子どもが療育手帳や精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳を持っているなら、16歳未満でも、親の年末調整で障害者控除を受けられます。国税庁のタックスアンサーNo.1160は、「障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます」と書いています。
前提は、その子が親の扶養親族であることです。扶養親族は、生計を一にし、令和8年分では合計所得金額が62万円以下(給与だけなら給与収入136万円以下)の親族です。
控除額は、手帳の種類と等級で「障害者」か「特別障害者」かが決まり、そこに同居かどうかが加わって、27万円、40万円、75万円のどれかになります。勤務先への申告は扶養控除等(異動)申告書で行います。この記事では、区分の見分け方、申告書のどこに書くか、年の途中で手帳を取ったときの扱いを順に確かめます。金額は令和8年分(2026年分)のものです。
16歳未満の子は、扶養控除はなくても障害者控除はある
「年末調整のしかた」は、年齢16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)は控除対象扶養親族に当たらないとしています。そのため、中学生以下の子については扶養控除の38万円は引かれません。
障害者控除は、扶養控除とは別の控除です。No.1160の概要は、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられるとしています。対象は「控除対象扶養親族」ではなく「扶養親族」なので、16歳未満の子も入ります。
16歳以上の子の場合は、扶養控除と障害者控除の両方が引かれます。「年末調整のしかた」の控除額の計算表は、一般の控除対象扶養親族・特定扶養親族などの人数と、一般の障害者・特別障害者・同居特別障害者の人数を別々の欄に数えて合計する形になっています。たとえば17歳の子が同居特別障害者に当たるなら、扶養控除38万円と障害者控除75万円の合計113万円が所得から差し引かれます。19歳以上23歳未満の特定扶養親族なら、扶養控除は63万円です。
手帳の種類と等級で、障害者か特別障害者かが決まる
No.1160と「年末調整のしかた」は、障害者に当たる人を手帳や判定の種類ごとに挙げ、そのうち特別障害者になる範囲を決めています。子どもに関係しやすいものを抜き出すと次のとおりです。
| 手帳・判定 | 特別障害者になる人 | それ以外で手帳などがある人 |
|---|---|---|
| 療育手帳(児童相談所などの判定で知的障害者とされた人) | 重度と判定された人(手帳の表示が「A」「マルA」「A2」など) | 障害者(表示が「B」など) |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 障害等級が1級の人 | 障害者 |
| 身体障害者手帳 | 障害の程度が1級または2級と記載されている人 | 障害者 |
療育手帳について、No.1160のQ&Aは「療育手帳の交付を受けている人は障害者に該当し(障害の程度が重度として「A」(「マルA」、「A2」など)と表示されている人は特別障害者)」と書いています。療育手帳は自治体によって「愛護手帳」「愛の手帳」「みどりの手帳」などの名前で呼ばれていることがあり、これらも同じ扱いです。区分の表示が分かりにくい場合について、「年末調整のしかた」は住んでいる自治体に尋ねるよう案内しています。
No.1160の一覧には、手帳のほかに「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人」(全員が特別障害者)や、6か月以上寝たきりで複雑な介護を必要とする人(特別障害者)なども並んでいます。一方、障害の程度が7級相当で身体障害者手帳が交付されない人について、No.1160のQ&Aは、手帳の交付を受けていなければ(65歳以上で市町村長等の認定を受けている場合を除き)障害者控除を受けられないとしています。
控除額は27万円、40万円、75万円
No.1160の控除額は次のとおりです。
- 障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者:75万円
同居特別障害者は、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族のうち、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にするその他の親族のいずれかとの同居を常況としている人です。父親が子を扶養親族として申告していて、子がふだん母親と一緒に暮らしているなら、同居の条件は満たします。
