動かなくなった車を知り合いの車でロープでつないで運ぶ場合、最高速度は原則30km/hです。先に用意するのは、十分な強度があるロープと、0.3メートル平方以上の大きさの白い布、そして牽引される車に乗ってハンドルを操作する人です。その人は、牽引される車を運転できる免許を持っている必要があります。これらは道路交通法第59条と同法施行令第12条・第25条に書かれている条件で、ロードサービスを待てないときの応急の方法として認められているものです。まず確認するのは、加入している自動車保険やJAFのロードサービスが使えるかどうかです。使えるなら、条件を自分で満たす必要はありません。
速度は原則30km/h。40km/hは乗用車同士では成立しない
施行令第12条第1項は、自動車が他の車両を牽引して道路を通行する場合の最高速度を、通常の速度規定とは別に定めています。条文は2つに分かれています。
| 牽引の組み合わせ | 条文上の条件 | 最高速度 |
|---|---|---|
| 牽かれる車が軽く、牽く車が十分重い | 牽引される車の車両総重量が2,000kg以下で、牽く自動車の車両総重量がその3倍以上 | 40km/h |
| 上記以外のすべて | 第1号に当たらない場合 | 30km/h |
| 原付・小型の二輪で牽く | 施行令第12条第2項に定める二輪・原付が牽引する場合 | 25km/h |
40km/hの条件は、条文のとおりに読むと乗用車同士ではほぼ成立しません。車両総重量1.5t前後の車を牽くには、4.5t以上の車両総重量の自動車が必要になるからです。普通車が普通車を牽くなら30km/hと考えてください。
この速度は、牽引用の構造と装置を備えた車同士の組み合わせ(いわゆるトレーラー)には適用されません。条文も「牽引するための構造及び装置を有する自動車によつて牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引する場合を除く」としています。ここで扱っているのは、普通の車がロープで故障車を牽く場合です。
なお、中央線や車両通行帯がなく、往復の方向が構造的に分けられていない一般道路は、2026年9月から自動車の法定速度が30km/hになっています。施行令第12条第1項はこの区分の道路を対象外としているので、そうした道では牽引していなくても30km/hです。
ロープでつなぐときに守る4つのこと
車輪を上げずにロープでつないで牽く場合、施行令第25条第2号は次の方法によらなければならないと定めています。
- 牽引する自動車と故障自動車を、堅ろうなロープ等で確実につなぐ。 条文は「堅ろうなロープ、鎖等」としており、材質をロープに限っていません。2台の故障車を牽くときは、故障車どうしも同じようにつなぎます。
- 故障自動車に、その車の免許を受けた人を乗せてハンドルその他の装置を操作させる。 国際運転免許証等を所持する人でもかまいません。無人のまま牽くことはできません。
- 牽引する自動車と故障自動車の間の距離は、5メートルを超えない。 条文は「五メートルを超えないこと」です。2台つなぐ場合は、故障車どうしの間もそれぞれ5メートル以内です。
- ロープ等の見やすい箇所に、0.3メートル平方以上の大きさの白色の布をつける。 条文は「〇・三メートル平方以上の大きさの白色の布をつけること」としています。30cm四方よりわずかに大きい布が目安になります。
布は、後続車や対向車に「2台がつながっている」と気づかせるためのものです。ロープは路面に近く見えにくいので、ここを省くと、間に別の車が入ってくる危険が残ります。
牽引される側に乗る人が必要な理由
故障車のエンジンが止まっていると、車種によってはハンドルが重くなり、ブレーキの効き方も普段と変わります。それでも施行令第25条が故障車側に人を乗せてハンドルなどを操作させると定めているのは、牽かれる車の進路と制動を、牽く車とは別に保つ必要があるからです。
