会社を辞めずに休みを取って学び直す人には、雇用保険から教育訓練休暇給付金が出ることがあります。ただし対象は、就業規則などの休暇制度に基づき、会社の承認を得て、連続30日以上の無給の休暇を取る人に限られます。そのうえで、休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あり、雇用保険に入っていた期間が通算5年以上あることが必要です(厚生労働省パンフレット「教育訓練休暇給付金のご案内」)。
給付は失業給付(基本手当)に相当するもので、日額は失業給付と同じ方法で計算し、加入期間に応じて90日分から150日分が出ます。受け取ると、それまでの被保険者期間がリセットされ、一定期間は失業給付などを原則受けられなくなる点に注意が必要です。
この記事では、対象になる人と休暇の条件、もらえる日数と額の目安、手続きの順番、受け取る前に知っておくべき注意点を、厚生労働省とハローワークの資料で確かめます。
どんな給付か
厚生労働省のページは、教育訓練休暇給付金を「労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給することで、訓練・休暇期間中の生活費を保障する制度」と説明しています。静岡労働局の資料によると、令和7年(2025年)10月に施行されました。
パンフレットは活用例として、外国企業とのやりとりが必要な部署への異動を希望して語学の習得に専念する場合や、IT企業で働く人が上位資格を取るために休む場合を挙げています。
対象になる人
対象は雇用保険の一般被保険者です。高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外です(パンフレット)。そのうえで、次の二つを両方満たす必要があります。
- 休暇開始前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること。 原則として、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月として数えます。静岡労働局の資料によると、休暇開始日の前日から1か月ごとにさかのぼった各期間で数えます。
- 休暇開始前に、雇用保険に加入していた期間(算定基礎期間)が5年以上あること。
2の5年は、転職していても通算できる場合があります。パンフレットによると、離職期間が12か月以内なら、離職の前後の期間を通算できます。ただし、離職期間が12か月以内でも、その間に失業給付などを受けていた場合は通算できません。過去に失業給付、教育訓練休暇給付金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金を受けたことがあると、通算できない期間が生じる場合があるとも書かれています。
加入期間を満たしているかは、休暇の前にハローワークで確かめられます。静岡労働局の資料は、本人確認書類を持っていけば休暇開始前に算定基礎期間を確認できるとしています。
対象になる休暇
パンフレットは、次の全てを満たす休暇が対象としています。
- 就業規則や労働協約などに規定された休暇制度に基づく休暇
- 本人が教育訓練を受けるため自発的に取得を希望し、事業主の承認を得て取る、連続30日以上の無給の休暇
- 次の教育訓練などを受けるための休暇
- 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校、各種学校が提供する教育訓練など
- 教育訓練給付金の指定講座を持つ法人などが提供する教育訓練など
- 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得など)
「教育訓練休暇」という名前でなくてもよい
静岡労働局の資料によると、使い道を教育訓練に限らない休暇制度でも、教育訓練に使えるもの(サバティカル休暇制度など)であれば差し支えありません。パンフレットも、教育訓練以外の目的を含む休暇制度でも、教育訓練を受けるための休暇なら当たるとしています。
一方で、業務命令で教育訓練を受けるための休暇制度、30日未満の休暇制度、有給の休暇制度に限られている場合は対象になりません(静岡労働局)。会社や上司の案内がきっかけでも、本人の意思で取得を希望する休暇であれば当たるとされています(パンフレット)。
会社の手当や受講料補助
パンフレットの事業主向けQ&Aによると、無給の休暇中に会社から受講費用や受験料の一部補助などの手当が出ても、就労の対価ではないので、それを理由に不支給になることはありません。一方、静岡労働局の資料は、会社が休暇中の生活費を補助する手当を出す場合は、そもそも「無給の休暇」とはいえないため支給されないとしています。
