親から毎年110万円もらっている、2024年の7年ルール後は続ける意味があるか
2026年時点の相続なら加算は依然として3年ぶんまで。ただし親が80代以上なら暦年贈与の効き目が薄くなるため、相続時精算課税の110万円枠に切り替えるかを、届出書の期限までに家族で決めておく段階。
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親から毎年110万円ずつ受け取っているご家族から、「2024年に7年ルールが始まったなら、贈与を続けても意味がないのでは」というご相談が続いています。結論を先に言えば、2026年中に相続が起きた場合は依然として『死亡前3年ぶん』しか相続財産に足し戻されず、それより古い贈与は加算されません。ただし来年以降の相続では加算期間が1年ずつ延びていく段階に入るため、親の年齢と資産の構成によっては、暦年贈与を続けるか相続時精算課税に切り替えるかで手取りが数百万円単位で動くことがあります。この記事では、2026年時点で家族が実際にどう判断すればよいかを、年齢別・資産別に整理します。
2024年から効いたのは「贈与の日」で、相続の日ではない
令和5年度税制改正の要点は、亡くなった人が生前にしていた暦年贈与のうち、相続財産に足し戻される期間を『死亡前3年』から『死亡前7年』へ延ばしたことです。ここで多くの方が誤解しやすいのが、改正の起点。基準日はあくまで「贈与の日」で、2024年1月1日以降にした贈与から段階的に効いていきます。「相続がいつ起きるか」だけを見て慌てる必要はありません。
もう一つ勘違いされやすいのが、経過措置。7年フルに加算されるのは2031年(令和13年)以降の相続からで、それまでは相続発生年ごとに加算対象期間が段階的に長くなっていきます。国税庁のパンフレットには年ごとの表が載っており、2026年に相続が起きたケースでは加算対象は死亡前3年以内のぶんだけです。2027年なら最長4年、2028年なら最長5年、2029年なら最長6年、2030年なら最長7年、2031年以降で完全に7年遡ります。
つまり、2026年に相続が発生した家庭では、実務上は改正前とほぼ同じ計算のまま。2023年に受け取った贈与は加算対象で、2022年より前の贈与は対象外です。改正の存在は知りつつも、この年に相続が起きた場合の計算式は変わっていない、と押さえておくのが最初のポイントになります。
相続発生年ごとの加算対象を年表で押さえる
具体的にどの年に何年ぶん加算されるかを整理すると、2026年で加算3年、2027年で最長4年、2028年で最長5年、2029年で最長6年、2030年で最長7年、2031年以降でフルに7年。ここに「最長」と書いたのは、2024年1月1日より前の贈与までは遡れないためです。
たとえば2028年3月に相続が発生した場合、死亡前5年ぶんは2023年3月まで遡ることになりますが、そのうち2023年12月以前の贈与は改正の対象外なので、実際に足し戻されるのは2024年1月〜2028年3月のあいだにしていた贈与だけです。実務では2024年1月1日を境に一本の線が引かれて、それより前の贈与は旧ルール、それより後の贈与は新ルール、と分けて処理する流れになります。
家庭ごとの計算では、贈与記録を「2023年12月まで」「2024年1月以降」の2つに分けてから加算年数を当てはめると混乱が減ります。年をまたぐ贈与のたびに「これはどちらのルール?」と迷わなくて済みます。
4〜7年ぶんに使える100万円控除の実感値
改正では緩和策として、死亡前4〜7年の贈与についてはそのぶんの合計から100万円を差し引いたうえで加算する扱いが新設されました。この控除は延長された4年分にだけ効くもので、死亡前3年以内の贈与には使えません。
数字にすると迫力がないのが率直なところです。仮に死亡前4〜7年の4年間、毎年110万円ずつ贈与していた家庭では、4年間の合計440万円から100万円を引いた340万円が加算対象。相続税率が10%なら実効差額は10万円、20%でも20万円で、7年ルール延長のインパクトを大きく打ち消すほどの控除ではありません。改正の負担を少しだけ和らげる緩衝材、くらいの位置づけで見ておくと期待値のズレが少なくなります。
相続時精算課税に、110万円の基礎控除が加わった意味
