年の途中で会社を辞め、その年のうちにどこにも再就職しなかった人は、原則として年末調整を受けていません。毎月の給与から差し引かれた所得税は概算なので、その年に納めるべき税額より多くなっている場合があります。国税庁は、この納め過ぎの所得税は、退職した年の翌年になってから確定申告をすれば還付を受けられるとしています。期限は翌年1月1日から5年間です。
まず、退職した会社から受け取った給与の源泉徴収票を用意し、所得税が差し引かれているかを見てください。あわせて、退職後に自分で払った国民健康保険料や国民年金保険料の金額が分かるものをそろえます。
自分が年末調整を受けていないかを確かめる
年の途中で退職した人がすべて同じ扱いになるわけではありません。国税庁の説明をもとに分けると、次のようになります。
| 退職した年の状況 | 年末調整 | すること |
|---|---|---|
| 退職したまま、その年のうちに再就職していない(3行目の例外に当たらない) | 受けられない | 給与から所得税が差し引かれていて納め過ぎなら、翌年1月1日以降に確定申告(還付申告)で取り戻す |
| 同じ年のうちに再就職した | 原則として新しい勤務先で、前の勤務先の給与を含めて行う | 新しい勤務先の年末調整で精算される。前の勤務先の分がそろわないときは下の記事へ |
| 年の中途で行う年末調整の対象になる退職だった | 退職した会社で行われている場合がある | 退職した会社に、年末調整をしたかを確かめる |
年の中途で行う年末調整の対象として、国税庁が挙げているのは次の人です(令和8年4月1日現在の法令等による案内)。
- 海外の支店などへの転勤で非居住者になった人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除く)
- 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
- パートタイマーなどで、その年に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く)
最後の金額は年分によって変わります。令和7年分の年末調整Q&Aでは123万円以下でした。最新の額は国税庁のタックスアンサーNo.2665で確認できます。病気で辞めた人が当てはまるかどうかは、障害の程度と再就職の見込みで分かれます。退職した会社の給与担当に、年末調整をしたかどうかを聞くのが確実です。
同じ年に再就職した人の手続き、前職の源泉徴収票が新しい勤務先の締切に間に合わないときの動き方は、転職した年の年末調整の記事で扱っています。
戻るのは、給与から所得税が差し引かれていた人
還付申告で戻るのは、源泉徴収などですでに納めた所得税です。国税庁は、源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額がない人は、申告しても還付される所得税額はないと説明しています。退職した会社の源泉徴収票で、源泉徴収された所得税の額が0円かどうかを見てください。
年末調整を受けていない人のすべてが納め過ぎになっているわけでもありません。国税庁も、納め過ぎに「なる場合がある」としています。いくら戻るかは、退職までの給与の額、差し引かれた所得税、申告書に入れる控除で決まります。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力すると、自宅などで申告書を作成・提出できます。
退職後に払った保険料や医療費も申告書に入れる
会社を辞めたあとに自分で払った国民健康保険料(国民健康保険税)や国民年金保険料は、年末調整がないため、控除に入れるには申告書に書く必要があります。国税庁によると、社会保険料控除で控除できるのは、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。対象には、健康保険・国民年金・厚生年金保険の保険料(被保険者として負担するもの)、国民健康保険の保険料または国民健康保険税、介護保険料などが含まれます。
控除を受けるのは保険料を支払った人です。自分の分だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族が負担すべき保険料を支払った場合も、支払った人の控除になります。
国民年金保険料を控除に入れるときは、支払った金額を証明する書類を申告書に添付するか、提出のときに提示します。令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に出す場合は、証明書に代えて一定の事項を書いた明細書を添付することもできます。
医療費控除や寄附金控除も、還付申告ができる例として国税庁が挙げています。医療費控除の計算は医療費が年10万円を超えたときの記事を参照してください。
傷病手当金と失業給付は収入に入れない
退職したあとに受け取ったお金のうち、次のものは所得税がかからないため、申告書の収入には入れません。
- 健康保険の傷病手当金(国税庁は、健康保険組合から支給を受けた傷病手当金について、健康保険法を根拠に非課税所得で所得税は課されないとしています)
- 雇用保険の失業等給付(令和7年分の年末調整Q&Aで、非課税とされています)
申告書に書く給与は、退職するまでに会社から受け取った分です。
退職金を受け取った人
国税庁は、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があるとしています。退職金だけについては、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、支払のときに退職所得の金額に応じた所得税が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。給与の還付申告で退職金をどう書くか迷うときは、作成コーナーの案内か所轄の税務署で確認してください。
申告書を出していなかった人は、退職金の支払金額の20.42%が源泉徴収されています。この場合は本人が確定申告をして精算します。退職金の扱いは退職金と確定申告の記事も参考になります。
いつ、どこに出すか
還付申告書は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。退職した年の年内には出せません。国税庁は、5年以内であれば申告できるとしたうえで、必要な書類がそろい次第早めに行うよう勧めています。
退職後に事業や副業を始めた人は、扱いが変わることがあります。給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象になっている場合に、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人は、確定申告をすれば税金が還付される人を除き、確定申告をしなければなりません。この場合の申告期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。また、青色申告特別控除(55万円・65万円)のように法定申告期限(原則翌年3月15日)までの提出が要件になっている特例を使う場合は、還付申告であっても法定申告期限までに出す必要があります。
- 退職した会社の源泉徴収票を手元に置く。在職中に給与から差し引かれた社会保険料も、社会保険料控除の対象です
- 退職後に払った国民健康保険料・国民年金保険料などの金額と、国民年金保険料の金額を証明する書類(令和8年分以後を令和9年1月1日以後に出すなら、一定の事項を書いた明細書でも可)をそろえる
- 医療費控除や寄附金控除を入れる場合は、その書類も用意する
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成・提出するか、確定申告書(還付申告書)を所轄の税務署に出す
提出先は、提出するときの納税地を所轄する税務署です。還付金が振り込まれるまでの目安は還付金の振込時期の記事で確認できます。
一度還付申告をしたあとで控除の入れ忘れに気づいたときは、更正の請求という手続きで追加の還付を受けられます。期間は原則として還付申告書を出した日から5年以内です。
退職した会社から源泉徴収票が届かないとき
給与の源泉徴収票は、年の途中で退職した人には退職後1か月以内に交付することになっています。届かなければ、まず退職した会社に、発行したかどうかと送り先を問い合わせてください。
それでも交付されない場合は、自分の納税地を所轄する税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。e-Taxソフトで作るか、書面を持参または郵送します。給与支払明細書を保存していればその写しと、会社に交付を求めたことが分かる書類などを添付します。提出の前に、国税庁の手続きページにある確認用のフローチャートと留意事項を読むよう求められています。すでに交付された源泉徴収票をなくした場合の再発行は、この届出の対象外です。