夏のボーナスの手取りが額面の8割しかないのはなぜ?2026年の賞与明細で検算する順番
賞与の手取りが額面の75〜85%になるのは計算上おおむね正常です。社会保険料は標準賞与額×率、所得税は前月給与で率が決まる仕組みで、賞与明細と前月の給与明細の2枚があれば自分で検算できます。
目次(7項目)
7月上旬は夏の賞与の支給日が集中する時期です。振込額を見て「額面の8割しかない」と感じた方は、賞与明細と前月(6月)の給与明細を手元に並べてください。検算に使うのはこの2枚だけです。賞与は毎月の給与と控除の仕組みが少し違い、社会保険料は額面に率を掛けて、所得税は前月の給与を基準にして計算されます。手取りが額面の75〜85%に収まるなら、計算上はおおむね正常の範囲です。
額面と振込額の差はどこで生まれるか
賞与から引かれるのは、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、そして所得税です。40歳から64歳の方はここに介護保険料が加わります。会社によっては財形貯蓄や組合費、社内預金といった独自の控除が並ぶこともあるので、明細の控除欄を公的なものと社内のものに分けて眺めると全体像がつかめます。
逆に、賞与から住民税は引かれません。住民税は前年の所得をもとに年額が決まり、毎月の給与から12回に分けて徴収される仕組みだからです。賞与月も、住民税は普段どおり給与側だけで引かれています。
控除の合計は、賞与50万円・30代・扶養なしの会社員でだいたい10万円前後になります。内訳の大半は社会保険料で、所得税は2〜3万円台。この比率を頭に入れておくと、明細のどの項目を先に疑えばいいかが見えてきます。
なお、この記事の対象は社会保険に加入している会社員と公務員です。国民健康保険に入っているフリーランスには、そもそも賞与という控除区分がありません。
社会保険料は「標準賞与額」に率を掛けて決まる
計算の起点になるのは、税引前の賞与から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」です。50万3,800円の賞与なら50万3,000円が基準になります。ここに各保険の率を掛け、労使折半なので本人負担はその半分です。
率の目安を並べます。
- 健康保険料:協会けんぽは都道府県ごとに率が違い、おおむね10%前後。本人負担はその半分で5%弱。健保組合の会社は組合ごとの率
- 介護保険料(40〜64歳のみ):1.6%前後を労使折半。年度ごとに見直される
- 厚生年金保険料:18.3%で固定。本人負担9.15%。賞与の控除で最大の項目
- 雇用保険料:2026年度は一般の事業で本人負担0.5%。これだけは切り捨て前の支給総額に率を掛ける
厚生年金の9.15%は法律で固定されており、都道府県や会社による差はありません。賞与50万円なら45,750円。明細の控除欄でいちばん大きい数字がこれです。取られて終わりの数字でもありません。標準賞与額は年金記録に残り、将来受け取る老齢厚生年金の報酬比例部分の計算に反映されます。
標準賞与額には上限もあります。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月あたり150万円で頭打ちになるため、役員賞与のような高額支給では、額面が増えても社会保険料がそれ以上増えない領域があります。
例外として、退職が決まっている方は扱いが変わります。社会保険の資格を失った月に支給された賞与には、健康保険・厚生年金の保険料が掛かりません。月末より前の日付で退職すると資格喪失月が退職月と同じになるため、同じ賞与でも退職日次第で控除が変わります。退職月に賞与が出る予定の方は、明細の社会保険料欄が空欄でも誤りとは限りません。
所得税の率は賞与額ではなく「前月の給与」で決まる
賞与の所得税でつまずく方が多いのはここです。率を決めるのは賞与の金額ではなく、前月の社会保険料控除後の給与と、扶養親族の数。国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」にこの2つを当てはめて率が決まり、社会保険料を引いた後の賞与額に掛けます。
つまり、6月に残業が多くて給与が膨らんだ人は、7月の賞与の税率が1段上がることがあります。率は0%から45.945%まで刻まれていますが、多くの会社員が当てはまるのは2%〜10%台です。
