退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると控除はどうなる?
退職金とiDeCoを同年受給時は退職所得控除が合算計算。10年ルール改正後はiDeCoの一時金受取が制限される場合があるため、順番に注意。
目次(15項目)
結論から先に
退職金とiDeCoを同じ年に一時金で受け取る場合、退職所得控除は合算で計算されます。勤続年数とiDeCoの拠出年数のうち長い方が基準になり、重複しない範囲で控除が適用される仕組みです。2026年1月から「10年ルール」が改正される議論があり、影響期間が拡大される可能性があります。受取りの順番により節税効果が変わるため、退職前にFPや税理士へ相談すると、家計に合った最適な順番が見えてきます。
退職所得控除の基本
退職所得控除は、勤続年数に応じて以下のように計算されます。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20)
例:勤続30年なら、800万円+70万円×10年=1,500万円が控除額です。
退職金からこの控除を引いた残額が、退職所得として課税対象となります。さらに、2分の1課税(勤続20年超の場合)で計算されるため、税負担は所得控除としては最も有利な仕組みです。
退職金とiDeCoの合算計算
退職金とiDeCoを同じ年に受け取る場合、退職所得控除は次のように扱われます。
- 退職金の勤続年数とiDeCoの拠出年数のうち長い方が基準
- 重複期間は控除を二重に使えない
- 短い方の差分(重複してない期間)が追加で控除に使える
例:
- 勤続35年で退職金1,500万円
- iDeCo拠出20年で受取額500万円
- 重複期間:20年(両方が同時にあった期間)
この場合の退職所得控除は、勤続35年=800万円+70万円×15=1,850万円となります。退職金とiDeCoの合計2,000万円−控除1,850万円=150万円が退職所得(2分の1課税)となります。
10年ルールとその改正議論
「10年ルール」とは、iDeCoを一時金で受け取ってから10年以内に勤務先からの退職金を受け取る場合、退職所得控除を合算で計算するルールです。
- iDeCo→退職金:10年以内なら合算
- 退職金→iDeCo:5年以内なら合算(現行ルール)
2026年1月からの改正議論で、この期間が変更される可能性があります。最新情報は国税庁・厚生労働省の発表を確認してください。
受取り順番のシナリオ
シナリオA:退職金を先に受け取る
- 退職金受取り(60歳〜65歳)
- 退職所得控除を満額活用
- 5年(改正後10年?)経過後にiDeCoを一時金で受け取り
- iDeCoの方は別の退職所得控除を使える可能性
ただし、5年(または10年)の間隔を空ける必要があり、iDeCoの運用期間が長くなります。
シナリオB:iDeCoを先に受け取る
- 60歳でiDeCoを一時金で受け取り
- 退職所得控除を活用
- 10年以内に退職金を受け取ると合算計算
- 10年超なら別計算が可能
会社員で60代まで働き続ける場合、退職金受取りが70歳に近くなる必要があります。
シナリオC:両方を一括(同年)に受け取る
- 退職金とiDeCoを同年に一時金で受け取り
- 退職所得控除は合算で計算
- 勤続年数とiDeCo拠出年数のうち長い方を基準に控除
年金型受取りの選択肢
iDeCoは一時金以外に、年金型(分割受取り)も選べます。
- 一時金型:退職所得控除を活用
- 年金型:公的年金等控除を活用(年金として扱う)
- 併用型:一部一時金、残りを年金で
年金型を選ぶと、退職所得控除の合算問題は発生しません。ただし、年金として毎年課税され、国民健康保険料の計算にも影響します。
公的年金等控除の枠
iDeCoを年金で受け取る場合、公的年金等控除が適用されます。
- 65歳以上:120万円まで非課税
- 65歳未満:60万円まで非課税
公的年金と合計で、年合計400万円以下なら税負担が軽くなります。退職後の生活設計に合わせて、年金型と一時金型を組み合わせるケースが多いです。
受取り計画の立て方
退職5〜10年前から、受取り計画を立てるのが現実的です。
- 退職金の予想額を会社の規定で確認
- iDeCoの予想額を運営管理機関のシミュレーターで確認
- 退職所得控除の試算(両方合算と別計算で比較)
- 税金の試算(所得税・住民税)
- 国民健康保険料への影響を確認
- 最適な順番・形式を判断
会社の人事部、または独立系FPに相談すると、自分の家計に合った形が見えてきます。
個別相談先
- 会社の人事部:退職金規定の詳細
- iDeCo運営管理機関:受取り方の選択肢
- 税理士:税額試算と受取り順番
- FP(ファイナンシャル・プランナー):家計全体のシミュレーション
無料相談を行っているFP事務所や、自治体の高齢者向け相談窓口もあります。
注意点
- 退職金は給与の一部として扱う会社もあり、規定を要確認
- iDeCoの受取り時期は60歳以降で本人が選べる
- 一度年金型を選ぶと一時金に戻せない場合がある
- 税制改正で控除の計算式が変わる可能性
判断は退職の数年前から始めて、税理士・FPの試算を踏まえて決めるのが安全です。
よくある質問
Q. 退職所得控除はどう計算されますか?
退職所得控除は勤続年数に応じて計算され、20年以下は40万円×勤続年数、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20)です。例えば勤続30年なら、800万円+70万円×10年=1,500万円が控除額です。退職金とiDeCoを同年に一時金で受け取る場合、勤続年数とiDeCoの拠出年数を合算するルールがあり、重複しない範囲で控除が適用されます。
Q. 10年ルールとは何ですか?
iDeCoを一時金で受け取った後、10年以内に勤務先からの退職金を受け取る場合、退職所得控除を合算で計算するルールです。2026年1月の改正で、この10年ルールが変更される議論があり、影響期間が拡大される可能性があります。詳細は2026年の確定情報を確認してください。
Q. 順番を変えるだけで節税できるのですか?
退職金を先に受け取り、その後の年(または翌々年以降)でiDeCoを一時金として受け取ることで、退職所得控除を別計算にできる場合があります。ただし、iDeCo→退職金の順番でも10年ルールに該当すれば合算計算になります。順番のコツは個別の状況によります。FPや税理士の試算が現実的です。
Q. iDeCoを年金型で受け取れば退職所得控除と無関係になりますか?
iDeCoを年金で受け取ると、雑所得として課税され、退職所得控除の枠とは別の「公的年金等控除」が適用されます。年金で受け取れば、退職金との合算問題は発生しません。ただし、年金で受け取ると課税のタイミングが分散され、社会保険料(国民健康保険)の計算にも影響することがあります。
Q. 退職金とiDeCoを5年差で受け取ったら?
5年差なら10年ルールに該当するため、退職所得控除は合算計算されます。「10年ルール」を回避するには、iDeCoを先に一時金で受け取ってから、10年超の間隔をおいて退職金を受け取る必要があります。これは現実的に難しいケースが多いです。
参考資料
- 国税庁「退職所得控除」— 控除の計算式
- 厚生労働省「iDeCo(個人型確定拠出年金)」— 制度の基本
- iDeCo公式サイト「受け取り方の選択肢」— 受取り形式の選び方
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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