10月の年金振込額が8月までと違うとき、年金そのものが減ったとは限りません。年金から天引き(特別徴収)される介護保険料、国民健康保険料(税)または後期高齢者医療保険料、個人住民税は、10月支払分から「その年度に確定した額」にもとづく本徴収に切り替わります。このため、毎年10月は天引き額が変わりやすい月です。
金額を決めているのは市区町村で、日本年金機構は依頼された額を差し引いているだけです。まず年金振込通知書でどの欄が変わったかを確かめ、その保険料や税を担当する市区町村の課に問い合わせます。年金は原則として偶数月の15日に支払われ、2026年10月の支払日は15日(木曜日)です。
年金振込通知書で、変わった欄を特定する
日本年金機構の年金振込通知書には、次の欄があります。
- 年金支払額(天引き前の、1回に支払われる年金額)
- 介護保険料額
- 後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)
- 所得税額および復興特別所得税額
- 個人住民税額および森林環境税額
- 控除後振込額(実際に口座へ入る額)
令和3年10月からは、前回の支払月に支払った金額も同じ通知書に載っています。前回分と今回分を欄ごとに見比べると、どこが動いたかが分かります。
年金支払額が同じで控除後振込額だけが変わっていれば、原因は天引きの欄です。年金支払額そのものが変わっている場合は天引きとは別の話なので、年金事務所に確認します。
年金振込通知書は通常、毎年6月に届き、翌年4月までの各回の支払額がまとめて載っています。ただし8月や9月に届く通知書では、10月以降の金額が「*」で表示されます。市区町村が決めたその年の介護保険料額を10月支払分から反映する仕組みのためだと、日本年金機構は説明しています。10月から振込額が変わる人には、改めて年金振込通知書が送られます。令和7年は、9月30日付のお知らせで送付が案内されていました。
所得税の欄が少し動くこともあります。日本年金機構の説明では、所得税額は年金支払額から社会保険料(天引きされた介護保険料と医療保険料の合計)と各種控除額を差し引いた額に5.105%を掛けて計算します。天引きされる保険料が変わると、所得税額も連動して変わります。
10月から額が変わるのは、仮徴収から本徴収に切り替わるため
保険料や住民税の年間の額は、前年の所得をもとに毎年度決め直されます。横浜市では国民健康保険料と個人住民税が6月、立川市では後期高齢者医療保険料が7月に確定します。4月・6月の年金支払時点ではまだ決まっていないため、年度の前半は前年度の実績をもとにした額を仮に差し引き、後半で年間の額に合うように精算します。前半を仮徴収、後半を本徴収といいます。
| 天引きされるもの | 4・6・8月(仮徴収) | 10・12・2月(本徴収) | 確認した資料 |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険料 | 前年度2月と同じ額 | (年間納付額 − 仮徴収の合計)÷ 3 | 横浜市 |
| 後期高齢者医療保険料 | 前年度2月と同じ額。差が大きいときは6月・8月を調整する場合あり | 7月に確定した年間保険料から仮徴収分を引いた残りを3回に分ける | 立川市 |
| 個人住民税 | 前年度の年税額の2分の1を3回にあん分 | (その年の年税額 − 仮徴収税額)の3分の1ずつ | 横浜市 |
| 介護保険料 | — | 市区町村が決定したその年の保険料額が10月支払分から反映される | 日本年金機構 |
計算式は自治体の一例です。介護保険料の仮徴収の扱いは、市区町村から届く介護保険料額の決定通知書で確かめてください。
この仕組みでは、年間の額が前年度より増えると、増えた分が後半の3回に集まります。仮定の数字で計算してみます。
前年度の年間保険料が60,000円で、毎回10,000円ずつ天引きされていた人の保険料が、今年度は年間66,000円に決まったとします。4・6・8月は前年度2月と同じ10,000円ずつで、合計30,000円です。残りは66,000円 − 30,000円 = 36,000円で、10・12・2月は12,000円ずつになります。年間では6,000円の増加ですが、10月の天引きは8月より2,000円多くなります。翌年度の4・6・8月も、2月と同じ12,000円が仮徴収されます。
反対に年間の額が前年度より減ると、10月から天引きが少なくなります。個人住民税の場合、6月に年税額が決まったあとでも、8月の天引きは仮徴収の額のまま行われます。横浜市は、仮徴収が年税額より多かった場合は差額を還付すると説明しています。
2026年度は医療保険料に「子ども・子育て支援金分」が加わっている
2026年度(令和8年度)から、医療保険料とあわせて子ども・子育て支援金が徴収されています。こども家庭庁の説明(2026年9月19日に確認)は次のとおりです。
- 国民健康保険は、市町村の条例にもとづき、世帯や個人の所得などに応じて額が決まる
- 後期高齢者医療制度は、都道府県の広域連合の条例にもとづき、個人の所得などに応じて額が決まる
- どちらも令和8年4月分から拠出するが、具体的な徴収開始時期は市町村・広域連合に問い合わせるよう案内されている
- 料率は市町村・広域連合ごとに異なる
東京都後期高齢者医療広域連合は、保険料を「医療分」と「子ども・子育て支援金分(子ども分)」の合計としています。同連合によると、子ども分は令和10年度まで段階的に引き上げられるため、今回は令和8年度の料率だけが定められ、令和9年度の料率は別途見直されます。
