2026年12月1日から、iDeCoに加入して掛金を出せる年齢が、いまの65歳未満から70歳未満に上がります。ただし60歳を過ぎて続けられるのは全員ではなく、厚生労働省が示した3つの区分のどれかに当てはまる人です。まず確かめるのは、自分が老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をすでに受け取っているかどうかで、受け取っていれば年齢にかかわらず加入できません。掛金の上限も同じ日に上がりますが、上限が上がっても掛金は自動では増えないので、増やしたい人は運営管理機関(申し込んだ金融機関)への届出が必要になります。この記事は2026年9月25日時点の厚生労働省の公表資料に基づいています。施行日に「予定」と付いている段階なので、実際に手続きをする前に同じページを開き直してください。
変わるのは「年齢」と「上限額」の二つで、どちらも同じ12月1日
厚生労働省の施行スケジュールでは、確定拠出年金の改正が2段階に分かれています。企業型DCの手続き簡素化やマッチング拠出の制限撤廃は2026年4月1日に施行済みで、今回の「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」と「iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げ」は、どちらも2026年12月1日施行予定です。
つまり60歳以降も続けられるようになる話と、上限が上がる話は別の改正項目ですが、効き始める日は同じです。「年齢だけ先に上がって上限は来年」という順序ではありません。
今は、60歳を過ぎたら働き方か任意加入でしか続けられない
現行の加入要件は、厚生労働省の言葉では「国民年金被保険者であって、かつ、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない」ことです。国民年金の被保険者であることが条件なので、60歳を過ぎてiDeCoを続けられるのは、実質的に次の二通りに限られます。
- 厚生年金に加入して働き続けている人(国民年金第2号被保険者)
- 国民年金に任意加入している人。任意加入被保険者は「60歳以上65歳未満の者、または、20歳以上65歳未満の海外居住者で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない者」と定義されています
逆にいうと、60歳で退職して厚生年金から抜け、保険料の納付済期間が480月に達しているために任意加入もできない人は、いまは60歳の時点で掛金を出せなくなります。この「国民年金の被保険者かどうか」という入口が外れるのが、今回の改正の中身です。
続けられるのは、60歳になる前からiDeCoに関わっていた人
改正後に60歳以上70歳未満で加入・継続拠出が認められるのは、厚生労働省の資料では「下記の(1)~(3)いずれかに該当する国民年金被保険者以外の者であって、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない者、マッチング拠出を実施していない者」です。
- iDeCo加入者
- iDeCo運用指図者
- 企業年金からiDeCoに資産を移換する者
(2)の運用指図者は、掛金を止めて残高の運用指示だけしている状態の人です。掛金を払っていない期間があっても、口座を残していれば(2)に当たります。(3)は、勤務先の企業型DCや確定給付型の資産をiDeCoへ移す人です。
条件のうち見落としやすいのは最後の「マッチング拠出を実施していない者」です。勤務先の企業型DCで事業主掛金に上乗せして自分も出しているなら、それをやめない限りこの枠には入りません。
3年間の経過措置がある。いまiDeCoを持っていない60代でも入れる
上の3区分だけを読むと「60歳より前にiDeCoを始めていなければ手遅れ」に見えますが、同じページの本文末尾に経過措置が書かれています。
なお、経過措置として、施行日から3年を経過する日までの間は、上記(1)~(3)に該当しない60歳以上70歳未満の者であってもiDeCoの加入が可能です。
施行日が2026年12月1日なので、この期間は2029年11月末ごろまでという読み方になります。いまiDeCoの口座を持っていない60代でも、この間なら新しく加入できます。3年を過ぎたあとにどう扱われるかは公表資料に書かれていないため、始めるかどうかを迷っている人は、期間があるうちに判断したほうが選択肢は広く残ります。
年金を受け取り始めた人は対象外。繰下げ中なら入れる
年齢の条件を満たしても、次の場合は加入できません。
| 状況 | 加入できるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 施行日までに老齢基礎年金を受給した | 加入不可 | 脚注「施行日までに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給した場合は加入不可」 |
| 施行日までにiDeCoの老齢給付金を受給した | 加入不可 | 同上。iDeCo公式サイトでも「受給したことがある方(一括受け取りを含みます)」を加入できない人として挙げている |
