先に結論
離れて暮らす親の家に、同じ健康食品や布団が何セットも積まれていた、というときに最初に見るのは契約書面の日付です。訪問販売のクーリング・オフは、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内です。ただし消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、それを過ぎていても、消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品(役務・政令で定める権利)を購入する契約を結んだ場合には、契約締結後1年間は申込みの撤回または契約の解除ができます(法第9条の2)。消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外とされています。
何が「訪問販売」に当たるのか
訪問販売とは、販売業者または役務提供事業者が、営業所等以外の場所(例えば消費者の自宅)で契約を締結等して行う商品、特定権利の販売または役務の提供等のことです。最も一般的なのはセールスマンが住居を訪問して契約を行う販売方法ですが、消費者庁は次のものも訪問販売に該当すると説明しています。
- 喫茶店や路上での販売
- ホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間や施設等からみて店舗に類似するものとは認められないもの
- 特定の方法によって誘った客に対して、通常の店舗等で契約を締結等して行う販売や役務の提供
つまり「お店で契約したから対象外」とは限りません。路上等の営業所以外の場所で消費者を呼び止めて営業所等に同行させて契約を締結させる、いわゆるキャッチセールスや、電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、「あなたは特別に選ばれました」等と他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると誘って営業所等に呼び出して契約を締結させる、いわゆるアポイントメントセールスも含まれます。
なお、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売に関する規定は、原則として全ての商品・役務と特定権利が対象になります。一方で、営業のため、または営業として締結するものなどには特定商取引法が適用されません(法第26条)。
8日以内のクーリング・オフ
消費者が契約を申し込んだり締結したりした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除ができます。起算点は契約した日ではなく、法律で決められた書面を受け取った日です。
さらに、事業者がクーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、8日を過ぎていてもクーリング・オフができるとされています。
通知の方法について消費者庁は、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことを薦めています。電磁的記録の場合は、電子メールなら送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等なら画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと説明されています。
クーリング・オフをすると、既に商品または権利を受け取っている場合は販売業者の負担でその商品を引き取ってもらうことや権利を返還することができます。商品が使用されている場合や役務が既に提供されている場合でも、その対価を支払う必要はありません。損害賠償や違約金を支払う必要もなく、既に頭金等の対価を支払っている場合は速やかに返してもらえ、土地または建物その他の工作物の現状が変更されている場合には無償で元に戻してもらうことができます。
ただし例外が2つ示されています。使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品等)を使ってしまった場合と、現金取引の場合であって代金または対価の総額が3000円未満の場合には、クーリング・オフの規定が適用されません。
8日を過ぎた後の「過量販売」
訪問販売の際、消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品(役務・政令で定める権利)を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約の申込みの撤回または契約の解除ができます。消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外です。この際の清算ルールは、クーリング・オフと原則同様の清算ルールが適用されると説明されています。
読んだページには、何個以上・いくら以上なら「著しく超える」のかという数値基準は書かれていません。消耗品を使ってしまった場合の扱いについてもこの条のもとでは説明されていないため、ここでは断定せず、個別の判断は相談窓口に委ねます。
勧誘そのものが違法な場合もある
特定商取引法は、訪問販売における次の行為を禁止しています(法第6条)。
- 契約の締結について勧誘を行う際、または契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げること
- 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと
- 契約を締結させ、または契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
- 勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)により誘引した消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、契約の締結について勧誘を行うこと
事実と違うことを告げられてその内容が事実だと誤認した場合、または故意に事実を告げられずその事実が存在しないと誤認した場合には、契約の申込みやその承諾の意思表示を取り消すことができます(法第9条の3)。これらの行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示や業務停止命令、役員等の業務禁止命令等の行政処分の対象となり、一部は罰則の対象にもなります。
契約書面を探すときに見る項目
契約書面には、引き渡された商品が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときはその内容、契約の解除に関する定めがあるときはその内容、そのほか特約があるときはその内容などを記載することが定められています。書面をよく読むべきことは赤枠の中に赤字で記載しなければならず、クーリング・オフの事項も赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。字と数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上である必要があります。赤枠・赤字の記載が見当たらない書面は、そのまま写真に撮って残しておくと相談のときに役立ちます。
事業者が返金しないとき
公益社団法人日本訪問販売協会は、特定商取引法の規定により、会員の訪問販売に係る契約を解除し、または契約の申込み・承諾の意思表示を取り消して会員に支払った金銭の返還を請求した消費者に対し、会員から正当な理由なく金銭の返還がなされない場合に、「訪問販売消費者救済基金」として会員から積み立てた基金から一定額の金銭を交付する業務も行っています(法第29条の2)。会員かどうかで使える制度が変わるため、まずは消費者ホットライン188(いやや)で最寄りの消費生活センター等につないでもらい、契約書面を見ながら相談するのが確実です。