今日いくら払うかは、手元に何があるかで決まる
従来の紙の健康保険証は、2025年12月1日で有効期限が切れています。期限切れに気づかず持参した場合に使えるものとしていた対応も、2026年7月31日で終わりました。いま窓口で資格を確認できるのは、マイナ保険証(カードまたはスマホ)か資格確認書です。
ただし「保険証を忘れたから受診できない」ということはありません。忘れた人が必ず10割を払うわけでもありません。分かれ目は、カード・スマホ・資格確認書のどれかが手元にあるかどうかです。
| 手元にあるもの | 窓口でどうなるか | その日の負担 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード(読み取れる) | カードリーダーで資格確認 | 通常の1〜3割 |
| スマホのマイナ保険証(設定済み) | 対応機器のある医療機関なら確認できる。実物のカードは不要 | 通常の1〜3割 |
| 資格確認書 | 単独で提示すれば資格確認できる | 通常の1〜3割 |
| カード+マイナポータルの資格情報画面 | 2つをセットで提示する(画面のPDFでも可) | 通常の1〜3割 |
| カード+「資格情報のお知らせ」 | 2つをセットで提示する(紙に印字したもの) | 通常の1〜3割 |
| カードはあるが読み取れない・「資格情報なし」と表示 | 被保険者資格申立書を記入して提出 | 申し立てた1〜3割 |
| カードも資格確認書もスマホもない | 資格確認ができない | 原則10割。後日返金 |
| 期限切れの紙の健康保険証 | 2026年7月31日で受付終了 | 使えない |
表のうち誤解が多いのは、マイナポータルの資格情報画面と「資格情報のお知らせ」です。どちらもそれだけでは資格確認に使えません。厚生労働省は「マイナンバーカードとセットでご提示」と説明しています。カードを家に置いてきた人が、スマホでマイナポータルを開いて画面を見せるだけでは足りない、という意味です。
ただしスマホにマイナ保険証を設定している場合は別で、このときは実物のカードの提示が不要になります。
カードはあるのに読み取れないとき、10割を払う必要はない
窓口でいちばん損をしやすいのがこの場面です。カードは持ってきたのに、カードリーダーでエラーが出る、「資格無効」や「資格情報なし」と表示される、医療機関側の機器が不調で確認できない。このとき10割を請求されても、そのまま払う前に確認してください。
厚生労働省は、資格確認がうまく行えなかった場合について、マイナンバーカードと併せてマイナポータル画面(ダウンロードしたPDFでも可)または資格情報のお知らせを提示すれば、これまで通りの自己負担で保険診療を受けられると案内しています。
そのどちらも持ち合わせていない初診のときに使うのが「被保険者資格申立書」です。医療機関のスタッフから用紙を受け取り、記入して窓口に出します。協会けんぽは、この書類を提出すれば「申し立てた自己負担分(3割分等)で保険診療を受けることができます」と明記しています。
記入するのは、だいたい次の内容です。
- 氏名・生年月日・性別
- 住所・連絡先
- 加入している保険者(勤務先の健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療など)
- 分かる範囲での記号・番号
保険証が手元になくても、勤務先名や「国保(市区町村名)」が言えれば書けます。記号・番号が分からなくても、空欄のまま相談して構いません。
自分のケースが対象になるか迷ったとき
この書類が使える範囲は、資料によって書き方の幅があります。
- 厚生労働省は「何らかの事情で資格確認ができなかったうえ、マイナポータルの画面や資格情報のお知らせを持ち合わせていないとき」に記入する書類だと説明しています
- 協会けんぽは、対象を「資格無効」「資格情報なし」と表示された場合や、医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認ができない場合のみ、と限って書いています
つまりカードを読み取ろうとして失敗したケースは確実に対象です。一方、カードを家に忘れて何も出せないケースを対象にするかは、医療機関の判断が入ります。窓口で「被保険者資格申立書で対応できますか」と一言聞くだけで結果が変わる場面なので、黙って10割を払わないでください。
なお申立書は初診時の取り扱いです。再診で毎回これを使うことはできません。
スマホにマイナ保険証を入れていれば、カードを忘れても受診できる
2025年9月19日から、機器の準備が整った医療機関・薬局で順次、スマートフォンをマイナ保険証として使えるようになりました。この方法なら実物のマイナンバーカードを持っていなくても資格確認が完了します。カードを忘れがちな人は、先に設定しておくと当日あわてずに済みます。
使うには事前の準備が2つ必要です。
- スマホ用電子証明書をスマホに搭載しておく(マイナポータルアプリから設定。Android は2023年5月から、iPhone は2025年から対応)
- そのスマホでマイナ保険証としての利用設定を済ませておく
受診したい医療機関が対応しているかどうかは、厚生労働省の「スマートフォンのマイナ保険証対応医療機関・薬局検索」ページで、都道府県・市区町村・フリーワードから調べられます。対応には従来の顔認証付きカードリーダーとは別の読み取り機器が必要なため、マイナ保険証に対応している医療機関でも、スマホには未対応のことがあります。かかりつけの病院と薬局を、受診の前に一度調べておくと確実です。
注意点として、マイナンバーカード本体や電子証明書が失効しているときは、スマホのマイナ保険証も使えません。電子証明書の有効期間は発行から5年です。2020年から2021年のマイナポイントの時期にカードを作った人は、ちょうど更新の時期に入っています。
何も手元にないときの流れ
