整形外科でコルセットや足の装具を作ったとき、診察代とは別に装具の代金を請求されることがあります。協会けんぽに加入しているなら、この分は**「健康保険療養費支給申請書(立替払等、治療用装具)」で払い戻しを請求できます**。協会けんぽは「医師の指示により、治療用眼鏡・弾性ストッキング・足底装具などの治療用装具を購入、装着したときは、協会けんぽに療養費として申請し、給付を受けられます」と案内しています。
先に確認してほしいのは、領収書の書き方と医師の証明書の2つです。この2つは後から整えるのが難しく、装具を受け取る場で頼むのが確実です。どちらも協会けんぽが添付書類として指定しているもので、金額が合っているだけの領収書では足りません。
申請先は加入している協会けんぽの支部です。どの支部かは「資格情報のお知らせ」またはマイナポータル(健康保険証>資格情報)で確認できます。
戻るのは「払った額の7割」ではない
ここが最初につまずくところです。協会けんぽは療養費の総論で「療養費は、支払った医療費が全額払い戻されるわけではありません」と断ったうえで、治療用装具については次のように書いています。
申請書に添付された領収書等により、協会けんぽが障害者総合支援法等により定められた額に基づき計算した額(実際に支払った額の方が低いときはその額)から、加入者が負担すべき額を差し引いた額を療養費として支給します。
つまり計算の出発点は、自分が払った金額ではなく公的に定められた額です。支払った額のほうが低ければその額が出発点になります。逆に、支払った額がその計算額を超えているときは「協会けんぽが計算した額の範囲で療養費が支給されます」とされています。よくあるご質問でも「装具ごとに支給上限額があります」と明記されています。
同じ内容は、よくあるご質問では「健康保険の支給基準価格で計算した額から、その額に一部負担割合を乗じた額を差し引いた額をお支払いします」という言い方になっています。表現は違いますが、基準額をもとに計算し、そこから自己負担割合の分を引くという筋は同じです。
払った額の全部が戻る前提で予算を組まないでください。 いくら戻るかを事前に正確に出す式は公開されていないので、金額を確定させたい場合は加入支部に装具の種類と見積額を伝えて確認するのが確実です。
対象として挙げられている装具
協会けんぽがよくあるご質問で例示しているのは次のものです。「など」と書かれているので、これだけに限る一覧ではありません。
- 関節用装具、コルセット
- 小児の弱視、斜視及び先天白内障術後の屈折矯正の治療用として用いる眼鏡およびコンタクトレンズ(9歳未満の小児のみ対象)
- リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍の術後に発生する四肢のリンパ浮腫の治療のために使用される弾性着衣等
- 眼球摘出後眼窩保護のために装用を必要とする義眼
- 症状固定前の練習用仮義足
制度の前提は共通して医師の指示です。自分の判断で買ったサポーターは、ここでいう治療用装具にはあたりません。
装具の種類で添付書類が変わる
協会けんぽは装具の種類ごとに添付書類を分けて指定しています。自分がどの行にあたるかを先に決めてください。
| 作ったもの | 領収書に必要な記載 | 領収書以外に必要なもの |
|---|---|---|
| コルセットなどの治療用装具 | 装具の名称、種類および内訳別の費用額、義肢装具士の氏名(押印でも可)、オーダーメイドまたは既製品の別(既製品の場合は製品名・メーカー名) | 医師が記入・証明した「治療用装具製作指示装着証明書」。靴型装具の場合は、申請する靴型装具の現物写真 |
| 弾性着衣等(弾性ストッキング等) | 弾性着衣等の名称、種類および単価、購入枚数 | 医療機関が発行した「弾性着衣等装着指示書」 |
| 小児弱視等の治療用眼鏡・コンタクトレンズ | 眼鏡等の名称、種類等の費用額 | 医師の「眼鏡等作成指示書」のコピー。指示書に視力等の検査結果が明記されていない場合は、視力等の検査結果のコピー |
領収書の記載が足りないケースが起きやすいのは、金額だけ書かれた領収書を渡される場面です。受け取る時点で、上の表にある項目が入っているかを見てください。義肢装具士の氏名や「オーダーメイドか既製品か」は、後から自分では書けません。