ここで引かれるのはあくまで仮の税額です。1年分の所得が確定する年末調整で精算されるため、賞与で取られすぎていた分は12月の給与で戻ってきます。「前月の残業のせいで損をした」ままでは終わらない仕組みです。
前月に給与がなかった場合(産休・育休明けの復帰直後など)や、賞与が前月給与の10倍を超える場合は、算出率の表ではなく別の計算式が使われます。該当する方は、明細の税額が表と合わなくても誤りとは限りません。
2026年の夏に限って去年と違う点
今年の夏の賞与には、去年までなかった控除が加わっています。2026年4月分から徴収が始まった子ども・子育て支援金です。医療保険料と合わせて徴収され、賞与にも標準賞与額×0.23%(2026年度の被用者保険の率)が掛かります。労使折半なので本人負担は0.115%、賞与50万円なら575円です。
明細での見え方は会社によって分かれます。「子ども・子育て支援金」と独立した項目を立てる会社もあれば、健康保険料に含めて表示する会社もあります。別項目が見当たらないのに健康保険料が去年の同じ賞与額より数百円増えているなら、含めて表示されている可能性が高いです。
一方で、雇用保険料率は2026年度に引き下げられました。一般の事業で本人負担は0.55%から0.5%へ。賞与50万円で250円の減額です。
支援金の増加と雇用保険の減少を差し引きすると、去年との差は数百円に収まります。「去年より数万円手取りが減った」場合の原因はここではなく、支給額そのものの差、前月給与による所得税率の段差、40歳到達による介護保険料の追加を先に疑ってください。
賞与50万円での検算例
条件を置いて一度通しで計算してみます。賞与50万円、35歳(介護保険なし)、東京勤務、扶養親族なし、前月の社会保険料控除後の給与が28万円の場合です。
- 標準賞与額:50万円
- 健康保険料:24,750円(率を9.9%と置いた場合の本人分)
- 厚生年金保険料:45,750円
- 雇用保険料:2,500円
- 子ども・子育て支援金:575円
- 社会保険料合計:73,575円
課税対象は50万円から社会保険料を引いた約42万6,000円。算出率の表でこの条件に当てはまる率は6.126%なので、所得税は約26,100円です。
振込額は約40万円、額面のほぼ80%になります。手元の明細がこの水準から大きく外れていなければ、控除は正しく計算されていると考えられます。健康保険の率は都道府県と年度で変わるため、正確に検算したい方は協会けんぽの保険料率表で勤務地の率を確認してください。
検算して明細と合わないときの確認先
数千円単位のずれが出たときは、給与担当に聞く前に自分で見直せる箇所があります。標準賞与額の1,000円未満切り捨てを反映したか。介護保険の対象年齢に入っていないか。所得税の計算に使った前月給与は、社会保険料を引いた後の金額か。多くの場合、ずれはこのどれかの見落としで説明がつきます。
扶養親族の数が実態と違うまま登録されているケースもあります。子どもが生まれた、共働きで配偶者を扶養から外したといった変化を「扶養控除等申告書」で会社に出し忘れていると、算出率の表の当てはめ先が変わり、税額がずれます。
それでも合わなければ給与担当への確認になります。仮に源泉徴収の額に誤りがあっても、多くは次回給与か年末調整で精算されるので、その場で現金のやり取りが発生することはまずありません。年の途中で引かれすぎていたとしても、年末調整を受ける会社員なら確定申告は原則不要です。
参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2523 賞与に対する源泉徴収
- 日本年金機構 厚生年金保険の保険料
- 全国健康保険協会 保険料率
- 厚生労働省 雇用保険料率について
- こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
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参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2523 賞与に対する源泉徴収
- 日本年金機構 厚生年金保険の保険料
- 全国健康保険協会 保険料率
- 厚生労働省 雇用保険料率について
- こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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