傷病手当金と失業保険は同時にもらえる? 病気で退職した人がまず出す「受給期間の延長」

結論

同時には受け取れません。失業保険は「いつでも就職できる能力がある」ことが条件で、傷病手当金は労務不能が条件だからです。退職後に出すのは受給期間延長申請書ひとつ。離職日の翌日から30日が過ぎた日以降、つまり31日目から申請でき、郵送でも代理人(委任状)でも出せます。延長の上限は3年です。

どうする?編集部 · · 読了 約16分
目次(16項目)
  1. 同時には受け取れない。退職後にやることは一つ
  2. 退職後の傷病手当金は、一度「働ける」状態になったら戻らない
  3. 延長の解除・求職の申込みの前に確かめる三つ
  4. 放っておくと、受給期間の1年が静かに過ぎる
  5. 延長されるのは「期間」であって「日数」ではない
  6. 出せるのは31日目から。「もう3か月休んでいる」でも同じ
  7. 申請書の名前は「受給期間延長申請書」。取りに行かなくても届く
  8. 持ち物に印鑑は要らない。要るのは番号と身元の確認書類
  9. 延長のあと、失業保険は月にいくら入るのか
  10. 「特定理由離職者」で変わるものと、変わらないもの
  11. 毎月の作業は、会社ではなく協会けんぽへ
  12. 自分の傷病手当金の額を出す
  13. 名前が一文字違う二つの制度を、混ぜない
  14. 退職日に出社すると、傷病手当金の側が止まる
  15. 時間順に並べ直す
  16. ※注意

同時には受け取れない。退職後にやることは一つ

病気やけがで働けないまま会社を辞めた。傷病手当金は退職後も続いている。この状態で失業保険、つまり雇用保険の基本手当はどうなるのか。

答えを先に書きます。二つを同時に受け取ることはできません。 失業保険を受け取る条件は「いつでも就職できる能力がある」こと、傷病手当金を受け取る条件は「仕事に就くことができない」こと。窓口に申告する内容が正反対になるからです。

いまの体の状態傷病手当金失業保険(基本手当)
病気で働けない受け取れる受け取れない
働ける状態に戻ったそこで終わる受け取れる

二つは順番に並ぶ制度です。ですから本当の問題は「両方もらえるか」ではなく、働けるようになったときに失業保険がまだ残っているかのほうにあります。残すための手続きが、受給期間の延長です。

ただし退職済みの人には、その手続きより先に読んでおくべき一行があります。

退職後の傷病手当金は、一度「働ける」状態になったら戻らない

在職中の傷病手当金と、退職後の傷病手当金は、名前は同じでも中身が違います。退職後に受け取っているのは「資格喪失後の継続給付」です。協会けんぽの説明には、ただし書が付いています。

ただし、一旦仕事に就くことできる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。

在職中なら、傷病手当金は支給開始日から通算1年6か月の枠を、途中で復職して中断しても後から使い切れます。退職後の継続給付には、この通算が効きません。一度でも仕事に就ける状態になったと判断された時点で、残りの月数があってもそこで終わります。

うつ病や適応障害のように良くなったり悪くなったりする病気では、ここが分かれ道です。

延長の解除・求職の申込みの前に確かめる三つ

失業保険の求職の申込みは、「いつでも就職できる能力がある」という申告です。傷病手当金の側から見れば、仕事に就くことができる状態になったと申し出たことになります。申し込んだあとで体調が戻らなくても、資格喪失後の継続給付は再開しません。

窓口へ向かう前に、この三つを確かめてください。

  1. 主治医の見立て。労務不能かどうかは療養担当者の意見等をもとに判定されます。「もう大丈夫だと思う」という自己申告で動かす場面ではありません
  2. 傷病手当金の残り月数。支給開始日から通算1年6か月のうち、あと何か月分あるか。残りが大きいほど、早く切り替えたときに捨てる額も大きくなります
  3. 受給期間の延長を先に出してあるか。延長さえ出してあれば、失業保険の窓は最長4年まで開いたままです。求職の申込みを急ぐ理由はありません

順番は、延長を先に出す、体が戻ってから求職の申込み。逆にすると戻れません。

放っておくと、受給期間の1年が静かに過ぎる

失業保険には受給期間という制限が付いています。原則として離職した日の翌日から1年間(所定給付日数330日の人は1年と30日、360日の人は1年と60日)。この窓の中でしか基本手当を受け取れません。