控除額は、所得から差し引く金額です。実際に戻る所得税はこの額に税率を掛けた分になるので、控除額そのものが戻るわけではありません。
給与収入が850万円を超える親は、所得金額調整控除も確認する
「年末調整のしかた」によると、所得金額調整控除は、その年の給与収入が850万円を超える人が、本人が特別障害者である場合や、23歳未満の扶養親族、特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を持つ場合に受けられます。控除額は、給与収入(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を引いた額の10%で、上限は15万円です。年末調整で受けるには所得金額調整控除申告書を出します。23歳以上になった子でも、特別障害者で扶養親族であれば対象に入ります。
毎月の源泉徴収も変わる
障害者控除は年末調整のときだけの話ではありません。「年末調整のしかた」は、毎月の給与から源泉徴収する税額を求めるときの「扶養親族等の数」について、同一生計配偶者や扶養親族(年齢16歳未満の人を含む)のうちに障害者(特別障害者を含む)または同居特別障害者に当たる人がいる場合、「これらの一に該当するごとに」扶養親族等の数に1人を加算するとしています。
16歳未満の子は、ふつうは扶養親族等の数に数えられませんが、障害者に当たる子は加算の対象になります。同居特別障害者の子は、障害者(特別障害者を含む)と同居特別障害者の両方に当たります。毎月の源泉徴収税額は税額表の甲欄でこの数に応じて求めるので、扶養控除等申告書で申告しておけば、年末調整を待たずに毎月の計算に反映されます。
扶養控除等(異動)申告書の書き方
「障害者又は勤労学生の内容」欄
令和8年分の扶養控除等(異動)申告書の裏面「記載についてのご注意」は、「障害者又は勤労学生の内容」欄に次の事項を書くとしています。
- 障害の状態、または交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級)など、障害者(特別障害者)に当たる事実
- その人が扶養親族の場合は、その人の氏名(特別障害者であるときは同居の有無)、マイナンバー、住所または居所、生年月日、続柄、その年の所得の見積額
ただし、「源泉控除対象親族」欄や「住民税に関する事項」欄にすでに書いた事項は、氏名を除いて省略できます。
16歳未満の子は「住民税に関する事項」欄にも
16歳未満の子は、表面の「源泉控除対象親族」欄には書きません。「年末調整のしかた」は、年齢16歳未満の扶養親族を扶養控除等(異動)申告書の「住民税に関する事項」欄に記載するよう求めています。この欄に子の氏名や生年月日などを書いたうえで、「障害者又は勤労学生の内容」欄に子の氏名と手帳の種類・交付年月日・等級、特別障害者なら同居の有無を書く、という組み合わせになります。
共働きなら、どちらの申告書に書くかを決める
夫婦が二人とも給与をもらっている場合、子をどちらの扶養親族とするかは選べます。国税庁の質疑応答事例は、同じ世帯に所得者が2人以上いる場合、同一人を重複して申告しない限り、どの所得者の扶養親族としても差し支えないとしています。障害者控除を受けるのは、その子を扶養親族として申告した側です。同じ子を夫婦の両方の申告書に書くことはできません。
年の途中で手帳を取ったとき
「年末調整のしかた」は、控除対象扶養親族や障害者などに当たるかどうかを、年末調整を行う日の現況で判定するとしています。年の途中で手帳の交付を受けた年でも、年末調整の時点で障害者に当たれば、その年から控除を受けられます。手帳を持っていた月数で按分する仕組みは、国税庁の資料には書かれていません。
手引きは、「本年の中途で、同一生計配偶者や扶養親族が障害者に該当することとなったこと」を、異動申告が忘れられていないか勤務先が確認すべき事情として挙げています。手帳が交付されたら、扶養控除等申告書の異動を勤務先に申告します。
年末調整が終わったあとに交付された場合
年末調整が終わってから12月31日までに手帳が交付された場合について、手引きは、年末調整後に受給者本人が障害者に該当することとなった場合などには異動の申告を受けて年末調整をやり直せるとし、やり直しができるのは源泉徴収票を交付することになる翌年1月末日までとしています。勤務先がやり直さない場合は、本人が確定申告をして障害者控除を受けます。
身体障害者手帳を申請中のとき
