9月に日本年金機構から封筒が届き、中に「扶養親族等申告書」という用紙が入っていた。そこからこのページに来た方が多いと思います。
結論から書きます。本人が障害者・寡婦等に当てはまらず、控除の対象になる配偶者や親族もいないなら、届いても提出は要りません。当てはまる人が出さなかった場合は、年金から引かれる所得税に控除が反映されず、取り戻すには確定申告をすることになります。
最初に見る場所は、申告書の氏名欄のすぐ下です。前年に提出している人なら、去年の申告内容があらかじめ印刷されています。
封筒を開けて、最初に見る欄
前年に申告書を出した人の用紙には、去年の申告内容が印刷済みで届きます。配偶者の氏名、扶養親族の氏名、障害者の区分。そこが去年のままでよければ、書く作業はほとんど残っていません。
「ア.前年から『変更なし』で申告します。」という選択肢に丸をつけ、氏名を書く。それだけです。ほかの項目に記入する必要はありません。
押印は要りません。日本年金機構は「楷書体のわかりやすい文字でのご記入」を求めています。読み取りに機械が絡むので、崩した字は避けてください。
去年から動いたことがあるなら、そこだけ書き直します。配偶者が亡くなった、子が就職して扶養から外れた、自分が障害者手帳を受けた。こうした変化があっても印刷されている内容は昨年のままなので、そのまま丸をつけると誤った申告になります。
届いた人が全員出すわけではない
ここが一番誤解されているところです。
日本年金機構のページには、送付の対象に当てはまる人でも提出が要らない場合がはっきり書かれています。
上記条件に該当しても、各種控除に該当しない方(※)は、扶養親族等申告書を提出する必要はありません。 ※受給者本人が障害者・寡婦等に該当せず、控除対象となる配偶者または親族、または退職手当等を受ける見込みのある配偶者または親族がいない方
言い換えると、こういう人です。自分が障害者・寡婦・ひとり親のどれにも当たらない。控除の対象になる配偶者がいない。控除の対象になる親族もいない。退職手当を受け取る見込みの家族もいない。
一人暮らしで、年金以外に収入がなく、障害者手帳も持っていない。この形なら、封筒が届いても出さずに置いておいて差し支えありません。
年金Q&Aにも「障害者控除や配偶者控除等、各種控除に該当しない方は、提出しなかった場合でも、申告書を提出された場合に比べ、多くの所得税、住民税が徴収されることはありません」と書かれています。出さないことで損をする仕組みにはなっていません。
最後の「退職手当等を受ける見込みのある配偶者または親族」は見落とされがちです。配偶者や子が年内に退職金を受け取る予定なら、この条件から外れます。
去年は届かなかったのに、今年は届いた
「一昨年までは毎年来ていた。去年は来なかった。今年また来た」。そういう動き方をした人がいます。手違いではありません。送付の基準額が年分ごとに動いています。
| 受給者 | 令和7年分まで | 令和8年分 | 令和9年分 |
|---|---|---|---|
| 65歳未満の方 | 108万円以上 | 155万円以上 | 98万円以上 |
| 65歳以上の方 | 158万円以上 | 205万円以上 | 148万円以上 |
| 退職共済年金の受給者で老齢基礎年金も出ている方 | 80万円以上 | 127万円以上 | 70万円以上 |
令和8年分だけ基準が跳ね上がり、令和9年分で下がりました。しかも令和7年分までより低い水準です。
65歳以上で年金額が年180万円の人を例にすると、令和8年分の205万円以上には届かず対象から外れ、令和9年分の148万円以上には入るので対象に戻ります。65歳未満で年100万円の人なら、令和7年分までの108万円以上にも令和8年分にも当てはまらず、令和9年分で初めて封筒が届きます。
届いたこと自体は、税額が増えるという知らせではありません。
線を引いているのは、所得税ではなく住民税のほう
なぜ基準がこう動くのか。日本年金機構の説明はこうです。
日本年金機構では、住民税の課税対象となる可能性がある方(単身者の住民税非課税限度額の最低額以上の方)にご案内をお送りしています。
住民税の非課税限度額は市区町村ごとに違います。全国で同じ数字を使えないので、いちばん低い自治体の水準に合わせ、広めに網をかける設計になっています。
だから自分の住む市の非課税限度額を調べても、申告書が届くかどうかは判定できません。届いたからといって住民税がかかると決まったわけでもない。「かかる可能性がある範囲に入っている」という意味にとどまります。
届いていない人は、何もしなくていい。例外がひとつある