一方、傷病手当金は同じ病気について通算1年6か月まで出ます。

数字を並べると何が起きるか見えます。傷病手当金を最後まで受け取ってから「さて仕事を探そう」とハローワークへ行くと、失業保険の受給期間はもう終わっています。1年6か月は1年より長いからです。療養に専念していただけなのに、権利のほうが先に消えている。

受給期間の延長は、この窓を後ろへずらすための手続きです。

延長されるのは「期間」であって「日数」ではない

名前から誤解されやすい点を先に潰しておきます。

延長で伸びるのは、受け取れる期間の窓です。受け取れる日数、つまり所定給付日数が増えるわけではありません。90日分の給付を受けられる人が3年の延長をしても、もらえるのは90日分のままです。変わるのは「いつまでに受け取り始めればよいか」という締切だけ。

逆にいえば、期限さえ確保できていれば、療養が何年に及んでも90日分は残ります。

出せるのは31日目から。「もう3か月休んでいる」でも同じ

ここは窓口で出直しになりやすいところです。大阪労働局の案内はこう書いています。

離職日の翌日(働くことができなくなった日)から30日を過ぎてからできるだけ早急に提出

厚生労働省のパンフレットも同じ数え方です。

離職の日(働くことができなくなった日)の翌日から30日過ぎてから早期に申請いただくことが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請は可能

数え始めるのは離職日の翌日です。退職より前に働けなかった期間は数に入りません。3か月前から休職していても、退職したのが先月なら30日はまだ過ぎていません。

そして30日を「過ぎてから」なので、出せるのは31日目です。7月31日に退職した人なら、8月1日が1日目、8月30日が30日目、8月31日から出せます。カレンダーに印を付けておいてください。

出せる期限のほうは、延長後の受給期間の最後の日までと長く取られています。それでも早く出したほうがよい理由があり、東京労働局はこう注意しています。

受給期間延長の申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性がありますので、30日以上職業に就くことができなくなった場合には、できるだけ早期に延長の申請をお願いします。

なお60歳以上の定年等による休養は別枠で、延長は最長1年、申請期限は離職日の翌日から2か月以内、提出も原則は本人来所です。

申請書の名前は「受給期間延長申請書」。取りに行かなくても届く

出す紙には名前があります。東京労働局のハローワークが公開している求職者給付Q&Aに、必要な書類がこう並んでいます。

1.受給期間延長申請書 (ハローワークで交付。郵送により送付することも可能です。) 2.離職票―2 (離職票―1は受給期間延長の手続きには不要ですので、提出しないでください) 3.雇用保険受給資格者証 4.延長理由を証明する書類

括弧の中が効きます。申請書は郵送で送ってもらえます。 外出が難しい人の最初の一手は、住居所を管轄するハローワークに電話して「受給期間延長申請書を郵送してください」と頼むことです。この時点では、まだ体を運ばずに済みます。

3の受給資格者証を持っているのは、すでに求職の申込みを済ませて受給資格の決定を受けた人だけです。退職してそのまま療養している人は、2の離職票-2があれば足ります。離職票-1は出さないでください。

提出のほうも同じ扱いです。

本人来所、郵送、代理(委任状が必要となります)

ハローワークインターネットサービスの基本手当のページも「住所又は居所を管轄するハローワークに申請してください。(代理人又は郵送でも結構です。)」と書いています。

「延長理由を証明する書類」の中身は、労働局によって案内の書き方が違います。この記事で並べた三つの労働局のうち、書いてあることが揃わなかったのはここだけでした。東京は書類名を挙げるだけ、大阪は「必要に応じ各種証明」。兵庫労働局(ハローワーク尼崎)は病気・けがの場合として「傷病手当支給申請書写し」「傷病手当通知書写し」、そしてハローワークの様式である「傷病証明書」の三つを挙げ、いずれか一つとしています。傷病手当金の申請書の写しが手元にあるなら、それで通るか郵送を頼む電話のついでに聞いておくと、証明書を書いてもらう手間と費用が省けることがあります。

持ち物に印鑑は要らない。要るのは番号と身元の確認書類

大阪労働局の受給期間延長のページには、必要なものが「離職票-2、本人の印鑑(認印)、必要に応じ各種証明」と書かれています。ただし雇用保険関係の届出の押印は、令和2年12月25日付けの法令改正で原則廃止されました。大阪労働局・ハローワーク自身のリーフレットにこうあります。

