先に結論
学習塾、語学教室、家庭教師、パソコン教室、エステティック、美容医療、結婚相手紹介サービスの7つは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」として指定されています。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、期間と金額の条件を満たすこれらの契約は、クーリング・オフ期間が過ぎた後でも、将来に向かって解除(中途解約)することができます。そして、そのときに事業者が消費者に請求し得る損害賠償などの額には政令の上限があり、それ以上の額を既に受け取っている場合には、残額を返還しなければならないとされています。だから「途中でやめると全額払ってもらいます」という説明をそのまま受け入れる必要はありません。
まず自分の契約が対象かを確かめる
「特定継続的役務提供」とは、政令で定める特定継続的役務を、一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価を受け取って提供することをいいます。役務提供を受ける権利の販売も含まれ、「特定権利販売」と呼ばれます。要件に該当すれば、店頭契約も規制対象になります。
| 役務 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|
| いわゆるエステティック(いわゆる美容医療に該当するものを除く) | 1月を超えるもの | いずれも5万円を超えるもの |
| いわゆる美容医療 | 1月を超えるもの | 同上 |
| いわゆる語学教室 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆる家庭教師 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆる学習塾 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆるパソコン教室 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆる結婚相手紹介サービス | 2月を超えるもの | 同上 |
金額は、入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になると説明されています。役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます。
範囲には細かい線引きがあります。「家庭教師」と「学習塾」には、幼稚園または小学校に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。「学習塾」は、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりませんが、高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります。語学教室は、入学試験に備えるためや大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授に該当するものが除かれます。また、営業のため・営業として締結するもの、海外にいる人に対する提供、国・地方公共団体が行う提供、事業者がその従業員に対して行った提供などには法が適用されません。
8日以内ならクーリング・オフ
消費者が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録により契約(関連商品の販売契約を含む)を解除できます。消費者庁は、後々のトラブルを避けるため、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便などで行うことを薦め、電磁的記録なら送信したメールの保存や、専用フォームの場合は画面のスクリーンショットを残すなど、証拠を保存しておくことが望ましいとしています。
クーリング・オフをすると、既に商品または権利を受け取っている場合は販売業者の負担で引き取ってもらうこと・返還することができます。役務が既に提供されている場合でも対価を支払う必要はなく、損害賠償や違約金を支払う必要もありません。既に頭金など対価を支払っている場合には、速やかにその金額を返してもらうことができます。ただし、使うと商品価値がほとんどなくなるいわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品など)を使ってしまった場合には、クーリング・オフの規定は適用されません。
8日を過ぎた後の中途解約と、違約金の上限
クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって契約(関連商品の販売契約を含む)を解除できます。事業者が請求し得る損害賠償などの額の上限は、役務提供開始の前と後で分かれます。
役務提供開始前の場合は、契約の締結および履行のために通常要する費用の額として役務ごとに政令で定める次の額です。
| 役務 | 開始前の上限 |
|---|---|
| エステティック | 2万円 |
| 美容医療 | 2万円 |
| 語学教室 | 1万5000円 |
| 家庭教師 | 2万円 |
| 学習塾 | 1万1000円 |
| パソコン教室 | 1万5000円 |
| 結婚相手紹介サービス | 3万円 |
役務提供開始後の場合は、「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」と、契約の解除によって通常生ずる損害の額として役務ごとに政令で定める次の額の合計額が上限です。
| 役務 | 開始後に加算できる上限 |
|---|---|
| エステティック | 2万円又は契約残額の10%に相当する額のいずれか低い額 |
| 美容医療 | 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額 |
| 語学教室 | 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額 |
| 家庭教師 | 5万円又は1か月分の授業料相当額のいずれか低い額 |
| 学習塾 | 2万円又は1か月分の授業料相当額のいずれか低い額 |
| パソコン教室 | 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額 |
| 結婚相手紹介サービス | 2万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額 |
「契約残額」とは、契約に関する役務の対価の総額から、既に提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額です。上限を超える額を事業者が既に受け取っている場合には、残額を返還しなければならないとされています。
契約前後に渡される2通の書面を探す
事業者は、契約の締結前に契約の概要を記載した「概要書面」を渡さなければならず、締結後には遅滞なく、契約内容について明らかにした「契約書面」を渡さなければなりません。概要書面には事業者の氏名・住所・電話番号、役務の内容、購入が必要な商品があればその商品名・種類・数量、対価その他支払わなければならない金銭の概算額とその支払時期・方法、役務の提供期間、クーリング・オフに関する事項、中途解約に関する事項、割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項、前受金の保全に関する事項、特約があればその内容を記載することが定められています。
契約書面には、これらに加えて契約の締結を担当した者の氏名、契約の締結の年月日、前受金の保全措置の有無とその内容などを記載します。書面をよく読むべきことは赤枠の中に赤字で記載しなければならず、契約書面のクーリング・オフの事項も赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。字と数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上である必要があります。中途解約の条件は、この2通に書かれているはずの事項です。
解約を妨げる言動は禁止されている
特定商取引法は、契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために事実と違うことを告げること、勧誘の際に故意に事実を告げないこと、契約を締結させたり解除を妨げたりするために相手を威迫して困惑させることを禁止しています。誇大広告や、著しく事実に相違する表示、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示も禁止です。
事実と違うことを告げられてそれを事実だと誤認した場合、または故意に事実を告げられずその事実が存在しないと誤認した場合には、契約の申込みやその承諾の意思表示を取り消すことができます。行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示や業務停止命令、役員等の業務禁止命令等の行政処分の対象となり、一部は罰則の対象にもなります。
相談先
このガイドは概要であり、詳しくは特定商取引法の条文の該当部分を見るよう案内されています。請求額が妥当かどうかの個別判断や、事業者が返金に応じない場合は、消費者ホットライン188(いやや)から最寄りの消費生活センター等につないでもらって相談できます。