育休中や復帰直後のボーナス、所得税はどう計算される?前月に給与の支払がなければ算出率の表ではなく月額表で計算する

この記事の要点

前月中に給与の支払がない、前月の給与が社会保険料等以下、または賞与が前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍を超えるときは、算出率の表でなく月額表で計算します。前月に給与がなければ賞与を6か12で割って月額表の税額を出し、6か12を掛けます。どれも仮の税額で、年末調整で精算します。

  1. 賞与の所得税は、前月の給与から社会保険料等を引いた額と扶養親族等の数で「算出率の表」の率を決め、社会保険料等を引いた賞与に掛けるのが原則
  2. 前月中に給与の支払がない、前月の給与が社会保険料等以下、賞与(社会保険料等控除後)が前月の給与(同)の10倍を超える、のどれかなら算出率の表は使わず月額表で計算する
  3. 前月に給与がないとき:賞与÷6(計算期間6か月超は12)を月額表に当てはめ、その税額×6(または12)。国税庁の例では賞与769,300円・扶養0人で7,800円
どうする?編集部 · · 読了 約7分
目次(14項目)
  1. ふつうの賞与の計算
  2. 前月に給与の支払がないとき
  3. 国税庁の例
  4. 前月の給与が少なかったとき
  5. 10倍以内なら算出率の表
  6. 10倍を超えるなら月額表
  7. 前月の給与が社会保険料等以下のとき
  8. 12月に賞与が出る人を、育休の時期で分けると
  9. 扶養控除等申告書を出していない人
  10. 社会保険料は別のルール
  11. 年末調整で1年分を精算する
  12. 明細を確かめる順番
  13. この記事で確認できなかったこと
  14. 参考資料

賞与(ボーナス)の所得税は、ふつうは前月の給与を基準に率を決めて計算します。そのため、育児休業中で前月に給与が出ていない人や、復帰した月の給与が少なかった人は、同じ計算ができません。

国税庁のタックスアンサーNo.2523と「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の備考は、次の三つの場合には算出率の表を使わず、毎月の給与と同じ「月額表」を使って計算するとしています。

  • 前月中に給与の支払がない場合
  • 前月中の給与の金額が、前月中の社会保険料等の金額以下である場合
  • 賞与(社会保険料等控除後)が、前月中の給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える場合

前月に給与がないときは、賞与を6(賞与の計算期間が6か月を超えるなら12)で割った額を月額表に当てはめ、出た税額に6(または12)を掛けます。どの方法で引かれた所得税も仮の税額で、年末調整で1年分が精算されます。この記事では、それぞれの計算の手順と、国税庁が示す例を見ていきます。税率と税額は令和8年分の税額表のものです。

ふつうの賞与の計算

No.2523によると、扶養控除等申告書を出している人の賞与は、次の順で所得税(令和8年分は所得税と復興特別所得税)を計算します。

  1. 前月の給与から社会保険料等を差し引く
  2. 算出率の表の甲欄で、扶養親族等の数に応じて1の金額が当てはまる行を探し、「賞与の金額に乗ずべき率」を求める
  3. (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×2の率

率を決めるのは賞与の額ではなく、前月の給与と扶養親族等の数です。令和8年分の算出率の表の甲欄では、扶養親族等が0人の人は、前月の給与(社会保険料等控除後)が8万2千円未満なら率は0%、8万2千円以上9万4千円未満なら2.042%、9万4千円以上26万円未満なら4.084%と上がっていきます。

前月に給与の支払がないとき

育児休業や休職で、賞与を受け取る前月に勤務先から給与が支払われていなかった場合です。No.2523の計算は次のとおりです。

  1. (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
  2. 1の金額を月額表に当てはめて税額を求める
  3. 2の税額×6

賞与の計算期間が6か月を超える場合は、6の代わりに12を使います。

国税庁の例

No.2523は、前月に給与の支払がない場合の例として、計算期間6か月で社会保険料等控除後の賞与が769,300円、扶養親族等の数が0人のケースを挙げています。

  • 769,300円÷6=128,216円(1円未満切捨て)
  • 月額表の甲欄で、128,216円・扶養親族等0人の税額は1,300円
  • 1,300円×6=7,800円

この賞与から源泉徴収される税額は7,800円です。

比べるために、同じ人が前月に通常どおり給与を受けていて、その額が社会保険料等控除後で25万円だったとします。算出率の表の甲欄・扶養親族等0人では25万円は「9万4千円以上26万円未満」の行で、率は4.084%です。769,300円×4.084%で、源泉徴収税額は31,418円になります。前月に給与がないと、賞与を月々の給与に均して月額表で計算するので、同じ賞与でも引かれる額がかなり違うことがあります。

前月の給与が少なかったとき

育休から月の途中に復帰し、前月中に日割りの給与が少しだけ支払われた、という場合は「前月に給与の支払がない」には当たりません。この場合は、前月の給与(社会保険料等控除後)の額と賞与の額を比べます。

10倍以内なら算出率の表

賞与(社会保険料等控除後)が前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍以内なら、通常どおり算出率の表を使います。前月の給与が少ない分、当てはまる行が下がり、率も低くなります。扶養親族等0人で前月の給与が社会保険料等控除後6万円、賞与が社会保険料等控除後50万円(6万円の10倍の60万円以内)なら、6万円は「8万2千円未満」の行なので率は0%です。