カードも資格確認書もなく、スマホの設定もしていない。申立書での対応も断られた。この場合は次の順で進みます。
- 受付で「マイナ保険証を忘れた」と伝える
- 10割の窓口負担で受診する
- 領収書を必ず受け取り、保管する(これがないと返金も申請もできません)
薬局でも同じ流れです。ただし薬局によって返金対応の期限が短いこともあるため、早めに来店してください。
差額は、同じ月内なら窓口で、翌月以降は保険者への申請で戻ります。
差額返金の手順
同じ月内に再来院した場合
- マイナ保険証または資格確認書を持って窓口へ
- 「先日忘れたので差額返金をお願いします」と伝える
- 領収書を提示する
- その場で差額が返金される(現金または口座振込)
翌月以降になった場合
医療機関での返金は対応されないことが多く、自分の健保組合・市区町村の国保窓口へ「療養費支給申請」を出します。
- 申請書(健保・市区町村のウェブサイトからダウンロード)
- 領収書の原本
- 診療明細書
- 振込先口座が分かるもの
審査後、2〜3か月で口座に振り込まれます。この申請には時効があり、医療費を支払った日の翌日から2年を過ぎると請求できません。 領収書を引き出しに入れたまま忘れると、その分はそのまま自己負担になります。
返金されるのは、保険が適用される診療について、保険診療の金額を基準に算定した分です。10割払った額がそのまま全部戻るわけではなく、自己負担分(1〜3割)は引かれます。
資格確認書とは
マイナ保険証を持っていない人・利用登録していない人には、健保組合や市区町村から「資格確認書」が交付されています。
- カード型の紙書類
- 氏名・記号・番号が記載されている
- 有効期限があり、更新される
- 単独で提示すれば通常の1〜3割負担で受診できる(カードとセットにする必要はない)
紙の健康保険証とは見た目が違いますが、窓口での出し方は同じです。財布や常備バッグに入れておけば忘れにくくなります。
後期高齢者医療制度の加入者については、2026年8月の年次更新までの間は、マイナ保険証を持っているかどうかに関わらず、申請によらず資格確認書が交付されてきました。この更新でその取り扱いが終わるため、毎年届いていた資格確認書が今年は届かない人が出ます。マイナ保険証を持っている人は、資格確認書が来なくてもカードで受診できます。持っていないのに届かない場合は、市区町村の後期高齢者医療の窓口か、都道府県の後期高齢者医療広域連合に問い合わせてください。
家族や高齢の親を連れて受診するとき
子どもや高齢の親を連れての受診では、それぞれ本人のマイナ保険証または資格確認書が必要です。家族分のカードをまとめて持ち歩く場合は、紛失したときの手続きが人数分になることに注意してください。
忘れがちな親への対策としては、次のような方法があります。
- 資格確認書をお薬手帳と一緒に保管する(受診時に必ず持つものと束ねる)
- 親のスマホにマイナ保険証を設定し、かかりつけ医がスマホ対応かを事前に調べておく
- 受診日の前夜に確認の連絡を入れる
よくある質問
Q. 認証エラーが出て窓口で読み取れない場合は?
カードの汚れや破損、電子証明書の期限切れ、読み取り装置の不調が考えられます。まずカードを拭く、別の端末で試してもらう、という順で確認します。それでも読めない場合でも、10割を払う必要はありません。 カードとマイナポータルの資格情報画面、またはカードと「資格情報のお知らせ」をセットで提示すれば、これまで通りの自己負担で受診できます。どちらも持っていない初診なら、被保険者資格申立書で対応します。エラーが頻発する場合は、市区町村の窓口で電子証明書の更新やカードの再発行を検討してください。
Q. 健康保険を切り替えた直後にマイナ保険証が読み取れません
転職・引越し・退職で保険者が変わると、新しい資格情報がマイナ保険証に反映されるまで数日から2週間程度かかります。この期間は、新しい保険者から届いた「資格情報のお知らせ」をマイナンバーカードと一緒に提示すれば、通常の負担で受診できます。お知らせがまだ届いていない初診なら、被保険者資格申立書に新しい勤務先や保険者名を書いて対応します。
Q. 旅行先や出張先で忘れたことに気づきました
扱いは自宅の近くで受診する場合と同じです。ただし差額返金は「同じ月内に同じ医療機関へ持参」が条件になるため、旅行先の医療機関へ戻れないことがほとんどです。その場合は領収書と診療明細書を持ち帰り、自分の健保組合・国保窓口へ療養費支給申請を出します。
Q. 海外で病気になった場合は?
海外では日本の健康保険をそのまま使えません。現地で全額を払い、帰国後に「海外療養費」を健保へ申請すれば、国内の医療費水準で算定した分が払い戻されます。差額は自己負担になるため、実費の補償は海外旅行保険で用意するのが現実的です。
Q. 窓口の扱いに納得できない場合はどこに聞けばよいですか?
制度上の取り扱いは、マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)で確認できます。自分の資格や返金については、加入している健保組合、または市区町村の国保・後期高齢者医療の窓口が答えます。
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省「医療機関等での資格確認方法について」— 従来の保険証の終了日、マイナポータル画面・資格情報のお知らせ・被保険者資格申立書の扱い、スマホ利用の開始日
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」— 資格確認ができなかった場合の自己負担、資格確認書の交付
- 協会けんぽ「マイナ保険証等での受診」— 被保険者資格申立書で3割分等の保険診療を受けられること、対象となる場面
- 厚生労働省「スマートフォンのマイナ保険証対応医療機関・薬局検索」— 受診前に対応状況を調べる