「一定金額に満たない方には、『扶養親族等申告書』はお送りしていません。送られていない方は申告書を提出する必要はありません」と明記されています。9月に何も届かなかった人は、待つ必要も問い合わせる必要もありません。
例外は、去年までに電子申請で出した人です。
一度マイナポータルから電子申請した人と、ねんきんネットで申告書のペーパーレス化を登録した人には、紙の申告書が送られません。案内はマイナポータルのお知らせに入ります。「去年は紙が来たのに今年は来ない」という人は、自分が電子に切り替えていなかったかを思い出してください。提出期限までに出さなかった場合は、別途書面で知らせが届きます。
出さないと、源泉徴収のどこが変わるのか
年金から引かれる所得税の計算は、こうなっています。
提出した場合 (年金支給額 − 社会保険料 − 各種控除)× 5.105%
提出しなかった場合 (年金支給額 − 社会保険料 − 基礎的控除)× 5.105%
税率は動きません。変わるのは差し引く控除の中身だけです。配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦やひとり親の控除。これらが計算から落ちます。
落ちた分だけ、年金の振込のたびに引かれる所得税が増えます。増える幅は控除の種類と、対象になる家族の人数しだいです。一律にいくら、とは言えません。もともと控除に該当しない人には、差そのものが生まれない。
前年の内容が印刷されていることの落とし穴
印刷済みで届く仕組みはありがたいのですが、そのぶん見落としが起きます。
丸をひとつ書けば終わると分かっていると、印刷された中身を読まずに丸をつけてしまう。去年から状況が動いていた場合、去年の申告をそのまま繰り返したことになります。
たとえば、扶養している子が年内に一定の年齢を超えて控除の区分が変わる。配偶者の収入が増えて控除の対象から外れる。同居していた親が亡くなった。どれも、申告書の印刷面には反映されていません。
丸をつける前に、印刷されている氏名と生年月日をひとつずつ指でたどってください。作業は1分ほどで、間違いを一年分持ち越さずに済みます。
手引きは2種類ある。自分に届いたほうを読む
同封される手引きは、去年出した人向けの「継続用」と、今年から出す人向けの「新規用」に分かれています。中身が違うので、他人が持っている冊子を借りて読むと噛み合いません。
説明動画も同じように、前年の申告書を提出した人向けと、提出していない人・提出の必要がなかった人向けの2本が用意されています。紙を読むより動画のほうが頭に入る人は、自分がどちらかを先に決めてから開くほうが早いです。
今年初めて届いた人は「新規用」です。前の年に対象外だった人も、こちらに当たります。
配偶者の所得金額を書く欄でつまずいたら
記入で止まりやすいのが、配偶者や扶養親族の所得金額を書く欄です。収入と所得は別物で、給与なら給与所得控除を引いた後、年金なら公的年金等控除を引いた後の金額を書きます。
日本年金機構は記入方法をまとめた資料を公開していて、そこから「所得金額の計算方法」「年金にかかる源泉徴収税額」「障害者とは」の項目を抜き出したPDFを個別に置いています。全部を読む必要はありません。詰まった項目のPDFだけ開けば足ります。
申告書に出てくる言葉づかい自体が分かりにくいときは、「令和9年分扶養親族等申告書の見方」のページに、源泉控除対象配偶者・老人控除対象配偶者・特定扶養親族・老人扶養親族・寡婦・ひとり親・障害者の区分といった用語の説明があります。
出し忘れた分は、確定申告で取り戻せる
期限を過ぎても、そこで終わりではありません。日本年金機構は「期限に間に合わない場合でも、なるべく早くご提出をお願いします」としています。遅れても受け付けてもらえます。
まったく出せなかった年の分は、確定申告で控除を申告すれば精算されます。年金Q&Aの「確定申告を行わないと障害者控除や配偶者控除等が受けられません」という一文は、裏を返せば確定申告をすれば受けられるという意味です。
翌年の住民税にも同じ控除が反映されます。放置したままにしないほうがいい。
期限はウェブサイトに載っていない
令和9年分のページも、令和8年分のページも見ましたが、提出期限の日付は出てきません。書かれているのは「記載されている期限内の提出をお願いします」という一文だけです。
期限は、届いた申告書そのものに印刷されています。封を切ったら、まずその日付を確認してください。ここは人に聞いても答えが出ません。手元の紙が唯一の出典です。
返信用封筒の切手は、自分で貼る
同封の返信用封筒は料金受取人払ではありません。切手を貼って出します。普通郵便なら110円です。
