまるなら、前職の源泉徴収票を待つかどうかという話自体がずれます。

  • 前職の収入が給与ではなく業務委託の報酬だった。届くのは源泉徴収票ではなく支払調書で、そもそも年末調整の対象になりません。
  • 年内に退職して、年末時点でどこにも勤めていない。年末調整をしてくれる会社がないので、はじめから確定申告です。
  • 給与収入が2,000万円を超える。年末調整の対象外なので、前職分の有無にかかわらず自分で申告します。

今日と来週にやること

今日は前職へ電話して、発行状況と発送先を確かめる。ここで止めてかまいません。

来週までに届かなければ、いまの勤務先の担当者に未着を伝えて期限を聞く。並行して給与明細をそろえておく。

12月に入っても交付されないなら、所轄税務署へ源泉徴収票不交付の届出書を出し、翌年1月からの還付申告に切り替える。

この順番で動けば、どこで止まってもお金は戻ります。

確認に使った国税庁のページ

  • 国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」(前職分を確認できないときは年末調整を行えず、確定申告で精算する)
  • 国税庁 F5-4「源泉徴収票不交付の届出手続」(提出先、e-Taxまたは書面、添付書類のチェックリスト、根拠は所得税法226条)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」(その年の翌年1月1日から5年間、所轄税務署へ提出できる)
Photo by Blake Wisz on Unsplash

参考資料

  1. 国税庁 タックスアンサー No.2674 中途就職者の年末調整
  2. 国税庁 F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続
  3. 国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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