借家の塀や外壁が崩れて人にけがをさせた。責任は借主か大家か——民法717条はまず占有者、必要な注意をしたときは所有者

この記事の要点

717条は、賠償する人をまず占有者とし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに所有者へ移す形で書かれています。所有者側のただし書には「必要な注意をしたとき」という例外が置かれていません。庭木は2項で準用され、原因について他に責任を負う者がいれば3項の求償権があります。

  1. 717条1項本文は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたとき、その工作物の占有者が被害者に対してその損害を賠償する責任を負うとしている
  2. 717条1項ただし書は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないとしている。所有者側には「必要な注意をしたとき」の例外が置かれていない
  3. 717条2項は、1項の規定を竹木の栽植または支持に瑕疵がある場合について準用するとしている
どうする?編集部 · · 読了 約5分
目次(9項目)
  1. 717条1項——占有者が先、必要な注意をしたときは所有者
  2. 717条2項——庭木(竹木)にも準用される
  3. 717条3項——原因を作った人への求償権
  4. 709条との関係
  5. 被害者側に過失があったとき——722条2項
  6. 動物の場合は718条
  7. 子どもが原因だったとき——712条・714条
  8. まず確かめること
  9. 参考資料

借りている家のブロック塀が崩れた、外壁のタイルが落ちた、庭の木が倒れた。通行人や隣の車に損害が出たとき、借主と大家のどちらが賠償するのかが問題になります。

民法717条1項は、まず土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者が、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うと定めています。

続くただし書が、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないとしています。条文は、占有者を先に置き、例外として所有者に移す形で書かれています。

この記事では、717条の三つの項の書き方、709条との並び、過失相殺の722条2項を、e-Gov法令検索の法令APIで取得した民法の現行条文で確かめます。

717条1項——占有者が先、必要な注意をしたときは所有者

717条1項の文言はこうです。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」

条文を分けて読むと次のようになります。

  • 原因:土地の工作物の設置または保存に瑕疵があること
  • 結果:それによって他人に損害を生じたとき
  • 責任を負う人(本文):その工作物の占有者
  • 例外(ただし書):占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が賠償しなければならない

注意したいのは、「必要な注意をしたとき」の例外は占有者について置かれているという点です。ただし書は、占有者が必要な注意をしたときに所有者が賠償しなければならないと書いており、所有者について同じ例外を置いていません。

また、誰が「占有者」に当たるのか、何が「瑕疵」なのかは、717条には書かれていません。賃貸の建物で借主と貸主のどちらが占有者に当たるか、管理の状況をどう評価するかは、今回根拠にした条文からは判断できません。この記事では当てはめを書きません。

717条2項——庭木(竹木)にも準用される

717条2項は、「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」としています。

対象は「栽植又は支持」の瑕疵です。木を植えた状態、支える仕組みに瑕疵がある場合に、1項と同じ枠組み(占有者が先、必要な注意をしたときは所有者)が使われる書き方になっています。

717条3項——原因を作った人への求償権

717条3項は、「前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる」としています。

被害者への賠償と、原因を作った者への求償は別に書かれています。条文は「求償権を行使することができる」という書き方で、義務ではありません。誰が「他にその責任を負う者」に当たるかは列挙されていません。

709条との関係

709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」としています。不法行為の一般的な条文で、717条はこれとは別の条文として置かれています。

710条は、他人の身体・自由・名誉を侵害した場合、他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、709条により損害賠償の責任を負う者は財産以外の損害に対してもその賠償をしなければならないとしています。

なお717条は「故意又は過失」ではなく「設置又は保存に瑕疵があること」を要件として書いています。この違いが条文上の特徴です。

被害者側に過失があったとき——722条2項

722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」としています。

条文は「定めることができる」で、裁判所の判断として書かれています。同条1項は、417条および417条の2の規定を不法行為による損害賠償について準用するとしています。

動物の場合は718条

飼っている動物が他人に損害を加えた場合は別の条文です。718条1項は、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」としつつ、「ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」としています。同2項は、占有者に代わって動物を管理する者も1項の責任を負うとしています。

717条の工作物とは、責任を負う人の決め方(占有者と所有者の振り分け)が違う書き方になっています。

子どもが原因だったとき——712条・714条

712条は、未成年者が他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないとしています。

714条1項は、712条・713条により責任無能力者が責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしています。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときはこの限りでないとされています。同2項は、監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も1項の責任を負うとしています。

まず確かめること

条文の上での分かれ目は、(1) 損害の原因が土地の工作物(または竹木)の設置・保存の瑕疵なのか、(2) その工作物を占有しているのは誰か、(3) 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたか、(4) 原因について他に責任を負う者がいるか(3項の求償)——の四つです。

「瑕疵」に当たるかどうかの判断、賃貸での占有者の認定、賠償額の算定は、この記事の根拠にした民法の条文だけでは決まりません。火災が原因の場合については、失火ノ責任ニ関スル法律(明治三十二年法律第四十号)の本文を法令APIで取得できなかったため、この記事では扱っていません。実際に請求や支払を検討する段階では、契約書と管理の記録を持って、保険会社の窓口と法律相談で確認してください。

参考資料

Photo by Suhas Hanjar on Unsplash

参考資料

  1. e-Gov法令検索 法令API 民法(明治二十九年法律第八十九号)現行条文
  2. e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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