No.1186は、身体障害者手帳や戦傷病者手帳の交付を受けていない人でも、扶養控除等申告書などを出す時点で手帳の交付を申請中であるか、交付を受けるための医師の診断書を持っていて、その年の12月31日などの現況で明らかに手帳の交付を受けられる程度の障害があると認められれば、障害者控除を受けられるとしています。この取扱いは身体障害者手帳と戦傷病者手帳についてのもので、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳は名前が挙がっていません。
手帳を取る前の年には遡れない
国税庁の質疑応答事例は、今年身体障害者手帳の交付を受け、障害の程度が3年前と同じだとする医師の証明書があっても、過去に遡って障害者控除を適用することはできないとしています。所得税基本通達2-38はその年の12月31日の現況で認める趣旨で、遡及を認めるものではないという理由です。
前の年に申告し忘れていたとき
手帳を前から持っていたのに、年末調整で障害者控除を申告していなかった年があれば、その年分の確定申告(還付申告)で控除を加えられます。タックスアンサーNo.2030は、確定申告をする義務のない人でも、源泉徴収された所得税が年間の所得について計算した所得税より多いときは還付申告ができ、還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出できるとしています。
源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円の年は、障害者控除を加えても還付される所得税はありません。
確認の順番
- 子が生計を一にする扶養親族か(令和8年分は合計所得62万円以下、給与だけなら給与収入136万円以下)を確かめる
- 手帳の種類と等級から、障害者か特別障害者かを決める。療育手帳は「A」の表示かどうか
- 特別障害者なら、本人・配偶者・生計を一にする親族の誰かと同居しているかを確かめる
- 扶養控除等(異動)申告書の「障害者又は勤労学生の内容」欄に書く。16歳未満の子は「住民税に関する事項」欄にも書く
- 共働きなら、子をどちらの申告書に書くかを決め、重複させない
- 給与収入が850万円を超えるなら、所得金額調整控除申告書も出す
- 過去に申告していなかった年は、翌年1月1日から5年以内なら還付申告を検討する
この記事で確認できなかったこと
2026年11月2日時点で、次の点は今回読んだ国税庁の資料では確かめられていません。
- 療育手帳の「B1」「B2」のような自治体ごとの区分名が、特別障害者の「重度」に当たるかどうか。国税庁の資料は「A」の表示を挙げるだけで、区分の詳細は自治体に確認するよう案内しています。
- 療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を申請中の場合の扱い。No.1186は身体障害者手帳と戦傷病者手帳だけを挙げています。
- 年末調整のときに勤務先が手帳の写しの提出や提示を求めるかどうか。国税庁の資料は申告書の記載事項を定めていますが、写しの添付は書かれていません。勤務先の案内に従ってください。
- 20歳以上の子が障害基礎年金を受けている場合に、その年金が子の合計所得金額に入るかどうか。
- 住民税の障害者控除の額。住んでいる市区町村に確認してください。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1160 障害者控除 — 16歳未満の扶養親族への適用、控除額、障害者・特別障害者の範囲
- 国税庁 タックスアンサーNo.1160 障害者控除 Q&A — 7級相当の扱い、療育手帳による判定
- 国税庁 タックスアンサーNo.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について
- 国税庁 タックスアンサーNo.1180 扶養控除
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた — 扶養親族と年少扶養親族、障害者・同居特別障害者、所得金額調整控除、扶養親族等の数の加算、年末調整後の再調整、控除額の計算表
- 国税庁 令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 — 裏面「記載についてのご注意」⑼⑽⑾
- 国税庁 質疑応答事例 障害者控除の適用を受けることのできる年分
- 国税庁 質疑応答事例 2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属
- 国税庁 タックスアンサーNo.2030 還付申告