医療費控除に入れる医療費は、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払ったものです。タックスアンサーNo.1120は、未払いの医療費は現実に支払った年の医療費控除の対象になると書いています。
12月に受診したり入院したりしても、病院に払ったのが翌年1月なら、その分は翌年分の医療費として数えます。治療がいつ終わったかは関係ありません。払っていない分を、治療を受けた年の申告に先に入れることもできません。
もう一つ年末に起きやすいのが、入院給付金や高額療養費などの補てん金が、確定申告の時期までに決まらないことです。この場合は見込額を差し引いて申告し、あとで受け取った額が違っていれば訂正します。
「支払った年」で数える決まり
医療費控除の要件として、タックスアンサーNo.1120は「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること」を挙げ、括弧書きで「未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります」としています。国税庁の「暮らしの税情報」にも、1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費に限って控除の対象になり、未払となっている医療費は実際に支払った年の控除対象になる、と同じ内容が書かれています。
国税庁の質疑応答事例「未払の医療費」には、具体的な例が載っています。
昨年中に歯の治療を終了しましたが、その治療代金の50万円は、昨年中に30万円を支払い、残りの20万円は今年になって支払いました。
回答は、昨年分の医療費控除の対象は30万円で、残りの20万円は本年分の対象になる、というものです。理由として、医療費控除の対象になる金額はその年中に実際に支払った金額に限られ、その年中に治療が終わっている場合でも、未払いの医療費はその年の医療費控除の対象にはならない、と説明しています(所得税法73条1項)。
タックスアンサーNo.1128の注意事項にも、治療中に年が変わるときは、それぞれの年に支払った医療費の額が各年分の医療費控除の対象になる、とあります。
年末年始に年が分かれやすい場面
この決まりに当てはめると、年末年始の医療費は次のように分かれます。
- 12月に受診して、その場で窓口で払った。 その年の医療費です。
- 12月に受診して、請求が翌年に来て1月に払った。 翌年の医療費です。
- 12月に入院して、1月の退院時にまとめて精算した。 精算で払った分は翌年の医療費です。入院中の12月に一部を払っていれば、その分はその年の医療費です。
- 前の年の治療費の残りを、今年になって払った。 今年の医療費です。
医療費控除の計算では、その年に支払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を引き、さらに10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセント)を引きます(タックスアンサーNo.1120)。この計算は年ごとに行うので、同じ治療の費用でも支払いが二つの年に分かれれば、それぞれの年の合計で10万円を超えるかどうかを見ることになります。
お金を借りて払った、歯科ローンを使った
借入金で払った場合
国税庁の質疑応答事例「借入金で支払った医療費」は、借入金で医療費を支払った年分の医療費控除の対象になると回答しています。借入金で払った場合でも、医療費が未払いになっているのではなく、医療費の支払いは現実に行われているので、その支払いの日を含む年分の対象になる、という理由です。
借りたお金を返し終わる年ではなく、病院に払った日の年で数えます。
歯科ローンの場合
タックスアンサーNo.1128は「歯の治療費を歯科ローンやクレジットにより支払う場合」として、歯科ローンについて次のように説明しています。歯科ローンは、患者が払うべき治療費を信販会社が立替払いし、その立替分を患者が分割で信販会社に返していくものです。そのため、信販会社が立替払いをした金額は、その患者の、立替払いをした年(歯科ローン契約が成立した時)の医療費控除の対象になります。
歯科ローンの金利と手数料に当たる部分は医療費控除の対象になりません。また、歯科ローンを使うと手元に歯科医の領収書がない場合があるので、支出を証明する書類として、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書を保存するよう求めています。
歯科ローン以外の、病院の窓口でのクレジットカード払いについて、カードを使った日と口座から引き落とされる日のどちらを支払日とするかを直接書いた国税庁の資料は、今回は見つけられませんでした。年末にカードで払い、引き落としが翌年になる場合は、所轄の税務署に確かめてください。
医療費のお知らせと「支払った年」がずれるとき
健康保険の「医療費のお知らせ」などの医療費通知を確定申告書に付けると、医療費控除の明細書の記載を簡単にできます。国税庁の「医療費控除に関する手続について(Q&A)」によると、使える医療費通知には6つの項目が書かれている必要があり、その一つが「療養を受けた年月」です。
一方で、明細書の「医療費通知に関する事項」の欄には、医療費通知に載った医療費の額とは別に「(1)のうちその年中に実際に支払った医療費の額」を書く欄があります。同じQ&Aは、窓口での負担の減免などが医療費通知に反映されていない場合に、この欄へ実際に支払った医療費の合計額を書くよう案内しています。
医療費通知に載っていない医療費もあります。Q&Aの問7は、自由診療や「医療費通知への反映が間に合わない医療費など」の支払いがある場合、その分は領収書に基づいて明細書の「医療費(上記1以外)の明細」の欄に書き、明細書と医療費通知をあわせて確定申告書に付けるとしています。
年末に受診した分がお知らせに載っていないときは、その年中に支払っていれば領収書から書き足します。逆に、支払った年で数える決まりからすると、お知らせに載っている受診分でも、支払いが翌年になったものはその年の医療費になりません。お知らせの数字をそのまま使う前に、年末の受診分の支払日を領収書で確かめてください。
保険金や高額療養費が確定申告に間に合わないとき
医療費控除では、保険金などで補てんされる金額を差し引きます。国税庁の「暮らしの税情報」は、補てんされる金額として次のものを挙げています。
- 生命保険契約や損害保険契約に基づき医療費の補てんを目的として支払を受ける医療保険金や入院費給付金、傷害費用保険金など
- 社会保険や共済に関する法律などの規定に基づき、医療費の支払の事由を給付原因として支給を受ける給付金(健康保険法の療養費、出産育児一時金、家族療養費、高額療養費、高額介護合算療養費など)
- 医療費の補てんを目的として支払を受ける損害賠償金
- 任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払を受ける給付金
補てんされる金額は、その給付の目的になった医療費の金額を限度に差し引きます。引ききれない金額があっても、ほかの医療費からは差し引きません。
12月に入院した場合などは、この補てん金が確定申告の時期までに決まらないことがあります。質疑応答事例「医療費を補填する保険金等が未確定の場合」は、まさに「12月に支払った入院費用を補填するための保険金の額が、翌年3月の確定申告の際に確定していない場合」を取り上げ、受け取る保険金等の額を見積もって、その見積額を支払った医療費から控除するとしています。
あとで確定した額が見積額と違ったときは、さかのぼってその年分の医療費控除額を訂正します。「暮らしの税情報」によると、受け取った額のほうが見込額より多ければ修正申告、少なければ更正の請求の手続きで訂正します。
補てん金を差し引いたあとの控除額の計算と、確定申告で確認する点は「医療費が年10万円を超えたら?確定申告で確認すること」にまとめています。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月28日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 歯科ローン以外のクレジットカード払いで、カードを使った日と引き落とし日のどちらを支払日とするか。
- 入院の保証金や、治療前にまとめて払う前払い金を、どの年の医療費として扱うか。
- 支払った翌年に病院から医療費の一部が返金された場合の扱い。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 質疑応答事例 未払の医療費
- 国税庁 質疑応答事例 借入金で支払った医療費
- 国税庁 タックスアンサーNo.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
- 国税庁 質疑応答事例 医療費を補填する保険金等が未確定の場合
- 国税庁 暮らしの税情報 医療費を支払ったとき
- 国税庁 医療費控除に関する手続について(Q&A)