ここで必要なのは「その故障自動車に係る運転免許」です。牽く車を運転できる免許を持っていても、牽かれる車の種類に対応していなければ乗る人になれません。2人そろわないなら、ロープ牽引は選べません。
車輪を上げて牽く場合は、別の方法が決まっている
前輪または後輪を上げて牽引する場合は、施行令第25条第1号の方法になります。条文が認めているのは次の2つです。
- クレーンその他のつり上げ装置、または堅ろうなロープ・鎖等で故障自動車をつり上げて牽引する
- 牽引する自動車の後端(内閣府令の基準に適合する牽引用具を取り付けた場合はその用具を含む)に故障自動車の前部または後部を載せ、載せた部分を堅ろうなロープ等で固縛して牽引する
このとき、かじ取り車輪以外の車輪を上げるなら、かじ取り車輪が車の中心線に平行になるようハンドルを固定しておくことも求められています。これは牽引業者が使う方法で、必要な装置がないまま個人で再現できるものではありません。
台数と全長の上限、そして罰則
法第59条第2項は、牽引できる台数と全長を定めています。大型自動二輪車・普通自動二輪車・小型特殊自動車で牽くときは1台まで、その他の自動車で牽くときは2台までです。あわせて、牽く車の前端から牽引される車両の後端までの長さが25メートルを超えるときは牽引できません。公安委員会が道路を指定し、または時間を限って許可した場合は例外で、許可証は牽引中に携帯します。
これらに違反した場合、法第120条第2項第1号により5万円以下の罰金です。第123条は、法人の従業者などが業務に関して違反したとき、行為者のほかにその法人または人にも罰金刑を科すと定めています。社用車で牽いた場合は、この規定が関わります。
高速道路で動けなくなったら、牽引より先にすること
高速自動車国道等では、原則として停車も駐車もできません。ただし法第75条の8第1項第2号は、故障その他の理由により停車・駐車がやむを得ない場合に、停車または駐車のため十分な幅員がある路肩または路側帯に止めることを例外として挙げています。まずここへ移すことが先です。
高速道路の本線車道をロープ牽引で走ってよいかは、今回読んだ条文からは判断できませんでした。施行令第12条第1項は高速自動車国道の速度規定(第27条第1項)にもかかわらず牽引時の最高速度を30km/hまたは40km/hとしています。他方、法第75条の4は本線車道の最低速度を定め、施行令第27条の3でそれは50km/hです。第75条の4には「法令の規定によりその速度を減ずる場合」という除外があり、牽引による減速がこれに当たるかどうかは条文に書かれていません。自分で判断せず、道路管理者の非常電話またはロードサービスに連絡し、指示に従ってください。
牽く前に手元で確認すること
- ロードサービスが使えるか。自動車保険の付帯サービス、JAF、販売店の保証を先に確認する
- 牽かれる車を運転できる免許を持つ人がもう1人いるか
- ロープ等の強度が足りているか。製品の用途と強度を取扱説明書で確認する
- 牽く車と故障車の間が5メートル以内に収まるか
- 0.3メートル平方以上の白い布があるか
- 走る道が中央線のない道かどうか。その場合は牽引の有無に関係なく30km/h
ロープの太さや強度の数値、牽引できる距離の上限、牽引免許が必要になる具体的な組み合わせは、今回読んだ道路交通法と同法施行令の条文には書かれていませんでした。これらを確かめたいときは、都道府県警察本部または警察署に、車種と組み合わせを伝えて相談してください。
参考資料
条文はe-Gov法令検索の法令APIで、道路交通法(2026年7月21日施行版)と道路交通法施行令(2026年9月1日施行版)を開いて確認しました。原文では「牽引」にルビが入った表記になっています。
- 道路交通法 第59条(自動車の牽引制限)、第75条の4(最低速度)、第75条の8(停車及び駐車の禁止)、第85条(第一種免許)、第120条、第123条
- 道路交通法施行令 第12条(最高速度の特例)、第25条(故障自動車の牽引)、第27条の2、第27条の3(最低速度)