令和2年12月25日より、雇用保険関係の申請・届出様式への押印が一部の書類(※)を除き原則廃止となりました。(押印欄のある旧様式も使用できますが、届書提出時には一部の書類を除き押印は不要です。)

引き続き押印が必要な書類の一覧に、受給期間延長申請書は載っていません。載っているのは適用事業所設置届の登録印、代理人選任・解任届、訂正印、そして各届出時の委任状です。つまり印鑑が要るかどうかは、申請書ではなく委任状の側で決まります。

代わりに用意するのが本人確認の書類です。兵庫労働局は提出書類に「身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)」を挙げています。厚生労働省のパンフレットは、雇用保険の手続きの持ち物としてマイナンバーカード、持っていない場合は次の二つを求めています。

① 個人番号確認書類(いずれか1種類)通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書) ② 身元(実在)確認書類((1)のうちいずれか1種類。(1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可)) (1)運転免許証、運転経歴証明書、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など (2)公的医療保険の資格確認書、児童扶養手当証書など

家族に頼むなら、これに委任状と代理人自身の身元確認書類が加わります。兵庫労働局は「委任状と代理人の身元確認書類が必要」としています。本人の印鑑だけ持たせても、委任状がなければ窓口で止まります。委任状の書式は労働局によって案内が違うので、申請書の郵送を頼む電話でまとめて聞いておくと一度で済みます。

延長のあと、失業保険は月にいくら入るのか

延長は期限を動かすだけの手続きなので、金額は退職前の賃金で決まります。ハローワークの説明はこうです。

この「基本手当日額」は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。

賞与を抜いた直前6か月の賃金を180で割ると賃金日額。そこに50〜80%を掛けたものが基本手当日額です。上限は年齢で切られています(令和8年8月1日現在)。

離職時の年齢基本手当日額の上限
30歳未満7,450円
30歳以上45歳未満8,270円
45歳以上60歳未満9,110円
60歳以上65歳未満7,830円

月給30万円で賞与が別なら、6か月分180万円÷180で賃金日額は10,000円。給付率は50〜80%の幅なので、基本手当日額は5,000円から8,000円の間に収まります。28日分にすると14万円から22万円です。率は賃金日額に応じた式で毎年8月1日に改定されます。自分の額まで出すなら、離職票-2の賃金の記載を持って窓口で計算してもらうのが確実です。

日数のほうは、被保険者であった期間で変わります。自己都合や契約期間満了で辞めた65歳未満の人は、厚生労働省のパンフレットの表でこうなります。

被保険者であった期間所定給付日数
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

倒産・解雇などの特定受給資格者は、年齢と期間を組み合わせた別の表で、最長330日まで伸びます。ただし病気で辞めた人がこちらの表に乗るとは限りません。次で分けます。

「特定理由離職者」で変わるものと、変わらないもの

病気やけがが理由の離職は、雇用保険では特定理由離職者に分類されます。ハローワークの範囲表に、こう列記されているためです。

(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

効いてくるものが二つ、効かないものが一つあります。

効くもののひとつめは、受給資格の要件です。

離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。

通常なら2年で12か月必要なところ、1年で6か月あれば足ります。入社して1年経たないうちに体を壊した人には、受給できるかどうかが変わる差です。

ふたつめは、給付制限です。 待期はどの離職理由でも共通します。

雇用保険の基本手当は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間を待期期間といい、その期間が満了するまでは雇用保険の基本手当は支給されません。これは、離職の理由等にかかわらず、一律に適用されます。

その先の給付制限は、離職理由で分かれます。

正当な理由のない自己都合によって離職された方の給付制限期間は、離職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1か月、同年3月 31日以前である場合は原則2か月となります。

制限が付くのは「正当な理由のない自己都合」です。そして特定理由離職者に当たるかどうかの判断について、ハローワークはこう書いています。

給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。

同じ基準で判断される以上、病気による離職が特定理由離職者と認められれば、それは正当な理由があると認められたことでもあり、離職理由による給付制限は付きません。 待期の7日が終われば支給が始まります。ただし給付制限のない人でも、実際に振り込まれるのは求職の申込みから約1か月後(初回認定日の約1週間後)とされています。

効かないのは、所定給付日数です。 ここは期待しないでください。日数が手厚くなるのは特定理由離職者のうち「範囲の1」、つまり有期契約が更新されなかった人に限られます。

