パート106万円の壁が2026年10月に撤廃予定、自分が対象かは時給1,016円・週20時間・従業員51人で分かる

この記事の要点

判断の基準は年収ではなく時給と労働時間です。時給1,016円以上で週20時間なら、年収に関わらず加入対象になります。勤務先が対象かどうかは、日本年金機構の適用事業所検索システムの「適用拡大の事業所」欄で確認できます。

  1. 2026年10月に厚生年金加入の年収106万円要件(賃金要件)が撤廃される予定
  2. 時給1,016円以上で週20時間働くなら、年収がいくらでも加入対象になる
  3. 勤務先が対象かは適用事業所検索システムの「適用拡大の事業所」欄に「該当」と出るかで分かる
どうする?編集部 · · 初出 · 読了 約11分
目次(11項目)
  1. 時給1,016円以上で週20時間なら、年収を計算しなくても対象です
  2. 10月に消えるのは「年収要件」だけです
  3. 勤務先が従業員51人以上かは、自分で調べられます
  4. 契約書のどこを見れば判定できるか
  5. 手取りは月およそ1万3千円落ちる。幅が出るのは通勤手当のせいです
  6. 10月の給与明細のどこを見るか
  7. 「156万円未満は会社が負担」は50人以下の会社の話です
  8. 130万円の壁、税金の扶養とは別の話です
  9. いま準備しておきたいこと
  10. 加入で得られる将来の給付
  11. 参考

「パートを週3日で16時間、年収110万円くらいで働いています。10月から社会保険が変わるらしいのですが、私は関係あるのでしょうか」。先週、こんな相談を受けました。

結論から言うと、年収110万円という数字は今回の判定にほとんど関係ありません。見るのは時給と週の労働時間、それと勤務先の従業員数です。この方は週16時間なので、対象外です。

時給1,016円以上で週20時間なら、年収を計算しなくても対象です

今回の変更の中身は、厚生労働省の資料を読むと一行で説明がつきます。

厚生労働省の資料には「今般、全ての都道府県で令和7年度地域別最低賃金が時給1,016円を超えた」と書かれています。時給1,016円以上で週20時間働けば月額賃金が自動的に8.8万円以上になる。だから年収の基準を置いておく意味がなくなった。これが撤廃の理由です。

裏を返すと、いま日本のどこで働いていても最低賃金は1,016円以上なので、週20時間以上働いている時点で賃金の条件は自動的に満たしていることになります。年収を電卓で出す必要はありません。自分の時給と、契約書に書いてある週の所定労働時間。この2つだけ見てください。

念のため計算しておくと、1か月を4週で計算すると足りません。社会保険の世界では1年を52週・12か月として換算するので、1か月はおよそ4.33週です。時給1,016円で週20時間なら、1,016円×20時間×52週÷12か月でおよそ88,053円。ぎりぎりで8.8万円を超えます。厚生労働省が「自動的に賃金要件を満たします」としているのはこの計算です。時給1,100円なら月およそ9.5万円、時給1,200円なら月およそ10.4万円と、時給が上がるほど余裕を持って超えます。

なお、この撤廃は厚生労働省も日本年金機構も現時点では「2026年10月に撤廃予定」という書き方をしています。厚生労働省は別のページで、撤廃の時期は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」するとも説明しています。予定として案内されている段階だという点は、頭の片隅に置いておいてください。

10月に消えるのは「年収要件」だけです

パートが厚生年金と会社の健康保険に加入するための要件は、厚生労働省の資料では次の4つとされています。

  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(賃金要件)
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 勤め先の従業員数が51人以上であること(企業規模要件)
  • 学生ではないこと

これに加えて、フルタイムの従業員と同じく2か月を超えて雇用される見込みであることが必要です。

このうち消えるのは一番上の賃金要件だけで、ほかは残ります。週20時間も、2か月超も、学生除外も、従業員51人以上も動きません。「106万円の壁がなくなる」と聞いて全員が加入対象になると受け取ってしまうケースをよく見ますが、変わるのは一行だけです。

企業規模要件については、撤廃ではなく段階的な引き下げが決まっています。厚生労働省の資料に示されている順番はこうです。

従業員数対象になる時期
51人以上現在
36人以上2027年10月から
21人以上2029年10月から
11人以上2032年10月から
10人以下2035年10月から

つまり2027年10月は「51人以上が36人以上に下がる」だけで、規模要件がなくなるわけではありません。完全に広がりきるのは2035年10月です。従業員30人の会社で働いているなら、対象になるのは2029年10月以降になります。「来年には全員対象になる」と聞いたら、それは誤りです。

勤務先が従業員51人以上かは、自分で調べられます

「うちの会社は何人だろう」は、人事に聞く前に自分で確認できます。日本年金機構が「厚生年金保険・健康保険適用事業所情報を検索できます」というページで、適用事業所の検索システムを公開しています。事業所名称、所在地、法人番号のいずれかで検索でき、結果画面には管轄の年金事務所、適用年月日、そして被保険者数が表示されます。

