個人年金保険の保険料が「個人年金保険料控除」の対象になるのは、年金の受取人や保険料の払い方、年金の受け取り方について国税庁が挙げる要件を満たした契約だけです。年金の受取人が保険料を払う人かその配偶者であること、保険料を10年以上の期間にわたって定期に払うこと、年金を原則60歳から10年以上の定期または終身で受け取ることが必要です(タックスアンサーNo.1141)。
公益財団法人生命保険文化センターは、これらの条件を満たして「個人年金保険料税制適格特約」を付けた契約の保険料が個人年金保険料控除の対象だとしています。そして、税制適格特約を付けていない個人年金保険や、変額個人年金保険の保険料は、一般生命保険料控除の対象と説明しています。
名前に「個人年金」と付いていても、年末調整の保険料控除申告書で個人年金保険料の欄に書けるとは限りません。この記事では、国税庁の要件、どちらの欄に書くかの確かめ方、控除額の計算を順に見ます。
国税庁が挙げる三つの要件
No.1141は、平成24年1月1日以後に結んだ契約(新個人年金保険料)の対象を、生命保険会社などと結んだ生命保険契約等のうち、年金(退職年金を除く)を給付する定めがあり、次の要件の定めがあるものとしています。
- 年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込みをする者、またはその配偶者となっている契約であること
- 保険料等は、年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって、定期に支払う契約であること
- 年金の支払は、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金であること
被保険者などの重度の障害を原因として年金の支払を始める10年以上の定期年金または終身年金も対象になる、と注記があります。平成23年12月31日以前に結んだ契約(旧個人年金保険料)も、同じ三つの要件の定めがあるものが対象です。
生命保険文化センターの解説は、条件をもう少し細かく書いています。年金受取人が契約者(保険料負担者)またはその配偶者であること、年金受取人は被保険者と同一人であること、保険料払込期間が10年以上であること(一時払は不可)、確定年金や有期年金なら年金受取開始が60歳以降で受取期間が10年以上であること、の四つです。
受取人の範囲は、一般の生命保険料より狭い
令和8年分の保険料控除申告書の裏面は、「一般の生命保険料」と「介護医療保険料」の対象を、保険金等の受取人の全てを本人または配偶者その他の親族とする契約に限るとしています。これに対して「個人年金保険料」は、年金の受取人を本人または配偶者が生存している場合にはそのいずれかとする契約に限っています。「年末調整のしかた」も、受取人に親族が含まれるのは一般の生命保険料などで、個人年金保険料については親族を除くと注記しています。
子や親を年金の受取人にした個人年金保険は、この要件に当たりません。
税制適格特約が付いていない契約は一般の生命保険料
今回読んだ国税庁の資料には「税制適格特約」という言葉は出てきません。国税庁の要件は、契約に要件の「定めがある」ことです。生命保険文化センターは、個人年金保険の種類を解説するページで「個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険の保険料は、「個人年金保険料控除」の対象になります」「特約が付加されていない個人年金保険の保険料は、「一般生命保険料控除」の対象になります」と書いています。
変額個人年金保険
運用の結果で年金額や死亡給付金が変わる変額個人年金保険について、生命保険文化センターは、払込保険料は払い込んだ年の一般の生命保険料控除の対象で、個人年金保険料控除の対象にはならないとしています。理由として、個人年金保険料控除の要件に保険料の払込みに応じて死亡給付金が逓増する必要があることを挙げ、所得税法施行令211条を示しています。
一時払
国税庁の要件2は「10年以上の期間にわたって、定期に支払う」ことです。生命保険文化センターも一時払は不可としています。まとめて払い込んだ個人年金保険は、個人年金保険料控除の対象になりません。
個人年金保険に付けた特約
「年末調整のしかた」は、個人年金保険契約等に傷害特約や疾病特約などが付いている場合、その特約部分の保険料を個人年金保険料に含めて計算していないかを確かめるよう勤務先に求めています。生命保険文化センターは、特約部分の保険料は、旧制度では一般生命保険料控除、新制度では一般生命保険料控除または介護医療保険料控除の対象としています。
どちらの欄に書くかは、控除証明書で確かめる
No.1141は、支払った生命保険料が控除の対象になるかどうかは、保険会社などから送られてくる証明書で確かめられるとしています。保険料控除申告書の記載例も、「新・旧の区分」は生命保険料控除証明書などを参考に記載するとしています。個人年金保険の保険料をどの区分に書くかは、まず証明書を見て決めます。
区分は自分で振り替えられない
「年末調整のしかた」は、支払った保険料の金額は区分ごとに合計し、「新生命保険料を旧生命保険料に含めることや新個人年金保険料を介護医療保険料に含めることなど、支払った保険料の区分を他の区分に振り替えることはできません」としています。
一般の生命保険料がすでに上限に届いていて個人年金保険料の枠が空いている、あるいはその逆でも、証明書の区分を変えて申告することはできません。
控除額の計算
No.1140によると、新契約の個人年金保険料の控除額は次のとおりです。一般の生命保険料(23歳未満の扶養親族がいる場合を除く)と介護医療保険料も同じ式です。