なお、「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方については、受給資格に係る離職の日が平成21年3月31日から令和9年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。

病気による離職は「範囲の2」に置かれているので、日数は一般の離職者と同じ表で計算されます。90日の人は90日のままです。

判定するのはハローワークで、会社が離職票に「一身上の都合」とだけ書いていても、それで確定するわけではありません。診断書、休職の辞令、産業医との面談記録が残っているなら、最初に窓口へ行く日に持って行ってください。

毎月の作業は、会社ではなく協会けんぽへ

延長を出したあとも、傷病手当金の申請は月ごとに続きます。退職後は、この作業の相手が変わります。

協会けんぽの申請書は4ページあり、3ページ目が事業主記入用です。公式の記入例に、こう書かれています。

【被保険者の方へ】お勤め先の事業所に証明を受けてください。資格喪失日以降の期間に関する申請については、空欄でご提出ください。

退職日の翌日以降の期間だけを申請するなら、3ページ目は空欄のまま出せます。 毎月ハンコをもらいに会社へ連絡する必要はありません。会社の証明が要るのは、退職日を含む期間の一枚だけです。そこだけは在職期間が入るので、連絡が取れるうちに頼んでおきます。

提出先も変わります。協会けんぽは「ご加入の協会けんぽ支部にご提出ください」としていて、送り先は都道府県支部です。会社経由ではありません。4ページ目の療養担当者記入欄は毎回主治医に書いてもらうので、通院の日程と申請の区切りを合わせておくと待ちが減ります。記入例は「申請期間が3ヶ月を超える場合は申請書を分けてご申請ください」としているので、区切りは3か月以内に収めてください。用紙の取り方と4枚を誰が書くかは協会けんぽの傷病手当金支給申請書、用紙はどこで取る?のほうに分けてあります。

自分の傷病手当金の額を出す

協会けんぽの記入例に式が載っています。

1日当たりの金額:【支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3) (支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のことです。)

限定が三つ入っています。支給開始日以前の、12か月間の、標準報酬月額。手取りでも額面でもなく標準報酬月額で、給与明細の社会保険料の等級のもとになっている数字です。

端数の扱いまで公開されています。協会けんぽの支給額例では、12か月の平均が17万円のとき、30分の1が「17万円÷30≒5,670円(10円未満四捨五入)」、1日当たりが「5,670円×2/3=3,780円(1円未満四捨五入)」。30で割った段階で10円未満を四捨五入し、3分の2を掛けた段階で1円未満を四捨五入する順です。

入社して1年経たないうちに休んだ人は、別の計算になります。

(※)支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、㋐と㋑を比べて少ない方の額を使用して計算します。    ㋐支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額    ㋑当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額    (支給開始日が平成31年4月1日以降の場合30万円、令和7年4月1日以降の場合32万円)

支給開始日が令和7年4月1日以降なら、㋑は32万円です。自分の平均がそれより高くても、低いほうの32万円で計算されます。32万円÷30は10,670円、その3分の2で1日当たり約7,113円。12か月に満たない人の日額は、ここが頭打ちになります。

名前が一文字違う二つの制度を、混ぜない

調べていると必ずぶつかる混乱があります。傷病手当金傷病手当。一文字違いで、まったく別の制度です。

健康保険の傷病手当金雇用保険の傷病手当
出どころ協会けんぽ・健康保険組合ハローワーク(雇用保険)
対象になる人在職中に働けなくなった人(退職後の継続給付を含む)離職後、求職の申込みをしたあとに働けなくなった人
日数の条件連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと15日以上引き続いて働けないこと
日額標準報酬月額の平均を30で割り、3分の2を掛けた額基本手当の日額と同額

雇用保険の傷病手当について、ハローワークインターネットサービスの基本手当のページはこう書いています。

傷病手当とは、受給資格者が離職後、公共職業安定所に来所し、求職の申込みをした後に15日以上引き続いて疾病又は負傷のために職業に就くことができない場合に、その疾病又は負傷のために基本給付の支給を受けることができない日の生活の安定を図るために支給されるものです。(14日以内の疾病又は負傷の場合には基本手当が支給されます。)

出番になるのは、いったん回復して求職の申込みを済ませたあと、また働けなくなったときです。退職の時点からずっと働けない人には、まだ出番が来ません。最初に使うのは受給期間の延長のほうです。

