おむつ代は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。国税庁のタックスアンサーNo.1122は、「傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代」を対象に挙げ、その場合は医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要だとしています。
要介護認定を受けている人は、この証明書を医師に毎年書いてもらわなくても済む場合があります。要介護認定の審査で作られる主治医意見書に、寝たきりの程度と失禁についての記載があれば、市区町村がその内容を確認した書類か、意見書の写しを証明書の代わりにできます。以前は2年目以降に限られていましたが、令和6年分の申告からは1年目でも使えるようになりました。
親のおむつ代を払っている人は、まず親の要介護認定の有効期間と、市区町村の介護保険の担当課がこの確認書を出しているかを確かめてください。
対象になるのは「寝たきり」で「治療上必要」なおむつ代
国税庁の質疑応答事例「寝たきりの者のおむつ代」は、傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきりで、医師の治療を受けている人のおむつ代を、「医師による治療を受けるため直接必要な費用」として医療費控除の対象としています。その費用であることを明らかにする書類が「おむつ使用証明書」です。
条件を分けると次の三つです。
- 傷病によって、おおむね6か月以上寝たきりであること
- 医師の治療を受けていること
- おむつを使う必要があると認められること
おむつ使用証明書は、現に治療を行っている医療機関が作成して交付するものとされています。様式は厚生労働省から医師会や病院団体などに通知されています。
自宅で介護サービスを受けている人も同じです。タックスアンサーNo.1127は、居宅サービス等でおむつを使った場合のおむつ代について、医師等が発行する「おむつ使用証明書」がある場合に限り医療費控除の対象になるとしたうえで、主治医意見書の内容を市町村が確認した書類か主治医意見書の写しがあれば対象になると書いています。
証明書の代わりになる書類と、その条件
厚生労働省の通知「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて」(令和6年10月10日改正)は、代わりの書類として次の二つを挙げています。
- 市町村が、介護保険法に基づく要介護認定に係る主治医意見書の内容を確認した書類
- 主治医意見書の写し
どちらでも、主治医意見書に次の二つの記載があることが条件です。
- 「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」がB1、B2、C1、C2のいずれか(寝たきり)
- 「失禁への対応」としてカテーテルを使用している、または尿失禁が「現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態」である
寝たきり度がJやAの段階なら、この方法は使えません。
1年目と2年目以降で、使える主治医意見書が違う
どの時期に作られた主治医意見書を使えるかは、おむつ代で医療費控除を受けるのが何年目かで変わります。
1年目の人。 おむつを使った年に受けていた要介護認定と、それに続く認定(有効期間が連続しているものに限る)の有効期間を、その年以降の分だけ合算して6か月以上になることが条件です。それらの認定の審査で作られた主治医意見書のすべてに、上の二つの記載が必要です。医療費控除の対象になるのは、その有効期間(その年以降の分)の中で使ったおむつ代だけです。
たとえば、ある年の10月から有効期間12か月の認定を受けた人なら、有効期間は翌年9月まで続くので、合算して6か月以上という条件を満たします。この場合、その年の申告で対象になるのは、その年の10月から12月に使ったおむつ代です。これは通知の文言に沿って組み立てた例で、個別の認定がこれに当たるかは市区町村で確認してください。
2年目以降の人。 おむつを使った年に作られた主治医意見書を使います。その年に意見書が作られていない場合は、その年に受けていた要介護認定の有効期間が13か月以上なら、その認定の審査で作られた意見書を使えます。
国税庁の個人課税課情報(令和6年10月18日)によると、この改正は、令和3年4月から要介護認定の有効期間を最長48か月にできるようになったことなどを受けたものです。
いつの申告から使えるか
質疑応答事例は、1年目にも代わりの書類を使える扱いを「令和7年1月1日以後に令和6年分以後の確定申告書を提出する場合」としています。
それより前の年分(令和5年分まで)と、令和6年12月31日までに出した令和6年分の申告では、代わりの書類を使えるのは2年目以降に限られます。このときは、おむつを使った年に限らず、前年または前々年に作られた主治医意見書も使えました(現に受けている要介護認定の有効期間が13か月以上で、おむつを使った年に意見書が発行されていない場合に限る)。改正前の通知では、意見書の記載の条件も、寝たきり度がB1〜C2で「尿失禁の発生可能性」が「あり」であることで、カテーテルの使用は挙げられていませんでした。過去の年分をさかのぼって申告する人は、その年分の扱いで書類をそろえてください。
確認書を出すかどうかは市区町村次第
厚生労働省の通知は、市町村が主治医意見書の内容を確認した書類について、「この手続を行うかどうかは、各市町村の任意の判断であること」としています。名前も自治体によって違います。住んでいる市区町村の介護保険の担当課に、おむつ代の医療費控除のための書類を出しているかを先に問い合わせてください。
確認書を出していない市区町村でも、主治医意見書の写しを使う方法があります。通知では、写しの裏面に要介護認定の有効期間(始期と終期)を記載することとされています。写しの請求先も自治体によって違うため、同じ担当課で尋ねます。
通知に付いている確認書の様式例では、市区町村が次の事項を記載します。
