2026年(令和8年)10月から、生活扶助の「特例加算」が1人あたり月1,500円から2,500円に上がります。ただし全員が月1,000円ずつ増えるわけではなく、1級地-1の高齢単身世帯と若年単身世帯は、基準額が令和7年度と同じままです。まず自分が住む市区町村の級地を厚生労働省の級地表で確かめ、下の表で自分の世帯類型の額を見てください。表に載っているのは6区分のうち3つです。この改定のために本人が出す書類は、公表資料には示されていません。10月分の額が表と合わないときの確認先は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。
この記事の金額は、2026年10月1日時点で厚生労働省が公表している資料にもとづきます。
上がるのは「特例加算」で、適用は1年間
令和8年10月の制度変更として、厚生労働省は「令和4年の生活保護基準部会の検証結果に基づく令和元年当時の消費実態の水準への特例加算(現行:世帯人員一人当たり月額1,500円)について、1,000円引き上げて月額2,500円とする」と示しています。あわせて、「加算を行ってもなお従前の基準額から減額となる世帯について、従前の基準額を保障する」措置も続きます。この二つめがあとで効いてきます。
期間は区切られています。社会保障審議会生活保護基準部会の資料は「令和8年10月から1年間」とし、金額の表に「『令和8年度基準案』は、令和8年10月~令和9年9月に適用される額」と注記しています。前の令和7年度基準は令和7年10月~令和8年9月に適用されていた額で、改定の区切りは4月ではなく10月です。
| 時期 | 特例加算(1人あたり月額) |
|---|---|
| 令和5〜6年度 | 1,000円 |
| 令和7年度(令和7年10月〜令和8年9月) | 1,500円 |
| 令和8年度(令和8年10月〜令和9年9月) | 2,500円 |
| 入院患者・介護施設入所者(令和5年度から) | 1,000円(据え置き) |
基準部会の資料は、特例加算について「令和5~6年度に一人当たり月額1,000円として措置したものを令和7年度見直しで500円引上げ」と説明しています。今回はそこからさらに1,000円の引き上げです。
世帯類型と級地ごとの額。単身世帯の1級地-1は動きません
厚生労働省が示している世帯類型ごとの生活扶助基準額です。金額は資料4の「令和8年度基準案」で、かっこ内は公表されている令和7年度基準との差です。
| 世帯類型 | 1級地-1 | 2級地-1 | 3級地-2 |
|---|---|---|---|
| 高齢単身世帯(65歳) | 76,880円(±0) | 73,490円(+1,000円) | 68,850円(+1,000円) |
| 高齢単身世帯(75歳) | 71,900円(±0) | 67,390円(+1,000円) | 63,400円(+1,000円) |
| 若年単身世帯(50代) | 77,240円(±0) | 73,930円(+1,000円) | 69,240円(+1,000円) |
| 高齢夫婦世帯(65歳夫婦) | 123,900円(+2,000円) | 118,230円(+2,000円) | 110,160円(+2,000円) |
| 高齢夫婦世帯(75歳夫婦) | 112,470円(+80円) | 107,620円(+2,000円) | 100,680円(+2,000円) |
| 母子世帯・子1人(30代親、子小学生) | 124,310円(+1,610円) | 118,610円(+2,000円) | 110,500円(+2,000円) |
| 母子世帯・子2人(40代親、子中学生と小学生) | 159,230円(+2,970円) | 151,730円(+3,000円) | 141,040円(+3,000円) |
| 夫婦子1人世帯(30代夫婦、子3〜5歳) | 156,060円(+2,660円) | 148,790円(+3,000円) | 138,410円(+3,000円) |
| 夫婦子2人世帯(40代夫婦、子中学生と小学生) | 184,760円(+3,000円) | 175,260円(+4,000円) | 162,760円(+4,000円) |
2級地-1と3級地-2では、おおむね世帯人員×1,000円の増え方になっています。差が出ているのは1級地-1です。単身の3類型は1円も動かず、高齢夫婦(75歳夫婦)は80円、母子世帯(子1人)は1,610円しか増えません。