宛先の郵便番号は3種類あり、どれが刷られているかは封筒によって違います。
- 119-0314 杉並南郵便局留
- 119-0315 杉並南郵便局留
- 119-0220 東京都杉並区高井戸西3丁目5番24号
上の2つは扶養親族等申告書の受付だけに使う番号です。この番号で投函するなら、送付先住所は書かなくて構いません。そのかわり、住所変更や氏名変更といったほかの届出を同じ封筒に入れると、行き先が違ってしまいます。年金の手続きは別に出します。
なくした、破いた、飲み物をこぼした
申告書を紛失したり汚したりした場合は、日本年金機構のサイトから令和9年分の様式を印刷できます。印刷したものに必要事項を書いて送れば受け付けられます。
送り先はこちらです。
- 〒119-0314 日本年金機構 令和9年分申告書受付担当宛
- 〒119-0315 日本年金機構 令和9年分申告書受付担当宛
- 〒119-0220 東京都杉並区高井戸西3丁目5番24号 日本年金機構 令和9年分申告書受付担当宛
上2つの郵便番号なら住所の記入は不要です。年分の表記だけは間違えないでください。
来年から紙をやめるという選択
マイナポータルとねんきんネットを連携している人は、スマートフォンやパソコンから電子申請で提出できます。電子で出した年は紙の提出が不要になり、翌年からは紙そのものが送られてきません。
切手代がかからず、投函に行く手間も消えます。紙のやり取りを面倒に感じている人には向いています。
ただし前提として、マイナンバーカードとマイナポータルの連携が要ります。カードを持っていない人や、スマートフォンの操作に不安がある人が無理に切り替える必要はありません。紙のままでも扱いに差はつきません。
国外に住む家族を控除に入れるとき
配偶者や扶養親族が海外に住んでいる場合、控除の対象として申告するには添付書類が必要です。日本年金機構は記入項目の説明ページで「10.『国外居住の有無』」として案内しています。
書類が足りないと控除は認められません。該当する人は、記入方法のページを先に開いてから書き始めるのが確実です。
聞く相手を間違えると、答えが返ってこない
これは公式ページにわざわざ書かれている注意です。
扶養親族等申告書の提出に関するご相談は市町村、厚生労働省などでは対応できませんので、お問い合わせの際はお気を付けください。
市役所の税務課に持ち込んでも扱えません。窓口は日本年金機構です。
- 扶養親族等申告書お問い合わせダイヤル:0570-081-240
- 050から始まる電話からかける場合:(東京)03-6837-9932
- 近くの年金事務所でも相談できます
記入方法だけなら、公式サイトに24時間対応の相談チャットがあります。電話がつながりにくい時期は、書き方の確認だけならそちらが早道です。
今週のうちにやること
- 封筒を開け、印刷されている提出期限の日付を控える
- 氏名欄の下の控除欄を見て、去年の内容から動いていないか確かめる
- 自分が障害者・寡婦等に当たらず、控除対象の配偶者も親族もいないなら、提出不要と判断してよい
- 変更がなければ「ア.前年から『変更なし』で申告します。」に丸をつけ、氏名を書く
- 返信用封筒に110円分の切手を貼って投函する
書き直しが必要なのは、家族構成や自分の状況が去年から動いた人だけです。動いていなければ、封を切ってから投函までは10分もかかりません。
この記事の時点と、確かめていないこと
送付基準の表と送付開始日は、日本年金機構が2026年9月3日に更新したページで確認しました。基準額は年分ごとに動きます。来年以降にこのページを読んでいる場合は、下の公式ページで最新の表を見てください。
提出期限の日付は、公式サイトを探しても見つかりませんでした。手元の申告書を見るしかない、というのがこの記事を書いた時点の状況です。
住民税の非課税限度額そのものの水準は、市区町村ごとに違うため扱っていません。自分の額を知りたい場合は、お住まいの市区町村の住民税の担当課に確認してください。
使った公式ページ
- 日本年金機構「令和9年分『公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の紙の提出方法」(2026年9月3日更新)
- 日本年金機構「令和8年分『公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の紙の提出方法」
- 日本年金機構 年金Q&A「扶養親族等申告書を提出しなかった場合はどうなるのですか。」
- 日本年金機構「令和9年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」(各通知書の見方)