弾性着衣の「装着指示書」は医療機関が発行する書類、治療用装具の「製作指示装着証明書」は医師が記入・証明する書類として、別の名前で案内されています。装具を作った施設で「指示書はもらいましたか」と聞かれたときに、どちらの書類の話かを取り違えないようにしてください。
事情が重なるときに足す書類
上の書類に加えて、次に当たる場合は追加があります。
- 傷病の原因が仕事中(業務上)または通勤途中で、労働(通勤)災害の給付を請求中のとき:労働基準監督署への照会に関する同意書
- 傷病の原因が第三者の行為(交通事故やけんか等)によるとき:第三者行為による傷病届
- 被保険者が亡くなり、相続人が請求するとき:被保険者との続柄がわかる「戸籍謄本」等
協会けんぽは添付書類について「主に必要とされるものを掲載しております。場合によっては、ここに掲載のない添付書類が必要となることもあります」とも書いています。表に載っていない書類を求められること自体はありうる、という前提で読んでください。
期限は「装具代を払った日の翌日から2年」
協会けんぽは「健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日(消滅時効の起算日)から2年で時効になります」として、種類ごとに起算日を示しています。治療用装具の起算日は**「治療用装具等の購入費用を支払った日の翌日」**です。
診察を受けた日でも、装具を受け取った日でもなく、費用を支払った日が基準になります。分割で支払った場合や、受け取りと支払いの日付がずれた場合は、領収書の日付を確認してください。
2年あるので急ぐ必要はありませんが、医師の証明書と記載の整った領収書は時間が経つと集めにくくなります。装具を受け取る前後でそろえてしまうのが結局いちばん早いです。
提出のしかたと、出す前にすること
協会けんぽは「療養費(立替払等、治療用装具)の申請は、電子申請がおすすめです」として、記載もれを防げる、処理状況をスマートフォンやパソコンから確認できる、といった理由を挙げています。電子申請を使う場合は「提出先をお選びいただく必要はございません」とされています(社会保険労務士が申請する場合は支部指定が必要)。
紙で出す場合は、加入している協会けんぽ支部へ郵送します。申請書は「立替払等」と「治療用装具」で様式が分かれており、それぞれ手書き用・入力用・記入例が用意されています。入力用のPDFは、ダウンロードしてAdobe Readerで開くよう案内されています。
出す前に2つ確認してください。
- コピーを取る。 協会けんぽは「申請時に添付書類としてご提出いただいた書類は返却できません」「市区町村への手続きなど他の手続きで必要な際は、あらかじめコピーを保管してください」と書いています。自治体の医療費助成などで同じ領収書が必要になることがあります。
- マイナンバーの記入欄。 申請書のページには「被保険者の記号・番号をご記入された場合は個人番号(マイナンバー)のご記入は不要です」と書かれています。記号・番号が分かるなら、マイナンバーを書かずに済みます。
該当しない人・この記事の範囲
- 医師の指示によらない購入は対象になりません。市販のサポーターを自分で選んで買った場合は、ここでいう治療用装具ではありません。
- 協会けんぽ以外の保険者に入っている場合は、様式も提出先も別です。健康保険組合・市区町村の国民健康保険・共済組合は、それぞれの案内を確認してください。
- 治療用眼鏡・コンタクトレンズは9歳未満の小児という年齢条件が付いた例として挙げられています。大人の眼鏡を同じ枠で考えないでください。
- 振り込みまでの期間は、協会けんぽの上記ページには書かれていません。時期を知りたい場合は加入支部に確認してください。電子申請では申請後の処理状況を確認できるとされています。
参考資料
- 全国健康保険協会「治療用装具・治療用眼鏡等(療養費)」
- 全国健康保険協会「健康保険療養費支給申請書(立替払等、治療用装具)」
- 全国健康保険協会 よくあるご質問「立替えで医療費を全額負担したとき(療養費)」
- 全国健康保険協会「医療費の全額を負担したとき(療養費)」