- 主治医意見書の作成日(複数ある場合はいちばん新しいもの)
- 要介護認定の有効期間(1年目で連続する認定がある場合は、その年以降の分を合算した期間)
- 寝たきり度(B1・B2・C1・C2のどれか。複数の認定がある場合はいちばん軽い区分)
- 失禁への対応としてのカテーテル使用、または尿失禁の発生やその可能性の有無
申請書には、医療費控除を受けるのが1年目か2年目以降かに丸を付ける欄があります。
申請の例:横浜市保土ケ谷区
横浜市保土ケ谷区は「主治医意見書記載内容確認書」という名前で、福祉保健センター高齢・障害支援課で受け付けています。案内に書かれている必要なものは次のとおりです。
- 主治医意見書記載内容確認書の交付申請書
- おむつを使っている人の介護保険被保険者証(申請書に被保険者番号を書くため)
- 窓口に来た人の本人確認書類
- 委任状(本人と同一世帯ではない家族が申請する場合)
同区は、交付の際に介護保険証の原本と本人確認書類を持参するよう案内しています。別の市区町村では窓口も持ち物も違うので、これは一例として見てください。
確定申告での出し方
医療費控除は、確定申告書を提出して受けます。おむつ代は、おむつの領収書をもとに医療費控除の明細書に書き込みます。
おむつ使用証明書は、確定申告書に添付するか、提出の際に提示します。代わりの書類(市区町村の確認書や主治医意見書の写し)を使う場合も、添付または提示です。
医師が発行したおむつ使用証明書については、質疑応答事例によると、明細書の欄外の余白などに次の三つを書けば、添付や提示を省略できます。
- 証明年月日
- 証明の名称
- 証明者の名称(医療機関名など)
省略したおむつ使用証明書は、医療費の領収書と一緒に、確定申告期限等から5年間保存しておく必要があります。代わりの書類について同じ省略ができるかは、質疑応答事例には書かれていません。
控除額の計算は、ほかの医療費と同じです。タックスアンサーNo.1120では、その年に払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を引いた額で、最高200万円です。おむつ代だけで10万円を超えなくても、同じ人が払ったほかの医療費や、医療費控除の対象になる介護サービスの自己負担と合わせて計算します。
払った人が誰かも大事です。医療費控除は、自分か、自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために払った医療費が対象です。親のおむつ代を子が払っていて、親と生計を一にしているなら、子の医療費控除に入れられます。
過去の分をあとから申告する
おむつ代が対象になると知らずに申告していなかった年分も、還付申告で取り戻せる可能性があります。タックスアンサーNo.2030によると、還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、還付が生じるのは、源泉徴収などですでに所得税を納めている場合です。前の節で書いたとおり、年分によって代わりの書類を使える条件が違います。
介護施設に入っている場合は別の扱い
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所している人は、施設サービスの対価そのものに医療費控除の決まりがあります。タックスアンサーNo.1125では、特別養護老人ホームは施設サービスの対価(介護費、食費、居住費)の自己負担額の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院は自己負担額が対象で、どちらも日常生活費は対象外です。施設が出す領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が書かれることになっています。
施設で使ったおむつの費用が、このどこに入るのか、別に請求されたものを医療費控除に入れられるのかは、今回読んだ資料には書かれていませんでした。施設の領収証の記載を確かめ、分からなければ税務署に問い合わせてください。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回の資料では確かめられていません。
- 介護施設に入所している人のおむつ代を、施設サービスの対価と別に医療費控除に入れられるか。今回確かめたのは特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の施設サービスの扱いだけで、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に住んでいる場合については資料を読んでいません。
- 市区町村の確認書や主治医意見書の写しを使う場合に、おむつ使用証明書と同じく明細書への記載で添付・提示を省略できるか。
- 自治体のおむつの給付や購入費の助成を受けている場合に、その分を「保険金などで補てんされる金額」として差し引くかどうか。
- 医師が書く「おむつ使用証明書」の様式の中身。様式は厚生労働省から医療機関側に通知されていますが、今回は様式そのものを開いていません。国税庁の参考資料(平成14年7月1日付の通知)のPDFは画像で、文字を読み取れませんでした。
参考資料
- 国税庁 おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(情報)個人課税課情報 第3号 令和6年10月18日
- 厚生労働省 「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて」の一部改正について(令和6年10月10日、国税庁掲載の別添)
- 国税庁 質疑応答事例 寝たきりの者のおむつ代
- 国税庁 おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
- 国税庁 タックスアンサーNo.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
- 国税庁 タックスアンサーNo.2030 還付申告
- 横浜市保土ケ谷区 医療費控除(おむつ使用証明書)