ここで見る数字が、そのまま企業規模要件の判定に使う人数です。厚生労働省の資料は、企業規模要件の「従業員数」を厚生年金保険の被保険者数と定義しています。パートを全員足した人数ではないので、店舗の実感とはずれます。

数え方でもう一つ大事なのが、店舗単位ではないという点です。日本年金機構は、法人事業所の場合は「同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者数の総数」、個人事業所の場合は「適用事業所単位の被保険者数」と説明しています。全国チェーンの飲食店やコンビニで働いていて「うちの店は5人だから対象外」と思っていても、法人全体で51人以上あれば対象です。

検索するときは店舗名ではなく、給与明細や雇用契約書に書かれている雇用主の法人名で調べてください。個人経営に見える店でも、実際の雇用主が別の法人になっていることがあります。

数字を確かめたうえで、最終的には人事担当か店長に「うちは適用拡大の対象事業所ですか」と一度聞いておくと確実です。

契約書のどこを見れば判定できるか

規模の次に見るのが、雇用契約書の週所定労働時間です。ここが20時間以上と書いてあれば、10月以降ほぼ確実に加入対象になります。

判定は契約書上の時間で行われます。実際にシフトで週22時間入っていても契約が週18時間なら対象外で、逆に契約が週20時間なら実働が少ない月があっても対象です。19時間30分といった中途半端な数字を書いている会社もあるので、細かく見ておきたいところです。

雇用期間の見込みも見ます。契約書に3か月ごとの更新と書かれていても、実態として更新される予定なら加入対象です。反対に「10月から11月までの2か月限定」で働くだけなら対象になりません。

複数の勤務先を掛け持ちしている場合は数え方が変わります。週20時間は勤務先ごとに判定するのが原則なので、掛け持ちの場合に労働時間を合算するのかは別に確認してください。

手取りは月およそ1万3千円落ちる。幅が出るのは通勤手当のせいです

年収110万円のパートが10月から厚生年金と協会けんぽの健康保険に加入した場合、月およそ1万3千円が給与から引かれる計算になります。年間では15万〜17万円ほどです。これまで住民税と所得税だけを引かれていた家庭では、急に手取りが下がる感覚になります。

年間で2万円ほど幅が出るのは、標準報酬月額のどの等級に入るかで保険料が変わるためです。そして等級を決める「報酬」には通勤手当が含まれます。日本年金機構は、事業所の給与規定に定めのある通勤手当は労務の対償として受けるものと認められ、標準報酬月額の対象となる報酬に含まれると説明しています。数か月分をまとめて支給される定期代も、月数で割って月額に含めます。

つまり基本給ベースで「自分は月8.8万円くらいだから下の等級」と見積もっていても、通勤手当を足すと一つ上の等級に上がることがあります。交通費が月1万円出ている人は、その1万円分も保険料の計算に入ると考えてください。

自分の金額を知りたい場合は、給与明細の支給額を通勤手当込みで合計したうえで、協会けんぽの「都道府県毎の保険料額表」で該当する行を見ます。健康保険の料率は都道府県ごとに違うので、勤務先のある都道府県の表を使ってください。等級と保険料の関係は給与明細の厚生年金が急に上がる仕組みと同じ考え方です。

会社によっては、扶養手当を支給する要件に「配偶者の年収が130万円未満かつ配偶者の勤務先で社会保険に加入していないこと」と定めている場合があります。厚生年金に加入したタイミングで扶養手当も止まる可能性が高く、世帯全体の手取りへの影響はこの扶養手当の有無で大きく変わります。就業規則の福利厚生の項目もあわせて見ておきたいところです。

10月の給与明細のどこを見るか

加入手続きが済んだかどうかは、給与明細の控除欄で確かめられます。見るのは「健康保険」と「厚生年金保険」の2行。この2行に金額が入っていれば、対象になっています。

注意したいのは、引かれ始めるタイミングが会社によってずれることです。保険料をその月の給与から引く会社と、翌月の給与から引く会社があります。後者だと10月分の給与明細にはまだ何も出ず、11月に支払われる給与から初めて2行が現れます。10月の明細を見て「引かれていないから対象外だった」と判断するのは早いので、11月の明細まで待ってください。

11月になっても2行が出てこない場合は、給与担当か店長に「10月から短時間労働者の適用拡大の対象になっていますか」と聞いてください。週20時間以上働く人については日本年金機構などへ被保険者資格取得届を出す必要があると厚生労働省が示していますが、この届出をするのは会社です。自分では手続きできないので、漏れていれば会社側の対応待ちになります。

