相続税の申告期限10か月を過ぎてしまった、いまから何ができるか

結論

期限を過ぎても、税務署からの連絡が来る前に自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税は大きく抑えられます。延滞税は日割計算なので、納付額を確定させて早めに払うほど膨らみません。

どうする?編集部 · · 読了 約7分
目次(7項目)
  1. 10か月の起算日は「亡くなった日」ではなく「知った日」
  2. 期限を過ぎたとたんに動き出すのは「延滞税」と「加算税」
  3. 自分から申告するか、税務署の連絡を待つかで負担が変わる
  4. 相続放棄の3か月期限とは別の話
  5. 期限後申告の実務的な進め方
  6. 提出後に税務署から確認が入ったときの対応
  7. 一括で払えないときの「延納」と「物納」

相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。仕事と葬儀、四十九日、遺品整理に追われているうちにこの期限を過ぎてしまった、というご相談はそれほど珍しくありません。期限を過ぎても、打てる手は残っています。まず確認するのは、いま自分が「税務署からまだ連絡を受けていない」状態かどうか、そして納めるべき税額のおおよその見当がついているかどうかの2点です。落ち着いて1つずつ進めれば、負担を最小限に抑えるルートが見えてきます。

10か月の起算日は「亡くなった日」ではなく「知った日」

相続税の申告期限は、被相続人の死亡日そのものではなく、「自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日」を起点に10か月後の応当日です。たとえば被相続人が3月15日にお亡くなりになり、同居家族として同じ日に把握していた場合は、翌年1月15日が期限になります。

知った日が後ろにずれるケースもあります。疎遠だった親族の相続人として通知が届いた場合や、遺言書の存在が後から判明した場合、家庭裁判所の手続きで自分が相続人と判明した場合などは、その事実を知った日が起算点です。ご自身がどの日付からカウントするかで申告期限が動くため、戸籍や通知書、郵便物のコピーは保管しておくと、後から税務署と話す場面で役立ちます。

なお、相続税は基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える財産がある場合に、申告と納税が必要になります。基礎控除の範囲に収まる場合は、そもそも申告義務がないので、まずは大まかな財産評価を出して「申告が必要なのか不要なのか」を見極めるのが先です。生前贈与の加算や生命保険金の非課税枠など、評価上の論点もこの段階で並行して確認することになります。

期限を過ぎたとたんに動き出すのは「延滞税」と「加算税」

期限を過ぎたあとに発生する税金は、性質の違う2種類です。ひとつは延滞税で、本来の納期限の翌日から納付日までの日数に応じて日割で乗ってきます。性質としては利息に近いものです。もうひとつは加算税で、こちらは「申告が遅れたこと自体」への罰則で、本税の何%という形で1回乗る整理です。

延滞税の利率は、期限の翌日から2か月以内と、2か月を超えた後で水準が変わります。直近の年度では、最初の2か月は年2%台、2か月を超えた部分は年8%台が目安です。実際の利率は財務大臣告示で年度ごとに変わるので、納付直前に国税庁のサイトで現行の率を確認してから計算してください。

加算税のうち、申告期限を過ぎてしまった場面で乗るのは「無申告加算税」です。本税にかかる割合は、本税の金額帯や、自主的に申告したのか税務署の調査が入ってからの申告なのかによって段階的に変わります。近年の改正で高額帯の率が引き上げられているため、現状の率は国税庁の「加算税制度の見直し」資料で確認するのが安全です。事実を意図的に隠したと判断された場合には、もっとも重い「重加算税」(本税の35%や40%相当)の扱いに切り替わる可能性があります。

延滞税と加算税は別々に計算されるので、合算したときの負担を見落としがちです。「本税」「延滞税」「加算税」の3行を分けて書き出し、それぞれがいつ確定するかをつかんでおくと、家族で話し合うときに数字が混ざりません。

自分から申告するか、税務署の連絡を待つかで負担が変わる

無申告加算税は、税務署から「申告期限を過ぎていますよ」という調査の通知が入る前に、自分から期限後申告書を提出した場合には、本来より大幅に軽い率で済む扱いがあります。これは相続税に限らず、所得税などほかの国税にも共通する仕組みです。

「税務署はそんなにすぐ気付かないだろう」と感じる方もいますが、相続税は不動産の登記情報や金融機関への調査でかなり把握されています。亡くなった方の過去の確定申告履歴や、預貯金・有価証券の動きから、相続税の申告が必要そうな世帯はリスト化されている運用が知られており、期限から半年〜1年ほどで「相続税についてのお尋ね」と呼ばれる文書が届く事例は少なくありません。

「お尋ね」が届いてしまうと自主申告とは扱いが変わり、加算税の率が一段重くなります。さらに本格的な税務調査が入った段階では、もう一段重い率に切り替わります。気付いた時点ですぐ動けば、いちばん軽い扱いに乗れる、というのが基本構造です。延滞税の額も、その日のうちに納付額を確定させて支払うほど膨らみません。1日待つたびに自動的に増えていく性質なので、「来月の給料日まで待ってから」と先送りするのは合理的ではありません。