| 老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金を受給している | 加入できる | 脚注「老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金を受給する者は加入可能」 |
| マッチング拠出をしている | 加入不可 | 要件に「マッチング拠出を実施していない者」とある |
繰上げ受給を選んで60代前半から老齢基礎年金を受け取っている人は、この改正の対象から外れます。受給を始める前なら、受け取りを遅らせて掛金を続けるという選択が残ります。どちらが有利かは掛金の所得控除、繰下げによる増額、手元の資金の必要度で変わるので、金額を出して比べてください。
上限額は第1号が7.5万円、会社員は企業年金と合わせて6.2万円
現行の上限は確定拠出年金法施行令第36条に区分ごとに書かれています。改正後の額は厚生労働省の資料によるものです。
| 区分 | 現行の月額上限 | 2026年12月1日から |
|---|---|---|
| 第1号加入者(自営業者・フリーランス等) | 68,000円。付加保険料か国民年金基金の掛金を納める月はその額を差し引く。国民年金保険料を納めていない月は0円 | 国民年金基金との共通枠で75,000円 |
| 第2号・企業年金なし | 23,000円 | 企業年金と共通の枠に一本化して62,000円 |
| 第2号・企業型DCに加入 | 20,000円。事業主掛金が35,000円を超える月はその超過分を差し引く | 同上(企業年金等と合計して62,000円が上限) |
| 第2号・確定給付型などに加入 | 20,000円。他制度掛金相当額が35,000円を超える月は同様に差し引く | 同上 |
| 第2号・公務員等 | 20,000円。共済掛金相当額が35,000円を超える月は同様に差し引く | 同上 |
| 第3号加入者(扶養されている配偶者) | 23,000円 | 厚生労働省の資料に個別の記載なし |
第1号の枠は国民年金基金や付加保険料と共通です。国民年金基金に月3万円払っているなら、iDeCoに回せるのは差額までという関係が改正後も続きます。
第2号の6.2万円は、区分をなくして一本化した共通枠です。会社が出している分を含めた合計の上限なので、企業型DCの事業主掛金が多い人は、iDeCoに回せる額が6.2万円より小さくなります。自分の事業主掛金の額は、勤務先または企業型DCの記録関連運営管理機関からの通知で確認できます。
第3号加入者について厚生労働省の本文は第1号と第2号の額だけを示しており、改正後の額を確認できませんでした。扶養されている配偶者の枠がどうなるかは、施行が近づいたときに同じページか運営管理機関の案内で確かめてください。
上限が上がっても掛金は自動では増えない
ここは制度の説明に書かれていない部分なので、事実と分かっていないことを分けて書きます。
分かっていること。iDeCo公式サイトでは、掛金は「月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます」とされ、金額の変更は「1年(12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間)に1回限り変更することができます」と書かれています。つまり上限が上がったからといって引き落とし額が自動で増えることはなく、増やすには加入者からの届出が要り、その回数には年1回という制約があります。
分かっていないこと。厚生労働省の公表資料には、既存の加入者が施行に合わせて何か出す必要があるかどうかの記載がありません。変更の届出書の様式と受付時期も、運営管理機関ごとの案内によります。12月分の掛金という区切りと12月1日の施行日が重なるため、変更が何月分の掛金から反映されるかは金融機関に確認するのが確実です。
12月を待つ間にできること
- iDeCoの口座がある金融機関で、いまの掛金額と上限、次に掛金を変更できる時期を確認する
- 会社員は事業主掛金の月額を調べる。6.2万円から差し引く額がこれで決まる
- 老齢基礎年金の受給開始をまだ決めていない人は、繰上げを選ぶとiDeCoの継続ができなくなる点を織り込んで考える
- 企業型DCの資産を放置している人は、iDeCoへ移換すると要件(3)に当たる。移換には期限の問題もあるので残高の所在を確認しておく
- 施行日に「予定」と付いている段階なので、手続きの直前に厚生労働省のページをもう一度開く
参考資料
- 厚生労働省「2025年の年金制度改正」— iDeCoの加入可能年齢の引き上げ、iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げ(いずれも2026年12月1日施行予定)
- e-Gov法令検索 確定拠出年金法施行令 第36条 — 個人型年金加入者掛金の拠出限度額(区分ごとの現行額)
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)— 加入資格、掛金の最低額と変更回数