立川市の説明のように4・6・8月が前年度2月と同じ額の仮徴収であれば、2026年度の年間保険料に加わった子ども分は、10月からの本徴収3回に含まれる計算になります。ただし同市は、差が大きいときに6月・8月の額を調整する場合があるともしています。その場合は、8月までの天引きに一部が反映されています。どちらに当たるかは、6月から7月ごろに届いた保険料額の決定通知書の各期の金額で確かめられます。
年金振込通知書には支援金だけの欄はありません。後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)の欄に含まれます。
10月に起きる、金額の増減以外の変化
10月は、天引きそのものが新しく始まる月でもあります。
国民健康保険料の天引きが10月から始まる世帯 横浜市の例では、新たに対象となる年度は6月から9月までを口座振替や納付書で納め、10・12・2月に、年間の額から納付済みの分を除いた残りを3回に分けて天引きします。対象になるのは、次のすべてを満たす世帯です。
- 世帯主が国保に加入していて、世帯内の国保加入者が全員65歳以上
- 世帯主の年金が年額18万円以上で、介護保険料が天引きされている
- 国保料と介護保険料の合計が、年金受給額の2分の1を超えない
個人住民税の天引きが10月から始まる人 総務省によると、対象は4月1日現在65歳以上の公的年金受給者で、前年中の年金所得にかかる個人住民税を納める義務のある人です。介護保険料が年金から天引きされていない人などは対象になりません。障害年金や遺族年金などの非課税の年金からは、住民税は引かれません。横浜市の説明では、新たに対象となる年は年税額の半分を6月と8月に納税通知書(口座振替を使っていた人は口座振替)で納め、残りを10・12・2月に天引きします。
どちらも納め方が切り替わるだけです。総務省は住民税について、新たな税負担が生じるものではないと説明しています。
天引きが止まり、納付書が届いた人 東京都後期高齢者医療広域連合は、特別徴収の対象から外れる場合として、年度の途中で保険料が減額になった、増額になった(増額分を納付書で納める)、転居して市区町村が変わった、年金の支払調整や差止めがあった、などを挙げています。天引きが止まったあとに届く納付書は、二重払いではなく残りの分の請求です。
問い合わせ先と、手元に置くもの
| 変わった欄 | 問い合わせ先 |
|---|---|
| 年金支払額 | 日本年金機構(年金事務所などの相談窓口) |
| 介護保険料額 | 市区町村の介護保険担当 |
| 国民健康保険料(税) | 市区町村の国民健康保険担当 |
| 後期高齢者医療保険料 | 市区町村の後期高齢者医療制度担当 |
| 個人住民税額および森林環境税額 | 市区町村の住民税担当 |
後期高齢者医療制度は都道府県の広域連合が運営していますが、保険料は市区町村に納めます。東京都の広域連合も、納め方については市区町村の担当窓口へ問い合わせるよう案内しています。
問い合わせる前に、次のものを手元に置きます。
- 年金振込通知書(8月支払分と10月支払分の額が分かるもの)
- 今年度分として市区町村から届いた決定通知書(介護保険料、国民健康保険料または後期高齢者医療保険料、住民税の税額決定・納税通知書)
決定通知書には、各支払月に差し引く額が載っています。日本年金機構も、各支払期の特別徴収額は変わることがあるため、市区町村から届く通知書で確かめるよう案内しています。決定通知書の10月の額と年金振込通知書の額が一致していれば、誤りではなく予定どおりの天引きです。
保険料の納付そのものが難しいときは、早めに市区町村の担当窓口に相談します。東京都後期高齢者医療広域連合は、災害や失業などで納付が困難な場合の相談を案内しています。
自治体で違う点と、確認できていない点
2026年9月19日時点で、次の点は自治体ごとに異なるか、この記事では確認できていません。
- 仮徴収の額を6月や8月に調整するかどうかは自治体によります。この記事の計算式は横浜市と立川市の説明にもとづきます。
- 介護保険料の仮徴収・本徴収の計算式を明記した資料は開いていません。
- 令和8年10月支払分の年金振込通知書の送付について、日本年金機構の今年のお知らせは確認できていません。
- 国民健康保険・後期高齢者医療の子ども・子育て支援金分の具体的な額と徴収開始時期は、市町村・広域連合ごとに決まります。
参考資料
- 日本年金機構 年金Q&A「年金振込通知書に記載されている特別徴収額の金額が変わっているのはどうしてですか」
- 日本年金機構 年金Q&A「8月に届いた年金振込通知書は10月以降の支払額が「*」になっています。これはなぜですか」
- 日本年金機構 年金振込通知書(2:年金振込額に変更があった場合)
- 日本年金機構 令和7年10月の年金支払いにかかる年金振込通知書を送付しています
- 日本年金機構 年金Q&A「年金はいつ支払われますか」
- 総務省 公的年金からの特別徴収
- 横浜市 国民健康保険料の年金からの特別徴収について
- 横浜市 個人住民税の老齢基礎年金等からの差し引き(年金特別徴収)について
- 立川市 後期高齢者医療保険料の納付方法と納期限
- 東京都後期高齢者医療広域連合 保険料の決め方・賦課
- 東京都後期高齢者医療広域連合 保険料の納め方
- こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について