年末調整が終わったあとに、扶養に入れる家族を書き忘れた、保険料控除の証明書を出しそびれた、配偶者の年収が見込みと違った、と気づいた場合でも、勤務先は翌年1月末日までなら年末調整をやり直せます。国税庁の「年末調整のしかた」は、この期限を「給与所得の源泉徴収票を受給者に交付することとなる翌年1月末日まで」としています。
1月末日を過ぎたら、税金が戻る分は本人が確定申告(還付申告)で取り戻します。還付申告は翌年1月1日から5年間提出できます。反対に、子が就職して扶養から外れたなど扶養親族等が減って税金が足りなくなる場合は、1月末日を過ぎても勤務先がやり直し、不足額を徴収します。
まず、気づいたのが1月末日の前か後かを確かめてください。前なら勤務先の給与担当へ。後なら、税金が戻る分は還付申告、扶養親族等が減った分は勤務先への申し出です。
なぜ年末調整のあとにずれが生まれるのか
年末調整は、1年間に給与から源泉徴収した所得税の合計と、その人が1年間に納めるべき税額を一致させる手続きです。多く引かれていれば差額が還付され、少なければ徴収されます。
ただし、年末調整はその年最後の給与を払うときに行います。国税庁のタックスアンサーNo.2671によると、所得税法では扶養親族などをその年の12月31日の現況で判定するのに対し、年末調整では扶養控除や配偶者控除を最後の給与を払う日の現況で判断します。また「年末調整のしかた」によると、判定に使う合計所得金額は、年末調整を行う日の現況で見積もった1月1日から12月31日までの額です。
そのため、次のようなことが起こります。
- 12月の給与支給日のあと、年内に子どもが生まれた、本人が障害者に当たることになった
- 見積もりで書いた配偶者の所得が、年が明けて確定してみると違っていた
- 申告書を出したあとに、年内の保険料を払った
- 証明書が届かず、保険料控除や住宅ローン控除の申告が間に合わなかった
どれも、年末調整で計算した税額と、本来納めるべき税額に差が出る原因です。
勤務先にやり直してもらえる6つの場面
「年末調整のしかた」の再調整の節(令和8年分では43ページ)には、年末調整後の再調整として次の場面が並んでいます。
- 給与の追加払があった 年末調整のあと、同じ年のうちにその年分の給与を追加で払う場合は、追加分を給与の総額に加えてやり直します。
- 扶養親族等の数が変わった 子が結婚して控除対象扶養親族が減った、本人が障害者に当たることになった、などの場合です。
- 配偶者や本人の所得の見積額が確定額と違った その結果、配偶者控除や配偶者特別控除の額が変わる場合です。
- 特定親族の所得の見積額が確定額と違った 特定親族特別控除の額が変わる場合です。
- 年末調整のあとに、その年の保険料を払った 生命保険料や地震保険料などを、保険料控除申告書で申告します。
- 年末調整のあとに住宅借入金等特別控除申告書を出した 住宅ローン控除の2年目以降の書類が遅れた場合などです。
2から6はどれも、やり直しができる期限が「給与所得の源泉徴収票を受給者に交付することとなる翌年1月末日まで」と書かれています。
勤務先に出すのは、変わった内容に応じた申告書です。扶養親族の増減なら「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に異動の内容を書いて出します。配偶者控除・配偶者特別控除は配偶者控除等申告書、特定親族特別控除は特定親族特別控除申告書で受ける控除です。保険料なら保険料控除申告書と控除証明書、住宅ローン控除なら住宅借入金等特別控除申告書を出します。
扶養親族が増えた場合の期限
タックスアンサーNo.2671は、扶養親族などが増えてやり直す場合、勤務先は「その年分の源泉徴収票を作成・交付する日までに」本人から異動の内容を書いた扶養控除等(異動)申告書の提出を受けるよう案内しています。手引きの「翌年1月末日」は、源泉徴収票を交付することとなる期限です。期限内でも、気づいたら日を置かずに給与担当へ伝えてください。
同じページには、勤務先がやり直しをしない場合、本人が確定申告をすれば所得税の還付を受けられるとも書かれています。1月末日の前でも、確定申告で直す道は残ります。
扶養親族等が減って税金が足りなくなる場合は、1月末日を過ぎてもやり直す
扶養していた子が就職したなど、扶養親族等が減る方向の変更は扱いが違います。
タックスアンサーNo.2671は、子供の就職などで控除対象扶養親族の数が減る場合も、本人から扶養控除等(異動)申告書の提出を受けて年末調整をやり直し、不足している税額を徴収するよう勤務先に求めています。そのうえで、「徴収不足税額がある場合の年末調整のやり直しについては、その異動があった年の翌年の1月末日以降であっても行う必要があります」としています。
扶養親族等の異動については、1月末日という期限は税金が戻る方向のやり直しの期限で、扶養親族等が減って税金が足りない場合には当てはまらない、ということです。配偶者の所得が見込みより多かった場合など、ほかの理由で控除が減るときに1月末日以後どうなるかは、今回読んだ資料には書かれていませんでした。1月末日までなら手引きのとおりやり直しができるので、気づいたら早めに給与担当に伝えてください。
保険料控除には、勤務先が先に控除を入れておく形のやり直しもあります。手引きは、証明書類の交付を請求中などで確認できない場合、翌年1月末日までに証明書類を出すことを条件に、その保険料を控除して年末調整を行ってよいとしています。期日までに証明書類が出なければ、勤務先はその保険料を除いて控除額を計算し直し、不足額を徴収します。対象は国民年金保険料や国民年金基金の掛金、小規模企業共済等掛金、新生命保険料、旧生命保険料(1口9,000円を超えるもの)、介護医療保険料、新個人年金保険料、旧個人年金保険料、地震保険料、旧長期損害保険料です。「証明書は後で出します」と言って控除を入れてもらった人は、1月末日までに必ず出してください。
