就職活動の面接やインターンシップ、OB・OG訪問で性的な言動を受けたとき、相談できる先は三つあります。応募先企業が設けている相談窓口、大学や専門学校のキャリアセンター等、そして都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。どれから使ってもよく、順番の決まりはありません。2026年10月1日からは、改正男女雇用機会均等法により「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」の防止措置が企業の義務になり、求職者等向けの相談窓口を定めて周知することもその一つに入ります。まず見るのは、応募先企業の採用ページやパンフレットに窓口の部署・担当者の連絡先が載っているかどうかです。
その場面が「求職活動等」に入るか
指針が守る相手は「求職者等」です。範囲は厚生労働省のQ&A(問29)で次のように整理されています。
- 求職者。その企業に雇用されようとし、その意思を表示している人
- 企業が行う就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問などの活動に参加している人
- 教育実習、看護実習その他の実習を受けている人
一方、授業の一環としての社会科見学や、企業を招いた講演会のように「専ら教育を目的として行われるもの」に参加しただけの人は、求職者等には当たらないと明記されています。
場所は広く取られています。Q&A(問30)によれば、求職活動等は企業の労働者が通常就業している場所で行われるものに限りません。OB・OG訪問を行うための飲食店、就職説明会を行うための貸し会議室や学校のキャンパス等で行われるものも含まれます。懇親の場であっても、実質上、採用に資する活動や実習の延長と考えられる場面で行われるものは含まれます。SNS等のオンラインを介したものや、オンライン上で行われるものも同じです。
「会社の建物の外だったから対象外」にはなりません。ただし、求職活動等に当たるかの判断では、労働者の職務との関連性、求職活動等との関連性、労働者と求職者等との関係性、参加者、参加や対応が強制的か任意かが合わせて考慮されるとされています。関係性については、求職活動等を始める前から部活動等の私的な活動で面識があったかどうかが、考慮する例として挙げられています。
指針が「性的な言動」として挙げているもの
厚生労働省のリーフレットは、性的な言動を二つに分けています。
性的な内容の発言 — 性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること など 性的な行動 — 性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること など
そのうえで、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの例として、リーフレットは次の三つを挙げています。
- インターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと
- 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
- インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
男性も女性も加害者にも被害者にもなり得ること、異性に対するものだけでなく同性に対するものも該当すること、相手の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず該当することがあり得ることも、同じページに書かれています。
相談先は三つ。使う順番は決まっていない
| 相談先 | そこで行われること | 押さえておく点 |
|---|---|---|
| 応募先企業の相談窓口 | 事実関係の確認、被害者への配慮のための措置、行為者への措置、再発防止 | 選考をしている企業の中に申し出ることになる。担当者を人事以外にしている企業もある |
| 大学・専門学校のキャリアセンター等 | 学内で相談を受け、企業へ情報提供する | 企業が連携して対応することは「望ましい取組」であって義務ではない |
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 相談を受け付ける | 男女雇用機会均等法の調停からは、求職者等は除かれている |
学生が求職活動中にセクシュアルハラスメントを受けた場合について、Q&A(問35)はこう答えています。「求職者等は、事業主が設けている相談窓口、キャリアセンター等の教育機関が設置する相談窓口等のいずれへの相談も可能であり、個々の事案の状況等によって、判断いただければよい」。注記で、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)への相談も可能だと書き添えられています。
労働局の受付時間は8時30分から17時15分まで(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)です。都道府県ごとの電話番号は、記事末尾の参考資料に挙げたリーフレット(詳細版)の最終ページに一覧があります。
面接を受けている時点で、その企業には窓口があるはず
10月1日から企業が必ず講じる措置のうち、相談に関わるのは次の二つです。
- 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する
- 相談窓口の担当者が、適切に対応できるようにする
周知の方法について、Q&A(問34)は「ホームページやパンフレット等を通じて窓口の部署又は担当者等の連絡先を示すことなどが必要である」と明記しています。探す場所は、企業のウェブサイトの採用ページか、説明会で配られた資料です。
担当者を誰にするかも触れられています。人事担当者以外でなければならないという決まりはありませんが、求職者等が採用担当である人事担当者への相談をためらうことも想定されるため、人事担当者以外の者を指定することも考えられる、という書き方です。応募先の窓口が人事部そのものだったとしても、それ自体が違反ではありません。
ふだん採用活動をしていない企業については、Q&A(問37)が「定期的な採用活動を行っておらず、求職者等と労働者が接する機会がない場合は」措置を全て講じていなくとも差し支えないとしたうえで、「採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなれば、その時点で全ての措置義務を履行する必要がある」と続けています。自分が説明会や面接に参加している時点では、その企業は全ての措置を講じている必要がある、ということになります。
