相続税の税務調査で名義預金とタンス預金を指摘されたら、追徴と修正申告の順番はどう決まるか

結論

指摘される前に自分で気づいたら、税務調査の連絡を待たずに税理士経由で修正申告を出すのが金銭的に一番軽い。名義預金の判定は生前の通帳・印鑑を誰が管理していたかで決まり、亡くなった後の後付けの主張は通らない。

どうする?編集部 · · 読了 約9分
目次(8項目)
  1. 実地調査で最初に聞かれるのは「通帳の管理者は誰だったか」
  2. 名義預金の判定は「贈与の要件を満たしていたか」で決まる
  3. タンス預金は「相続財産に含まれる」が原則
  4. 時効は原則5年、意図的な隠蔽があると7年に伸びる
  5. 修正申告と加算税の目安
  6. 事前通知が来た日にやることと、やってはいけないこと
  7. 生前に整理しておくと家族が助かる情報
  8. 参考にした一次情報

「税務署から相続税の実地調査の連絡が入り、生前に母が代わりに管理していた父名義の預金と、実家のタンスから出てきた現金の使途について、詳しく聞かれた」——申告期限を過ぎて2〜3年経った頃にこうしたご相談を受けることが、この1年で目立って増えました。相続税は税理士に依頼していたのに、あとから名義預金とタンス預金を突かれ、追徴の見通しが読めずに不安になっているご家族が多い印象です。

慌ててタンスの現金を分散したり、家族名義の預金を移動させたりすると、隠蔽と扱われて重加算税35%と7年遡及の対象になります。逆に、指摘される前にご自身で気づいて修正申告に動けば、加算税がずっと軽く済む枠に入ります。相続開始から5年以内なら、まだ選択肢は残っている場面が多いです。

ここでは、税務調査で名義預金・タンス預金がどう見られているか、名義預金と判定される実態基準、タンス預金の扱い、時効の考え方、修正申告に切り替えるときの順番を、現場で実際に問われる流れに沿って整理します。

実地調査で最初に聞かれるのは「通帳の管理者は誰だったか」

税務署が相続税の実地調査で最初に確認するのは、亡くなった方以外の名義になっている預金の通帳、届出印、キャッシュカードを、生前に誰が保管していたかです。専業主婦だった配偶者名義、就業前の子や孫の名義、学生時代の名義口座、といったところに、被相続人がまとまった金額を長期にわたって入れていたパターンは高確率で質問されます。金額が数百万円を超えると、名義人以外の人物のお金が名義だけ借りていたのではという疑いが強く見られる領域に入ります。

通帳の入出金履歴は、税務署側で銀行に照会をかけて10年分は把握しています。名義人本人が海外赴任中の期間に引き出しの動きが残っている、名義人が幼少期のうちにまとまった金額が入っている、届出印が被相続人の他の口座と共通、といった具体的な不一致が並ぶと、名義預金の判定材料になります。

タンス預金は、被相続人の生前の預金からの引出履歴と、亡くなった時点の残高を突き合わせて浮かび上がります。亡くなる直前の数年間にATMや窓口でまとまった金額を出しているのに、亡くなった時点の預金にその分が反映されていない。使途が説明できないと、家のどこかに現金として保管されていたと推定される流れになります。

名義預金の判定は「贈与の要件を満たしていたか」で決まる

名義預金と判定されるか、名義人本人のお金と認められるかの分かれ目は、その預金が生前に贈与として成立していたかどうかの実態判断です。ここが最大の論点で、通帳の名義がどうなっているかは決定打になりません。

贈与として認められるためには、贈与契約書があるか、口頭でも構わないので双方の意思表示があること。名義人本人が通帳と印鑑を管理していて、口座の存在を知っていたこと。年間110万円を超える金額を移したなら、その年度に贈与税の申告がされていたこと。この線が揃っていない場合、税務署は名義だけ借りて実質は被相続人が管理していた預金と判定します。

現場でよくあるのは、孫のためにと考えて毎年110万円ずつ祖父が入金していたケース。通帳と印鑑を祖父本人が金庫で管理していて、孫は口座の存在自体を知らなかった。孫が贈与の意思表示を受けた形跡がなく、贈与税の申告もない。この場合、いくら名義が孫でも祖父の預金として相続財産に含めて申告し直しになります。