| 年間の支払保険料等 | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 全額 |
| 2万円超4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
| 4万円超8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
旧契約の個人年金保険料は、2万5千円以下は全額、5万円以下は×1/2+1万2,500円、10万円以下は×1/4+2万5千円、10万円超は一律5万円です。支払保険料等は、その年に払った額から、その年に受けた剰余金や割戻金を引いた残りです。
新旧の両方の個人年金保険料がある場合、No.1140は、旧の支払保険料等が6万円を超えるなら旧だけで計算した額(最高5万円)、6万円以下なら新と旧それぞれで計算した額の合計(最高4万円)としています。
「年末調整のしかた」の計算例では、新個人年金保険料3万円で控除額2万5千円、旧個人年金保険料9万円で控除額4万7,500円になります。両方の合計7万2,500円は最高4万円に抑えられるので、いちばん大きい旧だけの4万7,500円が個人年金保険料の控除額です。
一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の三つの控除額の合計は、最高12万円です。国税庁の質疑応答事例は、区分ごとに新旧どちらの控除額を使うか(または併用するか)は任意に選べ、そのうえで合計が12万円を超えれば12万円になるとしています。
一般に入るか個人年金に入るかで、何が変わるか
たとえば新契約の個人年金保険料を年12万円払っている人で考えます。個人年金保険料の区分なら、8万円を超えるので控除額は4万円です。同じ保険料が一般の生命保険料の区分になると、死亡保険などの保険料と合わせて一般の枠で計算します。新契約の一般の生命保険料もすでに8万円を超えていれば、一般の控除額は4万円のまま増えません(23歳未満の扶養親族がいる場合の上限は6万円)。区分の違いは、別の枠を使えるかどうかの違いです。
生命保険文化センターによると、住民税の控除額は新契約で各区分最高2万8千円、旧契約で最高3万5千円です。所得税で年末調整や確定申告をしていれば、住民税の手続きは別に要らないとしています。
年末調整と確定申告
会社員は、生命保険料控除証明書を「給与所得者の保険料控除申告書」に添えて勤務先に出し、年末調整で控除を受けます。「年末調整のしかた」によると、旧生命保険料は一契約の年間保険料が9,000円を超えるもの、それ以外の保険料(新個人年金保険料・旧個人年金保険料を含む)は金額の多少にかかわらず全てについて、証明書類を添付するか提示します。
年末調整で控除を受けなかった場合は、確定申告で受けます。No.1140は、確定申告書に証明書を添付するか提示するとし、旧契約で年間保険料が9,000円以下のものと年末調整で控除を受けたものは不要としています。
確認の順番
- 生命保険料控除証明書で、個人年金保険の区分(一般・介護医療・個人年金)と新・旧を確かめる
- 区分が「一般」なら、税制適格特約が付いていない、変額個人年金、一時払などの理由がないか、分からなければ保険会社に聞く
- 保険料控除申告書に、証明書の区分のとおりに書く。区分を移し替えない
- 個人年金保険に付けた傷害特約・疾病特約の保険料は、個人年金保険料に含めない
- 新旧両方あるときは、旧の保険料が6万円を超えるかで計算を分け、三区分の合計は最高12万円で止める
この記事で確認できなかったこと
2026年11月2日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- すでに入っている個人年金保険に、あとから税制適格特約を付けられるか。保険会社の取扱いによると考えられます。
- 年金の受取開始年齢や受取期間を契約後に変更した場合に、個人年金保険料控除の対象から外れるかどうか。
- 生命保険文化センターが挙げる「年金受取人は被保険者と同一人」という条件は、国税庁のタックスアンサーNo.1141の要件の文言には出てきません。条件の根拠となる政令の条文は読んでいません。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等 — 新個人年金保険料・旧個人年金保険料の対象と三つの要件、証明書での確認
- 国税庁 タックスアンサーNo.1140 生命保険料控除 — 控除額の計算式、新旧両方がある場合、手続き
- 国税庁 質疑応答事例 生命保険料控除の限度額計算 — 区分ごとに新旧を選べること、合計12万円
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた — 受取人の範囲、区分の振替不可、特約部分、証明書類、計算例
- 国税庁 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書 — 裏面(注)3 個人年金保険料の受取人
- 国税庁 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書の記載例 — 「新・旧の区分」の書き方
- 生命保険文化センター 税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」 — 税制適格特約の四つの条件、特約なし・変額は一般、特約部分、住民税の控除額
- 生命保険文化センター 個人年金保険(主契約の種類) — 特約の有無と控除区分
- 生命保険文化センター 変額個人年金保険の税金の取扱いは? — 変額個人年金保険は一般の生命保険料控除