もう一つ、指針は相談の受け方についてこう定めています。セクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。被害を受けた求職者等が萎縮して相談をためらう例もあることを踏まえる、とも書かれています。「これはセクハラと言えるのか」と迷う段階で持ち込んで構いません。
キャリアセンターに言うと、企業側では何が起きるか
指針の5(1)は、企業が行うことが望ましい取組として、求職活動等を行う大学生や専門学校生が所属する教育機関の相談窓口の担当者等から情報提供があった場合には、連携し、適切な対応を行うことを挙げています。
望ましい取組であって、義務ではありません。大学に言えば企業が必ず動く、とは言えません。ただ、学生が企業の窓口ではなく学内に相談することは指針の中で想定されており、そこから企業へ伝わる経路も指針に書き込まれています。企業の窓口に直接言いたくないときの入口として使えます。
労働局に相談はできる。ただし調停の当事者にはなれない
ここが公開資料からいちばん読み取りにくいところです。
Q&A(問41)は、調停のために出頭を求めることができる「その他の参考人」に求職者等が含まれるかを扱っており、男女雇用機会均等法に基づく調停では参考人に求職者等も含まれる、としています。そのうえで注記があります。
男女雇用機会均等法の規定に基づく調停については、労働者の募集及び採用に係るものは除かれるものであることから、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに係る紛争も求職者等は同様に除かれる。
読み分けが必要です。労働者が当事者になっている調停に、求職者等が参考人として呼ばれることはあり得ます。しかし、求職者等が自分の事案について均等法の調停を申し立て、当事者として解決を図る道は、この注記に従えば用意されていません。労働局に相談できることと、労働者と同じ紛争解決の枠組みに乗れることは、別だということです。
相談自体は可能なので、まず電話して、自分の事案でどこまでの対応が受けられるのかを聞くのが確実です。
内定が出ているかどうかで、当てはまる指針が変わる
Q&A(問28)が線を引くのは、採用内定により労働契約が成立したと認められるかどうかです。成立したと認められる場合、採用内定者は男女雇用機会均等法第11条第1項の雇用管理上の措置や、同条第2項の相談等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止の対象になります。この場合、企業は通常のセクハラ防止指針に沿って対応します。労働契約が成立したと認められない場合は、その内定者は求職者等に該当し、求職者等セクハラ防止指針に基づく措置の対象になります。
この違いは実際の守られ方に出ます。10月1日からの措置のうち、相談したこと等を理由に解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて周知・啓発する項目は、労働者についての定めです。選考の途中にいる求職者等本人が、相談したことを理由に選考で不利に扱われない、と明記した項目は、リーフレットが挙げる企業の措置の一覧の中にはありません。企業の窓口をためらう理由があるなら、キャリアセンターや労働局を先に使う判断は妥当です。
性的な言動ではない高圧的な面接は、義務の外にある
面接官の圧迫的な物言いについては、指針の6が「求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為等」として扱っています。こちらは措置義務ではなく、望ましい取組です。
挙げられているのは二つです。セクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化する際に、パワーハラスメントに類する行為等についても同様の方針を併せて示すこと。そして、求職者等からそうした相談があった場合には、必要に応じて適切な対応を行うように努めることです。求職者等の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動や、本人が望まない形で機微な個人情報を他人に暴露することも、この望ましい取組の中で触れられています。
「10月から圧迫面接が禁止される」わけではない、という点は押さえておいてください。義務になるのは性的な言動のほうです。
相談する前に、手元に残しておくもの
- 日時と場所。飲食店なら店名、オンラインなら使ったアプリやサービスの名前
- 相手の氏名・部署・役職。名刺があれば保管する
- やり取りの記録。SNSやメールはスクリーンショットで残す
- その場に他に誰がいたか
- 参加や返信が任意だったか、求められたものだったか
最後の項目を入れているのは、求職活動等に当たるかの判断で「参加や対応が強制的か任意か」が考慮要素として挙げられているためです。断りにくい形で誘われた経緯があるなら、そこも書き留めておいてください。
この記事で確かめていないこと
- 指針の4(3)には、事実関係の確認が困難な場合の例として「法第24条に基づく調停の申請を行うこと」が挙げられています。これと、上のQ&A(問41)の注記がどう両立するのかは、公開されている資料からは読み取れませんでした。自分の事案でどの手続きが使えるかは、労働局に確認してください。
- 個々の企業が実際に求職者等向けの窓口を公表しているかどうかは、企業ごとに異なります。この記事では特定の企業の対応を確認していません。
- 大学・専門学校のキャリアセンターの体制は学校ごとに違います。学内の相談先は、各校の案内で確認してください。
- 措置が義務になるのは2026年10月1日からです。それ以前に起きた出来事にこの措置義務が及ぶかどうかは、この記事では確認していません。
参考にした公式ページ
- 厚生労働省「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(詳細版リーフレット)
- 厚生労働省告示第52号「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
- 厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(Q&A。問28・問29・問30・問34・問35・問37・問41)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
- 福島労働局「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます」(根拠法は令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布)