定年後の再雇用で給料が下がり、60歳以後の毎月の賃金が60歳時点の賃金月額の75%未満になったら、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けられる可能性があります。条件は、60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であることと、被保険者であった期間が5年以上あることです。
再雇用などで受ける基本給付金の額は、60歳に達した日が令和7年4月1日以降の人は各月の賃金の最大10%、令和7年3月31日以前の人は最大15%です。申請は原則として会社がハローワークに行い、最初の申請は、最初に支給を受けようとする月の初日から4か月以内に出します。まず給与明細で60歳前と後の総支給額を見比べ、75%を切っているなら会社の担当者に申請の予定を確認してください。
「75%」は何と何を比べるか
比べるのは次の二つです。
- 60歳到達時の賃金月額:原則として、60歳に到達する前6か月間の総支給額(保険料などが引かれる前の額。賞与は除く)を180で割った賃金日額の30日分。被保険者であった期間5年を60歳より後に満たした人は、その日の前6か月間の賃金で計算します
- 支給対象月に支払われた賃金:60歳以後の各月に実際に支払われた額
「低下率」は、支給対象月に支払われた賃金 ÷ 60歳到達時の賃金月額 × 100 で計算します。これが75%未満なら支給の対象です。
60歳到達時の賃金月額には上限と下限があります。令和8年8月版のパンフレットでは、計算した額が522,000円を超える場合は522,000円、96,090円を下回る場合は96,090円として扱います。これらは令和9年7月31日までの額で、毎年8月1日に改定されます。60歳前の月給が60万円だった人も、比べる基準は522,000円になります。
各月の賃金は、賃金の対象期間ではなく「支払日」で数えます。5月分の給料を6月に受け取ったなら、6月に支払われた賃金として扱います。6か月分の定期代のように数か月分をまとめて受け取った手当は、支払われた月以後の各月に割り振って申請書に書きます。
欠勤で下がった分は「下がっていない」とみなされる
賃金が下がった理由が次のようなものなら、減った分も支払われたものとして低下率を計算します。これを「みなし賃金」といいます。
- 本人の都合や非行による欠勤、懲戒による減額
- 病気やけがによる欠勤・遅刻・早退
- 事業所の休業
- 妊娠・出産・育児・介護による欠勤など
パンフレットの例では、賃金月額30万円の人が欠勤で3万円減らされ、18万円を受け取った月は、みなし賃金21万円(70.00%)で支給率を決めます。支給率は4.16%で、実際に受け取った18万円に掛けて7,488円です。欠勤がなければ60%として18,000円だったはずの月です。
支給率は令和7年4月1日を境に2通りある
雇用保険法等の一部を改正する法律の施行で、令和7年4月1日から支給率が下がりました。再雇用などで受ける基本給付金の場合、どちらの率になるかは60歳に達した日で決まります。60歳時点で被保険者であった期間が5年に届いていない人は、5年を満たした日で判断します。基本手当を受けてから再就職した人の再就職給付金は、60歳に達した日ではなく、再就職した日が令和7年4月1日より前かどうかで決まります。
| 60歳に達した日が令和7年4月1日以降 | 令和7年3月31日以前 | |
|---|---|---|
| 支給率の上限 | 各月の賃金の10% | 各月の賃金の15% |
| 上限の率になる低下率 | 64%以下 | 61%以下 |
| 75%未満〜上限の間 | 低下率に応じて10%未満 | 低下率に応じて15%未満 |
令和7年3月31日以前に60歳に達して基本給付金を受ける人は、令和7年4月1日を過ぎても上限15%のままです。
60歳に達した日は、60歳の誕生日ではなく、その前日です。厚生労働省のQ&Aは、10月12日が誕生日なら60歳到達日は10月11日だと説明しています。計算すると、基本給付金の場合、誕生日が昭和40年(1965年)4月1日の人は60歳到達日が令和7年3月31日で、その時点で被保険者であった期間が5年以上あれば旧率の対象です。4月2日生まれの人から新しい率になります。
低下率ごとの支給率は、ハローワークのパンフレットの早見表で次のとおりです(一部の行を抜き出しています)。
| 低下率 | 新しい率(10%) | 従来の率(15%) |
|---|---|---|
| 75.00%以上 | 0.00% | 0.00% |
| 74.00% | 0.79% | 0.88% |
| 72.00% | 2.42% | 2.72% |
| 70.00% | 4.16% | 4.67% |
| 68.00% | 5.99% | 6.73% |
| 66.00% | 7.93% | 8.91% |
| 65.00% | 8.95% | 10.05% |
| 64.00% | 10.00% | 11.23% |
| 63.00% | 10.00% | 12.45% |
| 62.00% | 10.00% | 13.70% |