そして両者は重ねられません。ハローワークインターネットサービスは、傷病手当の説明にこう注記しています。

※ 疾病又は負傷について他の法令により行われる類似の給付を受ける日については支給されません。

この「他の法令により行われる類似の給付」が何を指すかは、雇用保険法第37条第8項に名前で並んでいます。健康保険法第99条の傷病手当金、労働基準法第76条の休業補償、労災保険法の休業補償給付・複数事業労働者休業給付・休業給付。列挙の先頭にあるのが健康保険の傷病手当金で、これらを受けられる場合には「傷病手当は、支給しない」と締められています。

傷病手当金の日額の計算そのものは協会けんぽの傷病手当金はいくら受け取れる?でも扱っています。

退職日に出社すると、傷病手当金の側が止まる

延長の前提として、退職後も傷病手当金が続くかどうかがあります。協会けんぽは条件を二つ挙げています。

被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者又は国民健康保険に加入していた期間を除く)があること。

資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)

括弧の中が怖いところです。退職日に出勤すると、翌日以降の傷病手当金が出ません。 挨拶に行った、私物を取りに行った、そういう一日でも扱いは同じです。最終出社日と退職日を別の日にして、荷物も挨拶もその前に済ませてください。

なお協会けんぽは、資格喪失後の継続給付を受けている人が老齢厚生年金等の受給者になったときは傷病手当金を支給しない(年金額の360分の1が日額より低いときは差額を支給する)としています。年金の受け取りが近い人は、そちらの調整も併せて確かめてください。

時間順に並べ直す

  1. 退職を決めたとき:最終出社日と退職日を別の日にする。退職日は出社しない
  2. 在職中:退職日を含む期間の傷病手当金には事業主の証明が要る。連絡が取れるうちに頼んでおく
  3. 退職後すぐ:住居所を管轄するハローワークに電話し、受給期間延長申請書を郵送してもらう。委任状の書式もこのとき聞く。求職の申込みはまだしない
  4. 離職日の翌日から31日目以降:申請書に離職票-2と延長理由を証明する書類を添え、郵送か代理人で提出する
  5. 療養中:傷病手当金は協会けんぽの都道府県支部へ。資格喪失日以降の期間だけなら3ページ目は空欄。区切りは3か月以内
  6. 主治医が就労可能と判断したら:そこで初めて求職の申込み。この一歩で資格喪失後の継続給付は終わり、再開しない

3と4は傷病手当金と並行して進みます。傷病手当金が終わるのを待つ必要はありません。むしろ待つほど、前半で書いた「1年が過ぎる」に近づきます。

退職後の健康保険を任意継続と国民健康保険のどちらにするかは、また別の判断です(比べ方は退職後の健康保険は任意継続と国保のどちらが安いかへ)。継続給付は退職前の健康保険から出るため、どちらを選んでも傷病手当金は続きます。

※注意

※本記事は制度と手続きの一般的な整理です。受給資格の有無、離職理由の判定、延長できる日数は、ハローワークと保険者が決めます。基本手当日額の上限は毎年8月1日に改定され、給付制限の期間も改正が入ってきた部分なので、金額と期間は離職票を持って窓口で確かめてから予定を立ててください。連絡先は、失業保険が住居所を管轄するハローワーク、傷病手当金が加入していた健康保険の保険者(協会けんぽ都道府県支部・健康保険組合)です。

傷病手当金と失業保険は同時にもらえる? 病気で退職した人がまず出す「受給期間の延長」 — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Kirsten Drew on Unsplash

参考資料

  1. ハローワークインターネットサービス 基本手当について
  2. ハローワークインターネットサービス よくあるご質問(雇用保険について)
  3. ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
  4. 厚生労働省・ハローワーク 離職されたみなさまへ(雇用保険の基本手当の案内 PL071030保01)
  5. 東京労働局 ハローワーク 求職者給付Q&A
  6. 兵庫労働局 受給期間の延長申請
  7. 大阪労働局 受給期間の延長
  8. 大阪労働局・ハローワーク 雇用保険関係に係る届出への押印が原則不要となります(大阪030121保02)
  9. 全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
  10. 全国健康保険協会 よくあるご質問(病気やケガで会社を休んだとき)
  11. 全国健康保険協会 健康保険傷病手当金支給申請書 記入例
  12. e-Gov法令検索 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第37条

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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