もう一つの選択肢が相続時精算課税制度です。2024年1月から、この制度に年110万円の基礎控除が新設されました。従来は「一度精算課税を選ぶと、贈与のたびに申告が必要で、亡くなる時にすべて相続財産に加算される」という重い建て付けでしたが、2024年以降は年110万円までの贈与であれば申告不要かつ相続財産への持ち戻し不要になっています。
暦年課税の110万円と数字は同じですが、性質が大きく違います。暦年課税の110万円は「贈与税が非課税になる枠」であって、亡くなる直前の贈与は依然として持ち戻しの対象です。相続時精算課税の110万円は「贈与税も非課税で、かつ持ち戻しもされない枠」なので、亡くなる前日の贈与でも110万円までは相続財産の外側に置けます。7年ルールを気にする必要がなくなるのが最大の魅力です。
数字だけを見比べると精算課税のほうが有利に映ります。ただ、この制度には元に戻せない性質があり、判断を急ぐと後悔しやすい部分でもあります。ここから先の見極めを間違えないために、副作用と手続きを順に見ていきます。
副作用として大きい「小規模宅地の特例が使えない」問題
見落とされやすいのが、相続時精算課税で贈与した土地には小規模宅地等の特例が適用できない点です。この特例は、自宅の敷地(特定居住用宅地)の場合、330㎡までの評価額を最大80%減額できる仕組みで、都心の土地を持っている家庭では相続税の圧縮効果が最も大きい制度のひとつです。
たとえば評価額5,000万円の自宅敷地に特例を使えば、80%減額で相続財産への計上額は1,000万円まで下げられます。しかし相続時精算課税で先にその土地を子どもへ贈与してしまうと、この特例の対象から外れて贈与時点の評価額がそのまま相続財産に持ち戻される扱いになります。差額は4,000万円、相続税率30%で見て1,200万円の税負担増です。
現金を精算課税で渡すぶんには小規模宅地との衝突は起きません。土地を精算課税で贈与するかは、家族全体で相続税の試算をしたうえで決めるほうが安全です。単に贈与のしやすさだけで判断すると、あとから桁の大きい差が出やすい論点になります。
親の年齢別、どちらを選ぶかの目安
親が70代前半までであれば、暦年贈与を続ける余地はまだ十分あります。仮に2026年に贈与を始めても、亡くなるのが2033年以降であれば加算そのものが発生しません。この場合、年110万円までなら贈与税もかからず、遡及リスクを負わずに資産を移せます。相続税の対象になるほど資産がある家庭でも、まずは暦年贈与で数年重ねてから、残高を見て次の手を考える順番で問題ありません。
親が80代に入っている家庭では話が違ってきます。相続開始まで7年以上あるかは読みにくく、加算リスクを織り込んで動くほうが実用的です。暦年贈与を続けると、亡くなった時点で結局は加算対象になっていた、という結末になりやすい年齢帯。ここで相続時精算課税の110万円枠が効きます。持ち戻しがないぶん、贈与のたびに「これは加算されるかもしれない」という迷いが消えるので、精神的な負担も軽くなります。
親が90代・要介護状態にある場合はさらに切実です。あと数年で相続が発生する可能性が現実的に見えている段階では、暦年贈与のほとんどが加算対象になります。少しでも財産を移したいのであれば、相続時精算課税に切り替えて110万円ぶんだけでも確実に相続財産の外側へ置いておくのが実利につながる場面が多くなります。
相続税の基礎控除に届かない家庭は、そもそも贈与を急ぐ必要が薄い
見落とされがちですが、そもそも相続税が発生しない家庭では、7年ルールに神経質になる必要はありません。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。配偶者と子ども2人なら4,800万円、子どもだけ2人なら4,200万円が非課税枠になります。この範囲に資産が収まる家庭では、暦年贈与を積み重ねなくても相続税は0円のまま。むしろ贈与のたびに帳簿の管理コストが増えるだけ、という結果になりやすい構造です。
判断の入口としては、親の総資産(自宅の評価額+金融資産+生命保険−負債)がざっくり基礎控除の1.5倍を超えるかどうか。ここを超えていなければ、生前贈与よりも遺言書の準備や、二次相続を意識した配偶者への渡し方の設計のほうが実利につながる場合が多くなります。反対に基礎控除の2倍を超えている家庭では、暦年贈与か精算課税かの選択がそのまま数百万円単位の差になります。
贈与の証跡を残さないと、名義預金と扱われて振り出しに戻る