生前対策としては、贈与契約書を年ごとに残すこと、名義人本人に通帳と印鑑を保管させること、110万円を超える年は贈与税の申告書を出しておくこと、が組み合わせで効きます。市販の書式を使って毎年短時間で書ける手続きなので、負担の割に効果が大きい部分です。ただし、亡くなった後になって「実は贈与だった」と後付けで主張しても、税務署に対しては通用しません。生前の記録がない限り、判定は覆りにくいと思ってください。

タンス預金は「相続財産に含まれる」が原則

タンス預金は、被相続人が亡くなった時点で自宅で保管していた現金です。金融機関に預けていないだけで、財産としての性質は預金と変わらず、相続税の申告対象になります。ここを勘違いして「タンスの中は税務署にはわからないから」と申告から外してしまうと、あとで大きな追徴を招く場面が実務ではよくあります。

税務署は被相続人の預金の引出履歴を追いかけたうえで、亡くなる直前3〜5年の高額出金について「この現金はどこに保管していましたか」と具体的に聞いてきます。医療費・介護費・入院準備金・葬儀費用として説明できる金額は、領収書や振込記録があれば相続財産から除外できます。逆に、日常生活費の範囲を超える現金を生前に家族が受け取っていた場合、その分は被相続人からの贈与とみなされて贈与税の対象にもなり得ます。

タンス預金の中に、家族が生前に生活費として少しずつ渡された分が混ざっている場合の切り分けは、実務で難しい部分です。相続税と贈与税どちらの俎上に乗るかで税率が変わるため、相続開始からさかのぼって渡された時期を家族の間で書き出し、税理士に判断してもらうのが安全です。

もう一つ意識しておきたいのは、相続開始前3年以内(令和6年以降の相続からは段階的に7年へ延長)に受けた生前贈与は、相続財産に加算されるルールです。生活費・教育費として通常必要と認められる範囲は対象外ですが、名義預金と判定された金額はそもそも贈与が成立していない扱いになり、加算の議論以前に相続財産そのものに含めて計算し直す流れになります。ここは家族の理解がずれやすい部分で、生前に少しずつ移していた金額の扱いは、税理士に一度整理してもらったほうが後の追徴額の見立てが早くなります。

時効は原則5年、意図的な隠蔽があると7年に伸びる

相続税の除斥期間(いわゆる時効)は、法定申告期限から5年です。相続開始から10か月が申告期限なので、亡くなった日を起点にするとおよそ5年10か月経過した時点で時効を迎える計算になります。ここが基本ラインです。

一方で、財産を意図的に隠していた「偽りその他不正の行為」があったと判定されると、除斥期間は7年に伸びます。名義預金を残高証明書から抜いた、タンス預金を家族が示し合わせて申告外にしたといったケースはこちらの枠に入ります。この場合、亡くなった日から7年10か月ほどまで税務署は追いかけられます。

実地調査は相続開始からおよそ2〜4年で入るパターンが目立ちます。時効ぎりぎりまで指摘されないケースは全体の中でも少数派で、時効頼みで放置するのは金銭面でも精神面でも割に合わないです。5年分の延滞税が積み上がった状態で追徴になると、本税より延滞税のほうが大きくなる場面もあります。

修正申告と加算税の目安

税務調査で指摘を受けたあとの流れは、実務では税理士と一緒に進めるのが通常です。名義預金・タンス預金を含めた相続財産を再計算し、修正申告書を提出して、追加の相続税と加算税・延滞税を納付するかたちになります。

加算税は、修正のタイミングと悪質性で税率が変わります。税務調査の連絡が入ってから指摘を受けて修正した場合、過少申告加算税として10%(50万円または期限内申告税額のいずれか多い額を超える部分は15%)。隠蔽・仮装があったと判定されると重加算税に切り替わり、税率は35%に跳ね上がります。ここが一番痛い枠です。

逆に、税務調査の事前通知が入る前に自主的に修正申告を出せば、加算税がかからない扱いになる場面があります(自主修正申告)。亡くなった後に「あの家族名義の預金は父が管理していた」と気づいた時点で税理士に相談し、事前通知が入る前に動くルートが、金銭面で一番軽く済む選択肢です。

延滞税は、法定納期限の翌日から納付日までの日割で計算されます。年利は時期によって変動しますが、最初の2か月は年約2.4%、それ以降は年約8.7%(令和6年時点)というかたちで負担が跳ね上がる段階があり、気づいてから納付までを短くするほど負担が減ります。

金額感の目安を挙げると、追加の相続税が500万円で1年遅れなら、延滞税は最初の2か月分と残りの10か月分を合わせて年約7%相当の負担が乗る計算です。過少申告加算税10%を重ねると、負担合計は本税に対して15〜20%増しの水準に届きます。重加算税35%と延滞税7年分が重なる最悪パターンだと、本税と同水準の追加負担が乗る場合もあります。ここまで来ないうちに動くのが金銭面で圧倒的に軽い選択肢です。