この表には大事な注記が付いています。「上記の生活扶助基準額は、第1類・第2類の費用及び臨時的・特例的な措置に係る額」です。つまり住宅扶助や医療扶助、障害者加算や母子加算などは入っていません。手元に届く額そのものではなく、生活扶助の本体部分の額だと見てください。
1級地-1の単身世帯が動かないのは、従前の基準額を保障しているから
理由は算式を開くと見えます。厚生労働省が公表している生活扶助基準額の算出方法では、生活扶助基準は「各居宅世帯員の第1類基準額を合計し、世帯人員に応じた逓減率を乗じ、世帯人員に応じた第2類基準額を加える」もので、そこに「特例加算(1人当たり月額2,500)」と「生活扶助本体における経過的加算」を足します。
高齢単身世帯(65歳)の1級地-1で、令和8年10月版の数字を当てはめます。
- 第1類(65〜69歳・1級地-1)46,460円
- 第2類(1人)27,790円
- 特例加算 2,500円
- 生活扶助本体に係る経過的加算(単身世帯・65〜69歳・1級地-1)130円
合計は76,880円です。表の令和8年度基準案と一致し、令和7年度基準の76,880円と同じ額です。特例加算が1,000円増えても、同じ算式に入る経過的加算の額が小さいため、合計は従前の基準額で止まります。これが「加算を行ってもなお従前の基準額から減額となる世帯について、従前の基準額を保障する」という措置の現れ方です。若年単身世帯(50代)の1級地-1も、46,930円+27,790円+2,500円+20円で77,240円となり、同じく変わりません。
増えないことが打ち切りや減額を意味するわけではありません。令和4年の検証結果をそのまま反映すると下がっていた世帯について、下げずに従前の額を保障している状態です。表の「令和4年検証結果反映後」の列を見ると、高齢単身世帯(65歳)の1級地-1は74,250円で、実際に適用されている76,880円より低い額です。
自分の級地を調べる。表に載っているのは6区分のうち3つ
級地は1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1、3級地-2の6区分です。厚生労働省の生活保護制度のページから「お住まいの地域の級地を確認」というPDFが開けて、市区町村名が区分ごとに並んでいます(平成30年10月1日現在)。
- 1級地-1の例:東京都区の存する地域、さいたま市、川口市、八王子市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市
- 1級地-2の例:札幌市、仙台市、千葉市、所沢市、横須賀市、相模原市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市
- 2級地-1の例:函館市、金沢市、熊本市
前の表に載っているのは1級地-1、2級地-1、3級地-2の三つだけです。札幌市のように1級地-2の地域や、2級地-2・3級地-1の地域に住んでいる人は、自分の級地の額が表にありません。その場合は第1類・第2類の基準額表から計算するか、福祉事務所の生活保護担当に自分の世帯の額を聞いてください。級地が違えば第1類の基準額が変わるため、他の級地の数字を自分の額として読まないでください。
10月に動くのは最低生活費の一部。地区によっては冬季加算も加わります
生活保護で支給されるのは、最低生活費から収入を引いた差額です。その最低生活費は、生活扶助(A)、障害者加算や母子加算などの加算額(B)、住宅扶助(C)、教育扶助と高等学校等就学費(D)、介護扶助(E)、医療扶助(F)の合計で組み立てられています。今回変わるのはAに含まれる特例加算だけです。家賃に対する住宅扶助や医療扶助が今回の改定で上がるわけではありません。
一方で、10月から別の理由で額が増える人もいます。生活扶助の第2類には冬季加算が別に計上され、厚生労働省の算出方法の注記は「冬季には地区別に冬季加算が別途計上される」として、札幌市の例を「4人世帯の場合は月額22,270円(10月~翌4月)」と示しています。地区によって額も期間も違うため、自分の地域で何月から付くかは福祉事務所に確認してください。10月分が思ったより増えていたときは、特例加算ではなく冬季加算が付いたためかもしれません。
手続きについて確認できたこと、確認できなかったこと
厚生労働省の制度変更ページと基準部会の資料には、この改定を受けるために受給者本人が申請や申出をするという記載はありません。基準額は保護を決定する福祉事務所が計算するもので、本人が出す書類も期限も示されていません。ただし「手続不要」と明記したページを確認できたわけでもないので、ここでは「本人が出すものは示されていない」までにとどめます。