10倍を超えるなら月額表

賞与が前月の給与の10倍を超えると、No.2523の次の計算に変わります。

  1. (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または12)
  2. 1+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
  3. 2の金額を月額表に当てはめて税額を求める
  4. 3の税額−(前月の給与に対する源泉徴収税額)
  5. 4の税額×6(または12)

No.2523の例は、前月の給与が社会保険料等控除後166,531円、計算期間6か月で賞与が社会保険料等控除後1,668,062円、扶養親族等1人のケースです。1,668,062円÷6=278,010円に166,531円を足した444,541円の月額表の税額が16,100円、166,531円の税額が1,510円で、(16,100円−1,510円)×6=87,540円が賞与から引かれる税額です。

前月の給与が社会保険料等以下のとき

算出率の表の備考4は、前月中の給与の金額が前月中の社会保険料等の金額以下の場合も、算出率の表によらず月額表を使って計算するとしています。復帰した月の給与がわずかで、社会保険料のほうが大きかった場合がこれに当たります。

12月に賞与が出る人を、育休の時期で分けると

12月に冬の賞与が支払われる人で、上のルールを当てはめると次のようになります。見るのは11月中に支払われた給与です。

11月中の給与の支払賞与の所得税の計算
なし(11月の給与支給日も育休中で、給与が出ていない)月額表を使う(賞与÷6または12を月額表に当てはめ、税額×6または12)
あるが、社会保険料等以下月額表を使う(算出率の表の備考4)
あり、賞与がその10倍以内(どちらも社会保険料等控除後)算出率の表。前月の給与が少ないほど率は低い
あり、賞与がその10倍を超える月額表を使う(前月の給与を足して計算し、前月の税額を引く)

12月の賞与の支給日にまだ育休中で、11月にも給与の支払がなかった人は、1行目に当たります。12月の途中で復帰し、復帰前に賞与が支払われた場合も、見るのは11月中の給与です。

給与の締め日と支給日の関係(当月払いか翌月払いか)は会社ごとに違います。「11月分の給与」ではなく「11月中に支払われた給与」で見る点に気をつけてください。算出率の表の備考は「前月中の給与等の金額」と書いています。

扶養控除等申告書を出していない人

No.2523とNo.2511によると、扶養控除等申告書を出している人は甲欄、出していない人は乙欄を使います。算出率の表の備考も、申告書の提出がない人は乙欄の行を前月の給与で求めるとし、前月に給与の支払がない場合などは同じく月額表を使って計算するとしています。

社会保険料は別のルール

税額を計算する前に賞与から引く社会保険料は、所得税とは別のルールで決まります。日本年金機構は、育児休業等の期間に月末が含まれる月に支給された賞与の保険料は免除されるとし、令和4年10月1日以降に始めた育児休業等については、その賞与月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限るとしています。

保険料が免除されれば、「賞与から社会保険料等を差し引いた金額」はその分大きくなります。

年末調整で1年分を精算する

賞与から引かれる所得税は、その時点での仮の税額です。No.2662は、1年間に源泉徴収した税額の合計は、その人が1年間に納めるべき税額と必ずしも一致しないため、年末調整で一致させるとしています。年末調整では、その年に支払うことが確定した給与(賞与を含む)の合計から給与所得控除後の金額を求め、所得控除を引いて1年分の税額を計算します。源泉徴収した額のほうが多ければ差額が還付され、少なければ徴収されます。

育休で給与が出なかった月がある年は、1年間の給与の合計が少なくなります。賞与で引かれた額が少なくても多くても、最終的な所得税は年末調整で決まります。年末調整の対象は扶養控除等申告書を出している人で、給与が2,000万円を超える人は対象外です(No.2662)。

明細を確かめる順番

  1. 賞与の前月に、勤務先から給与が支払われたかを確かめる(給与明細の支給日で見る)
  2. 支払がなければ、賞与(社会保険料等控除後)÷6(または12)を月額表に当てはめた税額×6(または12)になっているかを見る
  3. 支払があれば、前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍と賞与(同)を比べる。10倍以内なら算出率の表、超えていれば月額表の計算
  4. 前月の給与が社会保険料等以下なら、月額表の計算
  5. 計算方法が分からないときは勤務先の給与担当に聞く。1年分は年末調整で精算される

この記事で確認できなかったこと

2026年11月2日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。

  • 「賞与の計算期間」が6か月を超えるかどうかの判断のしかた。勤務先の賞与の規程によります。
  • 育児休業給付金や出産手当金を受けていた月が「前月中に給与の支払がない」に当たるかどうかを直接書いた国税庁の資料。今回は読んでいません。
  • 令和9年分以後の算出率の表と月額表の数字。国税庁は令和9年分以後は改正されていると注意しています。
  • 前月の給与が社会保険料等以下の場合に、月額表をどの手順で使うか。算出率の表の備考4は財務省告示の該当号を示すだけで、No.2523には手順の例がありません。
  • 住民税への影響。

参考資料

Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

参考資料

  1. 国税庁 タックスアンサーNo.2523 賞与に対する源泉徴収
  2. 国税庁 令和8年分 源泉徴収税額表(賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表)
  3. 国税庁 令和8年分 源泉徴収税額表(一括)
  4. 国税庁 タックスアンサーNo.2511 税額表の種類と使い方
  5. 国税庁 タックスアンサーNo.2662 年末調整のしかた
  6. 日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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