事前通知が来た日にやることと、やってはいけないこと

税務調査の事前通知は、多くの場合、電話でかかってきます。担当する統括官または調査官の氏名、調査の対象税目(相続税)、対象期間、実地調査の日程候補が告げられ、都合の良い日を返答するかたちです。この電話の段階から、話した内容は調査記録に残る扱いです。

その場で慌てて回答しないでください。都合を確認して折り返す旨を伝え、いったん電話を切る対応で問題ありません。折り返しまでの数日で、当時の申告を担当した税理士に連絡し、立ち会いを依頼するのが最短の動き方です。当時税理士に依頼していなかった場合や、連絡がつかない場合は、地域の税理士会の相続税相談窓口で立ち会いに対応してくれる事務所を紹介してもらえます。

やってはいけないのは、事前通知を受けてから急いで家族名義の預金を動かす、タンスの現金を別の場所に移す、贈与契約書を過去日付でさかのぼって作る、といった行為です。動かした後の残高証明書や、後付けの書面は税務署に把握されており、隠蔽・仮装があったと判定される直接の材料になります。事前通知の段階で、財産の実態はそのままに、当時の記録を集める作業に集中してください。過去の贈与契約書、贈与税の申告控え、通帳の届出印の保管場所、家族名義の口座の暗証番号を誰が知っていたか、といった情報を家族の間で書き出しておくと、実地調査当日の応答がぶれずに済みます。

生前に整理しておくと家族が助かる情報

生前対策としては、被相続人になり得るご本人が元気なうちに、家族名義の口座の実態と、自宅の現金の保管状況をノートに残しておくのが一番効きます。誰の名義で、誰が管理していて、原資は何か。この程度の情報でも、亡くなった後に家族が税務署の質問に答えられる材料になります。

タンス預金があるご家庭は、生前に金額と保管場所を家族が把握できるかたちにしておくと安心です。金額を書いた紙を金庫の中に一緒に置く、通帳や証書と同じ場所にまとめる、といった簡単な整理でも、相続財産の総額が家族の記憶に頼らずに再現できます。使途不明の現金移動を減らすためには、亡くなる直前の医療費・介護費の領収書をレシートホルダーにまとめておくのも有効です。

生前贈与を続けたいなら、贈与契約書を毎年短時間で作る運用に切り替えるのが最短ルートです。市販のテンプレートを使って年1回書き、通帳と印鑑は名義人本人に持たせて、110万円を超える年は贈与税の申告を忘れずに出す。この運用を続けていれば、あとから名義預金と判定される余地は狭くなります。書式にこだわらず、日付・金額・双方の署名押印が入っていれば内容としては足ります。孫への贈与を続けている場合、成人になった孫本人にキャッシュカードと暗証番号を渡し、実際に少額でも本人が入出金する運用を挟んでおくと、通帳管理の実態が家族の側で説明しやすくなります。

参考にした一次情報

本記事は、国税庁が公表している相続税の実地調査事務年度統計と、相続税・贈与税・延滞税・加算税に関するタックスアンサー、令和5年度税制改正の加算税制度見直し資料をもとにまとめました。実際の相続税申告や修正申告は、家庭ごとの財産構成、生前の贈与実態、家族の管理体制で取り扱いが変わります。個別の相談は、相続税を扱う税理士に依頼するのが確実です。

税務署から実地調査の連絡が入った時点で、当時の申告を担当した税理士に立ち会いを依頼するのが最短の対応です。連絡がつかない場合や当時税理士に依頼していなかった場合は、地域の税理士会の相続税相談窓口に問い合わせれば、実地調査の立ち会い実績のある事務所を紹介してくれます。事前通知の電話段階から話した内容はすべて調査記録に残るため、家族ごとに説明がぶれない準備を進めるほうが結果として負担が軽くなります。

相続税の税務調査で名義預金とタンス預金を指摘されたら、追徴と修正申告の順番はどう決まるか — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Anne Nygård on Unsplash

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#相続税 #名義預金 #タンス預金 #税務調査

参考資料

  1. 国税庁 令和5事務年度における相続税の調査等の状況
  2. 国税庁 タックスアンサー No.4102 相続税がかかる場合
  3. 国税庁 タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合
  4. 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について
  5. 国税庁 加算税制度の見直し(令和5年度税制改正)

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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