給付が出ない日
収入を伴う就労をした日や、有給休暇・育児休業など教育訓練休暇とは別の休暇・休業を取った日は、教育訓練のための休暇と認められず、その日の分は支給されません(パンフレット)。副業で働いた日も同じです。パンフレットは、休暇中に指揮命令によらず人事担当者や同僚と軽いやりとりをする程度なら、一般に就労には当たらないと考えられるとしています。
もらえる日数と額の目安
給付日数
雇用保険に加入していた期間によって、所定給付日数が決まります(パンフレット)。
| 加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
給付日額
給付日額は、原則として休暇開始日前6か月の賃金日額をもとに計算します。計算方法は失業給付と同じで、休暇開始日の前日を離職日とみなして計算します。賃金日額のほか、年齢によっても変わります(パンフレット、静岡労働局)。
パンフレットの「支給額のイメージ」は、30日分にした給付月額として次の例を載せています。
- 額面月収25万円:約17万円
- 額面月収35万円:約19万5,000円
- 額面月収45万円:約22万5,000円
パンフレットは、実際に支給される額は休暇開始前の賃金の支払い状況や年齢、休暇の認定状況などで変わるとしています。厚生労働省のページでは、年齢と額面月収を入れて試算できるシミュレーター(Excel)が配られています。
受給期間は休暇開始日から1年
給付を受けられるのは、休暇開始日から1年間(受給期間)のうちに教育訓練休暇を取った日です。受給期間と所定給付日数の範囲内なら、休暇を何回かに分けて取っても受給できます(パンフレット)。分けて取る場合も、受給期間は初回の休暇開始日から1年です。
1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても支給されません。ただし、妊娠・出産・育児・病気・けがなどで30日以上教育訓練を受けられない場合は、受給期間を延ばせることがあります(パンフレット)。静岡労働局の資料では、その場合の受給期間は受けられない日数を1年に加えた期間で、最長4年とされています。
手続きの順番
パンフレットの「手続の流れ」をまとめると、次のとおりです。
- 会社と合意する。 会社に教育訓練休暇の取得を申し出て合意し、「教育訓練休暇取得確認票」を会社に出します。確認票には、休暇の期間、教育訓練の目標、内容(施設名・講座名、受講開始と修了予定の日など)、実施方法(対面・通信など)を書き、会社が承認した旨を記入します。
- 休暇を始める。
- 会社がハローワークに届け出る。 会社は、休暇開始日の翌日から数えて10日以内に、「教育訓練休暇開始時賃金月額証明書」を、休暇制度が書かれた就業規則等、賃金台帳や出勤簿などと一緒に、事業所を管轄するハローワークへ出します。
- ハローワークから会社経由で書類を受け取る。 「教育訓練休暇給付金支給申請書」と「賃金月額証明票(本人手続用)」が会社を通じて渡されます。
- 自分でハローワークに支給申請する。 必要事項を書いて、添付書類と一緒に、住所または居所を管轄するハローワークへ速やかに出します(来所か郵送など)。これで受給資格が決まり、受給資格決定通知と初回の認定日の案内があります。
- 30日ごとに認定申告をする。 認定日ごとに「教育訓練休暇取得認定申告書」などを出し、直前の30日のうち教育訓練休暇を取った日について認定を受けます。初回の対象は休暇開始日から30日間です。支給額は、認定を受けた日数×給付日額です(静岡労働局)。
静岡労働局の資料は、会社の届け出や本人の支給申請が遅れて受給資格の決定が遅れ、初回の認定日から7日以内に認定申告書を出せなかった場合、その直前30日分は認定できず、さかのぼって支給することもできないとしています。会社から書類が届いたら、すぐに出します。
自分で出すもの
パンフレットの提出書類チェックリストでは、労働者が出すものは次のとおりです。
- 支給申請のとき:支給申請書、賃金月額証明票、教育訓練休暇取得確認票、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、通帳やキャッシュカードなど
- 認定申告のとき:教育訓練休暇取得認定申告書、受給資格決定通知、教育訓練を受講していることを証明する書類(受講証明、領収書など)、本人確認書類。2回目以降は、受講していることの疎明書で代えられます
会社とあなたとで、書類を出すハローワークが違う点に注意します。会社は事業所の所在地を、本人は住所や居所を管轄するハローワークです(パンフレット)。