1月末日を過ぎたら:税金が戻る分は還付申告
勤務先でやり直せなくなったあと、税金が戻る分は本人が税務署に確定申告(還付申告)をして取り戻します。タックスアンサーNo.2671も、勤務先が年末調整をやり直さない場合は本人が確定申告をすれば還付を受けられるとしています。
税金が戻る場合(還付申告)。 タックスアンサーNo.2030によると、確定申告をする義務がない人でも、給与から源泉徴収された所得税額が本来の税額より多いときは、確定申告で納めすぎの所得税の還付を受けられます。還付申告書は「確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」とされています。2月16日を待たずに出せますし、数年前の出し忘れでも5年以内なら申告できます。
たとえば次のようなケースです。
- 扶養親族を書き忘れていた
- 年末調整のあとに払った国民年金保険料や生命保険料を申告していなかった
- 住宅ローン控除の書類が1月末日までに間に合わなかった
還付は、源泉徴収された所得税がある場合にだけ生じます。源泉徴収票で源泉徴収された税額が0円の人は、申告しても還付される所得税はありません。
税金が足りなくなる場合。 扶養親族等が減ったときは、前の節のとおり1月末日以後でも勤務先がやり直して不足額を徴収します。それ以外の理由で控除を多く受けすぎていたと1月末日以後に気づいた場合、勤務先がやり直すのか本人が申告するのかは、今回読んだ資料には書かれていません。まず給与担当に伝え、扱いが分からなければ所轄の税務署に確認してください。なお、タックスアンサーNo.2020では、確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで、申告と納付の期限は原則として翌年3月15日です。
確定申告書を作るときには、勤務先から受け取った給与所得の源泉徴収票を使います。平成31年4月1日以後、源泉徴収票は確定申告書への添付や提示が不要になりましたが、申告書を作るためには引き続き必要です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力すれば申告書を作成・提出できます。
すでに還付申告をした年分で、還付を受ける税金を少なく申告していたと分かった場合は、更正の請求という別の手続きになります。タックスアンサーNo.2030では、更正の請求ができる期間は原則として還付申告書を出した日から5年以内です。
もともと年末調整で受けられない控除は、やり直しの対象外
医療費控除は、年末調整のやり直しで受けるものではありません。タックスアンサーNo.1120は、医療費控除の手続きとして、医療費控除に関する事項を書いた確定申告書を提出し、医療費控除の明細書を添付するよう案内しています。「年末調整で医療費を書き忘れた」と考える必要はなく、最初から確定申告で受ける控除です。
タックスアンサーNo.2030は、還付申告ができる例として医療費控除を挙げています。扶養親族の書き漏れについても、No.2671は本人が確定申告をすれば還付を受けられるとしています。両方に当てはまる人は、同じ年分の確定申告で手続きします。
年が明けてからの順番
気づいた時期ごとの動き方をまとめます。
| 気づいた時期 | 税金が戻る方向の変更 | 税金が足りなくなる変更 |
|---|---|---|
| 年末調整のあと〜翌年1月末日 | 勤務先に申告書を出してやり直してもらう。やり直さない場合は確定申告で還付 | 勤務先に申告書を出し、やり直しで不足額を徴収してもらう |
| 翌年2月1日以降 | 本人が還付申告(翌年1月1日から5年間) | 扶養親族等が減った場合は勤務先がやり直して不足額を徴収する。それ以外は今回の資料では扱いを確認できず、勤務先・税務署に確認 |
1月末日までは、どちらの方向の変更も勤務先の給与担当に伝えます。1月末日を過ぎて税金が戻る分は、源泉徴収票をもとに自分で還付申告をします。
なお、大部分の給与所得者は、年末調整で所得税額が確定するので確定申告は不要です(タックスアンサーNo.1900)。年末調整のやり直しで正しく直れば、それで手続きは終わります。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ国税庁の資料では確かめられていません。
- 年末調整をやり直したあと、源泉徴収票をどのように作り直して交付するか。勤務先の実務の流れは手引きの再調整の節に書かれていません。
- 住民税の扱い。年末調整や確定申告の結果は住民税にも関係しますが、市区町村への給与支払報告書の訂正の流れは今回の資料にありません。住民税に関することは、住んでいる市区町村に確認してください。
- 勤務先が社内で決めているやり直しの受付締切。会社ごとに違います。
- 配偶者の所得の見込み違いなど、扶養親族等の人数の異動以外の理由で税金が足りなくなることに1月末日以後に気づいた場合、勤務先がやり直すのか、本人が確定申告をするのか。
参考資料
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた — 年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整、扶養控除等(異動)申告書の内容の確認(所得の見積りと判定)。令和8年分ではそれぞれ43ページ、9ページ
- 国税庁 タックスアンサーNo.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき
- 国税庁 タックスアンサーNo.2662 年末調整のしかた
- 国税庁 タックスアンサーNo.2030 還付申告
- 国税庁 タックスアンサーNo.2020 確定申告
- 国税庁 タックスアンサーNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)