10月と11月の明細は、手取りの差を後から見比べられるように残しておくと安心です。

「156万円未満は会社が負担」は50人以下の会社の話です

保険料の一部を会社が肩代わりできる仕組みは、検討段階ではなく、すでに法律で決まっています。根拠となる年金制度改正法は2025年5月16日に国会へ提出され、6月13日に成立しました。

ただし対象がかなり限られます。厚生労働省は対象者を「従業員数50人以下の企業などで働き、企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者であって、標準報酬月額が12.6万円以下であるもの」と説明しています。厚生労働省のパンフレットでも、この支援(保険料調整制度)を受けられるのは規模要件を満たさない会社が従業員の2分の1以上の同意を得て任意加入する場合とされ、期間は3年間です。

つまりいま従業員51人以上の会社で働いていて10月から加入する人は、原則としてこの支援の対象ではありません。「10月から会社が保険料を肩代わりしてくれるらしい」と聞いても、勤務先が51人以上ならまず当てはまらないと考えたほうが、当てが外れずに済みます。

なお156万円という数字がよく一緒に語られますが、今回確認した厚生労働省の資料(適用拡大特設サイト、加入拡大のポイント、加入対象の拡大について)に156万円という表記は見当たりませんでした。書かれている基準は標準報酬月額12.6万円以下です。判定は年収ではなく標準報酬月額で行われる点に注意してください。

130万円の壁、税金の扶養とは別の話です

106万円の壁と並んで語られる「130万円の壁」は、撤廃予定ではありません。混同すると判断を誤るので、要点だけ整理しておきます。

106万円の壁は、パートが勤務先の厚生年金と健康保険に新しく加入するかどうかの入口です。年収要件が外れて、基準が週20時間に置き換わります。

130万円の壁は、配偶者の扶養から外れて自分で保険料を払う仕組みに切り替わるかどうかの入口です。勤務先の規模や労働時間と関係なく、年収130万円を超えた時点で扶養から外れます。この壁は10月以降も残ります。扶養の認定のしかたは別に動いているので、健康保険の扶養認定ルールもあわせて見ておくと混乱しません。

もう一つ混同されやすいのが、税金の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)と社会保険の扶養です。今回の10月の改正は社会保険の話であって、税金の扶養は別のルールで動きます。10月に厚生年金へ加入したとしても、税金上の扶養からすぐに外れるわけではありません。税金側の数字は103万円と160万円の壁がいつ変わるかにまとめています。

10月以降に頭に置いておくのは、106万円と130万円という2つの数字ではなく、「週20時間」と「130万円」の2つと考えると迷いにくくなります。

いま準備しておきたいこと

10月まで1か月を切りました。この間にできることから動いておくと、切り替え時に慌てなくて済みます。

まず雇用契約書を出してきて、週の所定労働時間の数字だけ確認する。ここが20時間未満なら、以降の話はすべて関係ありません。5分で終わります。

20時間以上だった場合は、日本年金機構の適用事業所検索システムで勤務先の被保険者数を調べる。51人以上なら10月から対象と考えて、家計の準備に入ります。

家計面のシミュレーションは、家計簿アプリに「10月から15,000円を追加天引き」で入れる形で試すと効果が実感しやすいです。年間15万〜17万円の負担を月別に落とし込んで、変動費のうちどこを削るかを話し合っておくと、10月以降が安定します。

労働時間の見直しを検討する場合、契約書上の週労働時間を19時間以内に絞れば加入対象から外れます。ただし収入自体も減るので、加入して手取りが月1万3千円減るのと、労働時間を減らして給与自体が数万円下がるのと、どちらが世帯にとって得かは家計の状況次第です。安易に労働時間を短くすると年収まで大きく落ちる点には注意してください。時間を減らす場合は勤務先の合意が必要なので、9月中に相談しておく必要があります。

加入で得られる将来の給付

短期的には手取りが減っても、加入で得られる保障はそれなりに厚くなります。

老後の年金は厚生年金部分が上乗せされます。加入期間1年で月およそ500円前後の増額が目安なので、20年勤続すれば月1万円の上乗せというイメージです。傷病手当金の対象にもなり、病気やけがで4日以上会社を休むと給与のおよそ3分の2が支給されます。出産手当金も、勤務先の健康保険に入っていれば受けられます。

手取りが下がる話だけで判断せず、この保障の分も含めて考えたいところです。

参考

  • 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト|社会保険加入の要件」
  • 厚生労働省「短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入拡大のポイント」(令和8年1月作成)
  • 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
  • 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
  • 日本年金機構「厚生年金保険・健康保険適用事業所情報を検索できます」
  • 日本年金機構「標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「都道府県毎の保険料額表」
Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

参考資料

  1. 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト|社会保険加入の要件」
  2. 厚生労働省「短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入拡大のポイント」(令和8年1月作成)
  3. 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
  4. 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
  5. 日本年金機構「厚生年金保険・健康保険適用事業所情報を検索できます」
  6. 日本年金機構「標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。」
  7. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「都道府県毎の保険料額表」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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