先に結論
「在宅ワークの仕事を紹介します。ただし、仕事に必要なのでこのパソコンと教材を買ってください」という形の勧誘は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に当たることがあります。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、この取引では、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録により契約を解除(クーリング・オフ)できます。訪問販売の8日ではなく20日です。そして解除した場合、業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できず、商品の引取り費用も業者の負担になります。
どんな取引が対象になるのか
業務提供誘引販売取引とは、「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のことです。法律上は次のように規定されていると説明されています。
- 物品の販売又は役務の提供(そのあっせんを含む)の事業であって
- 業務提供利益が得られると相手方を誘引し
- その者と特定負担を伴う取引をするもの
消費者庁が挙げている例は次のとおりです。
- 販売されるパソコンとコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成の在宅ワーク
- 販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事
- 販売される健康寝具を使用した感想を提供するモニター業務
- 購入したチラシを配布する仕事
共通しているのは、「稼げる仕事」と「その仕事のために買わされる商品や役務」がセットになっている点です。仕事の話だけ、あるいは商品の販売だけであれば、この類型には当たりません。
契約前後に渡されるはずの2通の書面
事業者は、契約の締結前に、当該業務提供誘引販売業の概要を記載した書面(概要書面)を渡さなくてはなりません。概要書面に記載することが定められている事項は次のとおりです。
- 業務提供誘引販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 商品の種類、性能、品質に関する重要な事項(役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項)
- 商品名
- 商品(提供される役務)を利用する業務の提供(あっせん)についての条件に関する重要な事項
- 特定負担の内容
- 契約の解除の条件その他の契約に関する重要な事項
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
さらに契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなくてはなりません。クーリング・オフの20日はこの「法律で決められた書面を受け取った日」から数えるため、いつ何を受け取ったかが要になります。
20日間のクーリング・オフ
消費者が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、業務提供誘引販売業を行う者に対して、書面または電磁的記録により契約の解除ができます。
業務提供誘引販売業を行う者が、事実と違うことを言ったり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、20日を経過していてもクーリング・オフをすることができるとされています。
通知の方法について消費者庁は、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことを薦めています。電磁的記録の場合は、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと説明されています。
クーリング・オフをした場合、業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できず、商品の引取り費用も業者の負担になります。ただし原状回復義務については契約を解除する双方が負うため、業者は支払われた代金・取引料を返還し、消費者は引渡しを受けた商品を業者に返還しなければなりません。
勧誘に問題があったときと、解除後の請求額
業務提供誘引販売業を行う者が契約の締結について勧誘をする際、事実と違うことを告げ、消費者がその内容を事実であると誤認した場合、または故意に事実を告げず、消費者がその事実が存在しないと誤認した場合には、契約の申込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことができます。
また、クーリング・オフ期間の経過後に、代金の支払遅延等、消費者の債務不履行を理由として契約が解除された場合には、事業者から法外な損害賠償を請求されることがないよう、請求できる額に次の制限が置かれています。
| 状況 | 請求できる額の上限 |
|---|---|
| 商品が返還された場合 | 通常の使用料の額(販売価格から転売可能価格を引いた額が、通常の使用料の額を超えているときはその額) |
| 商品が返還されない場合 | 販売価格に相当する額 |
| 役務を提供した後である場合 | 提供した役務の対価に相当する額 |
| 商品をまだ渡していない場合(役務を提供する前である場合) | 契約の締結や履行に通常要する費用の額 |
これらに法定利率による遅延損害金の額が加算されます。
相談先
このガイドは概要であり、詳しくは特定商取引法の条文の該当部分を見るよう案内されています。自分の契約がこの類型に当たるか、20日の起算日はいつかといった個別の判断は、概要書面・契約書面と振込の記録を手元に置いて、消費者ホットライン188(いやや)から最寄りの消費生活センター等につないでもらって相談するのが確実です。