育休から復帰して時短勤務にしたら、給与が目に見えて下がった。そんなときに使えるのが、2025年4月に新設された育児時短就業給付金です。2歳未満の子を養育するために1週間当たりの所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者が対象で、支給額は原則その月に支払われた賃金額の10%です。
まず確認する場所は2つあります。勤務先の人事・総務(所定労働時間を短縮した扱いになっているか、賃金月額証明書を出してもらえるか)と、事業所の所在地を管轄するハローワーク(申請の受付窓口)です。自分の住所地ではなく、勤務先の事業所がある場所の管轄である点に注意してください。
そして期限があります。初回の支給申請は、育児時短就業を開始した日の属する月の初日から起算して4か月以内です。給付の存在に気づくのが遅れると間に合わなくなるので、時短の開始日を先に確定させてください。
対象になる人
厚生労働省のQ&A(Q58)は、次の2つをいずれも満たす人が対象としています。
- 2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮することによる就業(「育児時短就業」)をする被保険者であること
- 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、育児休業に係る子と同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に賃金基礎支払日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること
2の条件は「または」です。育休から続けて時短に入った人は被保険者期間の数え直しが不要で、育休を取らずに時短へ入った人(産後休業後に直接時短を始めた場合も含みます)は、前2年間の完全月12か月を満たすかどうかで判定されます。
そのうえで、各支給対象月ごとに次の4つを全て満たした月について支給されます(Q66)。
| 支給対象月の要件 | 中身 |
|---|---|
| 被保険者である月 | 初日から末日まで続けて被保険者である月 |
| 時短をした月 | 育児時短就業した期間がある月 |
| 他の休業給付を受けていない月 | 初日から末日まで続けて育児休業給付または介護休業給付を受給していない月 |
| 高年齢雇用継続給付の対象でない月 | 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月 |
支給は時短を開始した月から終了月までの各暦月ごとに判定され、次のいずれかに当たると終了します(Q64)。
- 子が2歳に達した場合 ── 2歳の誕生日の前々日が属する月まで
- 月の中途で退職等により被保険者でなくなった場合 ── 前の月まで
- 産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した場合 ── 開始日の属する月まで
- 高年齢雇用継続給付の受給対象となった場合 ── 前の月まで
- 別の子の育児時短就業を開始した場合 ── 開始日の属する月まで
対象にならない人・ならない月
時短勤務をしているつもりでも、要件に当たらないケースが公式Q&Aに具体的に並んでいます。
- 所定労働時間を短縮していない場合。子の送迎などで早退・欠勤をして労働時間が短くなり賃金が下がっただけでは、「所定労働時間を短縮していることが必要になりますので、支給対象になりません」とされています(Q67)。シフト制の人はQ63の扱い(開始日前後の実際の労働時間から週平均を算定)が別にあります。
- フレックスタイム制で清算期間の総労働時間を短縮していない場合。フレキシブルタイムを休んで欠勤控除を受けるだけでは育児時短就業として扱われません。ただし清算期間の総労働時間を短縮していることが育児短時間勤務申出書・出勤簿・タイムカード等で確認できれば、賃金計算の都合で欠勤控除をしていても対象になり得ます(Q68)。
- 週所定労働時間20時間未満で、書面の裏づけがない場合。子が小学校の始期に達するまでに週20時間以上の労働条件に復帰することが就業規則、労働条件通知書等の書面で確認できなければ、雇用保険の被保険者資格を喪失することになり支給対象になりません(Q71・Q72)。口頭の約束では足りないと明記されています。
- その月に賃金が支払われていない場合。1か月だけ時短をして、下がった賃金の支払いが翌月になるケースでは、「その月に賃金が支払われていない場合は支給されません」とされています(Q76)。
不支給になる月の基準も別に定められています(Q75)。
- 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の100%以上の場合
- 支給対象月に支払われた賃金額が、支給限度額以上の場合
- 算定された支給額が、最低限度額以下の場合
支給限度額と最低限度額は毎年8月1日に改定されます。この記事では具体的な金額は扱いません。自分の年の金額は申請先のハローワークで確認してください。
いくら出るのか
支給額は、その支給対象月に支払われた賃金額と「育児時短就業開始時賃金月額」を比べて決まります(Q73)。
| 支給対象月に支払われた賃金額 | 支給額 |
|---|---|
| 開始時賃金月額の90%以下 | 賃金額 × 10% |
| 開始時賃金月額の90%超〜100%未満 | 賃金額 × 調整後の支給率 |
| 賃金額と上記の支給額の合計が支給限度額を超える | 支給限度額 − 賃金額 |
「育児時短就業開始時賃金月額」は、原則として時短開始前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除く)を180で除した額に30を乗じた額です。ただし育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について時短を始めた場合は、その育児休業給付に係る休業開始時賃金日額に30を乗じた額になります。
90%超〜100%未満の帯で支給率が下がるのは、賃金額と支給額の合計が開始時賃金月額を超えないよう調整されるためです。働く時間を少しだけ短くした人ほど、10%より小さい率になります。
Q&Aの計算例(開始時賃金月額が300,000円の場合)は次のとおりです。