10月分の支給で確かめることは二つです。一つは、自分の世帯類型と級地に対応する額が表の令和8年度基準案と合っているか。もう一つは、入院や介護施設への入所が10月に始まった、あるいは終わった場合に、加算額が1,000円と2,500円のどちらで計算されているか。合わないときの窓口は、厚生労働省が示すとおり「現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当」です。市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が福祉事務所を設置しています。
10月の改定とは別に、いま受給していない人が申し出る追加給付があります
同じ生活扶助の話ですが、こちらは本人が動かないと受け取れません。厚生労働省は、平成25年の生活扶助基準改定について令和7年6月27日に出た最高裁判決への対応を公表しています。判決は、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をした点に裁量権の逸脱・濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法としたものです。
同省の対応は、算定対象期間に保護の基準に基づき基準生活費等が算定された人を、原告・原告以外を区別せず対象とし、現在保護停止中・廃止された人も含めるというものです。令和8年2月20日付で告示が公布され、3月1日付で適用、自治体の準備状況に応じて同年3月から順次実施とされています。
分かれるのは手続きです。
| いまの状況 | 手続き |
|---|---|
| 現在生活保護を受給中 | 「申出等の手続きは不要」 |
| 現在は受給していない(当時は受給していた) | 「当時保護を受給されていた自治体に対して追加給付に関する申出を行うことにより、支給」 |
つまり、いま生活保護を受けていない人は、自分から当時の自治体へ申し出ない限り支給されません。引っ越している場合でも窓口は当時の自治体です。10月の特例加算の話とは対象も時期も別なので、混ぜて考えないでください。
令和9年10月以降は決まっていません
今回の特例加算2,500円は令和9年9月までの1年間の措置です。その先について、基準部会の資料は「令和9年度以降の生活扶助基準については、今後の社会経済情勢等の動向を見極めつつ、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図る観点から必要な対応を行うため、令和9年度の予算編成過程において検討を行う」としています。あわせて、5年に一度の定期検証を1年前倒しで実施し、その検証結果を反映するとされています。
したがって、令和9年10月以降に特例加算が2,500円のまま続くのか、額が変わるのか、従前額保障がどうなるのかは、現時点では決まっていません。例年どおりなら令和9年度の予算編成の過程(令和8年末から令和9年初め)に案が出ます。来年の同じ時期に、もう一度確認し直す前提で読んでください。
参考資料
- 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」— 令和8年10月施行の項目一覧。生活扶助基準の見直しの内容と担当部局
- 厚生労働省 第55回社会保障審議会生活保護基準部会 資料4「令和8年度生活扶助基準の見直しについて」(令和8年2月27日)— 特例加算の額、従前額保障、入院患者・介護施設入所者の扱い、世帯類型ごとの基準額、令和9年度以降の検討方針
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年10月)」— 第1類・第2類の基準額、逓減率、特例加算2,500円、生活扶助本体に係る経過的加算、冬季加算の注記
- 厚生労働省「お住まいの地域の級地を確認」— 級地6区分ごとの市区町村一覧(平成30年10月1日現在)
- 厚生労働省「生活保護制度」— 相談・申請窓口は福祉事務所の生活保護担当であること、級地と生活扶助基準額の資料へのリンク
- 厚生労働省「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決への対応について」— 判決内容、対象者、告示の公布日と適用日、受給中と受給していない場合の手続きの違い