先に結論
「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」といった誘い方で、入会金やサンプル商品代などの金銭負担をして契約したなら、それは特定商取引法の「連鎖販売取引」に当たる可能性があります。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、この取引では、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しの方が後である場合には、その日)から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録により契約を解除(クーリング・オフ)できます。訪問販売や特定継続的役務提供の8日より長い期間が設けられています。
連鎖販売取引とは何か
連鎖販売取引とは、個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引のことです。特定商取引法は「連鎖販売業」を次のように規定していると説明されています。
- 物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む)の販売(又は役務の提供など)の事業であって
- 再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は同種役務の提供若しくは役務提供のあっせん)をする者を
- 特定利益が得られると誘引し
- 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む)をするもの
「他人を誘って売れば儲かる」「勧誘して入会させれば紹介料がもらえる」といった形で示される利益が「特定利益」、取引を行うための条件として課される1円以上の負担が「特定負担」です。消費者庁は、実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多いとしつつ、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものは全て連鎖販売取引に該当すると説明しています。
組織の中の立場は、連鎖販売業を実質的に掌握している「統括者」、統括者が勧誘を行わせる「勧誘者」、統括者または勧誘者以外の連鎖販売業を行う「一般連鎖販売業者」に分けられ、いずれも連鎖販売取引をしようとするときは勧誘に先立って消費者に一定の事項を告げなければならないとされています。
20日間のクーリング・オフ
消費者(無店舗個人)が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しの方が後である場合には、その日)から数えて20日以内であれば、連鎖販売業を行う者に対して、書面または電磁的記録により契約の解除ができます。
連鎖販売業を行う者が、事実と違うことを言ったり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、20日を経過していてもクーリング・オフをすることができるとされています。
通知の方法について消費者庁は、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことを薦めています。電磁的記録の場合は、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと説明されています。
クーリング・オフをした場合、業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できず、商品の引取り費用も業者の負担になります。ただし原状回復義務については契約を解除する双方が負うため、業者は支払われた代金・取引料を返還し、消費者は引渡しを受けた商品を業者に返還しなければなりません。
20日を過ぎた後の退会と返品
連鎖販売契約を結んで組織に入会した消費者(無店舗個人)は、クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって連鎖販売契約を解除できます。そのようにして退会した消費者は、次の条件を全て満たせば、商品販売契約を解除することができます。
- 入会後1年を経過していないこと
- 引渡しを受けてから90日を経過していない商品であること
- 商品を再販売していないこと
- 商品を使用又は消費していないこと(商品の販売を行った者がその商品を使用又は消費させた場合を除く)
- 自らの責任で商品を滅失又はき損していないこと
5つのうち1つでも欠ければこのルールでは返品できないため、箱を開けていない商品がどれか、いつ届いたかを先に確認しておくと話が早くなります。
勧誘の仕方に問題があったとき
連鎖販売業を行う者が契約の締結について勧誘をする際、事実と違うことを告げ、消費者がその内容を事実であると誤認した場合、または故意に事実を告げず、消費者がその事実が存在しないと誤認した場合には、契約の申込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことができます。
また、統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者が次の行為を不特定かつ多数の者に現に行い、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体が行為の停止や予防などを請求できるとされています(勧誘者の行為については統括者に対しても請求できます)。
- 契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げる行為や故意に事実を告げない行為
- 契約を締結させ、または契約の解除を妨げるため、威迫して困惑させる行為
- 誇大広告等をする行為
- 連鎖販売取引につき、利益が生ずることが確実であると誤解させる断定的判断の提供により契約締結を勧誘する行為
- 消費者に不利な特約、契約解除に伴う損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為
相談先
このガイドは概要であり、詳しくは特定商取引法の条文の該当部分を見るよう案内されています。自分の契約が連鎖販売取引に当たるか、20日の起算日はいつか、返品の5条件を満たすかといった個別の判断は、契約書面と商品の到着記録を手元に置いて、消費者ホットライン188(いやや)から最寄りの消費生活センター等につないでもらって相談するのが確実です。