相続放棄の3か月期限とは別の話

相続関連の期限で混同されやすいのが、相続放棄の3か月期限です。これは家庭裁判所への申述期限で、「自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と決まっています。相続税の申告期限とは別の制度なので、片方が過ぎていてももう片方は動いている、という状態は普通にあり得ます。

3か月の放棄期限を過ぎた場合、原則として単純承認したことになり、被相続人の債務も含めて引き継ぐ立場になります。その上で、財産が基礎控除を超えていれば、相続税の申告は別途10か月で進めます。逆に、3か月以内に放棄が間に合っていれば、その人は相続税の申告義務から外れる扱いです(ただし生命保険金の受取など、放棄しても課税対象として扱われる項目がある点には注意が必要です)。

「相続放棄もしていない、相続税の申告も10か月過ぎてしまった」という二重の遅れに気付いたときは、まず放棄ができる状況かどうか(債務超過の見込みがあるかなど)を弁護士や法テラスで確認し、並行して相続税の期限後申告を進める、という順序で動くと整理しやすくなります。

期限後申告の実務的な進め方

期限後申告そのものは、通常の相続税申告書(第1表〜第15表)を使い、提出日を記入して所轄の税務署(被相続人の住所地を管轄する税務署)に提出します。e-Taxでの提出も可能です。本税は申告と同時の納付が原則で、納付書は税務署や金融機関の窓口で入手できます。

実務的に詰まりやすいのは、財産評価と遺産分割協議の2点です。不動産の路線価評価をどう出すか、生命保険金や死亡退職金の非課税枠の使い方、特例(小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など)を適用するかどうかで、最終的な税額は大きく動きます。遺産分割が未了のまま申告期限を迎えた場合は、いったん法定相続分で申告し、後日分割が確定した時点で「修正申告」または「更正の請求」で訂正する扱いも認められています。

特例の中には「期限内申告であること」を適用要件にしているものがあります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、原則として申告期限内に申告書を提出して初めて使える仕組みです。ただし期限後申告であっても、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出する方法など、救済的に適用できる経路が用意されています。期限を過ぎた場面で特例を使えるかどうかは、税額への影響が極めて大きいので、ここは税理士に確認しておくと安全です。

税理士に依頼するかどうかは、財産構成と特例の使い方で判断するとよいでしょう。預貯金中心で1人が単独相続する場合はご自身で進める方も多い一方、不動産が複数ある、非上場株式がある、複数の特例を組み合わせる必要がある、といったケースでは、税理士費用を払っても最終的な負担が下がる場面が目立ちます。各地の税理士会で開催されている無料相談で、まず見立てだけもらうのも現実的な動き方です。

提出後に税務署から確認が入ったときの対応

期限後申告書を提出した後は、税務署から内容についての問い合わせが入ることがあります。財産の評価方法や、預貯金の動き、生前贈与の有無について、書面や電話で確認が来るのが一般的です。お尋ねが届いた場合は、慌てずに資料を添えて回答するのが基本姿勢になります。

回答にあたっては、根拠資料(残高証明、登記簿、贈与契約書、保険証券など)を整理しておくと、やり取りがスムーズに進みます。記憶だけで答えると後から訂正が増えて時間を要するので、書類で示せる形にしてから返答するのが安全です。

提出した内容に後から誤りが見つかった場合は、本税を増やす方向であれば「修正申告」、減らす方向であれば「更正の請求」(原則として申告期限から5年以内)という手続きで訂正できます。修正申告は気付いた時点で早く出すほど追加の加算税が軽くなる扱いがあるため、放置せず動くのが基本です。

一括で払えないときの「延納」と「物納」

期限後申告の場面で次に困りやすいのが、本税と延滞税・加算税を合わせると現金で一括納付できない、というケースです。相続税には、分割で納める「延納」と、不動産などの財産で納める「物納」の制度が用意されています。

延納は、納期限までに金銭一括での納付が困難で、担保を提供できることなどを要件に、最長20年(財産構成によって5年〜20年)の分割払いを認める仕組みです。年率の利子税が乗りますが、無理に資産を売却して現金を作るより、資金繰りに余裕が生まれます。物納は、延納でも納付が困難な場合に、不動産や国債などの相続財産そのもので納付する制度で、適用には一定の要件と順位があります。

延納・物納のいずれも、原則として申告期限までに申請書を提出する形が想定されていますが、期限後申告の場合は、期限後申告書の提出と同時に申請する形になります。手続きが煩雑なため、税理士の助力を得ながら進めるのが現実的です。資金繰りの相談まで含めて、早い段階で税理士事務所か税務署の窓口に相談ルートをつくっておくと、家族間の話し合いも進めやすくなります。

相続税の申告期限10か月を過ぎてしまった、いまから何ができるか — お金 関連イラスト (どうする?)
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参考資料

  1. 国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税
  2. 国税庁 タックスアンサー No.4214 相続税の延納
  3. 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について
  4. 国税庁 加算税制度の見直し(令和5年度税制改正)

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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