| 61.00%以下 | 10.00% | 15.00% |
支給額は、支給対象月に支払われた賃金 × 支給率です。
賃金月額30万円の場合
厚生労働省とハローワークの例(新しい率)は次のとおりです。
- 再雇用後の賃金26万円:86.67%で75%未満ではないため、支給されない
- 再雇用後の賃金20万円:66.67%。パンフレットの計算式では14,545円、Q&Aの例では14,540円
- 再雇用後の賃金18万円:60%なので、18万円 × 10% = 18,000円
20万円の例で二つの額が違うのは、端数処理の違いです。パンフレットの手順では、低下率と支給率をそれぞれ小数点以下第3位で四捨五入して第2位まで出し、支給額の1円未満を切り捨てます。この手順だと低下率66.67%、支給率7.27%で、20万円 × 7.27% = 14,540円です。パンフレットの例は、低下率と支給率を丸めずに計算式(−64/110 × 20万円 + 48/110 × 30万円)で出した結果で、パンフレット自身も、算定した額は端数処理の関係で実際の支給額と異なる場合があるとしています。
従来の率の人が同じく18万円(60%)になった場合は、61%以下なので18万円 × 15% = 27,000円です。これは早見表をもとにした計算です。
支給限度額と最低限度額
月々の支給には、次の二つの金額が関わります。どちらも「毎月勤労統計」の平均定期給与額によって毎年8月1日に改定されます。
- 支給限度額:支給対象月に支払われた賃金がこの額以上なら、その月は支給されません。賃金と支給額の合計がこの額を超える場合は、支給限度額から賃金を引いた額が支給額になります。令和8年8月1日から令和9年7月31日までは397,369円(それまでは386,922円)です。
- 最低限度額:計算した支給額がこの額以下なら、支給されません。令和8年8月版のパンフレットでは2,562円で、令和9年7月31日までの額です。
厚生労働省の令和8年7月31日の報道発表は、支給限度額の引上げを386,922円から397,369円としています。令和9年8月以降の額は、厚生労働省の基本手当日額の変更の報道発表(令和8年は7月31日)や、ハローワークインターネットサービスの雇用継続給付のページで確認してください。
再雇用・転職・失業保険のあとで、どちらの給付金になるか
高年齢雇用継続給付には2種類あります。
- 高年齢雇用継続基本給付金:基本手当(再就職手当など基本手当を受けたとみなされる給付を含む)を受けていない人が対象
- 高年齢再就職給付金:基本手当を受けたあと、60歳以後に再就職した人が対象
定年後に同じ会社で再雇用され、雇用保険に入り続けている人は基本給付金です。60歳の定年で退職した翌日に別の会社に就職した場合も、基本手当を受けていなければ基本給付金の対象になると、厚生労働省のQ&Aは説明しています。
前の会社を辞めてから基本手当を受けずに次の会社に入るまでの間が1年を超えると、受給できなくなります。Q&Aには、基本給付金を受給中に退職し、1年半後に別の会社に就職した例で「できません」とあります。
基本手当を受けてから再就職した人は、再就職給付金の対象になり得ます。比べる基準は60歳時点の賃金ではなく、基本手当の基準になった賃金日額の30倍です。次の要件があります。
- 基本手当の算定基礎期間が5年以上
- 再就職した日の前日の基本手当の支給残日数が100日以上
- 安定した職業に就いて被保険者になった(Q&Aでは、1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる職業)
- 同じ就職について再就職手当を受けていない
支給期間は、残日数が200日以上なら再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで、100日以上200日未満なら1年です。どちらも65歳に達する月が限度です。59歳で再就職して60歳になった場合は、60歳以後の再就職ではないため対象外です。
再就職給付金と再就職手当は、同じ就職について両方は受けられません。一方を受けると、もう一方は受けられなくなります。再就職手当は一括で、再就職給付金は原則2か月ごとに支給されます。パンフレットは、再就職手当を申請して不支給になった場合でも、再就職給付金の要件を満たしていれば申請できるとしています。
支給対象になる月
基本給付金の支給対象期間は、60歳に達した月から65歳に達する月までです。各月の初日から末日まで被保険者であることが必要です。月の途中で退職した月や、月の初日から末日まで育児休業給付・介護休業給付の対象になる休業をした月は、支給対象になりません。
申請は会社経由で、初回は4か月以内
申請は原則として事業主がハローワークに行います。本人が希望する場合は、本人が申請することもできます。提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークで、電子申請もできます。
初回の申請に使う書類は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書(マイナンバーを記載)