- 支給対象月の賃金が200,000円 ── 90%の270,000円以下なので、200,000円 × 10% = 20,000円
- 支給対象月の賃金が280,000円 ── 90%の270,000円を超えるため支給率は6.43%となり、支給額は18,004円
なお例(2)の式は掲載上「200,000円 × 6.43%」と書かれていますが、結果の18,004円は280,000円に6.43%を掛けた額に対応します。帯の境目に近い金額の人は、自分の数字でハローワークに確かめてください。
申請:期限と書類
初回の支給申請は、育児時短就業を開始した日の属する月の初日から起算して4か月以内に、事業所の所在地を管轄するハローワークに対して行います。ハローワークの受付時間は8時30分から16時までです(Q77)。
初回に必要な書類は次の4点です。
- 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書
- 1・2に記載した時短開始日、賃金の額と支払い状況、週所定労働時間を確認できる書類(賃金台帳、出勤簿、タイムカード、労働条件通知書など)
- 育児の事実、出産予定日および出生日を確認できる書類(母子健康手帳の出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページの写しなど)
省略できるものがあります。2は、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について時短を始めた場合は提出不要です。4は、同一の子について育児休業給付を受給した際に提出している場合は提出不要です。
2回目以降は、ハローワークから交付される育児時短就業給付金支給申請書と、賃金の額・支払い状況・週所定労働時間を確認できる書類を出します。提出時期は「育児時短就業給付次回支給申請日指定通知書」で指定されるため、自分で月を決める必要はありません。
出すのは誰か
受給資格の確認を受けようとする人は、事業主が行う雇用保険被保険者所定労働時間短縮開始時賃金月額証明書の提出にあわせて、事業主を経由して、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に申請書を提出します。やむを得ない理由のため事業主を経由して提出することが困難な場合は、申請者本人が提出できます。
事業主経由で支給申請する場合は、同じ用紙で初回の支給申請を受給資格確認と同時に行えます。その場合、事業主は賃金月額証明書も同時に提出します。
育児休業給付の対象となる育児休業の終了日から14日以内に同一の子にかかる育児時短就業を開始する場合は、賃金月額証明書の提出が不要になり、申請書の10欄に「1」を記載します。
この手続きは電子申請による届出も可能とされています。可否や方法は、お近くのハローワークへの問い合わせが案内されています。
書類でつまずきやすいところ
ハローワークインターネットサービスの様式ページには、窓口で止まる原因が具体的に書かれています。
- 印刷はA4の白色用紙に等倍(倍率100%)。等倍以外の印刷設定の場合、窓口で受理できません。第1面・第2面のある申請書は両面とも印刷します。
- 光学式文字読取装置(OCR)で読み取るため、読取時の基準マーク(3点の■)に欠損やかすれがないことを確認します。
- 記載すべき事項のない入力項目は空欄にします。
- 1欄の被保険者番号が16桁(上下段で表示)の場合は、下段の10桁のみを記載します。
- 9欄の週所定労働時間は、時短をしない場合に適用される時間を書きます(38時間45分なら「3845」、40時間なら「4000」)。シフト制の人は、開始日前6か月間の実際の労働時間を期間の週数で除した時間を記載します。
- 払渡しできる口座は金融機関の普通預(貯)金口座に限られます。口座番号は7桁で、足りない場合は前に「0」を付けます。ゆうちょ銀行は記号(5桁)・番号(7桁)を続けて記載します。育児休業給付などで払渡希望金融機関指定届を提出したことがあり、同じ口座への振込を希望する場合は記載不要です。
- 提出時には、賃金額・所定労働時間等の記載内容を確認できる賃金台帳、出勤簿等を添付します。
- 20欄(時短の終了年月日)と21欄(理由)は、申請時点で既に時短を終えている場合に記載します。ただし子が2歳に達した場合と、離職により終了した場合は記載不要です。
申請書に偽りの記載をして提出した場合は、以後育児時短就業給付金を受けられなくなるほか、不正に受給した金額の返還と一定の金額の納付を命じられ、詐欺罪として刑罰に処せられる場合があるとされています。事業主が偽りの証明をした場合も、不正に受給した人と連帯して同じ責任を負うと書かれています。
時短中に状況が変わったら
- 同じ子でもう一度時短をする場合(育児休業や本来の週所定労働時間に復帰して時短が終わったあと、また時短に戻る場合)は、支給を受けようとする月の初日から起算して4か月以内に、2回目以降の申請に必要な書類を事業所所在地を管轄するハローワークへ提出します。
- 時短中に転職した場合も、転職先で雇用保険の被保険者となり同じ2歳未満の子を養育しているときは、同様に支給を受けようとする月の初日から起算して4か月以内に提出します。
- 別の子の産前休業や時短が始まった場合は、月単位で切り替わります。子Aの時短中に4月15日から子Bの産前休業を開始したときは4月までが子Aの支給対象月、4月15日から子Bの時短を開始したときは3月までが子A、4月からが子Bの支給対象月として扱われます。
参考資料
- ハローワークインターネットサービス 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書 利用上の注意 ── 支給の原則(各月の賃金の額の10%を限度)、事業主経由の提出、14日以内の特例、様式の記載方法と印刷・口座の注意
- 厚生労働省 Q&A〜育児休業等給付〜 ── 受給資格(Q58)、支給対象月の要件(Q66)、対象外ケース(Q63・Q67〜Q72)、支給額の計算と例(Q73・Q74)、不支給(Q75・Q76)、申請の期限と書類(Q77)
支給限度額・最低限度額は毎年8月1日に改定されます。この記事は2026年11月4日に上記2ページの掲載内容を読んで作成しています。金額の帯の境目にいる場合や、期限を過ぎてしまった場合は、事業所の所在地を管轄するハローワークに直接確認してください。