暦年贈与でも精算課税でも共通する落とし穴が、贈与の実態を証明できないケースです。親が子ども名義の口座に毎年110万円を振り込んでいたとしても、通帳と印鑑を親が管理して子どもが口座の存在を知らなかった場合、税務調査で「これは名義預金です」と判定され、110万円ずつの贈与が丸ごと相続財産に組み込まれるリスクがあります。
証跡として整えておきたいのは3点。1つ目は現金手渡しではなく銀行振込で残高履歴を残すこと。2つ目は年に1度、金額・日付・贈与者と受贈者の署名を入れた贈与契約書を1枚作っておくこと。3つ目は通帳と印鑑を受贈者本人が管理し、暗証番号も本人が知っている状態を保つこと。この3点が揃っていれば、精算課税でも暦年課税でも「贈与の事実」を後から否定されにくくなります。届出書を出すのと同じくらい、この現場の運用が長い目で効いてきます。
精算課税に切り替える手続きと家族設計
相続時精算課税制度は、選択届出書を提出した年から適用されます。届出は贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日のあいだに、受贈者(子)が住所地の税務署へ提出。この期限を1日でも過ぎると、その年の贈与は暦年課税として処理されるため、届出のタイミングを間違えないよう年末までに書類を準備しておくのが実務のコツです。
一度届出をすると、その贈与者(親)からの贈与については以後すべて相続時精算課税の扱いになります。ただし、届出は受贈者と贈与者の組み合わせごとに独立しているので、家族全体では柔軟な設計が可能です。父からの贈与は精算課税、母からの贈与は暦年課税、という並行運用もできます。子どもが複数いる場合、上の子は精算課税、下の子は暦年課税、という分け方も認められています。
ただし個別最適で組むと、後で家族全体の税額を見たときに整合が取れなくなるケースが目立ちます。父からの土地は上の子へ精算課税で先渡し、現金は母から下の子へ暦年課税で毎年、といった設計は、事前に相続税総額のシミュレーションをして初めて判断できる領域です。相続税に慣れた税理士に一度試算を依頼しておくと、届出のタイミングを外さずに済みます。
2026年に相続が発生した家庭が確認する3点
現時点(2026年7月)で、まず確認したいのは3つです。1つ目は親の年齢と健康状態。2つ目は既に贈与してきた累計額と、これまで暦年課税で申告してきたかどうか。3つ目は、資産の大半が現金なのか、それとも自宅など不動産に偏っているのか。
現金中心で親が70代前半までなら、暦年贈与を続けるのが素直な判断です。親が高齢か、資産が2〜3億円規模で相続税が確実に発生する家庭であれば、相続時精算課税への切り替えを税理士と一緒に試算する価値があります。判断に迷っているうちに親が急変した場合、選択肢が急速に狭まってしまう構造。今動くか、あと1年様子を見るかを、家族で話し合っておく時期に来ています。
医療費や介護費用の代わりに現金を渡す使い方や、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与、住宅取得等資金の贈与といった目的別の非課税制度も残っていますが、これらは別のルールで動いています。今回の7年ルールと組み合わせる場合は、専門家に個別に相談したほうが計算違いが起きません。
参考資料
- 国税庁「タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
- 国税庁「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年6月)」
- 国税庁「タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択」
- 国税庁「相続時精算課税を選択した受贈者にかかる贈与税の申告のしかた」
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参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年6月)
- 国税庁 タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択
- 国税庁 相続時精算課税を選択した受贈者にかかる贈与税の申告のしかた
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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