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など、賃金の額や支払い状況を確認できる書類
- 運転免許証のコピーなど、年齢を確認できる書類(マイナンバーを届け出ていれば省略可)
初回は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から4か月以内に出します。2回目以降は原則2か月に1回、ハローワークが指定した支給申請月に出します。次の申請日は「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に印字されています。事業所ごとに奇数月型か偶数月型が決まっています。
ハローワークのパンフレットは、賃金証明書や受給資格確認票の提出がなかったり遅れたりすると、支給を受けられなくなることがあると注意しています。
入金と、期限を過ぎたとき
ハローワークが賃金台帳などで確認して支給を決めると、支給決定通知書で可否と額が知らされます。振込は、支給決定から概ね1週間後です。厚生労働省やハローワークは個々の振込日を把握していないため、入金日の問い合わせには答えられないとしています。
申請期限を過ぎても、時効が完成するまでは申請できます。厚生労働省の時効のリーフレットでは、高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金の時効は、支給対象月の末日の翌日から2年を経過する日までです。以前に期限切れで支給されなかった人も、時効前に申請し直して要件を満たせば支給されます。
65歳前の年金を受けている人は、年金の一部が止まる
特別支給の老齢厚生年金や繰上げ支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)など、65歳になるまでの老齢年金を受けながら厚生年金に加入して働く人が高年齢雇用継続給付を受けると、在職老齢年金としての停止に加えて、年金の一部がさらに止まります。65歳前の老齢厚生年金を受けていない人には、この調整は関係しません。
止まる額は、日本年金機構によると最高で標準報酬月額の4%です。令和7年3月31日以前に60歳に達して基本給付金を受ける人や、令和7年4月1日より前に再就職して再就職給付金を受ける人は、最大6%です。
| 標準報酬月額 ÷ 60歳到達時の賃金月額 | 年金の支給停止率(新) | (従来) |
|---|---|---|
| 75%以上 | 0.00% | 0.00% |
| 70% | 1.66% | 1.87% |
| 64% | 4.00%(64%以下は一律) | 4.49% |
| 62% | 4.00% | 5.48% |
| 61%以下 | 4.00% | 6.00% |
標準報酬月額が支給限度額以上の場合や、高年齢雇用継続給付が不支給になった月は、この調整は行われません。
日本年金機構は、初回の支給申請が認められたあとは、その後の申請をしなかった月でも、申請できる期間中は年金の一部停止が解除されないと注意しています。退職したとき、65歳になったとき、不支給決定などの情報が提供されたときに、さかのぼって解除されます。
年金側の届出は原則不要です。年金請求のときに雇用保険被保険者番号を持っていなかった人などは、最初の支給決定のあとに「老齢厚生・退職共済年金受給権者 支給停止事由該当届」を年金事務所に出します。添付するのは支給決定通知書で、受給資格確認通知書では代用できません。
この記事で確認できなかったこと
2026年10月27日時点で、次の点は今回の資料では確認できていません。
- 令和9年8月1日以降の支給限度額・最低限度額・賃金月額の上限と下限
- 支給対象月に賞与が支払われた場合の扱い。60歳到達時の賃金月額から賞与を除くことは確認しましたが、各月の賃金に含めるかどうかは今回読んだ資料に書かれていませんでした
- 年金の支給停止額の具体的な計算例。個別の額は年金事務所で確認してください
参考資料
- 厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
- 厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
- 厚生労働省・労働局・ハローワーク 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します(LL061108保01)
- ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について(PL080801保05)
- 厚生労働省 雇用保険の基本手当日額の変更(令和8年7月31日報道発表)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です(LL071001保01)
- 日本年金機構 年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
- 日本年金機構 失業給付・高年齢雇用継続給付を受けるとき