受け取る前に知っておくこと
被保険者期間がリセットされる
パンフレットのQ&Aによると、教育訓練休暇給付金を受けると、休暇開始日より前の被保険者期間がなかったものとみなされます。このため原則として、一定期間は失業給付など、被保険者期間を要件とする給付金を受けられなくなります。新しい被保険者期間は休暇開始日から数えますが、加入期間(算定基礎期間)には給付を受けた日を算入できません。
ただし、育児休業給付と介護休業給付のみなし被保険者期間、教育訓練給付金の支給要件期間には影響せず、休暇開始日より前の期間も通算できます(パンフレット)。
学び直しのあとに転職を考えている人は、休暇の前にハローワークで影響を確かめておきます。
会社が断れば受給できない
教育訓練休暇は、就業規則などに基づき本人と会社が合意して取ることが前提です。パンフレットのQ&Aは、取得を拒まれた場合は休暇を取れず、給付金も受給できないとしています。
休暇の取得に関連して、解雇、雇止め、いじめ・嫌がらせ、賃金の引き下げなどの不利益な扱いを受けたときは、都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに相談するよう案内されています(パンフレット)。
そのほかの注意点
- 休暇中に出勤を求めることは認められず、30日以上連続して無給で休む必要があります(パンフレット)。
- 産前・産後休業を中断して教育訓練休暇を始めることはできません(静岡労働局)。
- 会社が解雇や雇止め、休業を予定している人は、対象の教育訓練休暇を取れません(静岡労働局)。
- 偽りや不正で受け取ろうとした場合は給付を受けられなくなり、不正に受けた額の返還に加えて、その2倍の額の納付を命じられることがあります(パンフレット)。
- 休暇の期間や内容を変えるときは、「教育訓練休暇変更確認票」で改めて会社の合意を得て、ハローワークに申し出ます(パンフレット)。
教育訓練給付金との併用
パンフレットは、教育訓練休暇給付金を受けながら教育訓練給付金の指定講座を受講する場合、受講費用の一部を給付する教育訓練給付金をあわせて使えるとしています。講座が対象かどうかは、厚生労働大臣指定講座の検索システムで調べられ、教育訓練休暇給付金の対象になる訓練かどうかは、事前にハローワークで確かめられます。
確認の順番
- 自分の就業規則に、教育訓練に使える無給の休暇制度(30日以上連続で取れるもの)があるかを見る
- ハローワークで、被保険者期間(2年間に12か月)と加入期間(5年以上)を確かめる
- 受ける講座や学校が対象の教育訓練に当たるか、ハローワークで確かめる
- 給付を受けると被保険者期間がリセットされることを踏まえ、休暇後の働き方を考える
- 会社に申し出て合意し、取得確認票を出す
- 休暇開始後、会社から渡された支給申請書を自分の住所地のハローワークに出し、30日ごとに認定申告をする
この記事で確認できなかったこと
2026年11月8日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 給付日額の上限額・下限額と、年齢ごとの区分の具体的な金額(シミュレーターのExcelは開いていません)。
- 支給申請書をハローワークに出す日数の期限。静岡労働局の資料は「速やかに」と書き、パンフレットの図には「休暇開始日から起算して30日以内」の記載がありますが、どの手続きの期限かを本文で確かめられませんでした。
- 被保険者期間のリセット後、失業給付を受けられない「一定期間」が具体的にどれだけか。
- 教育訓練休暇給付金が課税されるかどうか。
参考資料
- 厚生労働省 教育訓練休暇給付金 — 制度の趣旨、対象、様式、シミュレーター、問い合わせ先
- 厚生労働省 教育訓練休暇給付金のご案内(パンフレット) — 支給要件、対象となる休暇、給付日数・日額、支給額のイメージ、注意事項、手続の流れ、提出書類、Q&A
- 厚生労働省 労働者向け簡略版リーフレット — 主な支給要件、給付日数、注意事項
- 厚生労働省 事業主向け簡略版リーフレット — 事業主の手続き
- 厚生労働省 教育訓練休暇取得確認票 — 確認票の記載事項
- 静岡労働局 教育訓練休暇給付金(説明資料) — 令和7年10月施行、被保険者期間の数え方、使途を限らない休暇制度、生活費補助の手当、認定日と手続きが遅れた場合、受給期間の延長(最長4年)、産前産後休業との関係
- 愛知労働局 ハローワーク研修会資料 — 対象者と通算できない場合の図
- 厚生労働省 スキルアップ支援策のリーフレット(令和8年10月版) — 教育訓練給付金などほかの支援策との位置づけ